クロストライアル小説投稿ブログ

pixiv等で連載していた小説を投稿します、ここだけの新作も読めるかも?

銃×剣のエージェント

時は22世紀、人類同士の争いは終わり、平和になった世界。しかし、その世界に宇宙からの来訪者であるエイリアンが多数襲来、彼らは人知れず人間社会に溶け込み、ひっそりと悪事を働いていた。その阻止の為、エイリアンを抹殺する職業、エージェントが誕生し、人類はエイリアンとの一般にはあまり知られる事のない戦いへと突入した。この物語の主人公は初瀬千初(はつせ ちはつ)、22歳の女性で、水色のブラウスとブルーのロングスカートと言うシンプルな服装をした長い金髪と海のように青い瞳のエージェントの女性である。彼女は表向きは食品メーカーとして活動している組織、ファフニール所属のエージェントであり、まだまだ未熟ではあるものの、エネルギー銃を使った戦闘を得意とする。そんな彼女の下に、社長の長田祥匡(おさだ ただくに)から電話がかかった。

千初「はい、千初です」
祥匡「あ、千初くん? 君の後輩を紹介するから今すぐ来て、それじゃ」

そう言って、通話は終わった、10秒もせずにだ。千初はお菓子を買いに外出していたが、社長からの呼び出しを前に断る事ができず、仕方なく会社に向かった。どうせ祥匡がお菓子か何かを用意してるだろうと思って。会社に付くと、千初は社長室に向かった。大体、エージェント関係の話は社長室で行われるからだ。千初が社長室のドアをノックして入ると、そこには長い水色の髪をした青い瞳の女性がいた。この女性が祥匡の言った後輩なのだろう。

祥匡「千初くん、忙しい所よく来てくれたね、彼女が後輩の…」
???「セオドーラ・クロフォード、セオとでも呼んでくれ」
千初「初めまして、セオさん」

セオと言う女性はクールな女性で、表情一つ変えず、千初の方を見ていた。話さないのも何だからと千初はある事を聞いた。

千初「ねえ、セオさんはどんな武器を使うの?」
セオ「私か? 私は高周波ブレードだ」

高周波ブレードは、高周波で相手を切り裂く実体剣で、切れ味は高く、光線銃のビームを切り払う事も出来、多くのエージェントが愛用している武器である。

祥匡「なるほど…剣使いか…で、千初くんが銃使いだから…君達のチーム名は銃×剣(ガンソード)でどうかな?」
セオ「悪くはないな」
千初「いいんじゃないでしょうか?」
祥匡「じゃ、それに決定だね!」

こうして、千初とセオの2人で構成されたチーム、銃×剣が結成された。その時、社長室のエイリアン反応警報が鳴った。この警報は、街のどこかにエイリアンが現れた時に鳴る警報で、エージェント達はこの警報を頼りに街にいるエイリアンを始末しに向かうのだ。

セオ「どうやら、この街のどこかにエイリアンが現れたようだな」
千初「社長! 場所は?」
祥匡「エリア3の空き地だね、そこに円盤が着陸してるはずだよ」
千初「分かりました! 早速向かいます!」

千初とセオは、格納庫の方に向かい、エージェント用に開発されたエアバイク、スカイフェンリルに乗った。スカイフェンリルは涼しげな水色が基調のエアバイクであり、その車体がフェンリルに見える事からスカイフェンリルと名付けられた。本機には小型ミサイルや機関砲が内蔵されており、最低限の戦闘をする事も可能である。2人がスカイフェンリルに乗ると、格納庫の床がせり上がり、そのまま天井が開いて会社の屋上へと出た。そして、2人の乗るスカイフェンリルは発進し、夜の街を飛行した。

千初「社長! エイリアンの円盤はどうすればいいですか?」
祥匡「ああ、どうやらオクトタイプのエイリアンの物らしいから破壊しちゃっていいよ」
セオ「オクトタイプ…地球上で殺人を行う野蛮な宇宙人か…」

オクトタイプエイリアンはタコの様な見た目のエイリアンであり、その姿は有名小説、宇宙戦争の火星人によく似ているが、彼らの出身地は火星ではなく、どこか遠くの星であると思われる。セオの言った通り、非常に野蛮なエイリアンであり、以前は地球で若い女性を5人も殺している。2人がスカイフェンリルでエリア3の空き地に向かうと、ヘリコプターぐらいの大きさの円盤が着陸しており、周りにはタコの様な見た目のオクトタイプのエイリアンが数匹いた。

千初「目標確認、これより攻撃を開始します」

2人はスカイフェンリルの車体の両脇から小型ミサイルを発射した。発射されたミサイル合計4発は円盤に命中し、円盤は爆散した。

セオ「決まったな…」

すると、生き残ったオクトタイプエイリアン6匹が光線銃で攻撃してきた。2人は物陰にスカイフェンリルを着陸させ、武器を手に取った。

セオ「千初、私が切り込む、お前は援護を頼む」
千初「うん、分かった、気を付けてね」

そう言って、セオはエイリアンの方に向かって走り出した。エイリアンは光線銃を撃ったが、全てセオに切り払われ、セオの高周波ブレードでエイリアンは次から次へと斬り裂かれた。その際、エイリアンは緑色の体液を吹き出し、セオはその体液を返り血の如く浴びていた。そして、千初も残ったエイリアンをエネルギー銃で射殺し、今回の任務を終えた。

セオ「ミッション完了だな」
千初「うん! 後は軍の人に任せて帰ろう」
セオ「ああ、そうだな」

エイリアンの死体の後始末などは、エージェントではなく軍の人間の仕事で、主に死体や兵器を研究し、今後のエイリアン災害へ生かしている。その為、最近はエイリアンに対しての対策が良くなってきているのである。2人は任務を終え、スカイフェンリルで本部に帰投した。その様子を見ていた1人の女性がいた。赤い髪をツインテールにしたその女性は、2人の戦いを見て、胸を高鳴らせていた。

???「エイリアンを殺しに来たつもりが、もっと面白い物が見られたよ…あの2人…中々やりそうだ…」

その後、ファフニールの社長室では、セオの歓迎会が開かれていた。と、行っても数人の社員と共にお菓子を食べるだけではあったが、千初は遠慮と言うものを知らないのか、次から次へと食していた。

セオ「…千初って、仕事の時は真面目なのに、普段はこんな感じなんだな」
千初「はつ?」
祥匡「この子、食べる事となったらいつもこんな感じでね」
セオ「…とまあ、千初、これからよろしく頼む」
千初「こちらこそよろしくね! セオちゃん!」

千初とセオがチーム銃×剣を結成して3日が経過した。その間、千初たちのいるプラムシティは平和であった。しかし、その間も地球に潜伏しているエイリアン達は悪事を働いている。エージェント達はそんな人々の平和を守る為、戦っているのだ。だが、仕事がなければする必要はない、なので、特に用事のない千初は、街中を散策していた。そんな中、千初は街中でセオと出会ったのであった。

千初「あっ! セオちゃん!」
セオ「何だ、千初か、その大荷物、大分買ったみたいだな」

現在、千初は店で買い物をしていた為、手に沢山の紙袋を持っていた。千初は買い始めたら大体1万円分は買う為、これだけの大荷物になっているのである。

千初「せっかくだし、セオちゃんにこれあげるね」

そう言って千初が手渡したものは3色団子であった。白、赤、緑の団子が重なった3色団子は、千初の好物なのである。セオはそれを受け取って早速食べてみた。

セオ「…これが日本の和菓子か? 案外いけるな」
千初「ふふっ、でしょ?」

その時、突如上空に巨大な円盤が現れた。本当に突然現れた事から、ワープでもしたのであろう。その円盤を見た人々は騒然とし、しばらくしてから街中に避難勧告が発生し、人々は慌てて地下シェルターへと避難した。そんな中、エージェントである千初とセオは、自分の職場であるファフニールへと向かった。

千初「長田さん!」
祥匡「2人共、よく来てくれたね」
千初「街を散策してたら、急に円盤が現れて…」
セオ「長田さん、あれはメカニク星の巨大円盤だな」
祥匡「そうだね」

カニク星のエイリアンはかなりの虚弱体質であり、それを補う為、自身をサイボーグ化させている。地球での活動は主に自分達の開発したメカに任せている為、この星の人々はメカニク星人を見た事がない。過去にはメカニク星人の作ったメカによってプラムシティ全体が停電になった事がある。更に、今回現れた円盤より少し小型の円盤がプラムシティに飛来し、大騒ぎになった事もあるほどだ。

祥匡「しかし、あの規模の円盤は現れた事がない…」

すると、セオは小型端末を取り出し、巨大円盤について計算を始めた。

セオ「あの円盤の中枢部に凄いエネルギーが感じられる…恐らく奴らの目的はこの街の破壊だろう」
千初「え!? じゃあこの街一帯を吹き飛ばす気?」
セオ「ああ、だがあの巨体を支えるほどの金属…恐らく相当の硬度を持っていると思われる…」
祥匡「それに、もしあの円盤からレーザーが発射されたら、地下シェルターにいる人々は全滅だよ」
千初「そんな…じゃあどうすれば…」

その時、社長室のドアが強引に開かれた。現れたのは赤い髪をツインテールにした女性と、長い茶髪の女性の2人であった。千初は、茶髪の女性についてよく知っていた。

千初「初菜! 何してるの!?」
初菜「やっほー、千初姉ちゃん久しぶりー」

この女性の名は初瀬初菜(はつせ はつな)、千初の従妹であり、お金が大好きな女性である。年齢は千初より一つ下で、気楽な性格をしている。すると、赤髪の女性が詳しく話し始めた。

???「彼女はあたし達「紅の鮮血」のメンバーさ」
祥匡「紅の鮮血ゥ!?」
セオ「あの凄腕の殺し屋が集まる組織か…」
???「まあ、殺すのは主にエイリアンなんだけどね~」
千初「初菜、あなたそんな物騒な組織に入ったの!?」
初菜「お金を稼ぐにはこれが手っ取り早いと思ってね」
千初「あなたって人は…」

しばらくすると、赤髪の女性が自己紹介を始めた。

???「っと、自己紹介が遅れたね、あたしは皇紅音(すめらぎ あかね)、よろしく~」
祥匡「皇紅音…ああ、紅の鮮血のリーダーね、って、えぇ!?」
セオ「聞いた事がある…幼い頃から殺し屋として教育を受け、6歳の頃には既に人を殺していると言うあの…」
千初「初菜! あなたそんな危険な人と…!!」
初菜「まあまあ、まずは紅音さんの話を聞きなって、あまりカリカリすると肌が荒れるよ~?」
千初「…初菜…後でお説教だからね…」
紅音「…手っ取り早く行こうか、私達の目的は君達と協力し、あの円盤を破壊する事」
セオ「…何故エージェント組織である私達と協力する」
紅音「簡単さ、このプラムシティが壊されちゃ、活動拠点が無くなっちゃうからね」
初菜「悪い話じゃないと思うんだけど」

その作戦に、社長の祥匡はしばらく考え、承諾した。

祥匡「分かった、この作戦、引き受けよう」

その後、千初とセオは格納庫に向かい、スカイフェンリルに乗って発進した。しばらくすると、紅音と初菜も赤を基調としたエアバイク、クリムゾンキマイラに乗って現れた。クリムゾンキマイラはスカイフェンリルに比べ装甲が厚く、火力も高い所謂パワータイプのエアバイクである。ちなみに、開発はスカイフェンリルと同じイグニス社である。

紅音「と、まあ作戦は、あの円盤のコアを破壊する事」
セオ「そのコアが装甲に隠れているんだが?」

分析の結果、巨大円盤のコアは機体下面の中心部にある事が分かった。しかし、そのコアは装甲に隠れ、攻撃する事ができない。すると、千初がとある兵器を持ち出した。

千初「ジャーン! 荷電粒子ライフルー! これであの装甲を破壊します!!」
紅音「へぇ…いい武器持ってるじゃない」
千初「この荷電粒子ライフルは強力すぎるあまり、滅多な事じゃ使用はできないんだけど、今回は特別に、ね?」
紅音「なるほどね、じゃあ、早速円盤に突っ込むよ!」

そう言って、千初以外のメンバー全員が巨大円盤のコアに向かい、千初はホバリングし、巨大円盤のコアに荷電粒子ライフルを構えた。巨大円盤は千初以外の3人の生体反応をキャッチし、レーザーで攻撃を仕掛けたが、全員がそれを回避した。その間、千初は荷電粒子ライフルを巨大円盤のコアに向けて撃った。荷電粒子ライフルからは強力なビームが放たれ、コアを守る装甲を焼き切った。そして、そのまま巨大円盤のコアに高出力のビームが命中し、コアを破壊した。コアを失った巨大円盤は機体を維持できなくなり、大爆発を起こした。千初たちはすぐさまその場から退避し、今回の作戦を完了させた。その後、千初たちはかなり遠くの場所まで退避しており、プラム公園にそれぞれの機体を着陸させていた。そして、千初は作戦が成功した事を喜んでいた。

千初「ありがとう、みんなが攪乱してくれたおかげでこの作戦に成功できました」
紅音「そうか…それはよかったね…」

すると、紅音と初菜はそれぞれ高周波ブレードと超硬質日本刀を取り出した。

セオ「…武器なんて取り出して何のつもりだ?」
紅音「いや、実はこの間のあんた達のミッション、見させてもらっていたんだよ」
千初「私達の銃×剣としての初ミッションを!?」
初菜「それで、紅音さんがお姉ちゃん達と戦いたくなったんだって」
セオ「一体何の為に?」
紅音「あたしはね、強い奴と戦いたいんだよ、エイリアンなんて雑魚じゃない強い奴とね!」
千初「そんな…」
紅音「じゃあ…行くよッ!!」

カニク星の巨大円盤を撃破した千初とセオ、しかし、今度は共闘した紅音と初菜が攻撃を仕掛けて来た。強い奴と戦いたいと言う名目の下に戦う彼女たちは、千初たちに容赦ない攻撃を仕掛けて来た。

千初(相手はエイリアンじゃなくて人間…! 傷つけないように戦わないと…!)
初菜「どうせ、お姉ちゃんの事だから私達に手加減をしてるんでしょ? 甘いよ!」

千初は初菜に対し、出力を絞ったエネルギー銃のレーザーを放った。しかし、初菜の超硬質日本刀は対ビームコーティングがされており、出力の落ちたレーザーを次々切り払っていた。一方のセオは紅音と交戦していた。2人の武器はどちらも高周波ブレードであり、性能や切れ味はほぼ互角だが、開発会社が違う。そして、2人の剣の腕前もほぼ互角で、決着が付かずにいた。その時、紅音はセオにある事を伝えた。

紅音「あたしはあんたの事知ってるよ、オルトロスのエージェントの唯一の生き残りでしょ?」
セオ「ッ! 何故、その事を…!!」
紅音「あたしの情報網にはね、色んな事が入ってくるのよ、色んなことがね」

オルトロスは小さなエージェント組織であり、少数で活動していたが、腕前は確かなエージェントが集まっていた。セオは1ヵ月前までそのエージェント組織で活動しており、仲の良いエージェントの仲間も多かった。セオは、その組織でかなり長期間活動し、数多くのエイリアンを抹殺して来た。しかし、約半月前のある日、とあるエイリアンの討伐任務の際、相手のエイリアンの基地のトラップにひっかかり、多くの仲間を失ってしまう。作戦は失敗し、何とかエイリアンの基地から逃げ出したものの、生き残ったのはセオ1人だけであった。その後、オルトロスはエージェントを多く失った事で組織として活動できなくなり、オルトロスは倒産、セオも職を失ってしまった。そして、その後就職した先がファフニールなのであった。

セオ「私の過去にッ…! 触れるなッ…!!」
紅音「別にいいんじゃないの? 知ってる事なんだしさ」
セオ「貴様ッ!!」

自身の辛い過去に触れられたセオは怒りのあまり高周波ブレードを振り回した。紅音はそれを狙っていたようで、セオの高周波ブレードを弾き飛ばした。武器を失ったセオに、紅音の高周波ブレードが迫る。

千初「セオちゃん! 危ないッ!!」

セオに高周波ブレードが迫ったその時、千初がセオを庇って背中を斬りつけられた。

セオ「千初ッ…!!」

背中を斬られた千初は地面に倒れ込み、動かなくなった。

紅音「あ~らら、間違って君のお姉さんを殺しちゃったよ、初菜」
初菜「別にいいんじゃない? 千初お姉ちゃん口うるさかったし」

仲間を失ったセオは、地面に座り込み、茫然としていた。自分が熱くならなければ仲間を失う事はなかった。再び仲間を失った悲しみに、セオは戦意を失った。するとその時、地面に倒れた千初の腕が動くのが見えた。この事に、紅音と初菜は気づいていない。恐らく、千初が何か行動を起こすのだろうとセオは気づいた。すると、セオは立ち上がり、近くに落ちていた高周波ブレードを取った。セオの戦意は、完全ではないが戻っていた。

紅音「あら? まだやる気なの?」
初菜「ヤケになって私達を道連れにでもする気でしょ」

その時、紅音の足元に丸い球が転がって来た。この丸い球はスタングレネード、眩い光を放ち、視界を奪う特殊弾だ。スタングレネードはまばゆい光を放ち、紅音と初菜の視界を奪った。セオは寸前の所で目を掌で覆っていたので、無事であった。

紅音「うあぁッ! 目がッ!!」
初菜「も~! 何なのよ~!!」

セオはその隙を見逃さず、紅音の鳩尾に蹴りを入れた。一方、千初は初菜の胸倉を掴んで何度も頬をぶった。

千初「悪かったわね、初菜、口うるさくて」
初菜「じょ…冗談だって~」
セオ「千初、何故お前は生きているんだ」
千初「ふっふっふ~こんなこともあろうかと、防弾チョッキを着こんでたの!」

エージェントの任務は危険がつきものである。千初はいつエイリアンに襲われてもいいように、銃弾、レーザー、斬撃に強い特殊防弾チョッキを着こんでいたのだ。

千初「でも、紅音さん剣の腕前はかなりのものらしいですね、後1㎝でも深く入っていれば私、死んでたよ…」
セオ「よかった…無事で本当によかった…」

その後、まだ視界が眩む紅音が立ち上がった。

紅音「中々運のいい人間らしいな、君は」

すると、千初は掴んでいた初菜を紅音の方に投げつけた。初菜をぶつけられた紅音は地面に倒れ込んでしまい、千初はその間にエネルギー銃に特殊弾頭をセットした。

千初「あなた達にはこれでおねんねしてもらいます!」

そう言って千初は特殊弾頭を撃った。発射された特殊弾頭は紅音たちの近くの地面に命中し、中から睡眠剤の入った煙が放出された。紅音と初菜はその煙を吸い込み、眠ってしまった。続けて千初はアンカーショットガンを発射した。この装備はアンカー付きのワイヤーを発射し、様々な場所に引っ掛かる為の装備だが、千初はそのワイヤーで2人を縛り、動けないようにした。

千初「これで一件落着だね!」
セオ「千初…すまない…私は…」
千初「いいのいいの! セオちゃんの過去に何があったかは知らないけど、セオちゃんは私の大切な仲間だから!」
セオ「私が…大切な仲間…?」
千初「勿論! 祥匡社長やファフニールの人達もみんなそう思ってるはずだよ」
セオ「千初…ありがとう…」

その後、千初とセオは紅音と初菜を連れてファフニールに帰還した。紅音と初菜はしばらくファフニールの牢屋に入れられ、無事帰還した千初とセオには、祥匡から任務成功のお菓子が配られた。

祥匡「2人共、無事帰ってきたようだね、よかったよかった」
千初「はつっ! 祥匡社長、こんなにお菓子を頂いてありがとうございます~」
セオ「祥匡社長…私は…」
祥匡「いいのいいの、別に僕も千初くんも怒ってないから、悪いのはあの紅音って人だよ」
セオ「そ…そうですか…」

すると、あまり元気のないセオに対し、千初はシュークリームをセオの口に突っ込んだ。

セオ「んぐっ!?」
千初「セオちゃん、元気ないからこれあげとくね」
セオ「ち…千初…」
千初「美味しいでしょ?」
セオ「ま…まあな…」
祥匡「ささ、沢山あるからもっと食べてくれたまえ」
千初「ありがとうございます! 社長!!」

一方、牢屋にいる紅音と初菜は、特に困った様子は見せてなかった。

初菜「紅音さん、あれ、いっちゃいます?」
紅音「ああ、いつまでもこんな薄汚い所には居られないしな」

そう言って、紅音はヘアバンドに仕込んだ針金を取り出した。そして、鍵穴に針金を入れてピッキングを始めた。紅音は相当手練れていたようで、30秒もしない内に開錠した。

初菜「流石、紅音さんですね~!」
紅音「まあね、あたしにかかればこんなもんよ」

その時、紅音は考えていた、千初とセオは相当面白い人物であると。またいつか、今度は今回以上に本気で戦いたいと。そう考えながら、紅音は初菜と共にファフニールを後にした。

プラムシティでの巨大円盤襲来事件から1週間が経った、あれから目立った宇宙人事件は発生せず、ただ定期的に停電現象が起きるだけに留まっていた。本日、千初とセオはその停電現象の調査に呼び出される事になり、千初は早起きして朝食を取る為、キッチンに向かった。

千初「おはよ~お姉ちゃん」
初子「あら、おはよう千初、ご飯できてるわよ」

この人物は初瀬初子(はつせ はつこ)、千初の姉である。初子は千初と違ってエージェントではなく、ただのOLである。エージェントとして活動する千初の事を少し心配しているが、千初だからきっと大丈夫だと信頼している。千初はテーブルに座り、初子の焼いたトーストをかじった。

初子「千初、今日も仕事あるみたいだけど、絶対に生きて帰ってくるのよ」
千初「うん、大丈夫だよ、私は必ず生きて帰ってくるから」
初子「ふふっ、よろしい、じゃ、私は先に出るわね」
千初「行ってらっしゃーい!」

その後、朝食を済ませ、仕度を終えた千初はファフニールに向かった。社長室ではまだ7時30分であるにも関わらず、既にセオと祥匡がいた。

千初「おはようございます!」
セオ「おはよう」
祥匡「やあ、おはよう、今日もいい朝だね」

その後、千初たち3人はソファーに座り、今回の停電現象について作戦会議を始めた。

祥匡「単刀直入に言うよ、最近多発している停電現象はエイリアン災害なんだ」
セオ「まあ、あれだけ頻繁に発生すればそうだろうな」
祥匡「しかも、その原因となっているエイリアンが問題でね、エレテル星人なんだよ」
千初「エレテル星人って、電気を吸って生きている宇宙人ですよね?」
祥匡「そうなんだよ…あの海外で発生した1ヶ月間の長期停電の原因となった宇宙人さ」

海外で発生した1ヶ月間の長期停電とは、エレテル星人が発電所の電気を頻繁に吸っていた事で発電所の機能が故障し、かなりの広範囲が1ヵ月間停電したと言う事件である。この事件により、エレテル星人は危険な宇宙人として認識されるようになった。

祥匡「つまりだ、このプラムシティにいるエレテル星人を抹殺するのが今回の任務だ」
セオ「了解です、祥匡社長」
祥匡「頑張ってくれたまえよ、市民からもテレビがいい所だったのに停電のせいで見逃したと怒りの声が飛んでるからね」
千初「それは許せませんね…では、早速行ってまいります」

そう言って2人はスカイフェンリルで出発したが、その目的地はプラムシティの端にある森の中であった。エレテル星人は森の中と言う誰も寄り付かない場所に住み着き、プラムシティの発電機からこっそりと電気を吸い取っていたのである。千初とセオは森の入り口にスカイフェンリルを止めると、武器を装備し、森の中に入って行った。

千初「う~…森の中って嫌だな~…」
セオ「何故だ? 姿を隠すには丁度いいと思うのだがな」
千初「だってぇ…虫とかいるじゃん…」

その時、千初の頭の上に毛虫が落ちて来た頭の上に違和感を感じた千初は頭を振ると落ち葉の上に毛虫が落ちた。それを見た千初は悲鳴を上げ、セオに抱き着いた。

千初「ギャーッ!! 毛虫だぁぁぁッ!! 嫌ぁぁぁッ!!」
セオ「お…落ち着け、あれはただの蛾の幼虫だ」
千初「ヤダーッ!! 気持ち悪いーッ!!」

すると、千初の悲鳴に呼び寄せられたのか、何者かがやって来た。

セオ「千初! 何かが来る!」
千初「何? 何? 大きな芋虫の怪獣?」
セオ「いいから落ち着け」

千初たちの前に現れたのは、抹殺対象であるエレテル星人であった。エレテル星人は黄色い体色の半魚人みたいなエイリアンで、手と脚には鋭い爪を持ち、これで対象を引き裂く。

千初「エレテル星人…!!」
セオ「こいつを殺せばミッションは完了だな」

しかし、エレテル星人の様子はおかしく、自ら攻撃は仕掛けてこなかった。それを怪しく思った千初は、セオを制止した。

千初「待って、セオちゃん、あの宇宙人何かおかしいよ」
セオ「おかしいって、何が?」

すると、先ほど現れたエレテル星人とは別のエレテル星人がもう1人現れた。手にはショルダーバック型の装置を持っている。

セオ「もう1体現れた!?」
千初「あなた達の目的って一体何なの?」

すると、2人目のエレテル星人は、ショルダーバッグ型の装置を起動させた。

エレテル星人「地球人よ、私達の言葉が通じてるか?」
千初「え? あ、はい」
セオ「なるほど、その装置は高性能な翻訳装置か…」
エレテル星人「そうだ、君達との会話の為に翻訳装置を使わせてもらった」
千初「じゃあ、聞きますね、あなた達は何故この街に住み着いているんですか?」
エレテル星人「私達の故郷であるエレテル星は、凶悪なヒューマノイド型エイリアンに滅ぼされた」
セオ(凶悪なヒューマノイド型宇宙人!?)
エレテル星人「そして、友人である彼と共に漂着した先がこのプラムシティだった」
千初「だから、この街に住み着いていたんですね…」
エレテル星人「私達は電気を吸わなければ生きていけない、それが君達にとって迷惑な事も知っている」
セオ「確かに、迷惑な行為だな、人間は電気がないと生きていけないのだから」
エレテル星人「なら、私達をここで殺せばいい、君達はその為に来たのだろう?」

彼らの話を聞いた千初は、どうすればいいのか迷っていた。自分達はエイリアンを抹殺するエージェントの一員だ、だが、彼らは望まずにこの地球にやって来た被害者、ここで彼らを殺せばミッション完了ではあるが、それが本当に正義なのか。千初は、どうすればいいのか迷っていた。

???「人間は馬鹿だね、迷惑なら殺せばいいだけだろ」

そう言って木の上から姿を現したのは、赤紫の髪をツーサイドアップにした少女であった。赤紫の瞳の美しい顔の彼女は、騎士が持つような剣を装備していた。

セオ(あいつは…!!)
エレテル星人「お前は…! 我々の故郷を滅ぼしたヒューマノイド型エイリアン!!」
???「やれやれ、下等なエレテル星人にもまだ生き残りがいたか、死になよ」

そう言って彼女は2人のエレテル星人の胴体を切断し、殺害した。

千初「何て事を! その人達に悪意はないのに…!!」
???「でも、邪魔なんだろう? 邪魔なら殺さなくっちゃ、ね?」

すると、セオが怒りのこもった声で彼女に話しかけた。

セオ「私の仲間も…邪魔だったって事か!?」
???「あー、あんたはオルトロスのエージェントか、生きてたんだね、てっきり死んだと思ってたよ」
セオ「貴様ぁぁぁッ!!」

そう言ってセオは高周波ブレードを駆り、彼女に突撃して行った。

千初「セオちゃん!!」
???「やれやれ、このレディス・アプリコット様に向かってくるとは、命知らずだね…」
セオ「黙れぇぇぇッ!!」

仲間の仇であるエイリアンを見つけたセオ、レディスと名乗ったそのエイリアンの少女は、見た目こそ可愛らしい人間の少女の姿をしているが、実際はセオの仲間を殺した悪魔の様なエイリアンなのだ。セオは仲間の仇を討つ為、剣を走らせた。

セオ「レディス! 貴様は今ここで私が討つ!!」
レディス「やれるものならやってみなよ、あんたもお仲間の所に送ってあげる」
セオ「その減らず口、二度と叩けなくしてやる!!」
千初「待って! セオちゃん!!」
セオ「千初は下がってろ! これは、私とあいつの問題だ!!」

そう言ってセオは高周波ブレードを振り、レディスを攻撃した。だが、レディスはその攻撃を最小限の動きで回避していた。現在、セオは怒りに燃えてはいるが、剣筋は確かであり、並大抵のエイリアンなら確実に倒せている攻撃である。その攻撃を、レディスは全て最小限の動きで回避していた。そして、レディスは反撃の類を一切していなかった。

セオ「何故反撃をしない!?」
レディス「私が本気出したらあんたぐらいすぐ死んじゃうもの、そんなのつまんないでしょ?」
セオ「貴様…! どこまで私を馬鹿にすれば気が済む!!」
千初(セオちゃん…落ち着いて…)

セオは尚もレディスに攻撃を続けた。攻撃を見切られぬよう、突きや蹴り等も入れたが、レディスはどの攻撃も軽々と回避していた。まるで彼女には、全ての攻撃が見えているかのように。どんなに攻撃しても当たらない為、セオは疲れが見え始めていた。

セオ「ハァ…ハァ…くっ…! 何故攻撃が当たらない…!!」
レディス「あんたの攻撃がトロいからよ、あたしには全部止まって見えるわよ」
セオ「くっ…! 私を弄んでいたと言う事か…!!」
レディス「そゆこと、ねぇ、もう飽きたから、殺していい?」

すると、レディスは騎士の持つ様なデザインの剣を手に取った、そして、セオに攻撃を仕掛け、その攻撃は左肩に命中した。

セオ「ぐあっ!!」

セオはきちんと回避行動は取ったが、レディスの攻撃があまりにも早すぎた為、命中したのだ。おまけにレディスは獲物を少しずついたぶって殺すのが趣味で、セオの右の二の腕、左脚の太もも、右足のふくらはぎ、そして左の横腹に攻撃を命中させた。これだけの攻撃を食らったセオは遂に膝を付き、苦しんでいた。

レディス「あんれ~? もう終わりかな?」
セオ「お前はあの時もそうだった…! もう戦意を失っていた私の仲間を少しずついたぶって殺した…! 私の目の前で…!!」
レディス「だから何よ、獲物は殺される為に生きてるんでしょ?」
セオ「命を…! 何だと思っているんだ…!!」
レディス「うるっさいな…黙れよ…」

その時、千初はスタングレネードを投げ、辺りに眩い光を発生させた。光でレディスの目が眩んでる間に千初はジェットパックでセオを掴み、上空に飛翔した。

千初「セオちゃん! 大丈夫!?」
セオ「気を付けろ…千初…奴は…空を飛べる…」
千初「え?」

千初の背後にはいつの間にかレディスが現れており、レディスは千初が背中に背負っていたジェットパックに蹴りを放ち、墜落させた、千初はジェットパックが爆発する寸前にジェットパックを切り離した、切り離したジェットパックはそのまま墜落し、爆発を起こした。一方の千初はアンカーショットガンを撃ち、アンカーを木の枝に引っ掛けて無事生還した。

千初「ふぅ…死ぬかと思った…」

しかし、レディスは尚も千初たちを追って来た。

レディス「まさかまだ生きてたとはね…」
千初「え~!? まだ追ってくるの~!?」

その時、セオが傷だらけの身体に鞭打って立ち上がった。

セオ「千初…お前だけでも逃げろ…」
千初「え…? 何言ってるの! セオちゃんを置いて逃げられる訳ないじゃない!!」
セオ「いいから逃げろ! お前だけなら生き残れる可能性もある!!」
千初「嫌! セオちゃんを置いて逃げたくない! セオちゃんは、私の大切な仲間だから!!」
セオ「千初…」
レディス「ふふふ…それが人間の友情か…安心しな、2人同時に地獄に送ってやるからさ」

その時、レディスの前に現れた2人の女性がいた。

千初「紅音さん! それに初菜!!」
紅音「暇つぶしに停電の原因であるエイリアンでも殺そうと思って来てみれば、もっと面白いエイリアンに出会えるなんてね」
初菜「それにしても…お姉ちゃんたちなにやってんの?」
レディス「フフフ…なるほど、お仲間参上って所かしら?」
紅音「は? 何言ってんの? あんたみたいな奴に私の獲物を取られたくないから助けたんだけど?」
レディス「え…?」
初菜「そう言う事! とりま、お姉ちゃんはその死にかけの人を連れて逃げて」
千初「うん! 分かった!」
セオ「紅音…例は言わないぞ…」

そう言って千初たちはその場を立ち去った。その後、紅音はレディスと対峙した。

紅音「あたしさ、一応あんたの事知ってんのよ、オルトロス壊滅させたエイリアンでしょ?」
レディス「ふ~ん、あたしったら有名人なのね」
紅音「悪い意味でね、だから、ここであんたを始末してあげる!」

紅音は高周波ブレードでレディスに攻撃を仕掛けた。セオの攻撃は軽々と回避していたが、紅音の攻撃はかなりのスピードだったらしく、剣で受け止めた。

レディス(こいつ…!)

紅音は続けて連続で何度も攻撃を仕掛け、レディスを追い込んでいた。すると、レディスは後方に跳び、攻撃の嵐から抜け出した。

レディス「貴様、名を何と言う!」
紅音「あたしは紅音、皇紅音」
レディス「紅音…今度会った時は、覚えていろ!!」

そう言ってレディスは空を飛んで立ち去った。

初菜「典型的な負け台詞言って帰って行きましたね、紅音さん」
紅音「そうだね、でもあいつ、今回は本気出さなかっただけで、実際はかなりのものだよ」
初菜「らしいですね、オルトロスを壊滅させるぐらいですし」
紅音「まあね、それにあのセオって奴、無事でいてくれればいいけど…」

その後、紅音と初菜は森から立ち去った。一方、無事にファフニールに帰還した千初とセオだったが、セオはかなり深い傷を負っており、ファフニールの医療班による懸命な治療が行われていた。その事を心配していた千初の前に、社長の祥匡が現れた。

祥匡「セオくんはね…ファフニールに入隊する際にある事を言っていたんだ…」
千初「ある事?」
祥匡「うん、仲間の仇であるエイリアンを必ずこの手で抹殺するとね…」
千初「それが…セオちゃんの一番の目的なんですね…」
祥匡「そうだね…まあ、今はセオくんの無事を祈ろう」
千初「そう…ですね…」

強敵、レディスの前に完膚なきまでに叩きのめされたセオ、千初は彼女の無事を祈りつつ、今日は自宅に帰るのであった。

ようやく仲間の仇を見つけたセオであったが、力及ばず、完膚なきまでに叩きのめされてしまい、セオは現在ファフニールの医務室にて入院中である。そんな中、セオはオルトロスの仲間達の夢を見ていた。仲間達との楽しかった思い出と、オルトロス壊滅の様子が流れ、特にオルトロス壊滅の際の仲間達の恐怖に怯えた悲鳴と、レディスに殺された仲間達の無残な死体の様子はセオのトラウマを呼び戻し、セオは当時の恐怖が甦り、夢から目を覚ました。

セオ「…夢か」

夢から覚めたセオは、服を汗で濡らし、息を荒げていた。セオにとってオルトロス壊滅の件は思い出したくない出来事であり、今でも思い出すと心臓の鼓動が早くなってしまうのである。

セオ「…次こそは仇を取る」

そう言ってセオは濡れた服を脱ぎ、近くの籠に入っていた綺麗な服に着替えた。一方その頃、千初はセオのいない分、エージェントとしての任務を遂行していた。流石に一人では心細いだろうと、何故か初菜も千初を手伝っていた。今回のミッションは、イカの様な見た目のエイリアンの討伐である。対象のエイリアンは高く跳ね、千初の追っ手から逃げていたが、先回りしていた初菜の攻撃を食らい、足を何本か切断された。切断面からは白い体液を流れ出たが、エイリアンはすぐさま跳んで逃げた、

千初「初菜! 逃げたよ!!」
初菜「分かってる! 手伝ってあげてるんだからごちゃごちゃ言わないで!!」
千初「何それ…」

高く跳んで逃げるエイリアンに対し、初菜はジェットパックで高く上昇した。そして、超硬質日本刀でエイリアンの胴体を横に切断し、エイリアンを倒した。

千初「やったね!」
初菜「まだ! お姉ちゃん後ろ!!」

千初の後ろには、もう一体のエイリアンが潜んでいた。エイリアンは千初を触手で斬り裂こうとしたが、初菜の助言によって敵の存在に気付いた千初は、すぐさま振り向き、エネルギー銃でエイリアンの身体を撃ち抜いた。胴体を撃ち抜かれたエイリアンは地面に倒れ込み、死亡した。

千初「ふぅ…危なかった…」
初菜「お姉ちゃんって、どこか抜けてるよね~」
千初「むぅ…酷~い」

その後、千初と初菜はファフニールに帰還し、社内の通路にある自販機の前でくつろいでいた。

千初「お疲れ様、はい、これミックスジュース」
初菜「ありがと」

2人はミックスジュースを飲みながら、ある話をしていた、千初の仲間であるセオの事である。

千初「セオちゃん、明日には退院できるって」
初菜「それはよかったね、私もお姉ちゃんのお手伝いするの面倒だったし」
千初「面倒って…こういう仕事だから仕方ないでしょ」

すると、初菜は千初にある事を聞いた。

初菜「…ねぇ、お姉ちゃんって、セオって人の事どれだけ知ってるの?」
千初「え? そうだね…剣を使うかっこいい女の人って事かな」
初菜「それだけ?」
千初「え? それだけって…後は元オルトロスのエージェントって事とかかな」
初菜「お姉ちゃん、あんまりあの人の事知らないんだね」
千初「まあ、セオちゃんはあまり自分の事を語らないからね」
初菜「一緒に仕事しててそれぐらいなんだね、まだ紅音さんの方がセオさんの事よく知ってるよ」
千初「ん…」
初菜「お姉ちゃんも、セオちゃんセオちゃん言ってないで、もっとあの人の事知ってあげたらどうなの?」

初菜は空き缶をゴミ箱の中に入れた。

初菜「もし死んじゃったら…二度とその人の事を知れなくなるんだよ、明日退院するんだったら、色々と聞いておく事だね」

そう言い残し、初菜は去って行った。千初は初菜の言った事が図星だと実感した。一緒に仕事を始めてもうすぐ1ヵ月が経過するのにも関わらず、自分はセオの事を何も知らない、何も知ってない。千初は明日、セオに色々と聞く事にした。そして日付が変わって翌日、セオは無事退院し、ファフニールの社長室に姿を現した。

祥匡「セオくん、もう体は大丈夫かい?」
セオ「はい、ご心配をおかけしました、本日よりチーム銃×剣として活動させていただきます」
千初「おかえり、セオちゃん」
セオ「ああ、またよろしく頼む」
千初「…ねえ、セオちゃん、色々と聞かせてもらっていい?」
セオ「ああ、何でもいいぞ」
千初「じゃあ、あのエイリアンとの関係を教えてもらっていい?」
セオ「レディスの事か…奴は…私の仲間達を痺れ罠に嵌め、身動きが取れない状況の仲間達を1人ずつ剣で弄びながら殺したんだ…」
千初「その時…セオちゃんは…?」
セオ「私は、密室に閉じ込められ、モニターでその様子を見せられた…」
千初「酷い…」
セオ「その後、奴は私の仲間全員の命を奪った後、私を解放した、その時私は誓った、必ず奴を殺すと」
千初「じゃあ、もしレディスを倒した後、セオちゃんはどうするの?」
セオ「その後も変わらず、銃×剣として活動するさ」
千初「じゃあ、エイリアン災害が終わったら?」
セオ「そうだな…それはまたその時決めよう」
千初「そうだね」

祥匡「じゃあ、早速本日の任務を始めようか?」
千初&セオ「了解!」

再びチーム銃×剣のメンバーが揃った。銃×剣はエイリアン災害が終息を迎えるまで活動する。その日がいつ来るかは分からないが、彼女たちは活動する。人々の命と平和を守る為、それが、エージェントの役目だから。

セオが戦線に復帰し、再び銃×剣として活動を再開した千初とセオ、本日はプラムシティに潜伏していたエイリアンギャングを討伐していた。エイリアンギャングは主に半魚人タイプのエイリアンで構成され、高い身体能力で相手を圧倒する戦法を得意としていた。千初とセオは街中に逃走したエイリアンギャングを追っていた。ちなみに、街中には避難勧告が出されている為、街に人々はいない。なので、千初とセオは心置きなく戦う事ができるのである。千初は狙いを定めてエネルギー銃を撃ってエイリアンを倒し、セオは一気に接近して高周波ブレードでエイリアンを斬り裂いていた。千初の銃の腕前とセオの剣の腕前は非常に高く、この2人ならエイリアンギャング程度の相手は敵ではなかった。その時、ビルの上から千初にライフル型の銃を構えるヒューマノイド型のエイリアンがいた。彼はレディスの部下のエイリアンで、名はスナイプと言う。そんな彼の目的は千初の血液を採取する事である。

スナイプ「…あの女がレディス様の言っていた初瀬千初か…」

スナイプはライフル型の特殊銃を千初に向けた。このライフル銃は一種の注射器の様な銃であり、射出したニードルで一気に血液を吸い、そのニードルを一瞬の内にライフルにしまう事ができる。この銃を開発したのはレディスの母星で、早い話がエイリアンの超技術と言ったところである。スナイプはライフル銃を撃ち、ニードルを千初の首筋に命中させた。ニードルは一瞬の内に注射器一杯程度の血液を採血し、ほんの一瞬でニードルはライフル銃に戻った。撃たれた千初本人は何かチクッとしたな程度しか感じておらず、すぐさま任務に戻り、敵と戦っていた。その後、スナイプは携帯型ワープ装置を使い、レディスの下へ向かった。スナイプは千初から採取した血液をレディスに手渡した。

レディス「お疲れ、スナイプ」
スナイプ「ありがとうございます、レディス様」

レディスは筒形の透明な装置の近くへと向かった。この装置はクローン製造装置で、レディスの母星の技術で造られたものである。装置の中は緑色の培養液で満たされており、この中に一定量の血液を入れると、約3分でクローンを生み出すのである。

レディス「スナイプ、あんたのおかげで面白いショーが見れそうだよ」

そう言ってレディスは装置の上から千初の血液を入れた。すると、血液は少しずつ人間の身体を模っていき、約1分でマネキン程度の人間が生み出され、約2分で髪の毛や爪が生え始めた。そして、約3分で完璧な千初のクローンが誕生した。だが、髪の毛は漆黒の黒髪で、瞳は血のように赤い目をしていた。この装置ではやろうと思えば完璧なクローンが作れるが、今回はレディスの趣味で完璧に一緒ではないクローンを作る事になったのだ。レディスは装置の入り口を開け、千初のクローンを外に出した。すると、緑色の培養液と共に千初のクローンが外に出た。千初のクローンは生まれたばかりで体には何も身に纏ってないが、体は完全に大人の体であり、身体能力なども千初と同じである。すると、千初のクローンが生まれて初めて第一声を上げた。

???「…私は何をすればいい?」
レディス「そうだねぇ…まずはあんたの名前を決めようか…あいつが千初だから…ツチハでいいか」
ツチハ「ツチハ…それが私の名前か」
レディス「そうだよ、で、あんたはこいつらを殺してくる、いいね?」

ツチハはモニターに映った千初とセオを見ると、何か感じる事があったのか、しばらくじっと見つめていた。

ツチハ「…あいつを殺せばいいのか」
レディス「そうだよ、で、これがあんたの装備」

レディスが用意した装備は、銃と剣が一体になった武器、ガンソードと、黒色の下着、そして白のブラウスと黒のロングスカートであった。ツチハはその場でそれらの装備を身につけると、レディスが用意した転送装置を使い、千初とセオの下へ向かった。一方の千初とセオはエイリアンギャングの残り1人と戦っていた。残り1人のエイリアンギャングは飛び跳ねて千初たちの攻撃をかわしていたが、突然後方から何者かに胴体を両断され、絶命した。

千初「セオちゃんがやったの?」
セオ「いや、私ではない」
ツチハ「やったのは私だ、初瀬千初、そして、セオドーラ・クロフォード」
セオ「何だあの女は…!?」
千初「私によく似ている…いや、髪と目の色と服の色以外は私だ…!」
ツチハ「似ているのも無理はない、何故なら私は、貴様のクローンだからだ」

その言葉に、千初とセオは驚きを隠せずにいた。地球の技術は進歩したが、あそこまで完璧なクローンを生み出す技術はない、それに、クローンの製造は法律で禁止されているのである。

セオ「どうせレディスがお前を生み出したんだろうな」
ツチハ「私の名はツチハ、レディスが生み出した最強の兵器だ」
千初「兵器って…あなたも私と同じ命ある存在なのに…」
ツチハ「そんな事は関係ない、私は戦う為に生まれた存在だからな…!」

そう言ってツチハはガンソードからブレイクレーザーを放った。ブレイクレーザーは一発で大爆発を起こすレーザーである。ブレイクレーザーは千初とセオの近くに着弾すると、大爆発を起こした。その爆風に2人は吹き飛ばされたが何とか地面に着地した。その間、ツチハはガンソード銃口の下面に装着されたブレードでセオを攻撃した。セオは高周波ブレードで受け止めたが、ツチハは力任せにセオを押し返した。そして、セオの腹に蹴りを食らわし、吹き飛ばした。ツチハは千初のクローンではあるが、戦闘能力は千初より遥かに上なのである。千初はエネルギー銃でツチハを攻撃したが、全てガンソードのブレードで切り払われてしまった。そして、ツチハはブレイクレーザーを放って攻撃し、千初は回避したものの、爆風で再び吹き飛ばされた。そして、ツチハは地面に倒れ込んだ千初に銃口を向けた。

ツチハ「これでチェックメイトだな! 初瀬千初!!」
千初「ッ!!」
セオ「や…やめろ…!!」

千初に銃口を向けたツチハはガンソードのトリガーを引こうとした。しかし、トリガーを引こうとしたその時ツチハは激しい頭痛に見舞われた。

ツチハ「ぐあぁぁぁッ! 何だこの頭痛はッ!?」

ツチハは何とか耐えてトリガーを引こうとしたものの、あまりの痛みに、ツチハは地面に膝を付いた。その時、ツチハの耳に付けられた通信機にレディスから通信が送られてきた。

レディス「ツチハ、あんたはまだ生まれたばかりだから無理はしない方がいい、早く帰ってきな」
ツチハ「くっ…! 了解…」

ツチハは立ち上がり、千初とセオに一言返した。

ツチハ「次こそは必ずお前達を殺す」

そう言ってツチハはビルの上まで跳び、姿を消した。

セオ「何て奴だ…私達がこうも簡単に…」
千初「確かに…でも、あの子…悪い子ではなさそうなんだ…」
セオ「千初…」

千初とセオとの戦いで突然頭痛を訴えたツチハ、レディスはツチハの遺伝子情報などをチェックした。すると、意外な事実が分かったのである。

レディス「なるほどね…クローンがオリジナルの人物と戦うと、拒絶反応を起こすようにDNAにプログラムされていたのか…」
スナイプ「DNAにプログラム、ですか…? そんな事一体誰が…?」
レディス「それは私達の科学力でも解明不可能さ、多分、地球人が言う所の神様と言ったところじゃないかな?」

その会話を聞いていたツチハは、レディスにある事を聞いた。

ツチハ「レディス…それでは私は奴らとは戦えないと言う事か?」
レディス「いや、大丈夫さ、この程度の遺伝子情報、私達の科学力をもってすれば容易く書き換える事ができる」
ツチハ「なら安心した、奴らとは必ず決着を付けなければならないからな」
レディス「頼んだよ、ツチハ」

その頃、千初は自分の遺伝子から生まれたクローンであるツチハについて色々と考えていた。彼女は自分の遺伝子から生まれ、自分を殺そうとした。だが、あの時見せた謎の頭痛、あれは恐らく自分を殺せないと言う拒絶反応だ、ならば、戦わないでもいい方法があるのではないかと。しかし、この事について祥匡に伝えると、襲ってくるなら戦わないといけない、もし手を抜いたら被害が増える可能性があると言われてしまった。千初は、どうすればいいのか分からないまま、仕事帰りの道で一人、ずっと悩んでいた。そうこうしていると、自宅に到着し、玄関の扉を開けた。

千初「ただいま…」
初子「あらおかえり千初、元気ないわね」
千初「うん…それがね…」

千初は姉である初子に今日の出来事を伝えた。にわかには信じられない出来事に、初子も驚いていたが、初子は千初に自分の思っている事を伝えた。

初子「私はエージェントじゃないからよく分からないけど…、私が千初の立場だったらきっとあなたみたいに悩んでいたと思う」
千初「ねえ、お姉ちゃん…私…どうすればいいかな…?」

その問いに、初子はしばらく考えた、何度も何度も納得のいく答えを考え、そしてようやく答えを見つけた。

初子「これが正しいかは分からないけど、説得してみるのはどう?」
千初「説得…?」
初子「そう、少なくとも、あなたと同じ遺伝子から生まれた存在なら、うまく行く可能性はあるかもしれないわ」
千初「説得…か…うん、やってみるよ、お姉ちゃん」
初子「ふふふ、少しは役に立ててよかったわ、じゃあ、ご飯食べよう」
千初「うん!」

千初は姉との話し合いにより、一つの答えを見つけた。一方で、千初の仲間であるセオも悩んでいた。ツチハは危険な存在ではあるが、千初と同じ遺伝子から生まれた存在、それを攻撃する事は抵抗があったのである。一人で考え事をするセオに対し、祥匡は優しく話しかけた。

祥匡「あの千初くんのクローンの事かい?」
セオ「…はい」
祥匡「僕がこんな事を言うのもなんだけど、相手が危険な存在なら、戦わなくちゃいけない、それが何であろうと」
セオ「分かっています、でも…」
祥匡「そう簡単には受け入れられないよね…相手はクローンと言えど人間だものね…」

二人は今まで以上の難題に、頭を悩ませていた。エイリアン相手なら倒すと言う方法で対処ができる。だが、今度の相手はエイリアンによって生み出された人間、エイリアンとは対処の方法が違うのである。その時、社内にエイリアン反応警報が鳴った。

セオ「エイリアン…!?」

セオと祥匡が社長室に入り、モニター画面を見ると、街中を20mほどの黒い巨大人型兵器が歩いていた。卵に手足が付いたようなデザインをしたその兵器は、かつてヨーロッパに出現したオクトタイプエイリアンの物である。重装甲が売りのその機体は、多数の兵器を装備しており、非常に強力な兵器なのである。

祥匡「まいったね、千初くんはもう帰っちゃったし…」

その時、モニターの回線に割り込んできた者がいた、その人物は、紅の鮮血の紅音と初菜である。

紅音「やあ、困ってるようだね、あたしらが助けてあげようか?」
セオ「またお前達か、と、言いたいところだが、今は助けてもらうしかないようだな」
初菜「おっけー! 任せといて!」

そう言って通信は切断され、しばらくすると巨大兵器と交戦する彼女たちの姿が見られた。紅音と初菜はそれぞれ高周波ブレードと超硬質日本刀で戦い、主に関節部を狙って攻撃していたが、関節部も固い装甲で覆われていた。以前出現した個体は装甲がなく、関節部を破壊されて倒された。恐らく、その経験から装甲を追加したのであろう。紅音と初菜は機動兵器の指から放たれるフィンガーバルカンを回避し、隙を見つけては関節部を攻撃していたが、全く効果がなかった。彼女たちが戦っている様子を見ていた祥匡とセオは、このままでは彼女たちが死んでしまうと感じていた。そして、祥匡はセオにある提案をした。

祥匡「セオくん、千初くんの荷電粒子ライフルを持っていってやってくれ」
セオ「分かりました、では、行ってきます」

セオは荷電粒子ライフルをスカイフェンリルに積むと、ファフニールの屋上からスカイフェンリルを急発進させた。その頃、紅音と初菜は機動兵器の重装甲に押され、防戦一方であった。何とか弱点を見つけようと頑張っていたが、見つける事ができず、機動兵器が無尽蔵に撃ってくるフィンガーバルカンを回避し続けていた。

初菜「紅音さぁん…このままじゃまずいですよぉ…」
紅音「チッ、偉そうな事言って出てきたはいいけど、こりゃ少しヤバいかもね…」

機動兵器はなおもフィンガーバルカンを撃ち、紅音と初菜を攻撃した。その時、セオが到着し、紅音たちの前にやって来た。その手には、千初の荷電粒子ライフルが握られていた。

紅音「セオ、やっと来てくれたね、で、それは何?」
セオ「荷電粒子ライフルだ、これで奴を破壊する事が可能なはずだ」
紅音「で、それをあたしに撃てってわけね、任せて!」

紅音は荷電粒子ライフルを手に取ると、銃口を機動兵器に向け、トリガーを引いた。荷電粒子ライフルからは強力なビームが放たれ、機動兵器の胴体を貫いた。機動兵器は仰向けに倒れ込み、大爆発を起こした。セオたちは機動兵器が爆発する寸前にその場を離れたからいいものの、かなりの爆発が発生した為、プラムシティにはかなりの被害が発生した。ちなみに、例に漏れず市民は全員避難済みである。

初菜「派手に爆発しましたね~」
紅音「分かる」
セオ「まあ、ここで奴を倒しておかなければもっと被害が出たから、よしとしよう」

その時、セオたちの前に1人の人物が現れた。その人物は、千初のクローンであるツチハであった。

セオ「お前は、ツチハ…!」
ツチハ「やあ、また会えて嬉しいよ」
紅音「あいつが噂の千初のクローンか」
初菜「まるで怒った時のお姉ちゃんだね」
ツチハ「さて…殺される準備はできたか?」

そう言ってツチハはガンソードを手に取った。

セオ(くっ…! 戦うしかないのか…!!)

オクトタイプエイリアンの機動兵器を破壊したセオたちであったが、彼女たちの前に千初のクローンであるツチハが現れた。ツチハはセオたちに戦いを挑む為に現れたようで、少し離れた場所からも伝わるほどの殺気を見せつけていた。それに対し、セオ、紅音、初菜の3人は武器を取り、身構えた。

ツチハ「さて…殺すか…」

ツチハはそう呟いてガンソードをセオたち目掛けて発砲した。ガンソードから放たれたブレイクレーザーは地面に着弾し、大爆発を起こした。セオたちは着弾する少し前に後方に跳んだ為、被害はなかったが、ツチハはガンソードからブレイクレーザーを放ち続けた。その度に街の被害は増え続け、瓦礫が飛び散っていた。

紅音「くっ! このままでは埒が明かない! 突っ込むよ! 初菜!」
初菜「りょーかい!」

紅音と初菜はツチハに一気に接近し、斬りかかったが、ツチハは軽い動きで攻撃を回避した。その直後、ツチハは初菜に一気に接近し、ガンソードのブレードで連続攻撃をした。その攻撃を、初菜は超硬質日本刀で防御をしていたが、あまりの攻撃のスピードに防戦一方であった。

ツチハ「お前…千初に似た匂いがする…」
初菜「ふざけた事言わないでよね! 私はお姉ちゃんよりいいシャンプー使ってるんだから!」

その時、ツチハは初菜の超硬質日本刀をガンソードのブレードで弾いた。武器を失った初菜に対し、ツチハはガンソードを振り下ろし、初菜の体を斬り裂いた。初菜は攻撃が来る寸前に回避行動を取った為、モロには当たらなかったが、ガンソードのブレードは切れ味が高く、かなりのダメージを負った。初菜は地面に倒れ込み、痛みに苦しんでいた。

初菜「うぅ…痛い…よぉ…」
紅音「初菜! くっ! 貴様ァッ!!」

仲間を傷つけたツチハに対し、紅音は攻撃を仕掛けたが、ツチハはその攻撃を全て軽々と回避していた。まるで未来を予測しているかのように回避し、紅音の攻撃は全て回避され、決定打にはならなかった。

ツチハ「ウザいよ…お前…」

するとツチハはスカートの中の太ももの辺りに装備した小型ナイフを取り出し、紅音の腹部に突き刺した。

紅音「がはッ!!」

ツチハが突き刺した小型ナイフを抜くと、紅音は地面に倒れ込んだ。その様子を見ていたセオは、あまりの強さに恐怖さえ覚えた。

セオ「…化け物か…?」
ツチハ「さて…次はお前だな、千初の相方…」

セオは紅の鮮血の2人を一方的に追い詰めたその強さに恐怖を覚えたが、ここで自分が負けたら多くの人々が傷ついてしまう、それだけは何としても避けなくてはならない為、高周波ブレードを取り、立ち向かった。セオはツチハに対し、的確に剣を振って攻撃を仕掛けたが、ツチハはガンソードのブレードで攻撃を全て受け止めた。

セオ(こいつにはどんな攻撃も当たらないと言うのか!?)
ツチハ「お前らの攻撃は遅すぎる、あくびが出てしまうよ」

そう言ってツチハはセオの腹部に蹴りを食らわした。蹴りを食らったセオは地面に倒れ込み、そのセオに対し、ツチハは銃口を向けた。

ツチハ「…終わりだな、千初の相方…」

その時、ツチハ目掛けてレーザーが数発飛んできた。ツチハはガンソードのブレードで全て切り払った。その後、ツチハはレーザーが飛んできた先を見た。そこに立っていたのは、銃口を向ける千初であった。

千初「…セオちゃんは…やらせない…!」
ツチハ「やっと来たか…初瀬千初…」
千初「セオちゃん…紅音さん…初菜…」

辺りを見渡し、仲間がツチハにやられている事を知った千初は、真っ先にバディを組んだ仲間であるセオに駆け寄った。すると、セオは苦しそうな声で千初にこう伝えた。

セオ「千初…奴は危険だ…荷電粒子ライフルを使え…」
千初「駄目、今回は荷電粒子ライフルは使わない」
セオ「そんな事を言って勝てる相手じゃない…」
千初「銃は自分を守る為にあるの、戦う為にあるんじゃない」

すると、千初は立ち上がり、ツチハに銃口を向けた。

ツチハ「やる気か? たった一人で…」
千初「うん、でも、私はあなたを殺さない! あなたの好きな戦いと言うやり方で対話をする!」
ツチハ「甘ちゃんだな! お前は…!!」
千初「甘ちゃんでいい! 私は、妹の様な存在であるあなたを殺せないから!!」

千初はエネルギー銃を鈍器のように使い、ツチハとの格闘戦に挑んだ。ツチハはガンソードのブレードで格闘戦をしたが、エネルギー銃は壊れる事なくブレードを受け止めた。

ツチハ「驚いた、思ったより丈夫なんだな…」
千初「ファフニール製のエネルギー銃は万が一の時を考えて格闘戦ができるぐらい丈夫に作られているの!」

ツチハはガンソードを振り回し、攻撃を仕掛けたが、千初は全て回避し、逆にエネルギー銃での攻撃を的確に当てていた。今の千初は以前と違い、ツチハと対話をすると言う目的があった。その目的を持ち、覚悟を決めた今の千初は、例え自分以上の力を持ったクローンとも対等に戦えるのである。そして、千初はツチハの攻撃をかわし、頭をエネルギー銃で殴った。頭を殴られたツチハは気を失い、地面に倒れ込んだ。ツチハが次に目を覚ました時、彼女がいた場所は千初の自宅であった。恐らく千初の自室なのであろう、部屋にはベレッタやグロッグと言った数々の拳銃が飾られていた。そしてツチハは身動きが取れないよう、椅子にアンカーショットガンのワイヤーで体を縛られていた。更に千初の自室には外出しているのかどうか知らないが、誰もいなかった。だが、約1分後に千初が部屋に入って来た。

千初「あっ、目を覚ました、セオちゃーん! お姉ちゃーん! 起きたよー!」

千初がセオと初子を呼ぶと、2人が千初の自宅に入って来た。そして、3人が千初の自室に入り、ツチハの方をじっと見ていた。

ツチハ「…何のつもりだ」
千初「いや、まだツチハちゃんをお姉ちゃんに会わせてなかったから…」
セオ「もし暴れたらいけないから、体は縛らせてもらったがな」
ツチハ「ふざけるな! 私をコケにする気か!? それに、私をちゃん付けするな!!」
初子「まあまあ、落ち着いて、クッキーあるから」

そう言って初子はツチハの口にクッキーを入れた。ツチハは吐き出すのももったいなく、そのままクッキーを食べた。

初子「どう? おいしい?」
ツチハ「…ま、まあな…」
初子「ふふ、よかった」
千初「それじゃあ、早速話しよっか?」
ツチハ「話…だと…?」
千初「うん、凄く大事な話だよ」

千初に敗北し、捕虜となったツチハ、彼女は千初の自室に連れてこられ、千初と話をする事になった。だが、捕虜であるツチハに対し、始まった話は平凡な話であった。

千初「ねえ、ツチハちゃんは好きなものってある?」
ツチハ「好きなもの? 人間の血だが何か?」
千初「違う違う、そうじゃなくて、好きな食べ物とか、動物とか…」
ツチハ「そんなものはない」

一般人とは違う考え方のツチハには、お馴染みの会話などは通用しないようであった。どんな会話なら彼女と仲良くなれるか考える千初だったが、今度は初子がツチハに質問をした。

初子「じゃあ、ツチハちゃんに友達とかいる?」
ツチハ「友達? そんなものはいない、生みの親はいるが、奴は友達ではない」
千初「じゃあ、私達と友達になろう!」
ツチハ「断る」

あっさりと友達になる事を断られた千初はショックを受けていた。すると、アンカーショットガンのワイヤーで縛られたままのツチハが、千初に対してある事を聞いた。

ツチハ「…なあ、何故この部屋にはこんなにも銃がある」

千初たちが今いるこの部屋は千初の部屋であり、壁や棚にはベレッタやコルトガバメントなど、50丁近くの銃が飾られていた。こんな光景は一般人にはまず見られない光景であり、いくら千初がエージェントだからと言ってここまで多くの銃は飾らないであろう。その事を聞いてきたツチハに対し、千初は笑顔で答えた。

千初「気になる? じゃあ、何でだと思う? 当ててみて?」

ツチハは千初の出した問題に頭を悩ませた。10秒ほど考えると、ツチハは千初に返事を返した。

ツチハ「いきなり強盗が入ってきた時に対応できるからか?」
千初「う~ん、違うんだな、これが」
ツチハ「じゃあ、何故だ?」

数多くの銃が飾られていた事を疑問に思ったツチハに対し、千初は笑顔でその答えを教えた。

千初「答えは簡単だよ、かっこいいから!」
ツチハ「…は?」

思っていた事と全く違う答えに、ツチハはポカーンとしていた。そのツチハに対し、千初は笑顔で詳しい理由を話し始めた。

千初「じゃあ、例えばこのベレッタって銃、どう思う?」
ツチハ「どう思うって…かなり昔に作られた拳銃としか…」
千初「普通はそう思うよね、でも、私からすればかっこいいんだ」
ツチハ「銃がかっこいい?」
千初「うん! かっこいいの!」

千初はベレッタを飾っていた場所に戻すと、普段任務で使用しているエネルギー銃を取り出した。

千初「私が普段使っているこのエネルギー銃も、かっこいいでしょ?」
ツチハ「…到底理解できん…」
千初「でもね、銃は人殺しの武器、だから忌み嫌われている…私はそれが辛い…」
ツチハ「だが、所詮銃は人殺しの為に存在する、違うか?」
千初「うん、多分間違ってはない、でも、私はこう思うの、人殺しの為の武器でも、使い方によってはきっと役に立つって…」

すると、千初はセオを右腕で抱き寄せ、笑顔でこう答えた。

千初「そう考えていた時、私はエージェントの仕事に出会った、そして、銃を人々の役に立てることができたの!」
ツチハ「人間を守る為に銃を使うと言う事か?」
千初「そう! 私は銃がかっこよくて好きだから、人間を傷つける為には使わない、だから、あの時あなたには撃たなかったんだよ!」
ツチハ「………」
初子「そんなかっこいい事言って、ファフニールに入隊すれば一週間自社の食べ物が無料だからって理由で入ったんでしょ?」
千初「お姉ちゃん、それを言ったら台無しだって~!」

すると、突然ツチハが笑い始めた。その笑いは心から面白いと思った笑いであった。それを見た千初はツチハに笑顔を見せた。

千初「やっと、笑顔を見せてくれたね」
ツチハ「…あぁ、お前の考え方が面白くてな」
セオ「変わった奴だろう? こんな変わった奴が私の相棒なんだ」
ツチハ「…お前達といれば退屈しなさそうだ」

その後、初子は外にゴミ出しをしに行くと言って退出し、部屋には千初とセオとツチハだけになった。その時、外から初子の悲鳴が聞こえた。

千初「お姉ちゃん!?」
セオ「お姉さんが危ない!!」

千初とセオが外に出ると、レディスの部下であるスナイプの人質になった初子がいた。初子は羽交い締めにされた状態でこめかみに拳銃を当てられていた。

初子「千初…セオさん…」
スナイプ「動くな、一歩でも動けばこの女の頭が砕けるぞ」
セオ「くっ! 初子さんを放せ!」
スナイプ「ああ、放してやってもいい、だが、お前達が捕まえているツチハを返してもらう」
千初「…分かったわ」

その後、自室に戻った千初は、アンカーで縛っていたツチハを開放し、そのままツチハと共に外に出た。

千初「あなたの言う通り、ツチハちゃんを連れて来たわ」
スナイプ「ご苦労、約束通り、この女は解放する」

そう言ってスナイプは突き飛ばすように初子を解放した。初子は千初に受け止められ、怪我はなかった。

スナイプ「さて、帰るぞ、ツチハ」

その時、ツチハはスナイプにベレッタを発砲した。そのベレッタは千初の部屋にあった物であり、千初の行ったカスタムによって3連射ができるようになっている。スナイプは全ての弾丸をライフル銃で防御したが、突然撃たれた為、怒りをあらわにした。

スナイプ「何故撃った! ツチハ!!」
ツチハ「残念だったな、私は千初と共に行く」
千初「ツチハちゃん…!」
スナイプ「貴様ァ! レディス様を裏切るつもりか!?」
ツチハ「勘違いするな、私はお前達の仲間になったつもりはない、それに、千初といた方が面白いからな」

すると、スナイプはツチハにライフル銃を向けた。

スナイプ「もうお前など不要だ! 所詮は野蛮な地球人の遺伝子から生まれた存在だからな!!」

すると、ツチハはベレッタを千初に投げ渡した

ツチハ「千初! ガンソードを渡せ!」

千初はツチハから預かっていたガンソードをツチハに投げ渡した。ガンソードを託されたツチハは、スナイプと対峙した。

スナイプ「死ね! 虫ケラがァ!!」

スナイプはツチハ目掛けてライフル銃を発砲したが、ツチハはその場に立ったままガンソードのブレードで銃弾を両断した。

ツチハ「…その程度か?」

スナイプは続けて2発目、3発目とライフル銃を撃ったが、ツチハは接近しながら銃弾を両断し、無力化した。そして、ツチハは一瞬のうちにスナイプに接近し、スナイプの首をガンソードのブレードで切断した。頭部を失ったスナイプは切断面から緑色の血を吹き出しながら、地面に倒れ、動かなくなった。

ツチハ「フン、レディスの部下の割には大した事ないな」
千初「ツチハちゃん!」

千初はツチハに抱き着き、笑顔を見せた。

ツチハ「どうした、お前の姉は無事だろう?」
千初「これからは一緒にいてくれるんだよね?」
ツチハ「…まあな、お前といれば面白そうだしな」
千初「ありがとう!!」

そう言って千初はツチハを強く抱きしめた。

ツチハ「分かった、苦しいから離れろ!」

こうして、千初たちと行動を共にするようになったツチハ、完全に仲間になった訳ではないものの、千初は彼女と共に居れる事を嬉しく思うのであった。

一方、ツチハの裏切りを知ったレディスは激怒し、千初とその仲間に対する恨みを募らせていた。

レディス「あの役立たず…! あたしを裏切るなんて…! 所詮は下等な地球人の血を引いた者よ!」
スラッシュ「レディス様、いかがなさいます?」
レディス「そうねぇ…イライラするからこの街ごと焼き払っちゃいましょう」

そう言ってレディスは今いる部屋のテーブルの上にあるスイッチを押した。レディスのいる基地は実は巨大円盤であり、普段はプラムシティの外れの山の中に埋まっているが、先ほどレディスの押したスイッチによって浮上し、空を自由自在に飛行する事ができるのである。そして巨大円盤はプラムシティの上空で止まり、そこでレディスが市民に放送で恐怖の宣言をした。

レディス「プラムシティの愚かな人間よ、よく聞け、今から1時間後、この街を焼き払う、だから今のうちに逃げるがいいわ、まあ、どこに逃げても無駄だけどね、アハハハ!」

その放送を聞いた市民は恐怖し、あっという間に街中はパニック状態になった。車は渋滞し、荷物をまとめた市民は逃げまどった。だが、まだ一部の市民は希望を失ってはいなかった。そう、この街にいるエージェントの存在である。ファフニールでは社長の祥匡から既に巨大円盤迎撃の任務が下っていた。その任務を受けた千初とセオは、格納庫で準備をしていた。

セオ「…やっと決着を付けるときが来たな…」
千初「…そうだね、絶対に生きて帰って来よう」
ツチハ「今回は私も同行する、だから安心しろ」
セオ「感謝する」

すると、そこに前回の戦いで怪我を負った紅音と初菜がやって来た。2人は怪我人ではあるが、この状況で休んでいる訳にもいかず、痛む体に鞭打ってこの作戦に参加するようである。

紅音「よっ、あたしらを仲間外れにするなんて酷くないかい?」
千初「紅音さん! 初菜! 怪我は大丈夫なんですか?」
紅音「今はそんな事言ってる場合じゃないだろ?」
初菜「この街が焼かれちゃったら私達の活動する場所がなくなっちゃうからね」
千初「紅音さん…初菜…」
紅音「ツチハ…だっけ? この間の事はもう気にしてないから、仲良くやろうね」
初菜「正直超痛かったけど、仲間だからもう帳消しにしとくよ」
ツチハ「…感謝する」

その後、千初はスカイフェンリルの後部にツチハを乗せ、セオと共にファフニール社から発進した。紅音と初菜も地上に停めてあったクリムゾンキマイラに乗り、そのまま飛行して千初たちと合流した。そして、4機は上空に止まったままの巨大円盤に向かっていた。

千初「あれね…」
セオ「見た感じ、入る場所はなさそうだが…?」
ツチハ「なら、無理やりこじ開けるだけだ」

そう言ってツチハは右手にガンソード、左手に荷電粒子ライフルを持ち、トリガーを押した。そして、2丁の銃の銃口からビームが放たれ、巨大円盤の船体に風穴を開けた。

紅音「おー、ワイルドだねぇ…」
初菜「このまま爆散してくれればよかったんだけどね」
ツチハ「あの巨大円盤はアプリコット星の超技術で作られているからそうそう壊れはしない…」
セオ「アプリコット星…初めて聞く星だ…」
千初「地球に来た新たなエイリアンって事なんですね…」

その後、千初たちはツチハの開けた風穴から巨大円盤に侵入した。スカイフェンリルとクリムゾンキマイラをその辺に停めると、5人は武器を手に取り、レディスのいる場所を目指した。

セオ「レディス…待っていろ…すぐに向かう…」
紅音「いや、そうはいかないらしいね…」

千初たちの前に現れたのは、レディスの部下のエイリアンであった。側近であるスラッシュをリーダーに現れた彼らは皆、ヒューマノイド型のエイリアンであり、人間によく似た姿であった。そのエイリアン達が約30名ほど現れ、剣や銃で武装し、千初たちの前に立ち塞がったのである。

スラッシュ「レディス様から侵入者は殺せとの命令だ、覚悟しろ」
千初「悪いですが、私達は死ぬつもりはありません!!」

千初がそう言うと、エイリアン達は攻撃を仕掛けて来た。銃を装備した兵士は銃を発砲し、剣を装備した兵士はセオたちと交戦した。千初はエネルギー銃で銃を装備した兵士を攻撃した。自分達と同じ姿をしている為、あまり撃ちたくはなかったものの、ここで撃たないと自分達がやられる為、ためらわず撃った。セオと紅音と初菜は剣で装備した兵士と交戦した。兵士達はまとめてかかってきたが、3人は攻撃を回避したり受け止めたりして攻撃を無力化した後、高周波ブレードや超硬質日本刀で斬り裂いた。幸い、エイリアン達の血は緑色だった為、人間を殺した気分にはならず、安心して戦う事ができた。ツチハはリーダーであるスラッシュと交戦していた。スラッシュは刀使いであり、素早くツチハを攻撃した。だが、ツチハは全ての攻撃を回避し、スラッシュを斬り裂いた。体を斬り裂かれたスラッシュは地面に倒れ込み、血を流した。

スラッシュ「レディス様…申し訳ございません…」

そう言い残し、スラッシュは息絶えた。スラッシュが倒された頃には既に他の兵士たちは全滅し、千初たちの勝利となっていた。

セオ「終わったな…」
千初「そうだね…でも、あのエイリアン達私達とよく似た姿をしていたからあまりいい気分はしなかったな…」
ツチハ「安心しろ、千初、奴らは正真正銘エイリアンだ、見た目は違うが、オクトタイプやリザードタイプと同じだ」
千初「そうだけど…やっぱり見た目が一緒だとね…」
ツチハ「そうか? 人間とは面倒だな…」
紅音「さてと…先を急ぐか…」
初菜「あと40分でプラムシティが火の海になるからね」

5人は巨大円盤の内部を探索した。外が巨大すぎる為、迷路のように迷うかと思われたが、巨大円盤の内部は案外小さく、3分ほどでレディスのいる場所に到着した。そして、レディスのいる場所は闘技場のような場所で、彼女のセンスからすればプラムシティの命運をかけた戦いには丁度いい場所と思っている事であろう。

レディス「やっと来たね…」
セオ「レディス…やっと決着を付ける時が来たな…」
千初「プラムシティは…焼かせません…!!」
レディス「フ…なら止めてみなよ…私を殺してね!!」

プラムシティ上空に待機した巨大円盤に突入した千初たち、彼女たちは今、プラムシティを守る為、レディスと戦っている。プラムシティで暗躍を続けたレディスと彼女にかつての仲間を殺されたセオ、因縁のある2人が対峙し、決着を付ける時が来た。そして今、プラムシティの命運をかけた戦いが始まった。

セオ「レディス…遂に決着を付ける時が来たな…」
レディス「待っていたよ、セオ、あの時の続きと行こうか」
千初「…戦う前に聞かせてもらえませんか? 何でこんな酷い事をするのか」
レディス「それは簡単な話だよ、私の故郷であるアプリコット星は、侵略行為や争いを好む者達が多いのさ」
セオ「何…? じゃあ、お前が私の仲間を殺したのも、他の星を滅ぼしたのも…」
レディス「そう、アプリコット星人がそう言う事を好む人種だからさ」
紅音「何て野蛮な…」
初菜「まるで怒った時のお姉ちゃんだよ」
千初「初菜! 後でお仕置きだからね…」
レディス「でも、アプリコット星人は争いを続けるあまり、滅んでしまい、仲間もあんたらに倒された、だからあたしを殺せば絶滅って訳さ」
ツチハ「…どうしても戦うつもりか?」
レディス「勿論! じゃ、始めよう!」

レディスは腰に携えていた剣を抜いた。それと同時に紅音と初菜が攻撃を仕掛けたが、レディスは剣を一振りし、風圧で2人を吹き飛ばした。紅音と初菜は後方の壁に衝突し、戦闘不能になった。

千初「紅音さん! 初菜!」
初菜「私達の事はいい! 戦いに集中して!」
紅音「千初! 荷電粒子ライフルを使え!」

千初は荷電粒子ライフルを構えて撃った。だが、レディスは剣で防御し、ビームを弾いた。

セオ「荷電粒子ライフルのビームが弾かれた!?」
レディス「この剣はビームやレーザーを弾く塗料でコーティングされていてね…」
ツチハ「なら、接近すればいいだけの事!」

ツチハはガンソードのブレードでレディスに攻撃を仕掛けた。しかし、レディスは攻撃を全て回避、逆にツチハの腹に蹴りを食らわし、宙に浮かせた状態で回し蹴りを放ち、ツチハを地面に叩き付けて戦闘不能にした。

千初「ツチハちゃん!」
ツチハ「何と言う力だ…」
レディス「フフフ…あんたらは後でゆっくり殺してやるよ」
セオ「ふざけるなッ!!」

仲間を傷つけるレディスに激怒したセオは、高周波ブレードで斬りかかろうとした。

レディス「あんたじゃ無理よ」

自分に攻撃を仕掛けてくるセオを、レディスは剣を振った風圧で吹き飛ばした。吹き飛ばされたセオは後方に吹き飛ばされたが、とっさに千初が受け止めた事で、セオは軽傷で済んだ。だが、クッション代わりとなった千初は、体にかなりの衝撃が加わり、大きなダメージを受けた。

セオ「千初!?」
千初「うぐっ…セオちゃん…大丈夫…?」
セオ「ああ、大丈夫だ、だが千初…」
千初「大丈夫だよ、気にしないで…」
レディス「おやおや、仲のいい事で…」
セオ「…千初、私は何としても奴を倒したい…力を貸してくれ…」
千初「…うん、分かった…」

2人は立ち上がり、千初は荷電粒子ライフルを、セオは高周波ブレードを手に取った。
レディス(何故だ…? 何故奴らはまだ立ち上がる…!?)

千初は荷電粒子ライフルの出力メーターを最大まで上げた。出力を上げすぎると故障する可能性があるが、セオのレディスを倒したいと言う想いに応える為、千初は危険を承知で荷電粒子ライフルの出力を上げた。

千初「荷電粒子ライフル、最大出力! 行っけぇぇぇ!!」

荷電粒子ライフルのトリガーを引くと、強力なビームが放たれた。だが、無理に最大出力で撃った為、荷電粒子ライフルの銃身が暴発し、荷電粒子ライフルは完全に使い物にならなくなってしまった。最大出力で放たれた荷電粒子ライフルのビームは、一直線にレディスに向かって行った。当然、レディスは剣で防御したが、あまりの熱量に、ビーム耐性がされた刀身が溶けてしまった。完全に溶ける前に剣を捨てた為、レディス自身は無事だったが、レディスは武器を失い、完全に丸腰となってしまった。

セオ「武器を失ったようだな、なら私にも勝機はある!!」
レディス「くっ…!!」

セオは高周波ブレードをレディスに振り下ろした。レディスは両掌からバリアを発生させ、防御した。

セオ「壊れろぉぉぉッ!!!」

セオは腕に力を入れ、高周波ブレードをバリアに押し付けた。そして、そのままバリアを破壊し、レディスの体を高周波ブレードで斬り裂いた。体を斬り裂かれたレディスは口から血を吐き、地面に倒れ込んだ。

レディス「見事よ…地球人…」
セオ「終わりだな、レディス…」
レディス「ふふ…みじめなものね…地球人を舐めていたら…あたし自身が死ぬことになるなんて…」
セオ「レディス、この円盤を爆破する方法を教えろ」
レディス「安心しな…この円盤はあたしの命と連動している…あたしが死ぬと…この円盤も爆発する…」
セオ「そうか…」

セオはレディスの背中に高周波ブレードを突き刺した。その攻撃は致命傷となり、レディスは生命活動を停止した。すると、その瞬間円盤内部で警報が発生した。千初たちは急いで侵入口に向かい、スカイフェンリルとクリムゾンキマイラで脱出した。脱出してしばらくすると、巨大円盤は大爆発し、木っ端微塵になった。

紅音「…終わったな…」
初菜「…そうですね、紅音さん」
ツチハ「だが、まだエイリアン災害は続くのだろう?」
セオ「まあな、だが、まずはゆっくり休みたいな…」
千初「そうだね、とりあえず、ファフニールに戻ろう」

そして、レディスとの戦いから一ヶ月が経過した。千初とセオはあの後もチーム銃×剣として活動していた。今回は半魚人タイプのエイリアン2匹の討伐ミッションであり、エイリアンの素早い動きに翻弄されつつも、何とか戦っていた。千初はエネルギー銃を構え、素早く動くエイリアンに標準を合わせた。

千初「そこっ!!」

千初はエネルギー銃のトリガーを引き、レーザーを放った。エイリアンの移動する先を予測した的確な射撃は見事命中し、一撃でエイリアンの急所を撃ち抜いて倒した。一方のセオもエイリアンの素早い動きに対応し、高周波ブレードを構えた。

セオ「見切った!!」

セオはエイリアンが急接近し、攻撃した際、すれ違いざまに剣を振り、エイリアンの体を斬り裂いた。エイリアンは胴体を両断され、倒された。こうして、今回のミッションは完了したのであった。

千初「ふぅ…お疲れ、セオちゃん」
セオ「ああ、そっちこそな」

ミッションが完了した2人は、スカイフェンリルに乗って本社に帰投した。ファフニール本社では社長の祥匡と、千初の姉である初子が待っており、今回のミッションに成功した2人を手厚く迎えていた。

祥匡「千初くん、セオくん、ミッションの成功おめでとう」
初子「2人共、よく無事に帰って来たわね」
セオ「ありがとうございます」
千初「お姉ちゃん…本当に見学に来たんだね…」

ミッションで疲れた2人に、初子はスポーツドリンクを渡した。2人はペットボトルの蓋を開けると、水分を補給する為、ペットボトルの半分ぐらいまで一気に飲み干した。

千初「そう言えば、紅音さんと初菜はあれから何してるんですか?」
祥匡「ああ、紅の鮮血の仕事をしているらしいよ、最近は忙しくてここには来れないらしいけど、たまに連絡をくれるよ」
セオ「無事でなによりだ、だが、ツチハは本当に音信不通だからな…」
千初「うん…」

ツチハはレディスとの戦いの後、千初たちの前から姿を消した。何でも、自分はまだ世界がどんなものか知らないから、自分の足で世界を見て回りたいとの事である。千初とセオもそれに同行しようとしたのだが、ツチハは2人にプラムシティを守ってほしいと言う理由で、たった1人で世界を回る旅に出たのである。当然、彼女はスマートフォンを持っていない為、連絡を取る手段もなく、音信不通状態なのである。

千初「まあ、きっとツチハちゃんもいつか必ず私達の前に現れるはずだよ」
セオ「そうだな…」
祥匡「…ところで、今日はもうミッションがないから、2人で外出したらどうだい?」
千初「そうですね…お姉ちゃんは?」
初子「あなたとお友達の間に私が入るのは良くないから、2人で行ってらっしゃい」
千初「うん、分かったよ」
セオ「では、お先に失礼します」

2人はファフニールを後にし、街に外出した。プラムシティの街は1ヵ月前の騒動が嘘のように平和で、まさに平和一色と言った感じであった。

千初「こうして見てると、エイリアン災害がある事が嘘みたいだね」
セオ「そうだな、だがこれもエージェントの活躍で平和が維持されているんだ」
千初「うん…だから私達はまだ戦わなくちゃいけない…」
セオ「ああ、いつかエイリアン災害が無くなるその日までな…」
千初「でも、今日だけは2人で一緒に街を観光しよう!」
セオ「ああ、そうだな」

1つの大きな戦いを終えた千初とセオ。だが、エイリアン災害が終わるその日まで、エージェントの戦いは終わらない。いつか平和な日が訪れるまで、チーム銃×剣の戦いは続く。エイリアン災害のない平和な世界を作る為、エージェント達は戦い続けるのだ。