クロストライアル小説投稿ブログ

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二大国戦記II 二人の剣精霊

エスプランドル聖王国軍とオスクリタ大帝国軍の戦いから1年が経過した。後に二大国戦記と呼ばれることになるこの大戦の後、両国は終戦協定を結び、現在は同盟国として平和な日々を謳歌していた。しかし、その平和も長くは続かなかった。ある日、両国で男女数名が衰弱死すると言う事件が起きた。この原因不明の事件はその後も大きな被害を出し、犠牲者は増え続ける一方であった。そんなある日、前大戦の英雄であるアエリスの下に、一人の少女が訪ねてきた…。

アエリス「あなた、私に何か用?」
少女「私はリリィ、リリィ・ストレイス、これでも剣精霊なんだよ」
エルマー「剣精霊って本当にいたんだ、僕初めて見たよ」
エルフリーデ「でも、見た目は人間とそんなに変わらないのね」

リリィ「私、あなた達に伝えに来たんだ、邪神ネクロスが復活した事」
ジェズアルド「邪神ネクロスだと!?」
テオドール「知ってるの? じっちゃん?」
ジェズアルド「ああ、300年前にこのアインベルグ大陸を支配した邪神だ」
セアル「そんなとんでもない奴が復活したって言うの?」

リリィ「うん、300年前は私と私のお姉さまが力を合わせて封印したんだけど、時を得てその封印が解けてしまったの」
ソフィア「まさか、最近発生してる衰弱死の事件もそれが関係しているの?」
リリィ「あれは邪神ネクロスが人の魂を吸い取っているの、ネクロスにとっての食事だね」
エーリカ「何て酷い事を…」

リリィ「でも安心して、剣となった私と私のお姉さまが邪神ネクロスを突き刺せばきっと倒せるよ」
レギーナ「ちょい待ち! だったら何で300年前にそれをやらなかったのよ」
リリィ「その時は私達と契約している人が殺されてしまって、やむなく私達の力で封印したんだ」
リーズ「そうだったのね…」

アビゲイル「ところで、そのお姉さまは今どこにいるの?」
リリィ「大丈夫、もうすぐここに来るはずだよ」

その時、エスプランドル騎士団本部のドアを開ける音がした。そこには、アエリスのよく知る人物がいた。

アエリス「ヴァーラさん!」
ヴァーラ「久しぶりだな、アエリス」
イェルハルド「元気そうで何よりです」
シーグリッド「何かまた大変そうなことになってるわね」

ヴァーラ「さて、紹介しよう、彼女が私の下へ来た剣精霊の…」
剣精霊「フロレンティーナ、フロレンティーナ・シェーンハイトよ」
アエリス「えっと…フロレ…さん…?」
フロレンティーナ「馬鹿! フロレンティーナよ!」
アエリス「ごっ…ごめんなさい…フロレンティーナさんですね」

フロレンティーナ「話は聞いてるわね、私とリリィがいれば邪神ネクロスは倒せるわ」
カリスト「で、その邪神ネクロスはどこにいるんだ?」
リリィ「このアインベルグ大陸の西端にある洞窟、ダークケイブです」

エルマー「ダークケイブと言えば…」
エルフリーデ「悪魔が魔界からこの世に来る場所と言われていて誰も近寄らない場所…」
ジェズアルド「そんな危険な場所にいると言うのか」
フロレンティーナ「安心しなさい、全部迷信よ」

アエリス「じゃあ、今から全員でダークケイブに出発しましょう!」
ヴァーラ「そうだな、全員武器の点検などを行うように、30分後に出発するぞ!」

エスプランドル騎士団とオスクリタ騎士団の双方は武器の点検を始めた。どんな時でも武器を万全の状態に保つ事は重要であり、相手が邪神ならばそれはなおさらであった。そして、30分が経過し、両軍はダークケイブに向けて進軍した。

エスプランドル聖王国からダークケイブまではかなりの距離があったが、一刻も早く人々を救う為、ただひたすら進軍した。森を越え、草原を越えると、目的地のダークケイブが見えてきた。

今までは綺麗な草原と青空が見えていたが、ダークケイブが見えてくると草木が枯れた大地が広がり、空は昼にもかかわらず、夜のように暗かった。

ソフィア「凄く気味の悪い場所ね…」
カリスト「なるほど、こんな場所なら邪神ネクロスが封印されていてもおかしくはないな」

すると、アエリス達の前に影が集合し、その影は剣士の姿を形どった。影の剣士は無数に現れ、アエリス達を攻撃した為、アエリス達はその影の剣士に応戦した。

エルフリーデ「何なのこいつら!?」
リリィ「邪神兵です! 私達の時代では影の剣士とも言われていました!」
エルマー「で、こいつらは強いの?」
フロレンティーナ「弱いわ、攻撃すれば消滅する」
カリスト「なら、やる事は決まっているな」

エスプランドル騎士団とオスクリタ騎士団の双方は邪神兵に攻撃を仕掛け、次々と倒していった。フロレンティーナの言う通り、攻撃すればすぐに消滅する上、1体1体は大して強くなく、前大戦を経験したアエリス達にとっては脅威ではなかった。そして、邪神兵は次から次へと倒されていった。

だが、邪神兵の一番の脅威、それは圧倒的な物量である。いくらアエリス達が邪神兵を倒しても、次から次へと現れるのだ。その圧倒的な数に、アエリス達は苦戦した。

アビゲイル「何よこの数!!」
シーグリッド「こんなに現れられては対応できないじゃない!!」
イェルハルド「フロレンティーナさん、何か対応策はないのですか?」

フロレンティーナ「あるわ、それは邪神ネクロスを倒す、又は封印する事」
アエリス「分かりました! なら、私とヴァーラさん、後は剣精霊の2人だけで行きましょう!」
フロレンティーナ「馬鹿! 正気なの? 相手は邪神ネクロスなのよ?」

ヴァーラ「大丈夫だ、私達はそう簡単にはやられない」
アエリス「それに、どのみち剣になったあなた達の攻撃じゃないと倒せないんでしょう?」
フロレンティーナ「それは…そうだけどさ…」

ヴァーラ「なら、私達の事を信用して欲しい」
アエリス「大丈夫です、絶対に邪神ネクロスを倒してみせます」
フロレンティーナ「そこまで言われちゃ仕方ないわね、いいわ、勝手にしなさい」
アエリス「フロレンティーナさん…」
リリィ「では、行きましょう! 邪神ネクロスの討伐へ!」

邪神ネクロス討伐の為、アエリスとヴァーラ、リリィとフロレンティーナはたった四人でダークケイブへと向かうことになった。人々を救う為、仲間達を助ける為、邪神ネクロスを倒す決意をした。

ダークケイブに突入したアエリス達は、邪神ネクロスのいる最深部へと向かった。道中、邪神兵の襲撃にあったものの、前大戦の英雄である彼女たちの相手ではなかった。

一刻も早く人々や仲間を助ける為、アエリス達はとにかく足を進め、遂に邪神ネクロスのいる最深部へと到着した。

ネクロス「ほう…まさかここまで来る人間がいるとはな…」

ダークケイブの最深部にて居座っていた邪神ネクロス、その姿は龍と昆虫が合わさったような見た目をしており、単眼が特徴の顔、黒い体色に龍の尻尾と翼が生え、昆虫の様に無数の足のあるまさに怪物と言う言葉が似合っていた。

アエリス「あなたが邪神ネクロスですね!」
ヴァーラ「人々の命を守る為、お前を倒しに来た!」
ネクロス「フン…愚かな…邪神である我に人間如きが敵うと思うな…」

ネクロスは顔にある一つ目からレーザー光線を放ったが、アエリス達は各自散開し、攻撃を回避した。

リリィ「アエリスさん! ヴァーラさん! 手を伸ばしてください!」
アエリス「何をする気なんですか?」
フロレンティーナ「分からないの? 私達があなた達の剣になるのよ!」
ヴァーラ「分かった! 頼んだぞ!」

アエリスとヴァーラが手を伸ばすと、リリィはアエリスの、フロレンティーナはヴァーラの手を握った。と、次の瞬間、リリィとフロレンティーナの体が輝き、光が収まった瞬間、二人の体は剣になっていた。

アエリス「凄い…! この剣…!!」
ヴァーラ「とてつもない魔力を感じる…!!」

リリィの変化した剣は黄金の剣であり、鍔の中心にはひし形の青い宝石が埋め込まれていた。アエリスはその剣に対し、美しさと共に神々しさを感じた。

対するフロレンティーナの変化した剣は白銀の剣であり、鍔の中心にはひし形の赤い宝石が埋め込まれていた。ヴァーラはその剣に対し、美しさと共に神秘的な感情を抱いた。

ネクロス「なるほど…300年前に我を封印した剣精霊か…」
リリィ「300年前はそうでした、ですが、今回は違います!」
フロレンティーナ「今度こそ倒すの、あんたをね!」
ネクロス「そうか…だが、そう上手く行くかな?」

ネクロスは再び、一つ目からレーザー光線を放って攻撃した。アエリスとヴァーラは散開して攻撃を回避し、レーザー光線の雨をかいくぐってネクロスに接近した。

その時、アエリスとヴァーラの足元から無数の触手が生えてきた。ネクロスは体の一部を触手し、根を張るように地面に突き刺していたのだ。その触手はアエリスとヴァーラを絡めとり、動きを封じた。

ヴァーラ「何だ、この触手は!?」
アエリス「身動きが…取れない…!!」
ネクロス「これでお前達も終わりだな、前大戦の英雄、そして憎き剣精霊共よ!」
リリィ「そんな…! 何か手はないの!?」
フロレンティーナ「待って! これって…」

その時、アエリスとヴァーラが腰に携えていた二本の剣が剣になったリリィとフロレンティーナの二人と共鳴した。

アエリス「聖剣アクアマリンが…共鳴している…!?」
ヴァーラ「私の魔剣エラプションもだ、凄まじい光を放っているぞ…」
リリィ「その剣は私達姉妹と同じ赤と青の宝石の埋まった剣」
フロレンティーナ「だから、私達と共鳴したんだわ」

二本の剣と二人の剣精霊が共鳴した事で放たれた光は、アエリスとヴァーラを絡めとっていた触手は砂の様に崩れ去った。そして、その光は邪神ネクロスに大きなダメージを与え、邪神ネクロスは光で身体を焼かれ、苦しんでいた。

ネクロス「ぬおぉぉぉッ!! 苦しい…! 苦しいぞぉぉぉッ!!!」
アエリス「あの光が効いているらしいですね!」
リリィ「倒すなら、今がチャンスです!」
フロレンティーナ「ほら、もたもたしないの! 行くわよ!」
ヴァーラ「ああ!」

アエリスとヴァーラは足を走らせ、邪神ネクロスに向かって行った。邪神ネクロスは目からレーザー光線を放って攻撃してきたが、二人は最低限の動きでその攻撃を回避し、リリィとフロレンティーナの変化した剣をネクロスに振り下ろした。

ネクロス「ぐはぁぁぁッ!!」

邪神ネクロスは体を切り裂かれ、その切り口からは眩い光が放たれていた。

フロレンティーナ「押してる! いけるわ!!」
リリィ「もう一撃! 今度はあの目です!!」
アエリス「オッケー!!」
ヴァーラ「これで決める!!」

アエリスとヴァーラは同時に邪神ネクロスの目を突き刺した。目を貫かれた邪神ネクロスは少しずつ体の動きが遅くなっていき、最終的には体はピクリとも動かなくなった。

ネクロス「まさか…この我が滅ぶとはな…」
リリィ「邪神ネクロス、300年に渡る因縁もここまでのようですね」
フロレンティーナ「ささ、もったいぶってないでさっさと死になさい」
ネクロス「ククク…我は滅びるが、この世にはいつか必ず我やジギスヴァルド以上の脅威が訪れる事だろう…」
アエリス「何ですって!?」
ヴァーラ「安心しろ、その脅威も私達が必ず倒してみせる!!」
ネクロス「無駄だ…その脅威は少なくとも100年以上後に訪れる…その時、お前達は年老いて生きてはいまい…ハッハッハッハッハ…!!!」

邪神ネクロスはそう言い残し、体は砂の様に崩れ去り、完全に滅び去った。こうして、300年以上に渡る因縁に決着が付いたのである。

フロレンティーナ「…終わったわね」
リリィ「そうですね、お姉さま」
アエリス「でも、邪神ネクロスが最後に言っていた脅威の話…気になりますね…」
ヴァーラ「だが、奴は100年以上後と言っていた…悔しいが、その時私達は生きていない…」

リリィ「安心してください、私達精霊は人間より長生きです、きっとその時代にも生きています」
フロレンティーナ「だから、後は私達に任せて平和に暮らしときなさい」
アエリス「リリィちゃん…フロレンティーナさん…」
ヴァーラ「フッ…どうやら私達にできる事はもう残ってないようだな…」

すると、洞窟の外から仲間達の声が聞こえてきた。

ソフィア「おーい、大丈夫~?」
アエリス「みんな!」
イェルハルド「ヴァーラ様、よくぞご無事で」
シーグリッド「心配したんですよ」
ヴァーラ「心配をかけたな、イェルハルド、シーグリッド」

アエリス「邪神ネクロスは完全に滅びました、これでこのアインベルグ大陸には再び平和が訪れます」
ヴァーラ「だが、まだ完全に脅威は去っていない」
リリィ「その脅威と戦う為、私とお姉さまは旅に出る事にします」
フロレンティーナ「いつかこの世界に本当の平和が訪れる、その時までね」

テオドール「…何か、壮大な話になって来てるなぁ…」
レギーナ「ま、いいんじゃない? これでまた平和が来るんだしさ」
セアル「そうね」
アエリス「それじゃみんな、帰ろう!」
ヴァーラ「そうだな」

こうして、後に邪神討伐戦記と呼ばれる戦いは幕を閉じた。この戦いの後もこの世界は幾度となく戦いに見舞われる事になるが、その度に人々は戦い、平和を勝ち取って来たのである。それは、いつの時代も人々の心に平和を願う心があり、この戦いの先に必ず平和が来ると信じていたからなのだ。そして、その平和はいつか必ず訪れるはずなのである。