黒き百合の小説

定期的に小説を投稿するブログ

神聖戦士ノヴァティスEVOL

【序章】

 

 西暦2055年、かつて起こった怪人軍団との戦いから20年が経った。

 人々は平和な日々を過ごし、怪人の起こした事件の事もすっかり忘れられていた。

 そんなある日、ノヴァティスと呼ばれた戦士の活躍した天翔街の山中に隕石が落下。

 その隕石に乗って襲来した液体生命体が山中の動物たちに憑依し、かつて現れた怪人とは違う新たな怪人となって人々を襲い始める。

 この物語は、新たな世代の戦士たちの物語である。

 

――――――――――――

 

【第1章 進化した戦士EVOL】

 

 隕石に乗ってやってきた液体生命体が新たな怪人災害を起こした事に対し、新たな脅威の襲来を予知していた天翔街警察本部は、新型のMトルーパーの開発に着手していた。

 かつての戦いで、Mトルーパーはほぼ無力だったことから、目指したのは怪人と格闘戦が出来、尚且つ怪人を撃破可能な戦力。

 その新型Mトルーパーの開発には、かつて怪人と戦ったノヴァティスの戦闘データも使用されている。

 そして、その新型Mトルーパーの開発に携わったのは、かつてノヴァティスの戦いを間近で見ていた沢田 孝信(さわだ たかのぶ)であった。

 彼は、かつてノヴァティスの変身者であった日野 鋼(ひの はがね)が戦いの中で多くの悲劇を経験した事を知っていたからこそ、二度と悲劇を起こさない為に、この計画に参加した。

 

 既にベースとなる素体は怪人襲来前に完成していた為に開発は順調に進み、一週間も経たずして、新型Mトルーパーの『エルピウォリア』は完成した。

 そのエルピウォリアの装着者には、若き優秀な警察官、赤月 護(あかつき まもる)が選ばれた。

 完成したエルピウォリアの性能テストの為、護はアンダースーツの上に鎧を装着するようにアーマーを装着し、エルピウォリアへと手動で姿を変えてゆく。

 紺色の装甲色の、機動隊の様な姿の戦士、胸には警察のシンボルマークである金色の旭日章。

 右手には対怪人自動小銃のMB-01 スピネルが握られている。

 このスピネルはかつてMトルーパーの正式装備となっていたMB-G(モンスターバスターガン)の改良型である。

 厚さ10センチの鉄板を容易く貫通する特殊合金製の銃弾を連続発射する事が出来、理論上はかつて出現した怪人を撃破する事すらできるという。

 射撃訓練場に姿を現したエルピウォリアは、的にスピネルの銃口を向け、トリガーを引き、銃弾を放つ。

 銃弾は的に命中し、的は粉々に砕け散る。

 その様子をモニターで見ていた孝信は満足げに呟く。

 

「これなら、あの怪人にも対抗できる、エルピウォリアの量産が進めば、怪人に立ち向かう事も出来るだろう……だが、僕達は決してこの力を人類同士の争いに使わないようにしなければならないがね……そう、かつて、神山隊長がそうしたように……」

 

 孝信は20年前の戦いで、自分達を導いてくれた恩人の事を思い出す。

 彼は、Mトルーパーが軍事利用されないように、様々な手解きをしてくれたと聞く。

 だからこそ、警察上層部も、新型Mトルーパーの開発には反対だったのだが、もし、新たな脅威が現れた場合、それに対抗する術がない事にはどうすることもできない。

 その為、孝信はかつてをよく知る人物として、開発を担当する事になったのである。

 ちなみに、今の孝信はかつての様にインテリぶった馬鹿ではなく、努力に努力を重ね、超天才として覚醒している。

 演習が終わり、護が控え室に戻った事を確認した孝信は、スーツを脱いだ護に電話をかける。

 

「お疲れ様、僕達が開発したエルピウォリアの性能はどうだい?」

『はい! とてもいい性能です! これなら、怪人とも戦えます!』

「そう言ってもらえると嬉しいよ、それに、君は二十年前の怪人災害で、家族を失っているんだってね」

『そうですね、まだ幼かったですが、鮮明に覚えてます……僕がファミレスに出掛けていたあの日、怪人が現れて、父さんと母さんが殺された……だから僕は、僕みたいな人を増やしたくないから、警察官になったんです!』

「……君になら、そのエルピウォリアを託せそうだ……」

 

 孝信は、護のその正義に満ち溢れた性格を、かつての神山隊長に重ねる。

 

「赤月くん、頼んだよ!」

『はい! 沢田さん!』

 

――――――――――――

 

 一方、かつてノヴァティスとなって戦った日野 鋼の暮らす日野家。

 鋼はあの後、友人である月村 理乃(つきむら りの)と結婚し、二人の子供を授かる。

 日野 剣人(ひの けんと)と日野 都(ひの みやこ)、それぞれ17歳と16歳の、一歳違いの兄妹だ。

 鋼はあの後、ノヴァティスとなって戦う事もなく、平和な日々を過ごしていた。

 だが、つい最近、新たな怪人が姿を現した事で、また戦わないといけないのかという考えが脳裏を過った。

 しかし、変身の兆候は表れず、かつての様に「神聖変身!」と叫んでも変身できない。

 変身能力を失ったのか、自分の子供のどちらかに変身能力が遺伝したのか。

 そんな考えを浮かべながら、今日も平和な日々を過ごしていた。

 

「「行ってきます!」」

 

 剣人と都が、自身も通った天翔高校へ登校するので、鋼と理乃は「行ってらっしゃい」と返す。

 しかし、二人は不安であった。

 

「鋼、今度の怪人は夜だけじゃなく、日中にも出現するのよね」

「ああ、そうらしいな、かつての怪人より進化した存在……二人には気を付けるよう、遭遇したら全速力で逃げるようには伝えているが……」

 

 鋼と理乃が心配する中、剣人と都は学校へ通っていた。

 二人は仲の良い兄妹で、特に妹の都はブラコン気質であり、兄の剣人と腕を組んで登校していた。

 

「おい、都、離れろよ……外ではやめろっていつも言ってるだろ」

「駄目ー、こうしてると落ち着くし」

 

 剣人は呆れてため息をつく、周囲の視線が気になって仕方ない。

 その時、剣人の背中を後ろから叩く人物がいた。

 

「おはよう、剣人くん」

 

 幼馴染の篠原 結愛(しのはら ゆあ)だ。

 かつて、鋼の友人であった島村 悠人(しまむら ゆうと)と、篠原 雫(しのはら しずく)の娘であり、家族ぐるみの付き合いをしている事もあって、幼馴染なのである。

 大人しい性格ではあるが、特撮好きの親の影響もあってかなりの特撮好きであり、特撮の話をする時は目が輝いている。

 

「剣人くん、昨日の裂空騎士マッハブレード観た? 最高の展開だったんだよ! マッハブレードが一度は倒されるけど復活して逆転してさ……」

「まあ、観たけど確かに良かったよな……」

 

 剣人は周囲の目を気にする。

 ブラコンの妹に、特撮の話をするとテンションの高い幼馴染に挟まれる普通の男子高校生。

 毎朝この二人に挟まれるせいで、変人トリオと陰で呼ばれているのだ。

 そして、都は兄を取られないよう、結愛を若干敵視している。

 その邪気を間近で感じているせいで、剣人は言葉にできない恐怖を感じているのである。

 

「裂空騎士シリーズは一作目のマッハソードからずっと追ってるけど、やっぱり伝統の逆転展開はどのシリーズも熱いよ! 特に、三作目のマッハダガーはシリーズ一の神展開って言われてるんだよね! 第28話「負けられない戦い」の事なんだけど、ここは最高に熱くて――!!」

「分かった! 分かったから少し静かにしてくれ!!」

 

 その時、真上から何かが落下してくる事を察知した剣人。

 何故察知できたかは分からないが、剣人は「下がれ!」と二人に促す。

 次の瞬間、轟音とともに落下してきた怪人。

 落下の衝撃でアスファルトの道路を砕き、鋭い目付きで剣人を見つめる猫に酷似した姿をした人型の怪人。

 周辺にいた生徒は皆、悲鳴を上げて一目散に逃げる。

 

「かかか……怪人!?」

 

 恐怖のあまり上ずった声を上げる結愛、怯えて声も出ない都。

 

「逃げるんだ!」

 

 剣人は二人の手を引き、全速力で逃げる。

 しかし、猫の怪人は尻尾を伸縮させ、剣人たちを縛り上げる。

 振り解こうにも、強く締めあげられたせいで振り解けない。

 猫の怪人はゆっくりと歩み寄り、鋭い爪を伸ばした。

 

(このままだと……みんな死ぬ……俺達は、死ぬのか……!?)

 

 剣人が諦めて目を閉じた、その時、剣人の身体は光に包まれた。

 とても温かく、それでいてどこか力強い光。

 その光は、自身の身体を『作り替えていく』。

 光が収まったその時、剣人の身体は青い戦士の姿へと変わっていた。

 その戦士の姿は、かつて怪人と戦った戦士、ノヴァティスの姿に酷似していた。

 

「剣人くん!? その姿は……」

「お兄ちゃんが……変身してる……!?」

 

 ノヴァティスへと変身した剣人は、何が起こったのか理解できず、困惑していた。

 

(何だ……!? 何が起きたんだ……!?)

 

 自身に降りかかった状況に、理解が追い付かない。

 だが、猫の怪人はゆっくりと、近づいてきていた。

 

(今はそれどころじゃない! こいつを何とかしないと!)

 

 力を込め、内側から尻尾を引き千切ると、目の前にいた怪人に全力のパンチを浴びせる。

 怪人は叫び声を上げ、後方に吹き飛ばされ、倒れ込む。

 続けて、怪人に馬乗りになり、連続でパンチを浴びせるが、猫の怪人は爪で体を突き刺し、逆に吹き飛ばされる。

 

(くっ! 身体が丈夫なお陰で死にはしないけど、滅茶苦茶痛え……!!)

 

 体勢を立て直した怪人は、飛び掛かってくる。

 後ろには二人がいる、避ける訳にはいかない。

 剣人は怪人に対し、全力のパンチを放つ。

 

「うおおおおおっ!!」

 

 全力のパンチは怪人の顔にヒット、怪人は吹き飛ばされるが、まだ倒れない。

 

(くそっ! 武器があればいいのに! 例えば、剣とか!)

 

 その時である、その想いに答えるかのように、剣人の右手に、光が宿る。

 その光は剣の形へと実体化していき、光が収まると、青色の長剣が手に握られていた。

 

「これならっ! うおおおおおっ!!」

 

 剣人は手に持った長剣で怪人を切り伏せる。

 直後、致命傷を受けた怪人は仰向けに倒れ、大爆発を起こして沈黙した。

 

「ハァ……ハァ……やった……のか……」

 

 怪人を倒して安堵した剣人の身体は光に包まれ、元の姿へと戻る。

 大量のエネルギーを使って疲れたのか、意識が遠のき、その場に崩れ落ちる。

 後方にいた結愛と都もまた、目の前で起きた状況を受け入れられず、ただ困惑するだけであった。

 

――――――――――――

 

【第2章 警察の戦士ELPIS】

 

 怪人を撃破した後、気を失った剣人は、結愛と都によって日野家に運ばれた。

 鋼と理乃は最初、慌てた様子を見せていたが、すぐに剣人の無事を確認して安堵した。

 その後、結愛と都の口から、剣人がかつて現れたノヴァティスに酷似した姿に変身した事を聞く。

 

「そうか……やはり、剣人に遺伝したんだな……」

 

 鋼は静かに呟く。

 結愛と都は何の事か分からない様子だったので、鋼はすぐに説明を始める。

 

「俺は二十年前、君らと同じぐらいの時に、ノヴァティスとして戦ったんだ、情報統制がなされたから、一般には知られてないんだけどね」

 

 鋼の口から語られた真実を聞き、結愛と都は驚き、目を見開く。

 

「怪人が滅んだ後、俺が変身する事はなかった、今、新たな怪人が現れたと言うのに、あの時と同じ様に変身は出来なかった……それもそのはずだ、ノヴァティスの因子は、俺の息子である剣人に遺伝しているんだから」

 

 鋼はかつての辛く、苦しい戦いを思い返しながら呟く。

 それと同時に、剣人に自分と同じような戦いをさせる事になるのかと思うと、何とも言えない気持ちになり、拳を握り締める。

 

「とにかく、この事は俺達の中だけに留めてくれ、警察機関には俺の友人がいるけど、知られたら何をされるか分からない」

 

 鋼の言葉に、結愛と都、理乃は頷いた。

 

――――――――――――

 

 その日の夜、天翔高校の通学路にて怪人が出現し、何者かに倒された事を知った警察は、通学路に赴き、現場検証を行った。

 そこでは確かに怪人の肉片や血液が散らばっており、ここで戦闘が起き、倒された事は確かであった。

 しかし、何者と戦い、何者が倒したのか、警察には分からなかった。

 ただ一人、孝信は鋼と通話し、真相を聞いた事で知ってはいたが、鋼には「この事は誰にも言わないでくれ」と頼まれていた為、口外は出来ずにいた。

 

「君と僕との仲だもんね……」

 

 孝信はそう呟き、カップに入れたコーヒーを一口飲む。

 すると、ドアのノック音が聞こえたので、孝信は「入りたまえ」と返す。

 

「夜遅くにすみません、孝信さん、例の対怪人カメラの配備はどうなりました?」

 

 対怪人カメラとは、新型の監視カメラであり、怪人特有の液体生命体の熱源に反応して、怪人の出現を知らせるシステムである。

 今朝起きた事件を知った警察機関が、今現在開発された分を各所に配備し、怪人に備える事になったのである。

 

「とりあえず、幅広く配備はしたつもりさ、数は限られてるから均等に、ね」

 

 孝信は護の分のコーヒーをコーヒーメーカーから注ぎながら伝える。

 

「それを聞いて安心しました、僕達がすぐに駆け付けられれば、被害は抑えられますしね」

 

 ほっと胸を撫で下ろす護に、孝信はカップに注いだコーヒーを渡す。

 それをゆっくりと口に運ぶ護だったが、すぐに「熱っ!」と声に出す。

 

「おいおい、君は猫舌だったのかい?」

「すみません、僕、昔から熱い物が苦手で……」

「まあ、可愛い一面と捉えれば、問題はないんじゃないかな?」

 

 真面目な警察官である護の意外な一面を知り、ふふっと笑う孝信。

 その時、突如対怪人カメラのセンサーが怪人を捉えた事で、護の持ち歩いていた携帯端末の警報が鳴り響く。

 対怪人カメラが怪人を捉えると、警報が鳴る仕組みとなっており、護は出撃準備を開始する。

 

「頑張ってきたまえ! 帰ってくる頃にはコーヒーも冷めているよ」

 

 護はすぐにエルピウォリアの出撃準備室へと向かい、制服を脱いで肌着になり、アンダースーツを着込み、装甲を身に纏う。

 出撃準備を整え、エルピウォリアへと姿を変えた護は、発進ゲートに駐車している専用白バイのシルトチェイサーに乗車する。

 ゲートはゆっくりと開門され、その間、護はこれから怪人と戦う事を想像すると、緊張と恐怖で心臓の鼓動が早まる。

 護は生唾を飲み込み、スタンドを払い、ギアを一速に入れ、アクセルを開くと、シルトチェイサーは滑るように走り出した。

 発進ゲートを通り抜けると、エルピウォリアのメット内モニターに表示された場所まで、護は冷静に走行する。

 

 怪人の出現場所である繁華街に到着すると、そこでは怪人が民間人を片っ端から撲殺した後で、死体が転がっていた。

 血の匂いがメット越しに伝わり、護は恐怖する。

 メット内には怪人を探知するセンサーが備わっており、エルピウォリアはMB-01 スピネルを手に持ったまま、怪人のいる場所へと向かう。

 そこでは、亀の怪人が女性の首を掴んだ状態で不気味な笑い声を上げていた。

 既に女性に息はない、首をへし折られた後だろう。

 護はただ、間に合わなかった事と、助けられなかった事で、怪人に対して怒りを覚える。

 死体を投げ捨て、こちらへと向かって来る亀の怪人に対し、エルピウォリアはスピネルのトリガーを引き、銃弾を連続発射する。

 銃弾は怪人の胸部に命中するが、怪人の装甲は硬く、金属音のような音を立てて弾かれる。

 

「効かない!? なら、これはどうだ!」

 

 エルピウォリアは左腿部装甲に内蔵された拡張ユニットであるMB-02 マラカイトを取り出し、銃身下部に取り付ける。

 マラカイトはグレネードランチャーを放つ装備であり、理論上はかつて出現した怪人を一撃で爆砕させる威力があるとされる。

 エルピウォリアは銃口を怪人に向けると、トリガーを引き、グレネードランチャーを放つ。

 グレネードランチャーは怪人に着弾し、爆炎を上げる。

 しかし、怪人は身が少し焼けた程度で尚も健在であり、素早くこちらへと接近し、素早く腕を振るい、エルピウォリアの胸部装甲を殴る。

 

「ぐあっ!」

 

 護は殴られた衝撃と倒れ込んだ衝撃で叫び声を上げる。

 エルピウォリアには耐衝撃装甲が備わっている為、かつてのMトルーパーの様に貧弱な装甲ではない。

 しかし、パワードスーツである以上、限界はある為、連続して食らうと危険だ。

 エルピウォリアはすぐに立ち上がり、右腿部装甲に内蔵された電磁警棒、MB-03 アンバーを手に取る。

 

「これ以上はやらせない!」

 

 護はそう叫び、怪人のダメージを受けた部位を殴り、電流を送り込む。

 流石にこれは効いたのか、叫び声を上げ、怯んだ様子を見せる怪人。

 更に追い打ちをかけ、電磁警棒を突き刺すエルピウォリア。

 体内に電流が直で流れ込み、大きなダメージを受ける怪人。

 しかし、まだ倒れてはおらず、一発、二発、三発とエルピウォリアを殴る怪人。

 エルピウォリアは後方に吹き飛ばされ、仰向けに倒れ込む。

 

「これだけ傷口にダメージを与えれば!」

 

 エルピウォリアは再びスピネルを手に取り、銃口を傷口に向けると、銃弾を連続発射。

 開いた傷口に連続で銃弾が叩き込まれ、怪人はその場で沈黙。

 そのまま地面に崩れ落ちると、大爆発を起こし、砕け散った。

 

「やった……怪人を……倒したんだ……」

 

 怪人を倒せた事で安堵する護。

 ゆっくりと立ち上がると、周辺の警戒をし、シルトチェイサーに乗って天翔街警察本部へと帰還した。

 

――――――――――――

 

【第3章 神秘の戦士MYSTERIOUS】

 

 警察本部へと帰還した護は、エルピウォリアのアーマーを脱ぎ、孝信の下へ戻る為、警察本部の通路を歩いていた。

 灯りに照らされた若干薄暗い細い通路、戦いで疲れ切った状態で、護は一刻も早く休みたいと感じていた。

 その時、通路の壁に寄りかかって護を待っている人物がいた、先輩警察官である白石 周(しらいし しゅう)である。

 長めの髪を綺麗にセットした、整った顔立ちの男性刑事、しかし、彼には性格に難があった。

 

「赤月さん、聞きましたよ、エルピウォリアを装着して怪人を撃破したそうですね? で、エルピウォリアの性能はどうですか?」

「怪人と戦うには、最高の戦力だと思います、かつて存在したMトルーパーでは太刀打ちできなかったようですから」

「ほう……ですが、私には君がエルピウォリアの装着者には適していないと思うのですよ、何より、『け・い・け・ん』が足りませんからね?」

 

 周は鏡を取り出し、髪を手入れしながら答える。

 護は呆れてため息をつき、黙って通り過ぎようとした時、再び声をかけられる。

 

「待ちたまえ、一つ伝え忘れていた、現在、強化スーツがもう一着開発されている事を知っているかな?」

「何ですか、エルピウォリアの他にももう一つ?」

「ああ、元々はエルピウォリアの別案として設計されていたものなのだが、性能が良かった事と、エルピウォリアの性能が予想以上だったことから、予備で開発されている、その装着者に、私が選ばれているんだよ、赤月さん?」

 

 エルピウォリアに次ぐ、第二の警察の戦士として、周が選ばれている。

 普通の人ならライバル登場となるだろう、だが、護は違った。

 

「白石さんも一緒に戦ってくれるって事ですか!? これで戦力は二倍ですね! 白石さん、一緒に頑張りましょう!!」

「え、ええ……」

 

 周の勝手なライバル意識も、護の純粋な正義感の前には無力であった。

 この時、周は頭の中で「こいつ、やっぱ苦手だな」と思ってしまっていた。

 

――――――――――――

 

 翌日の早朝、天翔街の小さなマンションの一室で、天翔中学に通う中学二年生の少女、氷室 翔音(ひむろ かのん)は静かに目を覚ました。

 

「こんな早くに……」

 

 周囲はまだ暗く、日がほんのりと遠くに上がっている状態だ。

 翔音は、寝ぐせの付いた茶髪ボブの髪を綺麗に整え、浴室に向かい、パジャマを脱いで、シャワーを浴びる。

 温かいお湯が、起きたばかりの身体をゆっくりと温め、目覚めたばかりの脳を静かに覚まさせる。

 それと同時に、数日前に起きた悲劇を思い出させた。

 

 まだそれほど時が経っておらず、鮮明に覚えている出来事。

 休日、父と母と共にショッピングモールに出掛けていた時、二十年ぶりに出現した蜘蛛の怪人に襲われ、その鋭い爪で目の前で両親が引き裂かれ、鮮血が翔音に飛び散る。

 恐怖のあまり身動きが取れず、温かい物が足を伝う。

 爪に両親の鮮血が付いた蜘蛛の怪人がゆっくりと襲って来ていた時、翔音の顔に何か冷たい物が付着した。

 スライムの様な感触の、べったりしたもの。

 それは翔音の身体に吸収されていき、次の瞬間、翔音は意識を失った。

 次に目を覚ました時には、翔音は倒れており、怪人の居た場所では炎が上がっていた。

 

「確証はないけど、あの怪人を倒したのはきっと私だ……怪人は液体生命体と同化して生まれると聞いた……きっと私は、怪人になったんだ……」

 

 二十年前に出現した怪人は、人が変貌したものだと聞く、だとしたら、自分も怪人になったのかもしれない。

 そう考えると、自分が人間じゃないみたいでどんどん怖くなった。

 浴室から上がった翔音は、髪を乾かし、制服を着て、学校へ通う仕度をした。

 でももし、自分が学校で怪人になって、学校のみんなを殺してしまったら……。

 そう考えると、翔音はどんどん怖くなった。

 自分には身寄りがなく、現在は保護を受けて生活している。

 

「どうせ、これからの未来には何も期待できないんだ……」

 

 翔音は台所にあった包丁を手に取り、刃先を自分に向ける。

 恐怖で手が震え、冷や汗が流れ、息は荒くなる。

 

「駄目っ! 怖くてできない!」

 

 翔音は包丁を投げ捨て、鞄を持ってマンションの外に出る。

 ただ何もかも忘れたくて、無我夢中で外に出て、まだ暗い住宅街を駆ける。

 学校が始まるにはまだ全然時間がある。

 翔音は立ち止まり、空を見上げながら、これから何をするか考えていた。

 

「適当に、コンビニで時間でも潰そうかな……今日は『猫宮リリィはねこみみメイド』の新刊出てるはずだし」

 

 住宅街をゆっくり歩く翔音、その背後から、殺気を感じ取り、振り向く。

 そこには、蛇の怪人が鋭い眼光を光らせており、牙の隙間から細い舌を覗かせていた。

 

「ヒィッ!」

 

 翔音は慌ててその場から逃げ出すが、蛇の怪人はジャンプで翔音の前に移動する。

 そのまま、翔音の首を掴み、ゆっくりと力を入れる。

 

(私……ここで死ぬの……!? 嫌だ……死にたくない……死にたくない死にたくない死にたくない!!)

 

 翔音が強く生きたいと願ったその時、翔音の身体は光に包まれ、その光の中で翔音の身体を強靭な肉体に作り変えた。

 暗緑色の、エイリアン然としつつもどこかヒロイックな姿をした戦士。

 全身には大小様々な鋭い棘が生えており、殺意の高さが伺えた。

 

(やっぱり、私、人間じゃないんだ……!)

 

 翔音は咄嗟に腕のトゲを伸ばし、その棘で自分を掴んでいた蛇怪人の腕を切り落とす。

 蛇の怪人は激痛のあまり後ろに後ずさるが、その切断面からは新たな腕がすぐに生える。

 

(あれじゃトカゲじゃない! でも、こいつを放っておいたら、誰かが死ぬ! それだけはさせないよ!)

 

 翔音は両腕のトゲを伸ばし、パンチを放つ要領で蛇怪人の体を貫く。

 だが、蛇の怪人の再生能力は高く、すぐに治癒してしまい、逆に蛇怪人は溶解液を吐き出す。

 溶解液は翔音の腕にかかり、棘もろとも腕が焼けてしまったが、何と、その傷はすぐに修復された。

 

(傷が治ってる……でも、それはあちらも同じ! 何か弱点があるはず……蛇の弱点と言えば……頭だ!!)

 

 蛇は頭を潰せば死ぬと聞いた事がある、本当かどうかは分からないが、ゾンビとかも頭を潰せば死ぬのだから、きっと死ぬはず。

 翔音は頭を連続して狙うが、危機を察知した怪人は頭を全力で守り始めた。

 

「なら、これはどうだ!!」

 

 翔音は尻尾を怪人の後頭部まで伸ばすと、頭を一突きした。

 頭を貫かれた怪人はその場に崩れ落ち、爆発四散する。

 翔音は戦いが終わった事に安堵すると、次の瞬間、ゆっくりと元の翔音の姿へと戻った。

 そして、自分の身に起きた異常事態に、息が荒くなる。

 

(何なの……一体何が起きたの……やっぱり、あの液体生命体の仕業……それに、あの姿は一体……)

 

 翔音があの姿について考えたその時、翔音の脳裏に一つの名前が浮かぶ。

 

「ミステ……ベステ……ミステベステ……それがあの姿の……名前……」

 

 自分の変身形態の名前を知った翔音は、二十年前、自分が生まれる前に活躍したノヴァティスと言う戦士の存在を思い出す。

 ただの女子中学生である自分が、ノヴァティスの様な正義の戦士として戦わないといけないのか……そう考えると、その使命感に押し潰されそうになった。

 

――――――――――――

 

【第4章 決意の剣人RESOLVE】

 

 怪人を撃破した翔音は、誰かが来る前にその場を立ち去り、学校へ登校。

 その一日を何事もなかったかのように過ごし、特に何事もなく無事に帰宅し、ベッドに倒れ込んだ。

 変身する姿を見られていたんじゃないか、捕まって解剖されるんじゃないか等と言う考えで頭の中がいっぱいになり、とても生きた心地がしなかった為、翔音は心身共に疲れ切っていた。

 

「……きっと……何もない……よね……?」

 

 翔音は自分の手をじっくり見つめる。

 その手はいつもと変わらぬ細く綺麗な自分の手だった。

 この手があんな異形の姿に変化し、怪人を倒した。

 とても自分がした行いには見えず、翔音はただ、恐怖するしかなかった。

 

――――――――――――

 

 ミステベステが怪人を撃破してから三日が経過した。

 警察による現場検証も終わり、ここで怪人と何者かがやり合ったのは確かと言う結果で終わった。

 しかし、ここで何があったのかは現時点では分からず、最初の事案共々、警察は引き続き調査を続けることになった。

 

 現場検証が終わった事で封鎖も終わり、剣人と結愛、都の三人は休日を利用してこの道まで来ていた。

 剣人が変身したあの姿は、鋼によって進化したノヴァティスと言う事で『ノヴァティス・エヴォル』と名付けられた。

 自身の力に戸惑う剣人に、鋼何か手掛かりがあるだろうからと、丁度現場検証の終わったここに行くように伝えた。

 剣人はそわそわしながら、結愛はわくわくしながら、都は退屈そうにしながらこの現場を眺める。

 

「どう? 剣人くん、何か感じる?」

 

 結愛の問いに、剣人はじっくり辺りを見つめるが、何も感じない。

 

「駄目だ、特に何もないよ」

「やっぱ無駄足だったじゃん、折角の休日をこんな事に使って……私、お洋服買いに行く予定だったのに……」

 

 剣人は都に「ごめんごめん」と謝るが、その都の頬は赤い。

 ここに来る事に興味はないが、剣人と一緒に居たくて付いてきたのだろう。

 丁度、結愛と言うお邪魔虫もいるから尚更だ。

 

「証拠品とかも、警察が持って行っちゃったのか、全然ないね」

 

 結愛は地面にしゃがんで何かないか辺りをきょろきょろ見つめる。

 

「まあ、手掛かりは何もないかもしれないけど、貴重なものは見れたよ」

 

 剣人は奥に立つ古びたマンションを見つめる。

 

「お兄ちゃん、あのマンションがどうかしたの?」

「うん、あのマンションは、父さんが成人するまで暮らしたマンションらしいんだ、何でも、怪人のせいで身寄りがなくなった父さんに、ある恩人の人がポケットマネーで十年は暮らせるようにしてくれたらしくてね、父さんは成人になるまであそこで暮らしてたらしいんだ」

 

 剣人だけでなく、結愛と都も興味深そうにマンションを見つめる。

 

「剣人くんのお父さん、あそこで暮らしてたんだね、今は誰が住んでるのかな?」

「確か、母さんがたまたまこの道を通った時に、中学生ぐらいの女の子が出入りしたのを見たって言ってた」

「お父さんが使ってた部屋、今でも誰かの役に立っているんだね」

 

 剣人たちはしばらくマンションを見つめた後、特に情報も得られないと判断し、帰る事にした。

 その時であった、剣人たちの前に、真っ黒な体色のカラスの怪人が上空から飛来し、着地した。

 人間とカラスを足して二で割った様な姿をし、背中には漆黒の翼が生えている。

 カラス怪人は剣人たちを見つめると、ゆっくりと剣人たちに近付いた。

 

「怪人! 二人は逃げて! ここは俺が!」

「剣人くん、死なないでね!」

「お兄ちゃん、頑張って!」

 

 そう言って二人は全力でその場から離れる。

 ただ一人残された剣人は、怪人を目の前にして恐怖を感じていた。

 

(今からこんな奴と戦うのか……戦いは怖いし、痛いし、あのネコの怪人と戦った時、ものすごく怖かった、死ぬかと思った……でも、今は戦わないと、結愛や都や他の人が死ぬかもしれない……俺は、誰かが傷付く様なんて見たくない……!!)

 

 戦う決意を決めた剣人は、先代のノヴァティスである父から教わった変身の掛け声を口にする。

 

「神聖変身!!」

 

 その言葉を口にした瞬間、剣人の身体は光に包まれ、光と一体化し、その身体を青い戦士の姿へと作り変えた。

 変身が完了した後、ノヴァティス・エヴォルの右手にはエヴォルブレードが出現し、それを握り締め、地を蹴って怪人に突撃する。

 目の前にいる怪人に、思いっ切りエヴォルブレードを振り下ろすノヴァティス・エヴォル。

 しかし、怪人は大きな翼を羽ばたかせ、後方に移動しつつ、そのまま空中を浮遊。

 勢いそのままノヴァティス・エヴォル目掛けて急降下し、頭突きを放って吹き飛ばす。

 

「ぐあぁっ!!」

 

 突撃をモロに食らって水切り石の如く吹き飛ばされるノヴァティス・エヴォルだったが、エヴォルブレードを地面に突き立て、勢いを殺し、再び怪人目掛けて突撃する。

 

(このまま突撃しても、さっきの二の舞だ! 何とかして、あの翼を切り落とさないと!)

 

 ノヴァティス・エヴォルは再びカラス怪人に対してエヴォルブレードを振り下ろすが、やはり先程同様飛んで回避された。

 しかし、それは想定内であり、ノヴァティス・エヴォルは地を強く蹴り、カラス怪人目掛けて高く、早くジャンプする。

 想定外の事態に驚くカラス怪人に、ジャンプで急接近したノヴァティス・エヴォルは、エヴォルブレードに光を纏い、横一直線に振った。

 カラス怪人の胴体は一刀両断され、爆発四散した。

 無事に着地したノヴァティス・エヴォルの身体は、一瞬光に包まれた後、剣人の姿に戻った。

 

(俺はかつての父さんの事をよく知らないけど、父さんも俺と同じ様に、悩みながら戦ったはずだ……なら俺も、みんなを守る為に、この力を使って怪人と戦う!)

 

 戦いの中で戦う覚悟を決めた剣人は、先代のノヴァティスである父と同じ様に、この力を怪人との戦いの為に使うと決めた。

 親子二代でノヴァティスとなり、怪人と戦う使命を背負ったのは、何かの宿命なのだろうか……。

 

――――――――――――

 

【第5章 かつての友人FRIEND】

 

 剣人たちが情報収集に向かっていた頃、鋼はかつての友人である有人と雫を家に呼んでいた。

 既に37歳になった二人ではあるが、身長と髪が少し伸びた以外は外見に変化はなく、ほとんど当時の面影を保っていた。

 かつての鋼の戦いを知る友人に、ノヴァティスの光が息子に受け継がれた事を伝えた鋼。

 

「つまり、剣人くんは、かつての鋼さんと同じ様に、ノヴァティスに変身できるようになったと?」

「そうなんだ、俺は進化したノヴァティスだから、ノヴァティス・エヴォルと名付けたんだけどね」

 

 鋼の話を聞き、驚いて目を見開く雫。

 その真横で、有人は目を閉じ、腕を組んで何やら考え事をしていた。

 

「有人、どうした?」

「いや、初代から二代目に受け継がれるのは特撮の伝統だと思ってね、有名な例だと宇宙警視総監シリーズとかがあるんだけど……」

「今、特撮の話はいいから真剣に考えてくれ……」

 

 かつてと変わらず何でも特撮の話題に結び付ける有人に頭を悩ませる鋼。

 有人は一言「ごめんごめん、つい……」と返し、すまなさそうに頭を掻く。

 

「とにかく、剣人はノヴァティスの変身能力を得てしまってな、だから俺の時と同じ様に、俺達だけの秘密にしようと思うんだ」

 

 鋼の言葉に有人は「それがいいと思うよ」と返し、雫も「絶対に秘密にします」と返した。

 

――――――――――――

 

 その日の夜、天翔街警察本部の研究室では、孝信がかつての友人である司を呼んで話をしていた。

 孝信と司は高校卒業後、意気投合して親友とも呼べる関係となっていたが、いつしか孝信が天才となった為、知らず知らずのうちに会う事がなくなっていた。

 そんな孝信が、司を職場に呼んだのである。

 

「久々にお前に呼ばれたと思ったら、大分出世したみたいだな……結婚はしてんのか?」

「ああ、五年前に結婚して、娘も二人いるよ」

「じゃあ、友人たちの中だと俺だけ独身なのかよ……」

 

 司は大きなため息をついた後、真剣な表情となり、孝信の方を向く。

 

「で、いきなり俺を呼んだのは、こんなくだらない話をする為じゃないんだろ?」

「君は昔っから勘がいいね、その通りさ」

 

 孝信はパソコンを手早く操作し、モニターに怪人が倒された後の現場写真を表示する。

 それは、ネコ怪人、ヘビ怪人、カラス怪人が倒された時の写真であった。

 

「僕が新型Mトルーパーのエルピウォリアを開発したのは君も知っていると思うけど、この三件に関しては僕達は関与してないんだよね……つまり、エルピウォリア以外の存在に倒された事になる、例えばノヴァティスとか、ね?」

 

 孝信の話を聞き、司は孝信を睨む。

 

「まさかお前、鋼を疑っているのか?」

「慌てないでくれ、別に友人である彼を疑っているわけではない、ただ、今の僕は警察の所属なんだ、できる事なら、ノヴァティスと連携を取りたいんだ、犠牲を最小限に減らす為に……ね」

 

 孝信の話を聞いた司は疑いが解けた事でほっとする。

 

「残念だが、鋼はもう変身できねえんだ、もしできるのなら、また怪人と戦っているはずだ、あいつはそう言う奴なんだよ、困っている奴は放っておけない、そんな奴なんだ」

 

 司の言葉を聞いて、孝信は顎に手を当てる。

 

「……これは仮定だけど、もし、ノヴァティスの変身能力が遺伝する物だとすれば、鋼くんのご子息が変身しているという可能性はないかい? 鋼くん、理乃さんと結婚して子供が二人いたはずだよね?」

「確かに二人子供はいるけど、ノヴァティスの変身能力って遺伝する物なのか?」

「あり得ない話ではないよ、鋼くんによれば、ノヴァティスの光が体に宿っているらしいし、それが遺伝する可能性もゼロじゃない」

 

 孝信は急いでマウスを入力し、変身能力が遺伝する可能性を計算する。

 その時である、怪人出現の警報が鳴り響いた。

 

「怪人が出現したか、折角だ、司くんにもエルピウォリアの性能を見てもらおうか」

 

 孝信が護に出撃命令を下すと、護はすぐさま出撃準備室でアンダースーツに着替え、装甲を身に纏い、エルピウォリアへと姿を変える。

 エルピウォリアは発進ゲートに駐車していたシルトチェイサーに乗車し、開門したゲートから発進する。

 その後、エルピウォリアのメット内モニターに表示された場所へ、一直線に走行。

 事件発生現場である公園に到着すると、毒蛾の幼虫と人間の中間の様な姿の、無数の毛を生やした怪人が、口から吐いた糸で市民の首を締め、絞殺していた。

 毛虫の怪人は殺した人々を投げ捨て、死体を眺めてケラケラと笑い声を上げる。

 

「何て事を……許せない!」

 

 護は人を殺して満足そうに笑う怪人を見て、怒りのあまり拳を握り締める。

 タコ怪人は標的であるエルピウォリアを見つめると、口から糸を吐き出した。

 エルピウォリアはすぐに右腿部装甲に内蔵された電磁警棒、MB-03 アンバーを手に取り、糸を切り払う。

 糸がヒットした瞬間、電撃がバチッと弾け、糸に火が付く。

 すると、毛虫怪人は体の毛を飛ばし、毛がエルピウォリアの胸部装甲に命中すると、大きな爆発を起こした。

 

「うわあっ!!」

 

 爆発で後方に大きく吹き飛ばされたエルピウォリアは、電柱に背部をぶつけ、ダウンする。

 それでもすぐに立ち上がり、左腿部装甲に内蔵された自動小銃MB-01 スピネルを引き抜き、トリガーを引いて銃弾を連続発射する。

 しかし、毛虫怪人の身体は軟体動物のように柔らかく、銃弾は全て跳ね返り、効果がなかった。

 

「弾かれる!? なら、これで!」

 

 エルピウォリアはスピネルをしまうと、再びアンバーを手に取り、接近戦を行う為、足を走らせた。

 毛虫怪人は再び糸を放つが、咄嗟に見切って回避し、毛虫怪人の懐に入り込むと、アンバーを毛虫怪人の腹部に突き刺し、電流を流し込む。

 

「ギャアアアッ!!」

 

 毛虫怪人は苦痛のあまり叫び声を上げる。

 何とか引き離そうと、毛虫怪人はエルピウォリアの身体を殴るが、エルピウォリアは決して離れなかった。

 やがて毛虫怪人の身体は焼け、地面に崩れ落ち、爆発四散した。

 

「何とか撃破したぞ……」

 

 護は周囲を再度確認する。

 怪人の反応はない、しかし、辺りには無数の死体が。

 性別年齢は様々な人々の亡骸、その中には学生もいた。

 

「警察官なのに、僕は守れなかった……! こんなにも大勢の人を……!」

 

 護は自分の無力さに怒りを覚え、拳を握り締めた。

 

――――――――――――

 

【第6章 傷付く少女HURT】

 

 エルピウォリアの出撃準備室にあるモニターでエルピウォリアと毛虫怪人の戦闘を観ていた周は、護の戦い方を観て、鼻で笑う。

 

「何て下手くそな戦い方だ、私なら、もっとうまく立ち回れると言うのに……やはり、優秀さでは私の方が上のようだ」

 

 周は、手元に持っていた書類に目を移す。

 その書類には、『D-SWAT』という文字と、エルピウォリアに似たアーマーの戦士の姿、そして、様々なデータが記載されていた。

 

「赤月さん、あなたの時代はもう終わりですよ、このDスワットは既に完成間近、今週中には出撃可能となります、これからはこの私、白石 周が、怪人退治の専門家になるんです」

 

 周は書類を鞄にしまい、出撃準備室を後にした。

 

――――――――――――

 

 エルピウォリアが毛虫怪人を撃破してから三日が経った。

 あれから怪人災害は起きておらず、平和な日々が続いていた。

 だが、怪人災害が続いている以上、この静けさはどこか不気味な雰囲気を感じさせた。

 かつての怪人災害では、多くの人命が失われ、今回の怪人災害でも多くの命が失われている。

 以前と違って、今回は人類が怪人と対等に戦える手段を得たが、それでも被害をゼロにするには至らないのだ。

 

 ミステベステへの変身能力を得た翔音は、その正体を誰にも知られないまま、今日も学校に通っていた。

 翔音は先日の怪人災害で、学校の親しい友人が怪人に殺された事を思い出す。

 毎朝教室で声をかけてくれる、明るい性格の、自分とは正反対な女の子。

 あまり会話をした事はなかったが、その子が死んだ。

 もう教室に行っても、その子に会う事はない。

 人が死ぬと言うのはそういうもので、死んでしまったら二度と会えなくなる。

 死ぬと、人はどこに行くのだろう。

 考えれば考える程、翔音は怖くなり、体の震えが止まらなくなった。

 

「私は……死にたくない……」

 

 翔音は小さな声で呟く。

 その声は、今にも消えてしまいそうなほど小さな声であった。

 

 翔音が通学路を通っていると、公園の前に来た。

 この間、ここでその子が怪人に襲われて死んだ。

 塾で帰りが遅くなって、ここを通った際に糸で首を絞められ殺されたらしい。

 公園の淵には、亡くなった人を弔う為の花が供えられていた。

 それを見て、翔音も何か供えようとスクールバッグの中を漁る。

 見つけたのは、小さなイチゴ味の飴。

 翔音はそれを静かに花の傍に供え、手を合わせる。

 

 その時である、液体生命体と一体化して強化された五感が、翔音に危機を伝える。

 この近くに、怪人の反応があると。

 翔音は慌てて辺りを見渡し、怪人の居場所を探る。

 怪人の反応がする位置にゆっくりを目を向ける、それは、木の上。

 木の上に、白い、大きな繭があった。

 

「この間倒されたのは、毛虫の怪人って聞いたけど、もしかして、別の毛虫怪人がいて、繭になっているって事!?」

 

 翔音が戦う覚悟を決めたその時、繭が赤く発光し、高熱が発せられ、繭がロウのようにドロドロと溶けて地面に落ちる。

 その溶けた繭と共に、一体の怪人がゆっくりと地面に着地し、背中の翅を伸ばす。

 その怪人は、茶色い翅を持った毒蛾を人型にしたような怪人であり、体の各所にはファーの様な毛が生えていた。

 

「この間倒されたのは幼虫……じゃあ、こいつが成虫なの!?」

 

 毒蛾怪人は目の前の翔音を無視して、ゆっくりと翅を羽ばたかせた。

 

「まさか、人の多い場所に行くつもり!?」

 

 翔音は、殺された友人の事を思い出す。

 優しくて、明るくて、可愛かった友人の女の子。

 何も悪い事をしていないあの子が、怪人の無差別殺人によって殺された。

 そして、目の前にいる怪人は、更に犠牲を増やそうとしている。

 

「そんな事……許さない!!」

 

 翔音の怒りの感情が爆発すると同時に、翔音の身体は眩い光に包まれ、その光で毒蛾怪人は怯む。

 次の瞬間、一瞬にして翔音の肉体は緑の戦士、ミステベステへと変身した。

 

「これ以上、誰も死なせはしない! あんた達なんかの為に、これ以上誰かを死なせたくない!!」

 

 ミステベステは両腕のトゲを伸ばし、一直線に毒蛾怪人の首元を狙う。

 しかし、毒蛾怪人は高く跳んでその棘を回避し、口から毒針をマシンガンの如く連続して放つ。

 その毒針を、ミステベステは両腕のトゲで切り払う。

 

 毒蛾怪人はジャンプした勢いで羽ばたき、ミステベステ目掛けて小さな弾丸を放つ。

 ミステベステは弾丸を切り払うが、トゲが弾丸に命中した瞬間、爆発し、トゲは根元から折れ、ミステベステは吹き飛ばされる。

 

「くっ!」

 

 ミステベステは折れたトゲをトカゲの尻尾の如く切り捨て、新たなトゲを生やす。

 毒蛾怪人は、膝を付いたミステベステの姿を見て、ケタケタと笑う。

 

(怪人ってもしかして、殺人を楽しんでるの……? 苦しんでる人々を見て、楽しんでるの……?)

 

 翔音のそんな考えをよそに、毒蛾怪人は先ほどの炸裂弾を連続して放つ。

 ミステベステはすぐに回避するが、地面に着弾した炸裂弾の爆風でミステベステの体が浮き、地面に叩き付けられる。

 その時、翔音の前を、小学生の女の子が通る。

 女の子は、ミステベステと毒蛾怪人の姿を見て、恐怖のあまり足がすくむ。

 その女の子を標的にした毒蛾怪人は、翅を羽ばたかせ、女の子の方へ飛来する。

 

「駄目! 逃げて!!」

 

 翔音は女の子を助けようと、立ち上がろうとするが、爆風と叩き付けられた際の衝撃で体が言う事を聞かない。

 必死に身体を動かそうとする翔音の健闘も虚しく、女の子は毒蛾怪人の振るった腕で胸を貫かれた。

 辺りに女の子の血が飛び散り、その血が翔音の顔にかかる。

 絶命し、ぐったりとする女の子の小さな身体。

 投げ捨てるように腕を抜き去られ、女の子の死体が翔音の顔に覆い被さる。

 顔全体に広がる血の匂い、助けられなかった小さな命、そして、自分の無力さ。

 その全てをあざ笑うように、毒蛾怪人はケタケタと笑う。

 

 何も考えられず、考える事ができず、ただ自分の無力さに強い怒りを覚える翔音。

 その翔音の怒りに呼応するかの様に、ミステベステの身体の傷が一瞬にして癒える。

 ゆっくりと立ち上がるミステベステの両目は、ただ目の前にいる『敵』を見据えていた。

 

「……許さない……お前みたいに、殺戮を楽しむ奴を……私は絶対に許さない……私の大切な人はみんな……お前達に殺されたんだっ!!!」

 

 怒りの叫び声を上げながら、ミステベステは全身のトゲを一斉に毒蛾怪人へと伸ばす。

 毒蛾怪人は再び飛んで回避するが、ミステベステのトゲは毒蛾怪人を追尾するように曲がる。

 予想外の事態に驚く毒蛾怪人は、口から炸裂弾を放ってトゲを破壊する。

 しかし、ミステベステの再生能力によって一瞬でトゲは鋭利な形状に再生し、毒蛾怪人の周囲を囲い、毒蛾怪人の行き場を奪う。

 

「死んじゃえっ!!!」

 

 翔音の合図と共に、毒蛾怪人の身体を無数のトゲが貫く。

 毒蛾怪人の身体からは緑色の体液が噴き出し、直後、爆発四散する。

 

 ミステベステは伸ばしたトゲを戻し、翔音が戦闘態勢を解いた事で、翔音の変身は解除される。

 顔に女の子の血が付いたまま、翔音は女の子の亡骸を見つめる。

 

「私……守れなかった……」

 

 戦う力を得たのに、目の前の女の子一人守れなかった。

 その事実は、翔音の心に深い傷を残し、翔音は目に涙を浮かべながら、公園を後にし、学校に向かう事なくマンションへと帰宅。

 カーテンを完全に閉め切り、暗い部屋で一人、涙を流し続けた。

 

――――――――――――

 

【第7章 欲望の戦士DESIRE】

 

 戦う力を得ても、結局自分は目の前の女の子一人助けられない無力な人間。

 それを痛い程知ってしまった翔音は、暗い部屋で無気力に、一晩中壁にもたれていた。

 今だに脳裏に浮かぶ、亡骸となった少女の姿。

 あんなに怯えていたのに、助けられなかった。

 この事実は、女子中学生である翔音が背負うには、あまりに重い現実であった。

 

「私があの時、動けていれば……!」

 

 頬を流れる涙が止まらない。

 既に十分に泣いて瞼は真っ赤に腫れている。

 食事も取れておらず、激しい空腹が翔音を襲う。

 だが、今の翔音は何をする気力も起きず、ただ壁にもたれて絶望するしかできなかった。

 家族を失い、友人を失い、目の前で怯える少女すら救えなかった翔音の負った心の傷は、あまりにも深かった。

 

――――――――――――

 

 ミステベステが毒蛾怪人を撃破した事は、天翔街警察本部にも伝わっていた。

 公園で発見された少女の遺体は司法解剖され、傷口に付着したDNAや傷口の形状から怪人災害による死である事が判明し、無事遺族に返却される事になった。

 だが、年端も行かぬ少女が死亡した事実は、人々を守る警察にとっては耐え難い怒りを感じさせた。

 

「くそっ! 怪人め! あんな小さな女の子まで! まだやりたい事もあっただろうに……!」

 

 怒りを抑えられず、出撃準備室のコンクリート製の壁を叩く護。

 その拳は怒りで震えていた。

 

「僕は人々を守る為に警察官になったのに……! 全然守れてないじゃないか……!」

 

 護の脳裏に浮かぶのは、駆け付けた先で怪人に無残に殺された人々の姿だった。

 守れた人々より、守れなかった人々の方が多い。

 その人一人一人にも、人生があり、未来があったはずなのに、その人の人生も未来も、守れなかった。

 行き場のない自分の無力さへの怒りを、コンクリートの壁にぶつける護。

 エルピウォリアの姿になれば、このコンクリートの壁は簡単に破壊できる。

 だが、その力を得ても、全ての人を守る事は出来ない。

 

「このままでは、怪人災害の犠牲者は増える一方だ……くっ! どうすればいいんだよっ!!」

 

 全力で壁を殴ろうと、大きく腕を振りかぶる護。

 その腕を、いつの間にか出撃準備室に入ってきていた周が掴む。

 

「珍しく荒れてますね、赤月さん?」

「白石さん……」

「ですが、それ以上壁を殴るのはやめてもらいますよ、その腕……戦闘に支障が出るかもしれませんからね」

 

 護の拳は既に川が剥け、血まみれになっていた。

 見かねた周は、救急箱に入っていた包帯を手渡す。

 

「普段の赤月さんなら、私が部屋に入った時点で気付くのですが、今日は珍しく気付きませんでしたね、お陰で、面白い物が撮れましたが……」

 

 周は、スマホに録画した荒れた様子の護の映像を本人に見せる。

 しかし、護は一切言い返す事なく、包帯を巻いていた。

 

「はぁ……その様子、どうやら相当嫌な事があったみたいですね」

「……白石さん、こんな事、白石さんに聞くのはおかしいかもしれませんが……僕一人で怪人と戦うのは無理です」

 

 珍しく弱気な護の言葉を聞き、周は目を細める。

 そして、護が荒れていた様子と、先程の弱気な発言から、周は護の言いたい事を瞬時に察する。

 

「言いたい事は分かりました、つまりあなたは、自分一人では、人々を守り切れないから荒れているわけですね」

 

 周に思っていた事を当てられ、護は何も言い返せない。

 

「図星ですか……大体分かりやすいんですよ、あなたは」

 

 周はため息をつき、鞄に入っていた書類を護に見せる。

 

「赤月さん、これを見なさい」

「D……スワット……? これって……!」

「そう、新たに開発された強化スーツ、Dスワット! その装着者に私が選ばれ、スーツもつい先ほど、完成したのです」

 

 自慢気に書類を見せつける護。

 すると、護の表情が明るくなる。

 

「つまり、これからは白石さんも一緒に戦ってくれるんですね!」

「え、ええ、まあ、そうですね……」

 

 周は戦う力を得た事を護に自慢するつもりであったが、護の純粋な歓喜の表情を見て、その気を失せさせてしまう。

 

「ともかく、これからは共に戦いましょう、赤月さん」

「はい! 頑張りましょう!」

 

――――――――――――

 

 その日の夜、怪人出現の警報が鳴り響いた。

 丁度そのタイミングでエルピウォリアは強化装備の試験運用中であり、エルピウォリアは出撃出来ない状況となっていた。

 護のスマホから、周に連絡が行く。

 

『すみません! 白石さん! 僕の代わりに出撃お願いします!』

「もうやってますよ! 準備の邪魔をしないでください!」

 

 周はインナースーツを着ながら、そう返し、通話を切る。

 インナースーツを着終えると、出撃準備室に搬入されたDスワットのアーマーを装着し、白銀の装甲で全身を包んだDスワットへと装着完了する。

 次に、発進ゲートに駐車された専用白バイのデストチェイサーに搭乗し、開門した発進ゲートから滑るように発進する。

 メット内に表示された目的地までデストチェイサーを走らせる周。

 彼の脳裏には、あの護の純粋な笑顔が浮かぶ。

 周は優秀なエリート刑事ではあるが、出世欲があり、若き期待のホープである護を一方的にライバル視していた。

 幼い頃から完璧主義な周は、いつしか自分でさえも抑えられない出世欲を抱いていた。

 その出世欲が自身の邪魔をする事はなかったが、周りからは変わり者に見られていた。

 しかし、そんな自分に対しても明るい表情を見せた護。

 護と関わった事で、本来は優しい心を持つ周は複雑な気持ちを抱いていた。

 

「ああ、もう! 彼と関わると調子が狂いますよ! あんな目で見られたら、期待に応えないといけないではないですか!」

 

 デストチェイサーの速度を上げ、目的地まで一直線に走行したDスワット。

 目的地に到着すると、そこには黄金色の毛皮に覆われた人型をしたキツネの怪人が、人を襲おうとしている最中であった。

 

「周辺を確認する限り、まだ死者はいませんね!」

 

 周は右腿部装甲に内蔵された小型自動小銃 Dショットを抜くと、トリガーを引き、貫通力の高い特殊合金製の銃弾を放つ。

 銃弾はキツネ怪人の背中に命中し、赤黒い体液が噴き出る。

 

「ガオオオッ!!」

 

 ダメージを負って、攻撃目標をDスワットに変更するキツネ怪人は、地面を強く蹴ってDスワットに飛び掛かる。

 だが、Dスワットはその場から動かず、Dショットの銃口をキツネ怪人の目に向け、トリガーを引く。

 発射された銃弾は、キツネ怪人の左目を潰し、キツネ怪人は蹲って苦しむ。

 

「いくら怪人でも、目を潰されては何もできないでしょう!」

 

 Dスワットは空になったカートリッジを排出し、左腿部装甲に内蔵されたカートリッジを取り出して装填、キツネ怪人に銃弾を連続して撃ち込む。

 

「グウウウッ!!」

 

 キツネ怪人は尻尾を振り、銃弾を弾くと、素早く動いてDスワットの胸部装甲を引っ掻いた。

 火花が飛び散り、後ろに後退るDスワットを追撃し、何度も何度も引っ掻く。

 

「くっ! 本気を出してきましたね!」

 

 元々が試作機であるDスワットの武器はDショット一丁のみ。

 接近戦となっては強化スーツによる肉弾戦を行うしかない。

 周はDショットをしまうと、キツネ怪人の顔面に一発、二発とパンチを打ち込む。

 

「私はエリートだ! 射撃だけではなく、格闘もお手の物なんですよ!」

 

 そう言ってキツネ怪人にアッパーカットを放ち、吹き飛ばした後、地面に崩れ落ちたキツネ怪人に、再び抜いたDショットから連続して銃弾を撃ち込む。

 

「ギャアアアアアッ!!」

 

 キツネ怪人は断末魔の叫び声を上げた後、爆発四散し、完全に沈黙した。

 周は周囲の確認をし、市民の無事を確認すると、本部に怪人撃破の報告を入れる。

 

「周です、出現した怪人を撃破、本部に帰投します」

 

 初出撃で怪人を撃破した周。

 今の彼には出世欲よりも、護との約束を守れた事の方が大切であった。

 あの時、護の言った「一緒に戦ってくれるんですね!」の言葉は、周の中で完全に消えていた正義感を目覚めさせたのだった。

 

――――――――――――

 

【第8章 怪人軍団の襲来CORPS】

 

 キツネ怪人の撃破から一週間が経過した。

 その間、怪人災害は起きず、平和な日々が続いていた。

 しかし、この期間は、怪人達がこれから起こす大事件の、ほんの前触れであった。

 

 特に事件もない平和な真昼の天翔街に、突如として翅の生えた蜂の怪人の群れと、全身が真っ黒な蟻の怪人の群れが、天翔街の各地に出現した。

 空中を自在に飛び回り、人を掴んでは高所から落とし、殺害する蜂の怪人と、地上を群れては人々の首筋に噛みついて殺害する蟻の怪人。

 天翔街は地獄絵図と化し、人々は逃げ惑い、混乱状態となっていた。

 この異常事態に際し、エルピウォリアとDスワットはすぐさま本部から発進し、各地にいる怪人の撃破に向かった。

 

「白石さん、お気を付けて!」

「そちらこそ、くれぐれも死なないように」

 

 エルピウォリアはスピネルを、DスワットはDショットを怪人に向け、怪人を的確に狙い撃つ。

 発砲音と命中音、怪人の叫び声が辺りに木霊する。

 蜂と蟻の怪人は数が多い分、一体一体は弱いようで、銃弾を二、三発撃ちこむだけで爆発四散する。

 しかし、この怪人の武器はその数の多さ。

 圧倒的物量を前に、エルピウォリアとDスワットは後退を余儀なくされる。

 

「くっ! かつてもアリアントと言う怪人が物量で攻めたと言う記録はありましたが、ここまでではなかったはずです!」

「せめて、エルピウォリアの強化装備が間に合っていたら……!」

 

 エルピウォリアの強化装備、それはエルピウォリアの火力、守備、速度を強化する追加ブースターなのだが、安全性が不十分と言う事から採用が見送られた。

 現在は孝信が必死に改良をしているが、結局この事態には間に合わなかった。

 

「ない物を頼っても仕方ありません! ここは一度後退しますよ!」

 

 エルピウォリアとDスワットが後退を始めたその時、二人のメット内レーダーに怪人に酷似した反応がキャッチされる。

 二人がその方角を向くと、そこにはかつての怪人災害で怪人軍団を打ち倒したノヴァティスの進化した姿、ノヴァティス・エヴォルの姿があった。

 警察官である二人は、まだエヴォルの存在を知らず、驚き、戸惑っていた。

 

「あれは……ノヴァティス……?」

 

 思わずその名を呟く護。

 怪人達はエヴォルを視認すると、一斉に襲い掛かる。

 エヴォルはエヴォルブレードを構えると、刀身に光のエネルギーを纏い、横薙ぎに振るい、光のエネルギー刃が広範囲を切り裂く。

 光のエネルギー刃で切り裂かれた蟻怪人は一斉に爆発四散し、全滅する。

 

「何と言う力……!」

 

 エヴォルの圧倒的な力を前に、周でさえも思わず呟く。

 しかし、空中にいた蜂怪人は尚も健在であった。

 蜂怪人は一斉にエヴォルに飛来。

 その蜂怪人を、エヴォルは一匹ずつ切り伏せる。

 

「何をしているんです! 私達も行きますよ!」

「はい! 白石さん!」

 

 護と周も援護射撃を行い、蜂怪人を一匹ずつ撃破する。

 飛来した蜂怪人をエヴォルが、空中の蜂怪人を護と周が撃破する事で、やがて怪人軍団は壊滅した。

 

 激闘を終えて、一息ついた三人の戦士たち。

 辺り一帯の被害は甚大で、とても勝利とは言えなかったが、これ以上の被害を出す事はない。

 複雑な感情を残したまま、戦いの疲れを癒す三人。

 護と周はメットを外し、外の空気を吸っている。

 護は、変身したままのエヴォルの正体が気になり、彼に話を聞く事にした。

 

「ところで君、一体何者なんだい? 君の姿、かつて現れたノヴァティスに似てるんだけど、何か関係は?」

「え、えっと、その……」

 

 エヴォルの変身者である剣人は戸惑ってしまう。

 正体は絶対にばらさないようにと、父と母、都と結愛にきつく言われている。

 怪人軍団と戦う前にも、「正体だけはばれないように」と言われていた。

 

「すみません、正体がばれると色々とまずくて……」

 

 剣人は思っていた事を正直に口にする。

 周は剣人の言葉を聞いて、ため息をつく。

 

「あのですね……我々警察としては、君の素性を――」

「分かります! それって、ヒーローのお約束ですもんね!」

 

 周の言葉を遮るように、ヒーローのお約束を聞いて興奮する様子を見せる護。

 剣人と周は完全に固まっており、困惑する。

 

「ですがね、赤月さん――」

「駄目ですよ、白石さん! ヒーローは素性を明かさないのがお約束なんです! もし正体を明かしてしまったら、色んな組織から狙われるんですよ? 裂空騎士シリーズの伝統じゃないですか、知らないんですか?」

「いえ、私は特撮は全くと言っていい程観ていなくて……」

「なら、今度一緒に観ましょう! 裂空騎士シリーズ、いいですよ?」

 

 護の特撮トークが爆発し、困惑してたじろぐ周。

 その様子を見ていた剣人も、完全に困惑してしまっていた。

 

(この人も結愛と同じ特撮好きなのか……)

 

 普段の結愛が特撮を語るテンションを思い返す剣人。

 剣人は特撮を観る趣味はあるが、ここまで熱く語る程の人間ではない。

 住む世界が違うなと思っていたその時、エヴォルの怪人探知能力が、新たな怪人の襲来をキャッチする。

 

「二人共、気を付けてください! ここに怪人が来ます! 数は三! その内の一体は……凄まじい力の持ち主です!」

 

 二人はメットを装着し、戦闘態勢を取る。

 

「怪人はどこから来るんですか?」

「正面です!」

 

 周の問いに対し、剣人は正面を指差しながら答える。

 護と周はそちらに銃口を向けながら、怪人の襲来に備える。

 

 現れたのは、鷹の怪人とカマキリの怪人とカブトムシの怪人の三体。

 それぞれ、憑りついた生物の特徴を備えた人型の姿を取っており、鷹の怪人に至って背部に大きな翼を持っていた。

 鷹の怪人はカマキリとカブトムシの怪人の中心に立ち、二体よりも少し後ろを歩いていた事から、この怪人が二体を従えているのだろう。

 三匹の怪人は、剣人たちを発見すると、右手を正面に突き出し、二体に攻撃の指示を出す。

 カマキリの怪人は両腕の鎌を研ぐような仕草をし、カブトムシの怪人は頭の角を向けた後、剣人たちに向かって足を走らせた。

 

「俺はカブトムシの相手をします! お二人はカマキリを!」

 

 そう言ってエヴォルはエヴォルブレードを振り下ろす。

 だが、カブトムシ怪人は頭の角でエヴォルブレードを切り払った後、角でエヴォルを突き飛ばす。

 

 一方のエルピウォリアとDスワットは銃撃でカマキリ怪人を狙い撃つも、両腕の鎌で弾かれ、銃弾が届かない。

 逆に、カマキリ怪人が鎌を振って放つ真空波で装甲を傷つけられ、ダウンする。

 

 自分達の力を見せつけ、ケタケタと笑う二大怪人。

 強力な真空波で一時的に機能停止し、動けないエルピウォリアとDスワット。

 唯一動けるエヴォルはすぐに立ち上がり、二大怪人を睨む。

 

「この怪人、強い! でも、俺はまだ負けてない!」

 

 エヴォルは自分の意識を集中させ、エヴォルブレードに光のエネルギーを纏う。

 カブトムシ怪人とカマキリ怪人は武器を構え、エヴォルに突撃する。

 刹那、エヴォルは光のエネルギーを纏ったエヴォルブレードを振るう。

 すると、カブトムシ怪人の角が、カマキリ怪人の鎌がすっぱりと切断されていた。

 断面も綺麗に、まるで鋭利な刃物で切られた羊羹のようであった。

 己の武器を失って戸惑う二大怪人。

 エヴォルは再びエヴォルブレードに光のエネルギーを纏う。

 

「これで決める! エヴォルスラッシュ!!」

 

 エヴォルは光のエネルギーを纏ったエヴォルブレードで袈裟斬りを放つ。

 カブトムシ怪人とカマキリ怪人の身体は斜めに切断され、爆発四散する。

 二大怪人を撃破し、残った鷹怪人の方を向くエヴォル。

 

「残すはあいつだけだ……!」

 

 鷹怪人はエヴォルの姿を見て、鼻で笑う。

 

「ノヴァティスか……忌々しい存在だ……」

 

 鷹怪人はエヴォルの姿を見てそう呟いた。

 初めて喋る姿を見せた怪人。

 その事実に剣人、護、周の三人は驚き、言葉を発する事が出来なかった。

 

――――――――――――

 

【第9章 怪人王HAWK】

 

「怪人が、喋った……?」

 

 突如言葉を発した鷹怪人に、驚き、戸惑う剣人たち。

 

「ふん、我が喋った程度でそこまで驚くか……まあ、当然だろう、我は怪人達を統べる存在、怪人王だからな」

 

 怪人王、その名称を聞いた護は、かつて怪人災害を引き起こした存在を思い出す。

 その存在とは、怪人王グランヴァール。

 かつて怪人軍団を率いてノヴァティスとその仲間達と戦い、最後は人々の光で進化したアルティメットノヴァティスと激しい空中戦を繰り広げ、倒された怪人の王。

 グランヴァールの死をもって、怪人災害は終息し、それから二十年間怪人災害は起きていなかった。

 だが、隕石と共に飛来した液体生命体が地球生物と一体化し、怪人となった事で、再び怪人災害は引き起こされた。

 もし、グランヴァールとこの鷹怪人に関連性があるとすれば……。

 

「怪人王、一つ質問がある」

「何だ、言ってみろ」

「怪人王グランヴァールという存在を、知っているか?」

 

 護からグランヴァールの名を聞いた鷹怪人は顎に手を当て、考え事をする。

 

「怪人王グランヴァールか……懐かしい名だな……宇宙でその名を知らない者はいない……だが、奴はノヴァティスに倒された……」

「そうだ! 二十年前、ノヴァティスによって!」

「知っているとも、グランヴァールが死んだ今だからこそ、我がノヴァティスを倒し、怪人王の名を引き継ぐのだ! この液体生命体ゲルクスの長、レクトがな!」

 

 液体生命体ゲルクス、そしてその長レクト。

 この存在こそが、今回の怪人災害の元凶。

 その目的は、ノヴァティスを倒し、怪人王の名を引き継ぐ事。

 エルピウォリアやDスワットは最初から眼中にすらなかったのだ。

 

「お前たちにとって、ノヴァティスを倒す事や、怪人王になる事は、そんなに重要な事なのか?」

 

 剣人がレクトに問う。

 

「当然だ、我々ゲルクスは、他の有機生命体に憑りつかねば何もできない貧弱な生命体……そのゲルクスがノヴァティスを倒したとなれば、我々の名声は宇宙全土に轟くはずだ!」

 

 つまり、ゲルクスは弱い生命体だから、グランヴァールを倒したノヴァティスを倒し、怪人王の名を受け継いで、今まで馬鹿にした連中を見返してやろうと言う事だろう。

 だが、そんな目的の為に、大勢の人間が殺された事が許せるはずがなかった。

 拳を握り締め、今にも怒りの言葉を叫ぼうとしたその時。

 

「そんな事の為に……関係ない人を大勢殺したの!?」

 

 怒りの言葉をぶつけたのは、ミステベステに変身した翔音であった。

 レクトはミステベステの方を向くと、珍しい物を見たかの如く「ほう」と反応を示す。

 

「裏切り者が一匹人間の味方をしていると聞いたが……貴様か、リマ」

 

 翔音と一体化しているゲルクスの名を呼ぶレクト。

 しかし、翔音にとってそんな事はどうでもよかった。

 家族を、友人を、少女を殺した張本人が目の前にいる、それがなにより許せなかった。

 

「今そんな事はどうだっていい! 名声が何? そんなものが一体何だっていうの? それの為に殺された人が大勢いるのに、あなた達は悪いとも思わないの?」

「思わんな、我々はとある異星人から隕石に乗って逃げ延びてきた、そしてこの地球でこうして力を手に入れた以上、地球人を糧として、いずれ宇宙全てを支配する存在となるのだ!」

「ふざ……けるなぁぁぁっ!!」

 

 ミステベステは全身のトゲを一斉に伸ばす。

 だが、レクトはその場から一歩も動かず、羽根を弾丸として飛ばし、トゲを打ち消す。

 

「その程度で、我に挑むつもりか」

 

 エルピウォリアとDスワットは同時にレクト目掛けて発砲し、別方向からエヴォルがエヴォルブレードで斬りかかる。

 だが、レクトは羽根の弾丸で銃弾を撃ち落とし、腕を振るって放った真空波でエヴォルを吹き飛ばす。

 

「無駄だ、貴様らでは我に傷一つ負わせることはできん」

 

 レクトは羽根の弾丸を放ち、弾丸の雨でエルピウォリアとDスワットの装甲を破損させる。

 後方に吹き飛ばされ、金属音を立てて倒れ込むエルピウォリアとDスワット。

 装甲や内部メカが中破し、遂に機能停止する。

 

「くっ! エルピウォリアが動かない!」

「どうやら、完全に破壊されてしまったようですね、ロールアウトしたばかりなのに……」

 

 強化スーツを完全に破壊された護と周を尻目に、レクトは残ったエヴォルとミステベステを見つめる。

 

「さて、残すはノヴァティスと裏切り者リマだけだ、一体化している地球人ごと殺してやる!!」

 

 レクトは再び羽根の弾丸で二人を攻撃するが、二人はすぐさま回避。

 ミステベステは全身のトゲを弾丸としてレクトに放つが、それも羽根の弾丸で迎撃される。

 

「くっ! 大切な人の仇が目の前にいるって言うのに!」

 

 焦りを見せ始める翔音。

 そんな彼女に、剣人は声をかける。

 

「焦っちゃ駄目だ! 今は冷静に!」

「分かってる! 分かってるけど……!」

 

 翔音はレクトを睨み、怪人に殺された人達の事を思い出す。

 殺された家族、友人、少女。

 戦う事が怖くなり、ずっと閉じこもっていた翔音だったが、液体生命体と一体化した事による種同士の共鳴の力によって、レクトの存在を感じ取っていた。

 何もかもが辛くなって自暴自棄になった翔音にとって、ここは絶好の死に場所であった。

 

(死んでもいい! 殺されてもいい! でも、あいつだけは……!!)

 

 翔音はただ一直線に、レクト目掛けて足を走らせる。

 当然、レクトは羽根の弾丸で応戦するが、翔音はそれを食らいつつも前進を続ける。

 

「何っ!? 捨て身だと!?」

 

 レクトは羽根の弾丸による攻撃をやめ、腕を振って真空波を放とうとする。

 だが、翔音は両腕のトゲを伸ばし、レクトの両腕を縄の様に縛って動きを封じる。

 

「小癪な!」

 

 レクトは口から光線を放つ。

 光線はミステベステに命中し、爆発するが、それでも翔音はトゲを解かなかった。

 

「これで……トドメッ!!」

 

 ミステベステの脚部から伸びたトゲが、レクトの胸を貫く。

 

「がはっ!」

 

 胸を貫かれ、赤黒い血を吐血するレクト。

 膝を付き、地面に崩れ落ち、爆発四散する。

 その爆風に巻き込まれ、ミステベステは後方に吹き飛ばされるが、その身体をエヴォルが受け止める。

 

「あ……」

「全く、無茶をして……でも、無事みたいで良かった」

 

 剣人は、受けた傷がみるみる傷が塞がっていくミステベステの身体を見て、ほっとする。

 翔音は、レクトが断末魔と共に起こした炎を見つめる。

 

(みんな……仇は取ったよ……)

 

 翔音は、心の中で大切な人への冥福を祈った。

 

――――――――――――

 

【第10章 酷似した戦士DIFFERENT】

 

 その夜、路地裏をうねうねと這っているナメクジの様な生命体がいた、レクトである。

 鷹怪人の爆発の際、咄嗟に鷹怪人から分離し、何とか生き延びていた。

 爆風で路地裏まで吹き飛ばされ、瀕死の状態で新たな肉体を手に入れようとしているレクト。

 

(このままでは終わらんぞ……必ず、新たな肉体を……!)

 

 その時である、レクトの前に立ち、しゃがみ込んで見下ろす女性の姿があった。

 女性は艶のある深緑の長い髪を持った赤い瞳の女性であり、黒いロングコートを着込んでいた。

 その表情は、珍しいものを見る目で、好奇心が宿った視線が、レクトに向けられていた。

 

「へえ、変わった生き物がいる、これが所謂液体生命体ってやつ?」

 

 女性は人差し指を伸ばし、レクトをつんつんと突く。

 

「人間よ、我が恐ろしくないのか?」

「うわ、喋るんだ、びっくりしたなぁ」

「答えろ、恐ろしくはないのか?」

 

 女性は立ち上がり、空を見上げながら答える。

 

「別に、怖くなんかないよ、私は未来に希望が持てなくてね、毎日を無気力に生きてるんだ、例えあなたに憑りつかれて化け物になったとしても、私は何とも思わない、どうせこれから先、いい事なんてないんだしね」

 

 女性は口元を少しだけ微笑ませ、レクトを見下ろす。

 レクトは、この女性のマイナスな心に目を付けた。

 もしもこの女性と融合し、ミステベステの様な姿になれたとしたら。

 それはつまり、圧倒的な戦闘力を身に着ける事になる。

 

「面白い人間だ、人間よ、我と一体化しないか?」

「え、それってつまり、私と合体したいって事? いやぁん」

「そうではない、我と一体化すれば、超人的な力が手に入ると言っているのだ、かのノヴァティスの様な、な」

「へえ、ノヴァティスかぁ……」

 

 女性もまた、レクトの語る超人的な力に惹かれていた。

 どうせこれから先面白い事もなく、ただ毎日を無気力に生きるなら、その力を手に入れたいと、感じていた。

 女性はしゃがみ込み、レクトに手を差し伸べる。

 

「私は森口 槍香(もりぐち そうか)、貴方の名前は?」

「レクト、液体生命体ゲルクスの長、レクトだ」

 

 レクトは槍香の腕に飛び移り、ゆっくりと槍香の腕に染み込み、姿を消す。

 次の瞬間、槍香の腕からどす黒いオーラが出現し、そのオーラは槍香の身体をゆっくりと包み込む。

 黒きオーラは槍香の肉体をゆっくりと作り変えていく。

 オーラが収まった頃、人間の女性であった槍香の身体は、禍々しい姿の黒い戦士へと変貌した。

 その姿はノヴァティスに酷似している。

 

《どうだ、人間、これが貴様の新たな姿だ》

 

 槍香は近くのカーブミラーで自身の姿を見る。

 ノヴァティスに酷似した姿を見て、槍香は不敵に笑う。

 

「これが私の新たな姿ね、まるでノヴァティスじゃないの」

《そのノヴァティスの力を研究したのだ、名付けて、ノヴァティス・ディファレント! その力は奴と同等、いや、それ以上だ!》

「面白いわぁ、今すぐにでも、この力を振ってあげるわ、このディファレントの力を、ね!」

 

 ディファレントは両腕から赤黒い稲妻を放ち、近くの建物を爆破した。

 その爆音は、夜の街に轟き渡る。

 

――――――――――――

 

 槍香がレクトと一体化する少し前、天翔街警察本部では、ノヴァティス・エヴォルの変身者・日野剣人と、ミステベステの変身者・氷室翔音が、沢田孝信の前に並んで立っていた。

 剣人も翔音も、最初は同行を拒否していたが、護の熱烈な説得を受け、『保護』と言う名目の下で同行を受け入れた。

 天翔街警察としても、二人のプライバシーは尊重し、研究材料としては使わない事を約束した上での同行であった。

 孝信は二人を興味深そうに見つめ、剣人は緊張して固まり、翔音は恥ずかしそうに顔を赤らめ、目を逸らす。

 

「成程、ノヴァティス・エヴォルにミステベステか、剣人くんはかつてのノヴァティスの変身者の息子だからまだ分かるけど、翔音くんは全く新しい戦士……そして、我が天翔街警察にも、人工とはいえ、二人の戦士がいる……かつての戦いから二十年が経って、四人の戦士が揃うなんて、まるで奇跡だね」

 

 孝信はなおも興味深そうに二人を見つめるが、剣人は気になっていた事を質問する。

 

「あの、沢田さん、これから俺達はどうなるんでしょうか?」

「どうなるって? 研究材料にされるとかって事?」

「いえ、そうではなくて、液体生命体ゲルクスのリーダーであるレクトって奴は倒しました、他の怪人も先程の戦いで壊滅したみたいです」

「つまり、戦う理由は無くなったと?」

「はい、怪人は壊滅したはずなのに、まだ俺や翔音には変身能力があるんです、皆さんは感じないと思いますが、俺達は感じるんです」

 

 剣人の話を聞き、孝信はテーブルの上にあったコーヒーを一口飲む。

 

「……剣人くん、それはきっと、まだ戦いは終わってないって事だよ」

「え、それってどういう?」

「君のお父さん、日野鋼と僕は友人同士なんだけどね、二十年前、怪人災害が終わった後、鋼は一度としてノヴァティスに変身した事はなかったんだ……その間、鋼は君達の言う感覚は感じなかった……僕が何を言いたいか、もう分かるよね?」

 

 戦いはまだ終わってない、レクトを倒し、ゲルクス怪人を壊滅させてもなお、まだ戦いは続く……。

 でも、これ以上何と戦うのか、それが分からない剣人たちは、俯き、今後の動向に不安を感じていた。

 その時であった、天翔街の夜の繫華街にて、怪人の様なものが暴れている様子が、対怪人カメラに確認された。

 だが、剣人たちはそのノヴァティスに酷似した怪人の姿を見て、驚き、戸惑う。

 

「ノヴァティスに似ている!? こいつは一体何なんだ!?」

「どうやら、奴は天翔街警察本部を目指しているようだね、剣人くん、翔音くん、エルピウォリアとDスワットは修理中でまだ戦えない、君達に戦ってもらうけど、いいね?」

「「はい!」」

 

 剣人はノヴァティス・エヴォルに、翔音はミステベステに変身し、警察本部の外に出る。

 すると、そこには丁度、ノヴァティスに酷似した戦士、ノヴァティス・ディファレントの姿があった。

 

「あら、やっぱり現れたわね、ノヴァティス・エヴォルとミステベステ」

「やっぱり、近くで観れば見る程、ノヴァティスに似ている!」

「あなたは一体、何者ですか!?」

 

 剣人と翔音の問いを、槍香は鼻で笑った後、静かに答える。

 

「私はノヴァティス・ディファレント、退屈な日々を破壊し、あなた達を倒す者よ」

 

――――――――――――

 

【第11章 ディファレントの脅威THREAT】

 

「ノヴァティス……ディファレント……人間としての意思があると言う事は……あなたは人間なんですか!?」

「ピンポーン、せ・い・か・い・よ」

 

 剣人の問いに、槍香は悪戯っぽく返す。

 

「まだ人としての意思があるのに……どうしてこんな事を……!」

「そんなの簡単よ、こんな退屈な日常、私は耐えられないの、だ・か・ら、ノヴァティスの力を使って、好き勝手に暴れてるのよ、レクトと私は協力関係なの、素敵でしょ?」

 

 翔音の問いに、全く悪い事をしている自覚がない様な話し方で、槍香は返した。

 

「私は神の如き力を手に入れた、最高に気分がいいわ、私はこの力を使って、この退屈な世界を、破壊し尽くしてあげる!」

 

 ディファレントは両掌から赤黒い稲妻を放つ。

 エヴォルとミステベステは飛んで回避し、一気にディファレントへ距離を詰め、同時に蹴りを放つ。

 しかし、ディファレントは二人の戦士の同時キックを掴んで受け止め、そのまま二人を地面に叩き付ける。

 そのまま二人を踏みつけ、アスファルトの地面に二人をめり込ませる。

 

「あらあら、弱っちいわね、本物のノヴァティスやミステベステはこんなに弱いのね、なら、私が本物って事になるじゃないの」

 

 二人を踏みつけたまま、ディファレントは赤黒い稲妻を放ち、エヴォルとミステベステの身体を焼く。

 激痛のあまり、悲鳴を上げる剣人と翔音。

 二人の体力はみるみる削られて行く。

 何とか体勢を立て直そうとしても、ディファレントが力強く踏みつけるせいで動けず、稲妻で体が痺れて身動きも取れない。

 

「あら、全く抵抗が出来ないみたいね、なら、このまま出力を上げてあげる!」

 

 更に威力を上げた稲妻で焼き尽くされるエヴォルとミステベステ。

 剣人と翔音の意識はみるみる薄れ、今にも力尽きそうになる。

 その時、ディファレントに一発のグレネード弾が命中し、ディファレントは吹き飛ばされる。

 

「今の攻撃……護さん!?」

 

 剣人が起き上がり、振り向くと、そこにはエルピウォリアとDスワットの姿があった。

 まだ不完全な状態で駆け付けた為か、装甲の各所には傷があったが、問題なく動けるようだ。

 そして、エルピウォリアには大きな変更点があった。

 背部に火力、守備、速度を強化する大型追加ブースターが装備されていたのである。

 

「間に合ってよかった、不完全な状態でもいいから君達を助けに行きたくて、沢田さんに無理を言って出撃を許可してもらったんだ、フルアーマー用のブースターが完成していたから、何とか戦えるはずだよ」

「Dスワットにはフルアーマー用のブースター等はありませんが、砲台代わりにはなるはずですよ」

 

 フルアーマーエルピウォリアにパワーアップしたエルピウォリア、例えまともに動けなくても戦う覚悟のあるDスワット。

 二人の戦士が駆け付けた事で、形勢逆転かと思われたが、それでもディファレントは止められない。

 

「人間の作った兵器如きで、このディファレントを止められると思わない事ね!」

 

 ディファレントは地面を蹴り、凄まじいスピードでDスワットの下へと駆ける。

 DスワットはDショットを連続して放つも、その銃弾を腕を振って弾くディファレント。

 その動きを止める為、ブースターを全開にしたエルピウォリアが体当たりを敢行する。

 勢いそのまま正面にあったコンクリート製の壁にディファレントを叩きつける。

 しかし、全く効いていない様子のディファレントはエルピウォリアの腕を掴み、投げ飛ばした。

 エルピウォリアはブースターで勢いを減速させ、ゆっくりと地面に着地する。

 

「フルアーマーとなったエルピウォリアなら、お前とだって戦える!」

 

 フルアーマーエルピウォリアは背部ブースターに内蔵したミサイルランチャーを一斉発射する。

 弧を描きながら一直線にディファレントへと飛来する誘導ミサイル。

 その誘導ミサイルを、ディファレントは両手から放つ稲妻で迎撃し、爆散。

 しかし、一発残った誘導ミサイルがディファレントに直撃し、爆風で吹き飛ばされたディファレントはコンクリート製の壁を突き破ってダウンする。

 それでもなお健在のディファレントはゆっくりと立ち上がる。

 その傷は少しずつ塞がっており、未だ戦闘は可能であった。

 

「やってくれるじゃない、でも、私はこの程度ではやられないわよ!」

 

 ディファレントは両腕から赤黒い光弾を連射。

 その光弾はフルアーマーエルピウォリアの胸部に命中し、炸裂するが、前面に増設した装甲は、エルピウォリアの身を守っていた。

 

「今のエルピウォリアの火力、守備、速度は以前とは比較にならないぐらいパワーアップしているんだ!」

 

 フルアーマーエルピウォリアが戦う姿を見て、エヴォル、ミステベステも立ち上がる。

 

「俺達も負けていられない!」

「この一撃に全力を出します!」

 

 エヴォルはエヴォルブレードに光を纏い、ミステベステは全身のトゲを伸ばしてディファレントの身体を貫く。

 直後にエヴォルがエヴォルブレードを振り下ろし、ディファレントの身体を叩き斬る。

 

「がはッ……!?」

 

 ディファレントは地面に崩れ落ち、沈黙する。

 爆発はせず、その場に静寂が訪れる。

 

「俺達……勝ったのか……?」

 

 剣人が呟く。

 

「いえ、まだ油断はできませんよ」

 

 周が完全にディファレントにトドメを刺す為、Dショットのトリガーを引き、沈黙したディファレントを撃つ。

 だが、ディファレントの身体は撃ち込まれた銃弾が体外に排出し、その傷をゆっくりと修復していた。

 ディファレントは身体をゆっくりと起こし、立ち上がる。

 

「馬鹿な……奴は不死身なのですか!?」

 

 周が驚愕の声を上げる。

 

「言ったでしょう? 私はこの程度ではやられないって」

 

 ディファレントは両腕から赤黒い稲妻と光弾を同時に放つ。

 その威力は以前よりも格段に上がっており、辺り一帯に大爆発を起こす。

 攻撃を食らって地面に崩れ落ちる戦士達。

 

「あいつの攻撃、威力が上がっている!」

「攻撃を受ければ受ける程、パワーアップするっていうのか!?」

 

 護と剣人の脳裏には圧倒的な力を前に「勝てない」という言葉が浮かびつつあった。

 

「こんな相手……勝てるの……?」

 

 翔音が諦めかけたその時、彼等の前に一人の青年が立つ。

 

「父さん!」

 

 剣人が名前を呼んだその青年は、かつてノヴァティスとして戦った日野鋼であった。

 

「よく頑張ったな、後は、俺に任せろ!」

 

 鋼の胸には、眩い光が輝いていた。

 

「父さん……その光は……!」

「ああ、戻ってきたんだ、ノヴァティスの光が……!」

 

 鋼は叫ぶ、変身の掛け声を。

 

「神聖変身!」

 

 鋼の身体は眩い光に包まれ、その肉体を一瞬にして戦士の身体へと作り変えた。

 現れたのは、かつての怪人軍団との戦いで活躍した、伝説の戦士そのものであった。

 

――――――――――――

 

【第12章 伝説の戦士NOVATICE】

 

「それが伝説の戦士、ノヴァティスね、私もよく覚えているわ、当時は5歳だったけど、とても印象的だったもの」

 

 槍香はノヴァティスの姿を見て過去を懐かしむように呟く。

 

「つまり、あなたがオリジナルのノヴァティス、あなたを倒せば、私は正真正銘、本物のノヴァティスになれる!」

 

 ディファレントは地を蹴って一直線にノヴァティスへと向かう。

 ノヴァティスは右手にブレイヴセイバーを出現させ、光を纏い、剣を振って真空波を放つ。

 この技はジャスティスライサーと呼ばれ、高い切れ味を誇る技だ。

 しかし、ディファレントはその攻撃を光弾で迎撃する。

 続けてノヴァティスは光を纏った剣を全力で振るった。

 ノヴァティスの必殺技、ジャスティスブレイクである。

 必殺の一撃は、ディファレントの身体をたった一撃で大きく切り裂いたが、その肉体はすぐに修復を始めていた。

 

「ジャスティスブレイクが効かない!?」

「残念だったわね! 既に私の力はオリジナルのノヴァティスを上回っているって事よ!」

 

 ディファレントはノヴァティスの首を掴み、地面に叩き付けた。

 地面が大きく抉れ、ノヴァティスは大きな傷を負って崩れ落ちる。

 その身体を投げ飛ばすディファレント、ノヴァティスは地に伏し、沈黙する。

 

「所詮、あなた達がいくら努力しても無駄なのよ、圧倒的な力を前にはね!」

 

 勝利を確信し、高笑いをするディファレント。

 しかし、ノヴァティスは尚も立ち上がる。

 

「父さん……何で勝てないと分かっているのに、立ち上がるの? もう無理だよ、あいつには勝てない!」

「……父さんもかつては、圧倒的な力を前に諦めかけた事がある……怪人の王との戦いの時だ……でも、そんな時、多くの人が光をくれて、父さんに力を与えてくれた……」

 

 鋼は剣人たちの方を振り向く。

 

「今は光をくれる人はいない……でも、あの時とは違って今は、こんなにも戦える戦士達がいるじゃないか! 俺達が力を合わせれば必ず勝てる! 新旧ノヴァティスがこうして揃っているんだから!」

 

 鋼の言葉を聞き、四人の新世代の戦士たちはゆっくりと立ち上がった。

 

「……父さんの言う通りだ、新旧ノヴァティスが揃っているんだ、俺と父さんでダブルノヴァティス……こんなの特撮だったら、勝ちフラグだよな!」

「一人一人は小さいかもしれませんが、一つになれば無敵ですよね……私に何ができるか分かりませんが、私、やります!」

「僕は警察としての責務を忘れかけていました……警察は人々を脅威から守らないといけない……例え、相手がどんなに強くても!」

「全く、私にも『ヒーローとしての心』が宿ったみたいですね……でもそれも、悪くはないですね!」

 

 四人の新世代の戦士と、かつての英雄が並び立つ。

 それを見てもなお、余裕のある様子を見せるディファレント。

 

「どんなにあなた達が集まっても、私は倒せないわよ!」

 

 ディファレントは電撃と光弾を連続して放つ、その威力は更に増している。

 戦士たちは散開して回避。

 ミステベステが全身のトゲを伸ばし、ディファレントの全身を串刺しにして動きを止める。

 

「舐めるな……!」

 

 なおも動こうとするディファレントの身体に、更にトゲを刺して動きを封じるミステベステ。

 

「絶対に動かせません!」

 

 そこに接近し、零距離でDショットの銃弾を撃ち込むDスワット。

 フルアーマーエルピウォリアは新しく開発された大型バズーカ、MB-05 オブシディアンを連続して発射する。

 

「銃身が焼き付くまで撃ちますよ! 赤月さん!」

「言われなくとも、そのつもりです! 白石さん!」

 

 ディファレントは力任せに身体を振り、トゲを折り、Dスワットを薙ぎ払う。

 

「再生が追い付かない程のダメージを与えるつもりでしょうけど、無駄よ! もう私は止められない!」

 

「だったら、それを一気に上回ればいいだけだ!」

「俺と父さんの、ダブルノヴァティスならそれができる!」

 

 ノヴァティスのブレイヴセイバーと、エヴォルのエヴォルブレードの刀身には、眩い光が纏われていた。

 

「まさか、エネルギーをチャージする為の時間稼ぎを……!」

 

 ダブルノヴァティスは、同時に地を蹴り、同時に剣を振り上げ、同時にX字にディファレントの身体を切り裂いた。

 切り口からは眩い光が放たれ、ディファレントの身体を焼く。

 

《グオオオッ! 身体が……我の液体の身体が焼ける……! 我が……滅びると言うのか……!?》

「嘘……レクト……これで終わりなの……!? 折角私の人生は楽しくなり始めたのに……こんなのやだ……」

 

 直後、ディファレントの身体は大爆発を起こした。

 その爆発の中から放り出されたのは、服が焼け、傷だらけの身体の槍香であった。

 Dスワットはすぐさま槍香に駆け寄り、意識がある事を確認すると、彼女を拘束する。

 

「森口槍香、建造物損壊罪、器物損壊罪、その他多くの罪で逮捕する」

「ふふ……まあ、当然の報いよね……分かりました……」

 

 槍香は夜の街に立つダブルノヴァティスを見つめる。

 

「ダブルノヴァティス……いいな……」

 

 彼女は小さな声で呟いた。

 液体生命体ゲルクスの長、レクトは滅び、最後の敵であったノヴァティス・ディファレントは倒された。

 これにより、新たな怪人災害は終わりを迎えた。

 

――――――――――――

 

【最終章 希望の明日へHOPE FUTURE】

 

 怪人災害が収束して一ヶ月、人々は平穏を取り戻し、また元の平和な日常が戻って来ていた。

 大勢の命が失われ、街は破壊された。

 失ったものは多いが、それでも、失ったものの重さを忘れないように、前へと進んでいく。

 

 ミステベステに変身して戦った翔音は、今もまだ液体生命体の生き残りであるリマと一体化したままであった。

 あの後、ノヴァティス達共々警察機関によって身体検査をされたが、特に異常は見つからなかった。

 今は、力を無闇に振るわない事を条件に、元の中学生の生活へと戻っている。

 

(私の身体はまだ、あの液体生命体と一体化したまま……いつか異常が起きるのかもしれないけど、きっと大丈夫だよね……? だって、あのノヴァティスと一緒に戦ってくれたんだもん)

 

 ふと、翔音の脳裏に「大丈夫だよ」と聞いた事のない男性の声が聞こえた、そんな気がした。

 その声の主は、もしかしたらリマかもしれない。

 翔音は天翔中学の校門へと、歩みを進める。

 

 天翔街警察本部の地下、そこは危険な犯罪者を隔離する牢屋。

 そこでは、ノヴァティス・ディファレントとして悪行の限りを尽くした森口槍香が捕らわれていた。

 暴れる様子がなかった為、セキュリティの厳重な牢に入れられているだけではあるが、彼女は膝を抱え、体育座りをして、空を眺めていた。

 その牢の中に、護と周が入って来る。

 

「お邪魔しますよ、森口さん」

「警察の人達か……また来たのね……」

 

 槍香はため息をつき、視線を逸らす。

 

「私はあれだけの事をしたのだもの、どうせ死刑は確定でしょ?」

「それが、君は一人も殺してなかったんだ」

「え……?」

 

 護は手元の資料を見せる。

 

「森口槍香、君は奇跡的と言うべきかもしれないが、あれだけの破壊を行って誰も死なせていなかった、だから、死刑になる確率はかなり低い」

「それでも、した事がした事だから、罪は償ってもらいますよ?」

 

 槍香はそれを聞いて安心したのかほっと息をつき、「分かりました」と返した。

 彼女の表情はほんの少し、明るい顔になっていた。

 

 鋼は妻である理乃、かつての友人である有人、雫の夫妻、司、孝信と久々に街に出掛けていた。

 もう完全に復興した街、そこの飲食店に立ち寄り、久々に集合した友人と世間話をする。

 

「いや、しかし、このメンバーが揃うのも久々だな!」

「そうだねえ、怪人災害が収まってようやく僕も解放されたからね」

 

 司と孝信がコーラとコーヒーを手にしながら話す。

 

「僕は最近は雫とずっと特撮を観てるよ」

「うん、最近は70年代のマイナーな特撮を観るのにハマってる、ファイトアックスって番組なんだけど、これがなかなか良くてね……」

 

 有人と雫の夫妻が特撮トークを始め、他のメンバーは呆気にとられる。

 

「でも私達、結構歳取ったよね、高校時代のお昼、こうしてみんなで集まったのが懐かしいよ」

 

 理乃が高校時代の自分達を思い返す。

 最初の怪人災害の時、色々な事があって大変だったが、学生生活はとても充実していた。

 

「今は俺と理乃の子供が、俺と同じ使命を背負ってしまった……あれからまた変身能力を失ってしまったけど、今度は孫世代にも遺伝するんだろうか……」

 

 少し心配になり俯く鋼の手を、理乃はそっと包み込む。

 

「大丈夫、そうなっても今度は、怪人と戦う術を人類が身に着けてるはず、もう一般人である私達が戦わなくてもいいように」

「理乃……」

 

「そうさ、僕はこれからも研究を続ける、勿論、軍事利用されないように何かしら対策はするけどね」

「でも、鋼くんのお孫さんもノヴァティスになったとしたら、トリプルノヴァティスになるって事だよね……?」

「それって、凄く激アツじゃん! みんなもそう思わない?」

「あーもう! 有人だけでも五月蝿いのに、雫まで五月蝿くなっちまって! お前ら何があったんだよ!」

 

 孝信、雫、有人、司の反応を見て、鋼と理乃はくすくすと笑う。

 

「ありがとう……みんな……」

 

 鋼は友人に笑顔を見せた。

 それは、高校時代から自分を支え続けてくれた友人への感謝でもあった。

 

 剣人は妹の都、友人の結愛と共に登校していた。

 相変わらず両手に花状態であり、二人は剣人の腕を組んで引っ張り合っていた。

 

「剣人くん、遂に裂空騎士シリーズの新作が発表されたね! その名も裂空騎士マッハファルクス! シリーズ第十一作品目で、今作は前作のマッハブレードと世界観を共有していて、マッハブレードも続投する! これはダブル裂空騎士が観れるって事! 最高に熱いね!」

 

 相変わらず裂空騎士シリーズのトークが止まらない結愛。

 

「お兄ちゃんはそこまで興味ないはずだよ! それよりお兄ちゃんから離れて!」

 

 剣人の腕をぐいぐい引っ張る都。

 朝から疲れ切った剣人は大きなため息をつく。

 

「もう……朝から勘弁してくれ……」

 

 剣人はエヴォルの力について考えていた。

 あの後、父同様変身ができなくなった。

 父からは、脅威が去ったから変身できなくなったと言われたが、それはまた脅威が現れたら変身しないといけないのかと考えていた。

 だが、剣人は横で騒がしくする都と結愛を見て、大切な者を失わない為なら戦ってもいいと思えた。

 

(でも、きっと、これから先は平和が続いてくれるよな……)

 

 剣人はそう祈り、今日も学生生活をスタートさせた。

大長編 アルティメットオールスター大乱闘スマッシュブラザーズ

 かつて、アルスマ界という平和な世界で某大人気ゲームに似た大乱闘と言う競技が行われた。

 様々な世界から招待された歴戦の戦士たちが幾度となく大乱闘でドラマを作り、絆や友情を深めていった。

 しかし、その大乱闘を潰そうとした存在もいた。

 アルスマ界の守護を目的として生み出されたアンドロイド、ブラックガンナーとホワイトブレイドが、アルスマ界にかつて存在したテロ組織『エレメントスタンド』の残党や各世界の敵のデータをコピーした『データユニット』を使い、幾度となくアルスマファイターに勝負を挑んだ。

 何度も繰り返された戦いの末、遂にブラックガンナーとホワイトブレイドは倒され、エレメントスタンド残党も壊滅、データユニットも全てが消滅し、データも失われた。

 この戦いの後、アルスマの開催者であるマスターファフニールは深い眠りに落ち、ファイター達は元の世界へと帰還した。

 それから三年、この空白の期間中、アルスマ界の近くにあるカイスマ界で一時休止されていた大乱闘が再開され、一部アルスマファイターも参加し、再びその勇姿を披露していた。

 だが、そのカイスマ界でもやはり敵は存在しており、アルスマ開催の一年前に倒された悪の戦士であるダークシャドウが復活し、彼の率いるダークシャドウ軍と幾度とない激しい戦闘が繰り広げられた。

 カイスマファイター達は激闘の末、ダークシャドウを撃破するが、一ヶ月後に復活したダークシャドウは再び攻撃を開始。

 更に、カイスマ、アルスマファイターが別次元の地球に召喚され、消息を絶つ事件も発生。

 様々な戦いを乗り越え、ダークシャドウの繰り出す刺客を撃破した末、ダークシャドウとの最後の戦いが行われる。

 一度は絶体絶命の危機になるが、最後はカイトとダークカイトの合体した姿、ゴッドトゥルースがダークシャドウを撃破、長い長い戦いが終わりを迎えた。

 そして、それから三年が経過し、アルスマはかつて開催された名物競技として少しずつ忘れ去られ、カイスマは新生カイスマメンバーへと交代、新たな時代へと進みつつあった……。

 そんなある日、アルスマ界で突然、次元の歪みが確認された。

 

【アルスマストリート】

 

 アルスマストリートに設置された大型スクリーンに、アルスマ草原に発生した次元の歪みが映し出されていた。

 群衆が集まり、その様子をじっと見つめてがやがやと騒ぐ。

 そこには、かつてアルスマのスタッフとして働いていたナレ男、オペ子、レフェ子の姿もあった。

 

「あれ、何ですかね……? 何かが現れるのでしょうか……?」

「今の所は何とも言えませんね……」

「あの最終決戦以降、アルスマ界は平和だったのに、また何か事件が起こるの……?」

 

 ナレ男、オペ子、レフェ子は不安気に次元の歪みを見つめる。

 アルスマも終わり、ただの一般市民として暮らす三人。

 彼らの不安通り、この次元の歪みは大きな戦いのほんの序章であった。

 

【アルスマ草原】

 

 アルスマ草原に発生した次元の歪みは、時間の経過とともに大きくなってゆき、激しく揺らぎ始めた。

 危険だと感じたカメラマンは一度撤収し、遠くに避難する。

 刹那、次元の歪みは突然大きな爆発を発生させ、完全に沈黙した。

 カメラマン達は冷や汗と共に爆発で発生した土煙を見守る。

 すると、そこには一人の少女が立っていた。

 透き通るようなさらさらとした銀髪のロングヘアを少しだけハーフアップにして青いリボンで留めた、澄んだアイスブルーの瞳をした神秘的な少女。

 白と青の二色で構成されたワンピースを着たその少女は細身の剣を手に持ち、首に淡く光る魔石の付いたネックレスを付けていた。

 

 突然の光景に慌てふためくカメラマン達。

 その少女はカメラマン達を見つけると、細身の剣に無属性の魔力を纏い、横薙ぎに振る。

 カメラマン達は真横に両断され、直後に血を噴き出し崩れ落ちる。

 更に少女は掌に無属性の魔力を収束させ、一直線に放ち、カメラマン達の死体を爆散させる。

 アルスマ草原に爆炎が上がり、それを無表情で見つめる謎の少女。

 その少女の背後に、次元の裂け目が発生、その中からかつてアルスマファイターとして活躍していた黒乃月(くろの るな)と、かつてカイスマメンバーであったカイト・ブルーレオが姿を現す。

 

「くそっ! 一足遅かったか!」

 

 カイトは到着が間に合わず、カメラマン達を助けられなかった悔しさのあまり歯を食いしばり、右手に持ったハイパーソードと右手に持ったマスターガンを握り締める。

 当時14歳だったカイトも現在は18歳、あの時より成長して背も伸び、大人らしく成長している。

 あの時のトレードマークであった青いコートは黒いコートへと変化し、あの時のイメージとはかなり変わっている。

 

「カイスマ界の襲撃にかなり時間をかけてしまったから……もっと早く駆け付けてれば助けられたのに!」

 

 ルナは右手に持った鮮血の罪人(ブラッド・クライム)と左手に持った魂の狙撃手(ソウル・ティラール)を握り締め、謎の少女を見つめる。

 カイトと違って見た目が一切変わっていないルナ。

 彼女はあの後、とある禁呪法によって一切年を取らない不老不死の肉体となっている為、一切の変化がないのである。

 

「来たわね、元アルスマファイター」

 

 謎の少女は冷たい声で静かに呟くと、掌に無属性の魔力を収束させると、一直線に光線として放つ。

 二人は先読みして回避し、カイトはマスターガンから破壊ブラスターを放ち、ルナは魂の狙撃手(ソウル・ティラール)から闇の光線(ダークネス・フォトン)を放つ。

 二筋の光線は一直線に少女を捉え、直撃して爆炎を上げる。

 しかし、一切の油断をしない二人。

 二人は爆炎をじっと見つめると、次の瞬間、二人目掛けて二筋の光線が放たれる。

 カイトとルナは先読みして回避。

 続けて、爆炎の中から円形のバリアを纏った少女が飛び出してくる。

 

「守りもお手の物ってわけね! なら!」

 

 ルナは闇の魔力を収束させつつ、詠唱を始める。

 

「我に宿りし混沌の闇よ、黒き炎で全てを焼き尽くし、崩壊させよ、暗黒の波動(ダークネス・エクスプロージョン)!!」

 

 ルナは少女目掛けて魔力弾を放ち、魔力弾は少女に命中すると同時に爆散。

 少女のバリアを砕き、体が吹き飛ばされる。

 それでも細身の剣を地面に突き立て、何とか勢いを止めるが、そこにカイトが待っていた。

 

「スパークパンチ!」

 

 雷を纏ったパンチが、少女の腹部に命中すると、少女は気を失い、がくんと崩れ落ちる。

 

「流石に悪い奴とは言え、女の子は殺せないしな」

「それに、この子からは情報を聞き出さないといけないしね」

 

 二人がそんな話をしていると、二人の背後から足音が聞こえた為、二人は同時に振り向く。

 そこには、成長しながらも、とても見慣れた人物が二人、立っていた。

 片方は背が少し伸び、髪も長くなって大人っぽい見た目になりながらも、青いジャケットと黒剣ナハトというトレードマークは健在の青年。

 もう片方は、成人している為に制服ではないが、制服風のコーデをし、黒髪ボブは少し伸びつつも二刀流は健在の女性。

 カイトとルナはその人物を、よく知っていた。

 

「「翼とヴェローナ!」」

「よっ、久しぶり」

「お二人共、お久しぶりです」

 

 お互い、久々に会う関係ながら、しっかりとあの時の事を覚えており、四人の間に笑顔が生まれる。

 

「カイト、本当に久々だな、あの時の面影も大分なくなってて、一瞬誰かなって思ったよ」

「翼こそ! 本当に久々だな! 今は何やってんだ?」

「俺は今、ヴェローナと一緒にアルスマシティの防衛隊に入って、アルスマシティを防衛しているんだ、元ナイル盗賊団や元エレメントスタンドの人達も、区域は違うけど、防衛隊に入ってるよ」

 

「ルナさんは……全然見た目変わっていませんね……」

「あの後色々あってね……ヴェローナちゃんはあの時17歳だったから、今は21歳? 翼くんは18歳だったから22歳か」

「あ、あまり年齢については話さないでください……」

 

 久々に会ってもなお、あの時の様に会話をする四人。

 しかし、今は急を要する事態であった。

 

「カイトとルナが久々にここに来たって事は、他の世界でも何かあったって事だな?」

「ああ、次元の歪みはカイスマ界やペラペランド、別次元の地球など、色々な所に出現していて、それらの世界ではデータユニットが出現しているんだ、カイスマ界は新生カイスマメンバーや元カイスマメンバー、ペラペランドはアゼスマファイター、別次元の地球ではクロストライアルが戦っているけど、よりによって数が多くてな、アルスマ界に来れたのはルナの門(ゲート)の能力のお陰だ」

 

 翼とカイトが会話する横で、ルナはえっへんと胸を張る。

 

「そう言えば、ルナさんはどうしてカイスマ界に?」

「それがね、私の居た世界は闇の眷属との戦いも終わって平和が続いていたんだけど、私の世界も同じ様に次元の歪みからデータユニットが大量に出現してね、今はミハルお姉ちゃん達が戦ってくれてるんだけど、ミハルお姉ちゃんはこう言ったの、『この敵は陽動、本体は別の場所にいる』って、ミハルお姉ちゃんは察しがいいから気付いたんだと思う、だから私は各地を移動しながら本体を探して、別世界で出会ったレイリアちゃんにも協力してもらって、カイトくんと合流したタイミングでアルスマ界に次元の歪みが発生しているとマスターゴッドが教えてくれたからここに来たの」

 

 ルナの途方もない冒険の物語を聞き、ヴェローナは唖然とする。

 

「みんなの話を聞く限り、他の世界はデータユニットが出現した、でもこのアルスマ界には……」

 

 翼は気を失ったままの少女を見つめる。

 この少女は一体何者なのか分からないが、この事件の鍵はこの少女が握っている事は間違いない。

 

「とりあえず、話はまた後で、一旦アルスマ本部に移動しないか?」

「え、まだアルスマ本部があるのか!?」

「ああ、今はアルスマシティ防衛隊の拠点になっているけどね、ちなみに、セラフィとラフェールはそこの警備アンドロイドになってるよ」

 

 用途は変わりつつも、アルスマ本部が残っている事に喜ぶカイト。

 カイトとルナは翼とヴェローナに連れられ、アルスマ本部へと向かう。

 

【アルスマシティ防衛隊本部(旧アルスマ本部)】

 

 かつてのアルスマ本部の大きな会場は大幅に改修され、軍施設らしい無機質な外見となっていたが、内部のロッカーや休憩所、トレーニングルーム等の施設は当時のままで、カイトとルナは懐かしさを覚える。

 

「ここに来るのも久々だね」

「ああ、こうしてまた来れるとは思っていなかったよ」

 

 四人は気を失った少女をトレーニングルームへと連れていき、暴れないように縄で縛る。

 

「ところでさ、ルナなら分かるか? あの後、アルスマファイターのみんなが何をしているか」

「勿論、あの後会いに行ったんだけど……」

 

 少女が目を覚ますまでの間、ルナは翼の質問であるアルスマファイターのその後について答える……。

 瑠依は現在21歳で、あの後人気ブロガーとなり、戦いとは無縁の環境で平和な生活を過ごしている。

 サンシロウは現在27歳で、現在は自称、関西最強のたこ焼き屋を営んでおり、この間は仮面ライダー1号のお面を付けた男性と楽しく談話をしていたようだ。

 フィオーレは現在22歳、相変わらずレイラとはライバル関係で、関係者によるとまた修行に出ると言って行方をくらましているらしい。

 ドラゴニュートは現在25歳、ルナが訪れた際は仲間である優香が魔物に食われて命を落とした為、とても悲しんでいる様子だったが、相変わらず冒険は続けているらしい。

 イオナは現在21歳、現在は戦いから身を引き、メイドカフェで仕事を続けているようだ。

 リスティリアは現在21歳、しかし、山奥で暮らしている事が災いしたせいで現在何をしているかは分からない、噂によると究極魔法の実験に失敗して命を落としたとされているが、詳細不明である。

 千初は現在26歳、相変わらずエイリアン災害は続いており、エージェントとしてエイリアンを退治しているようだ。

 

「そうか……優香さん死んじゃったのか……」

 

 翼はかつて最終決戦し参加し、とても頼りになった優香の事を思い出す。

 

「魔族に捕らえられて、最後は魔物に食べられたらしくて……ドラゴニュートさん、とても悲しんでたな……」

 

 関係者の死に場が暗くなりかけた所で、ルナは慌てて残りのメンバーについて話す事にした。

 

「えっと、他の人のその後についても話すんだけど、これらの時空は時間の流れがバラバラだから、結構年取ってる人もいるけど驚かないでね?」

 

 ウルトラマンティガことマドカ・ダイゴは現在50代、ティガへの変身能力は失い、ヒカリとツバサの二人の子供を授かっている。

 ウルトラマンネクサスこと孤門一輝は現在27歳、ネクサスへの変身能力は失い、現在はナイトレイダー副隊長としてスペースビーストと戦い続けている。

 ウルトラマンネオスことカグラ・ゲンキは現在25歳、ネオスと分離した事で変身能力を失い、現在もHEARTの隊員として活動しているようだ。

 仮面ライダー龍騎こと城戸真司は現在43歳、あの後も仮面ライダー龍騎として活動はしているようで、未だに戦い続けているようである。

 仮面ライダーZOこと麻生勝は現在50代、現在も仮面ライダーZOとして世界の悪と戦っているようだ。

 仮面ライダーギーツこと浮世英寿は現在22歳なのだが、どうやら神になったらしく、見違えた姿でルナの前に姿を現したらしい。

 マジレッドこと小津魁は現在18歳、インフェルシアの残党と戦いながら、人間界とインフェルシアを結ぶインフェルシア親善大使として活動を続けている。

 ギャバンtypeGこと十文字撃は現在30代、宇宙刑事として、宇宙全体の治安を守っているほか、最近は赤いギャバンとも出会っているようだ。

 キカイダーことジローはアルスマの後、キカイダー01という新たなキカイダーと共に新たな悪と戦っているようだ。

 デスティニーガンダムことシン・アスカは現在17歳、愛機をデスティニーガンダムSpecIIに変え、平和の為にコンパスに所属し、戦っている。

 ガンダムダブルエックスことガロード・ランは現在16歳、愛機をガンダムX 3号機に変え、成長した姿を見せたらしい。

 バーサル騎士ガンダムはアルスマの後、スペリオルドラゴンとなって天界へと行った為に会えなかったようだ。

 エイト、クラウド、カムイ、マルス、マリオ、ルイージ、フォックス、キャプテン・ファルコン、ネス、アイスクライマーは現在、別の世界で本家大乱闘に参加しており、サーナイトはモンスターボールのポケモンとして、アブソルとティファはスピリッツとして参加しているようだ。

 ダイ、悟空、ピッコロ、遊戯、トレイン、イヴ、ウイングマンは最後に会った時はジャンプチアイランドと言う場所で未知の人物達と一緒に戦っていたようだが、少し前にジャンプチアイランドが消滅した為、現在は何をしているか不明との事。

 セリカはアルスマの後、相変わらずアビドス高校の借金を返す為にバイトをしているようだ。

 キリトとアスナはアルスマの後、異世界に飛ばされ、そこで未知の人物達と戦っていたらしい。

 アリアはアルスマの後、相変わらず武偵として活動しているようで、犯罪者を逮捕し続けているようだ。

 クーとレンはアルスマの後、エディルレイドを保護する為に様々な場所を飛んでいる。

 かなでに関してはいる世界が特殊である為、会いに行けなかったのだが、とある場所を旅していた際、彼女に似た人物を見かけたとの事、となりにはオレンジ髪の男性が立っていたようだが、詳細不明である。

 エミリアはアルスマの後、異世界に戻り、色々と苦労をしているようであり、疲れた様子を見せていた。

 メイプルはアルスマの後、相変わらずゲーム生活を謳歌しているようで、ルナに対して楽し気な様子で話していた。

 キサラはアルスマの後もI&S事務所を経営しているようで、変わらずD災害の続くベイロンシティで悪魔と戦っているようだ。

 R-GUNことイングラム・プリスケンは現在、SRXチームの教官として活動しているようだが、何か怪しい雰囲気を感じたとルナは語っている。

 

「以上、長くなったけど、アルスマファイター全員のその後だよ!」

「……何か、あんま変わってなかったり、かなり老けてたり、みんな大変だな……」

「本当、驚きです……」

 

 ルナから聞かされた事実に、翼とヴェローナは唖然とする。

 もしもう一度彼等と出会ったら誰が誰だか分からなくなっている可能性も高いだろう、時の流れは残酷だと感じた。

 

「何人か行方不明の人もいたんだけど、基本的にみんな元気そうだったから問題ないと思うよ!」

「ま、ほとんどが元気そうで何よりだ!」

 

 ルナとカイトは唖然とする二人を無理矢理元気づけようと明るく接する。

 すると、このタイミングで気を失っていた少女が目を覚ます。

 

「な、何ですかこれ!?」

「気が付いたみたいだな、悪いが、暴れられては困るから、縛らせてもらったよ」

 

 翼の言葉を聞いた少女は、観念したのか暴れる様子を見せなかった。

 その様子を見て翼は安堵し、少女に詳しい話を聞く。

 

「じゃあ、質問させてもらうぞ、現在、色々な世界で次元の歪みが発生し、データユニットが多数出現して各地に被害を出している、そして君は、その次元の歪みから出現した……君は、各地で発生している次元の歪みと何か関係性があるのか?」

 

 しかし、翼の質問に少女は答えようとしない。

 翼はため息をつき、質問を変える。

 

「じゃあ、質問を変えるよ、君の名前は? そして所属は?」

「……ルミナ・シルヴァリス、所属は答えられない……」

「ルミナって言うのか、所属を答えられない理由は?」

「……トップシークレット、一つだけ答えるなら、私は末端の兵士に過ぎないから」

 

 翼とルミナの会話を聞き、カイトとルナは驚愕する。

 ルミナは戦った感じ、そこそこ強かった。

 彼女が末端の兵士と言う事は、それを支配する存在は相当な力を持っている可能性があると言う事だ。

 

「翼くん、どうする? 情報が少なすぎるよ、拷問でもする?」

「いや、流石に拷問は酷すぎるからな……でも、一つ分かった事があるよ、ルミナの所属する組織は、かなり規模の大きな組織って事だ、それも、多次元に侵略の手を伸ばせる組織」

 

 ルナは翼の言葉を聞き、固唾を飲む。

 

「多次元に侵略の手を伸ばす……まるで別次元の地球で戦ったフィーニスみたいだな」

「組織の規模は分からないけど、一度しっかり対策を取った方がいいだろうな」

 

 カイトと翼は強大な敵の襲来を察知し、戦う事を決意する。

 その時、突然トレーニングルームに次元の歪みが生じた。

 突然の出来事に戦闘態勢を取る翼たち。

 しかし、次元の歪みから現れたのは、彼等のよく知る人物達であった。

 次元の歪みから現れたのは、ドラゴニュート、サンシロウ、撃、シン、エイト、遊戯、アリア、セリカ、悟空、イヴ、トレイン、キサラであり、ドラゴニュートの隣には初めて見る少女もいた。

 

「よっ、みんな久しぶり!」

「ドラゴニュートさん! それにみんな! どうして!?」

「実はカイスマ界のマスターゴッドにアルスマ界の危機を知らされてな……連れてこれそうな奴に招集をかけてこうして集まってもらったってわけだ、まあ、大半が戦いを辞めてたり、忙しかったり、行方不明だったりで、呼べる連中が少なかったが……」

 

 ドラゴニュートは翼の問いに、アルスマ時代の時の様に明るく返答する。

 ドラゴニュートはアルスマ時代の時は既に成人であった為、声が少し低くなった事と、髪が腰の辺りまで伸びている事以外、変化はなかったが、一番変化があったのはその服装である。

 以前は騎士服みたいな服装であったが、何があったのか全身黒一色で、黒のロングコートを着込んでいた。

 もしかしたら優香の死をきっかけに何かあったのかもしれないが、そこは敢えて聞かない事にした。

 

「まあ、でもわいは何とか来てやったで! ほれ、お土産にわいの作った関西最強のたこ焼きも持ってきたわ!」

 

 サンシロウは髪が少し伸びた以外は全く変化がなく、翼たちは唖然としていた。

 翼はサンシロウの作ったたこ焼きを一口食べたが、驚くほど普通であり、これで関西最強かと思った。

 

「宇宙刑事たるもの、アルスマ界の危機には駆け付ける必要があるからな、こういうの、次元を超えて出張中だ! って言うんだろうな」

「マスターゴッドが急ごしらえとは言え、転送システムを作ってくれたから、何とか俺は来れたけど、不在な人も多いんだな……」

「それにしても、あんたたち結構年取ったわね、時の流れが違うのかしら?」

「賞金が貰えるかは分からないけど、来てあげたんだから、感謝しなさいよね!」

「俺は賞金が貰えなくても問題ないぜ、世話になった借りを返さないといけないしな!」

「で、またスヴェンは置いてけぼり」

「あたしもお世話になったお返しをしないといけないからね、早くシュウくんに会いたいから、邪魔する奴は全員蹴散らしてあげる!」

 

 撃、シン、アリア、セリカ、トレイン、イヴ、キサラが口々に話す。

 見知った顔が当時と同じ姿で並ぶ中、一際目を惹くのが、悟空であった。

 何と、子供の姿になっており、道着の色も青になっているのだ。

 

「あの、悟空さんは一体何があったの?」

「ん? まあちょっと色々あってな、子供の姿に戻っちまったんだ、ま、気にするな、ちゃんと戦えっから!」

「私が最後に会った時は大人だったのに……ほんとに何があったの……?」

 

 悟空の見た目の変化に、ルナは戸惑い、頭を抱える。

 

「やあ、久しぶりだね、翼くん、大きくなったね」

「翼くん、久しぶり! と言っても、もうボク達より年上かな?」

「エイト、遊戯、また会えて嬉しいよ、俺はもう22になったよ、二人は……相変わらずだな」

 

 エイト、遊戯という親友と再会を果たした翼。

 翼はまた出会えた親友を前に、涙を流す。

 

「僕はあの後、本家の大乱闘に参加してたんだけど、色んな世界の強い人と戦えてなかなかいい経験になったよ」

「ボクも、色んな決闘者(デュエリスト)とデュエルをして、メキメキとデュエルの腕前を上げたよ、もう一人のボクはもう、いないけどね……」

 

 エイトと遊戯の言葉を聞いて、二人もそれぞれいろんな経験をしたんだと察する。

 会えなかった期間も、自分達はいろんな経験をして強くなったんだと実感した。

 

「翼くん、僕達もこの戦い、手を貸すよ! 翼くんがピンチな今、大乱闘どころじゃないと思ってね、僕だけは他の勇者に変わってもらう事でここに来れたんだ」

「今のボクがどこまで戦えるか分からないけど、ボクも頑張る! だから一緒に戦おう!」

「ありがとう、二人共!」

 

 翼、エイト、遊戯の三人は拳を合わせ、共に戦うと強く誓った。

 

「ところでドラゴニュート、そこにいる女の人は誰だ?」

「ん? ああ、この子は俺の仲間のフレア・アストレアだ、元の世界でもドラコとかレクシアとか色んな仲間がいたんだけどな……」

 

 ドラゴニュートは悲し気な表情で俯く。

 

「優香は魔物に食われて死ぬし、ドラコとダークドラコはクローン故の寿命が解決できずに死んで、ダークドラゴニュートはダークドラコを失った悲しみを俺にぶつけて、最後は俺が戦いに勝った事でダークドラゴニュートも死んだ、レクシアはとある世界で騎士団の教官をやる事になったから、今はフレアと二人旅状態なんだ……」

 

 ドラゴニュートの話を聞き、カイトは俯き、涙を流す。

 

「ドラゴニュート……いくら何でも悲しすぎるだろ……!」

「ああ、だから俺は失った命の悲しみを背負う形で黒衣を身に纏ってるんだよ、だからこそ、お前達にはこれ以上何も失わせない、だから戦うと決めたんだ」

「ドラゴニュート……お前は強いな……」

 

 涙を流すカイトの前に、キラキラとした長い銀髪と、桃色の瞳をしたフレアが立つ。

 頭には銀のティアラが飾られ、青い宝石の埋め込まれた白いドレスを着た少女。

 彼女の存在は、まるでドラゴニュートの心の闇を照らす光の様な存在に見えた。

 

「フレア・アストレアです、ドラゴニュートさんから皆さんのお話は聞かされていただいております、私がどこまで戦えるか分かりませんが、努力はさせていただきます」

 

 フレアはぺこりとお辞儀をし、他の仲間は各自「よろしく」と返す。

 ここに今、かつてのアルスマメンバーが揃い、戦う準備は整った。

 

「さて、問題はその敵さんがどこから来るかって事だな」

「確かに、敵がどこから来るか分からない以上は対応できないもんね」

 

 トレインとイヴの言葉が、戦う準備を整えていた一同の警戒を解く。

 

「そう言えば、そうだったな、そもそも敵が何かも分からないわけだし」

 

 カイトは頭を掻きながら苦笑いする。

 その時、縛られたままのルミナの様子が一変する。

 何かに怯えたような様子を見せ、ただ事じゃないと悟った翼が様子を聞く。

 

「おい、一体どうしたんだ?」

「『あの人』が来る! 任務に失敗した私を殺しに! お願い助けて!」

 

 恐怖のあまり声が上ずったルミナに驚く一同。

 翼は演技の可能性を考慮した上で、先程までとのルミナの感情の変化を計算し、ルミナの言っている事は本当だと判断。

 

「どこから、誰が来るんだ?」

「三大幹部! 私達の上司! ここに来るの!」

 

 ルミナの言葉を聞き、翼たちは敵の接近に警戒する。

 翼はルミナを守るように、ルミナの周囲を警戒。

 すると、トレーニングルームに次元の歪みが三つ発生し、一同は距離を取る。

 直後、次元の歪みが爆発。

 その爆発が時間を巻き戻すかの如く消え去ると、その中から三人の女性が姿を現す。

 三人は全員が黒いロングコート状の軍服を着ており、かつてアルスマファイター達と戦ったエレメントスタンド四天王を彷彿とさせた。

 

「あなた達ね? 上司ってのは」

 

 キサラが剣の切っ先を向けながら問う。

 すると、三人の内の一人、炎の様な赤髪ロングをなびかせた赤い瞳の女性が前に出る。

 

「その通り! 正解よ! あたしはディメンジョンブレイカー三大幹部の一人、フレイミール!」

 

 続いて、青髪ロングで青い瞳の女性が前に出る。

 

「同じく、ディメンジョンブレイカー三大幹部の一人、グラシーヌ」

 

 最後に、金髪ロングで金の瞳の女性が前に出る。

 

「ディメンジョンブレイカー三大幹部の一人、ボルトーネだよん」

 

 三人は腰に携えた剣を抜刀し、空高く掲げ、切っ先を合わせる。

 

「「「三人合わせて、我ら、支配者レーティナ様に仕えし、ディメンジョンブレイカー三大幹部!」」」

 

 突然の名乗りに、一同はポカーンとする。

 

「何あれ、カイテンジャーの真似?」

「どちらかと言うと、1981年放送のスーパー戦隊シリーズ第5作、太陽戦隊サンバルカンに似ていると言うか……ほら、色も人数も一緒だし……いやでも、三人共女だから安心戦隊ALSOKかな……でもあれは色が違うな、元ネタはサンバルカンとどっかで聞いたけど……」

「つーか、俺達が4年前に戦ったエレメントスタンドとほぼ同じじゃねーか!」

 

 セリカ、ドラゴニュート、カイトが立て続けに思った事を口にする為、名乗りポーズのままの三人は顔が赤くなっていた。

 

「黙らんかアホ共! これは由緒正しきディメンジョンブレイカー三大幹部の名乗りだ! スーパー戦隊やエレメントスタンドは関係ない!」

 

 フレイミールは名乗りポーズを辞め、大声で反論する。

 その言葉に違和感を抱いた、ドラゴニュートとカイトは反応する。

 

「え、お前ら、スーパー戦隊シリーズ知ってんの?」

「今はそっちじゃないだろドラゴニュート、エレメントスタンドを知ってるのか?」

 

 二人の言葉に、三人は不敵な笑い声を上げる。

 場の空気が一気に曇り出す、それと同時に、この三人はただ者ではないと一堂に察知させた。

 

「私達の組織名が何故、『ディメンジョンブレイカー』と言うのか知らないみたいね」

「そりゃ簡単ッスよ! 我々ディメンジョンブレイカーは、様々な時空を旅しては『目的』を果たしてきたからッスね!」

 

 グラシーヌとボルトーネは自慢気に自分達の行動を話す。

 ディメンジョンは次元、ブレイカーは破砕者、つまり、彼女らの目的とは……。

 翼は震えながら、その答えを口に出す。

 

「様々な次元を……破壊していると言う事か……!?」

「ピンポーン! 正解ッスよ、そこの好青年クン!」

 

 翼の問いを、ボルトーネは満面の笑みで肯定する。

 想像を絶する彼女らの行動に、一同は恐怖する。

 

「何で……何でそんな事をするんですか!」

 

 ヴェローナは声を荒げ、ディメンジョンブレイカーにその『目的』を問う。

 

「そんなの決まってる、あなた達は必要以上に次元を歪め過ぎた、正確には、色んな次元を当たり前の様に繋げては行き来している、それはつまり、自然の摂理に反した行為、私達の目的は、そういった世界を『破壊』する事……」

 

 グラシーヌの語る目的はつまり、別次元への往来が活発化している世界を滅ぼすと言うもの。

 そんな手前勝手な理由で人々の平穏を壊すディメンジョンブレイカーに、一同は怒りを覚える。

 

「世界を滅ぼすなんて、そんなのあまりに身勝手だよ! 君達はそれで正義の味方にでもなったつもりなのか!?」

「そうだよ! ボク達が駄目で、君達がいいなんて、そんなのおかしいじゃないか!」

 

 温厚なエイトと遊戯も声を荒げ、ディメンジョンブレイカーへ怒りをぶつける。

 だが、三人は表情一つ変えていなかった。

 

「困るのよ、そんな身勝手な事をされては! 世界とは本来、独立したものでないといけない、独立した世界で、そこに生まれた者はそこで一生を送らねばならない……なのに、あんた達みたいな連中に勝手に行き来されると、そこに住む者達の人生や運命が狂うの! とある地球で好き勝手に次元を荒らしまわったフィーニスを、あんた達が倒した事は十分に理解している、あいつはあたし達では対処できなかったからこその感謝よ、でもね、これ以上あんた達に好き勝手に次元を荒らされると困るの!」

 

 フレイミールは自分達が行動を起こす理由を全て話した。

 そこには、かつて別次元の地球で暗躍した存在の名も入っていた。

 しかし、それでも翼たちの意思は変わらない。

 

「だとしても! そこに住む人達全てを滅ぼすなんて間違っています!」

「それに、お前達に勝手に俺達の行動を取りしまわれるのも気に食わねえ!」

「そうだよ! あなた達はそんなに偉い存在なの!?」

「お前達が何故、そんな警察みたいな行動を取ってるか、教えてもらえない限り、俺達は納得しないぜ」

 

 翼、カイト、ルナ、ドラゴニュートはそれぞれの意見を三大幹部にぶつける。

 四人の言葉に、三大幹部は言葉を失う。

 

「その沈黙は、勝手に次元を取り締まっていると言う事でよろしいでしょうか?」

 

 フレアが三大幹部に対し、更に詰め寄る。

 しばらくして、フレイミールがゆっくりと重たい口を開く。

 

「……これから先の未来、更に次元の行き来が活発化する事となるわ、その結果、どうなるか、あんた達には分からないわよね? 答えは簡単よ、歪み過ぎた次元は崩壊し、宇宙全体が次元の渦に呑み込まれて崩壊する……あたし達ディメンジョンブレイカーは、その崩壊から脱出し、この時代に来た生き残りの未来人よ、これで納得するわよね? あんた達も」

 

 フレイミールの口から語られた衝撃の事実に、アルスマファイター達は沈黙する。

 好き勝手に次元を行き来した末の未来が、宇宙の崩壊を引き起こす……。

 

「じゃあ、もし、俺達がこれ以上次元を歪めたら……いずれ崩壊するというのか……」

「その通りよ、ドラゴニュート・ブラウスピカ、例え過去を変えたとしても、あたし達のいた未来は崩壊したまま……でも、あんた達の未来は変えられる……どう? 悪い話ではないでしょう? 孫悟空、あんたなら分かるはずよ」

 

 フレイミールは悟空に話題を振る。

 悟空は、かつて出会った人物から似たような話題をされたことがある。

 

「……確かに、未来のトランクスも言ってたな……過去を変えても、自分達の未来は変わらねえって……つまりおめえらは、オラ達を助ける為に、次元を歪める可能性のある世界を片っ端から潰してるってわけか……」

「そう言う事、だからあたし達は様々な次元を繋げるきっかけを作ったこのアルスマ界は特に危険と判断して、データユニット以上の戦力であるルミナを送り込んだんだけど……次元を超えて最高戦力が助けに来るのは予想外だったわ、ま、あんた達ならやりかねない事だったけどね……」

 

 アルスマファイター達は全員が沈黙する。

 自分達がこれ以上次元を歪めてしまったら、確実にこの宇宙が崩壊し、全次元に住む人間が全員死ぬ。

 少し前まで戦う気満々だったのにもかかわらず、ほとんどのメンバーが戦意を喪失してしまう。

 

「どうやら完全に沈黙してしまったみたいね」

「だったら、後は簡単に制圧できそうッスね! 皆殺しッス!」

 

 その時、翼がボルトーネに対して一筋の斬撃を放った。

 咄嗟に回避するボルトーネ、翼は彼女らに切っ先を向ける。

 

「……確かに、お前達のしてる事は正しいかもしれない……全ての次元を救うかもしれない……でも! それでも! 一方的に制圧して滅ぼす事しかできないお前達の行動が正しいとは、俺にはどうしても思えない! もっと話し合いとか対話とか、そう言う手段もあるのに、それを取らないお前達の行動は間違っているようにしか思えないんだよ! いや、確実に間違っている!」

 

 翼の言葉に、アルスマファイター達は奮い立つ。

 

「よく言った、翼! 俺もどこか引っかかる所はあった、だが、翼が全部言ってくれたよ! ディメンジョンブレイカー! お前達の行動は防衛じゃなく、ただの侵略だ! 悪意のある存在は全て滅ぼしてしまえって言う、侵略行為! 俺はそんなやり方、絶対に認めない!」

「俺も同じだぜ! 俺はかつて、自分の故郷が侵略されたからよく分かる、そこに住む人達を皆殺しにして、何が正義だ! 何が防衛だ! そんな事で宇宙に住むみんなが救われたって、何にも嬉しくなんかねえよ! 俺達の未来を救いたいって言うなら、もっとやり方を考えろよ!」

 

 ドラゴニュート、カイトも翼に続く。

 三人の言葉を聞き、ディメンジョンブレイカー三大幹部は歯を食いしばる。

 

「あんた達……よくも好き勝手言ってくれるじゃない……!」

「私達はあなた達を救ってあげようとしているのに、恩知らずね……」

「あんな奴ら、みーんな殺しちまえばいいッス!」

 

 フレイミール、グラシーヌ、ボルトーネは剣を構え、戦闘態勢を取る。

 

「来るっ! みんな行くぞっ!」

 

 翼の合図を受け、アルスマファイター達も戦闘態勢を取り、各自ディメンジョンブレイカー三大幹部へと向かっていった。

 

「コール! デスティニー!」

 

 シンは転送コマンドを叫び、マスターゴッドの作った転送システムから、デスティニー型パワードスーツを装着する。

 

「蒸着!」

 

 撃が蒸着コードを叫ぶと、アルスマ界の衛星軌道上の亜空間にいる超次元高速機ドルギランから、特殊軽合金グラニウム製のコンバットスーツを粒子の状態に変換して電送。

 電送された粒子は撃に吹き付けられるようにして体表面で構成され、僅か0.05秒でコンバットスーツを装着し、宇宙刑事ギャバンtypeGとなる。

 

「まずはわいから行くで! たこ焼きを焼いて鍛えたサンシロウパンチを食らいや!」

 

 サンシロウは高く跳んでフレイミールにサンシロウパンチを放つ。

 

「邪魔よ!」

 

 しかし、フレイミールの放った回し蹴りを食らい、サンシロウは壁に衝突し、ダウンしてしまった。

 

「相変わらず真っ先にやられるんだな、お前は」

「あの人の強さは変わらないね、トレイン」

 

 トレインとイヴは呆れながら、トレインは愛用の拳銃である装飾銃ハーディスの銃弾を、イヴは腕にナノマシンで作った翼を作り、その翼から羽根状の弾丸を放つ羽根の弾丸(フェザーブレッド)という技をグラシーヌに放つ。

 しかし、グラシーヌは素早く剣を振い、弾を全て弾く。

 

「畜生! またアルスマに出場してた頃みたいに電磁銃(レールガン)が使えりゃいいのに、今のハーディスはクリードとの最終決戦で壊れちまった上に、細胞放電現象も発生しなくなったから撃てねえ!」

「急いで来たから、スヴェンの作った特殊弾頭もないしね……」

 

 グラシーヌは剣を握ってない左手を正面に向けると、トレインとイヴのいる位置に冷気が発生する。

 

「ッ! 避けろ! 姫っち!」

 

 トレインとイヴは咄嗟にその場から離れると、さっきまでいた位置に、巨大な氷柱が発生する。

 

「危ない……もし避けてなかったら氷漬けだったよ……」

 

 イヴは危機一髪の状況に思わず冷や汗をかく。

 

「私達はそれぞれの属性に特化した技を使えるんですよ、その威力は、エレメントスタンドなどとは比べ物になりません」

「そゆこと! じゃあ、次は僕の番ッス!」

 

 ボルトーネが左手を上に挙げると、元アルスマファイター達の上空に雷雲が発生する。

 そしてボルトーネが手を振り下ろすと、雷雲から広範囲に落雷が発生。

 ファイター達はそれぞれ落雷を回避したり防いだりしていたが、この攻撃は危険と判断し、真っ先にボルトーネを倒す事を決意する。

 

「あの攻撃は危険だ! ドラゴニュート! 俺と一緒にあいつから倒すぞ!」

「OK! カイト!」

 

 ボルトーネに突撃するカイトとドラゴニュートを追って、フレアも「お供します」と言ってドラゴニュートの後を追う。

 

「おーおー、早速来たッスね、なら、殺しちゃうッスよ!」

 

 ボルトーネはカイト達目掛けて連続雷撃弾を放つ。

 だが、カイト達の前にフレアが瞬間移動で姿を現し、聖なるバリア、ルミナス・バリアを展開し、連続雷撃弾を防ぐ。

 

「ドラゴニュートさんはやらせません!」

「ありがとう、フレア!」

 

 更に、デスティニーが高速飛行で、ギャバンtypeGが光球化移動でドラゴニュート達を先回りする。

 デスティニーが大型対艦刀のアロンダイトで、ギャバンtypeGがレーザーブレードオリジンでボルトーネに斬りかかる。

 だが、ボルトーネは自身の周囲に電撃を発生させ、二人を弾き飛ばす。

 

「そう簡単には近寄らせないッスよ!」

「雷撃か……これは避雷針では対処できないな……だったら、ぶち破るまでだ!」

 

 カイトはマスターガンを正面に向け、強力な破壊光線、破壊ブラスターを放つ。

 ボルトーネはすぐにこれは防げないと察知し、回避行動を取る。

 

「危ないッスね! 何する気ッスか!」

 

 ボルトーネは先ほどまでの余裕の表情を崩す。

 カイトはその様子を見て、ボルトーネの守りを貫通する事は容易いと察知する。

 

「やはり、あれは防げないらしいな!」

「ならカイト、同時に決めるぞ!」

「おう!」

 

 カイトは再びマスターガンを向け、破壊ブラスターの発射態勢を、ドラゴニュートは右掌に光の魔力を収束させ、ライトブラストを放つ態勢を取る。

 

「破壊ブラスター!!」

「ライトブラストォォォッ!!」

 

 同時に放たれた高火力のエネルギー攻撃は、ボルトーネ目掛けて一直線に放たれ、ボルトーネはすぐに回避行動を取るも、二人は射線上の向きを変え、ボルトーネを追尾する。

 

「まずい……! うあぁぁぁっ!!」

 

 ボルトーネは遂にエネルギーの濁流に呑まれ、全身を焼かれて消滅する。

 

「ボルトーネがやられた!?」

「クッ! あんたらよくもぉ!!」

 

 仲間を一人やられた事で、フレイミールとグラシーヌの怒りのゲージが上がる。

 グラシーヌは目を閉じて両手を広げ、精神を集中させる。

 すると、グラシーヌの周囲に激しい冷気が発生し、吹雪が起きる。

 あまりの冷気に元アルスマファイター達の動きは止まる。

 フレイミールはグラシーヌの後方で体を炎で包んでいるので無事だ。

 

「私のこの絶対零度の冷気を前には、あなた達は身動きも取れないはずです」

 

 あまりの冷気を前に、元アルスマファイター達の身体はみるみる凍り付いてゆく。

 

「みんなはやらせないよ! ベホマズン!」

 

 エイトは全体回復魔法のベホマズンを唱え、仲間全員の傷を治療する。

 

「おっと、そうでした、エイトは厄介な回復魔法が使えるから、真っ先に潰さないといけないのでした……」

 

 グラシーヌは冷気を発生させたまま、エイトに掌を向け、冷凍エネルギーを収束させる。

 

(まずい! あのままじゃエイトさんが! エイトさんは……みんなはやらせない! ボクが守る!)

 

 遊戯は戦友である仲間達を守る為、一枚のモンスターカードをデュエルディスクにセットし、召喚する。

 

「破壊竜ガンドラ召喚!」

 

 遊戯がモンスターカードをセットすると、遊戯の前に漆黒の巨大な破壊竜が出現する。

 

「破壊竜の閃光(デストロイ・ギガ・レイズ)!!」

 

 遊戯が叫ぶと、破壊竜ガンドラは全身から赤い光線を放ち、グラシーヌを攻撃する。

 光線はグラシーヌの周囲に着弾し、爆発を発生させる。

 

「クッ!」

 

 攻撃を受けてグラシーヌが怯むと同時に冷気は収まり、その隙に元アルスマファイターが総攻撃をかける。

 アリアが二丁拳銃のコルト・ガバメント・クローンを、セリカがアサルトライフルのシンシアリティを発砲。

 グラシーヌはすぐに回避するも、その先回りをしたキサラの振り下ろした剣で左腕に切り傷を作る。

 続けてヴェローナが両手に持った剣による連続斬撃を避けきれず、切り傷を増やす。

 

「トドメは僕の奥義で!」

 

 そう言ってエイトは青白い光の竜に変身する、エイトの最終奥義、ドラゴンソウルだ。

 青白い光の竜に変身したエイトはそのままグラシーヌに突撃する。

 

「そんな……! この私が……!」

 

 グラシーヌは何が起こったか理解する間もなく、光の竜に衝突して消し飛んだ。

 残すはフレイミールだけである。

 

「残すはお前だけだ! フレイミール!」

 

 翼の声がトレーニングルームに木霊する。

 しかし、フレイミールは目を閉じ、俯いたままだ。

 

「……まさか、グラシーヌもボルトーネも倒されるなんてね……でも、あたしはそう簡単にはやられないわよ!」

 

 そう言ってフレイミールは目を見開き、剣を構えたまま前方に突撃する。

 元アルスマファイター達はフレイミールを迎え撃つ準備をする。

 その時、フレイミールの身体を、高熱の火炎が包む。

 完全な火だるま状態となったまま、フレイミールの身体は加速する。

 

「食らいなさい!」

 

 フレイミールは体を宙に浮かせると、そのまま高速回転しつつ飛行し、前方にいたヴェローナ、ギャバンtypeG、エイト、遊戯を吹き飛ばす。

 四人は大きく吹き飛ばされダウン、更に、破壊竜ガンドラも撃破されてしまう。

 

「一体何だあの火の玉は!」

 

 デスティニーが高速飛行するフレイミールを見て叫ぶ。

 フレイミールは再び反転し、再突撃する。

 そのフレイミールの動きを止める為、ルナとフレアが前に立ち塞がる。

 

「守護《パラディウム》!!」

「ルミナス・バリア!!」

 

 ルナとフレアはそれぞれバリアを展開し、防御力を増した状態で、フレイミールの動きを受け止める。

 高速回転するフレイミールの動きは完全に止まり、フレイミールは後方に跳んで距離を取る。

 そこに、アリア、セリカ、トレインが射撃を放つが、フレイミールは正面に炎の壁を展開して銃弾を防ぐ。

 

「中々やるじゃない! まさか、あたし達をここまで追い詰めるなんて! なら、これはどう!」

 

 フレイミールは地面に剣を突き立てる。

 その瞬間、トレーニングルームの床の広範囲が炎上、ファイター達の身体を焼き、ファイター達は悲鳴を上げる。

 飛行能力を持つルナ、フレア、デスティニー、悟空、イヴ、キサラは体を浮き上がらせ、他の仲間を持ち上げる。

 

「成程、全員まとめて焼き尽くそうって魂胆か、中々考えるじゃねえか」

「単純な殲滅ではこの手段が楽なのよ」

 

 トレインの言葉に、フレイミールは冷たく返す。

 

「でも、このままじゃ何もできないぞ、みんなも俺達を連れて戦うのは無理だろ?」

 

 ドラゴニュートは冷静に戦局を分析する。

 

「……俺が行きます、みんなは、仲間を頼みます!」

 

 そう言って翼は意識を集中させ、体に黄金のオーラを纏う。

 

「そうか、おめえには覚醒能力があったな! なら、オラも!」

 

 悟空は連れていたカイトをデスティニーに託し、自身も超サイヤ人へとパワーアップする。

 

「か~め~は~め~波---ッ!!!」

 

 悟空はかめはめ波を放つ。

 エネルギー波の余波が火災を消し飛ばしながら、フレイミールに向かい、フレイミールは炎の壁では防ぎきれないと察知し、回避する。

 だが、その先には翼が先回りしていた。

 

「なっ……!?」

「これで終わりだ! 極光天界斬り!!」

 

 翼は黒剣ナハトに眩いまでの光を身に纏い、巨大な光の刃を生成してフレイミールを斬りつける。

 その一撃は、フレイミールの身体を切り裂く。

 

「あり得ない……ディメンジョンブレイカー三大幹部が……こんな簡単に……」

 

 フレイミールの身体は炎へと変わっていき、やがて消滅した。

 こうして、ディメンジョンブレイカー三大幹部を退けた元アルスマファイター達。

 しかし、この戦いでかなりのダメージを負ってしまい、戦えるメンバーは限られていた。

 

「……皆さん、怪我や火傷が酷いですね……」

 

 フレアが足の火傷をさすりながら、周囲の様子を見て呟く。

 

「……フレアも、あんま無理はするなよ、相当痛いんだろ?」

「痛いですけど……私は皆さんが傷付く方が辛いですから……」

「……優しいんだな、お前は、あの時もそうだった……」

 

 ドラゴニュートはドラコとダークドラコが寿命で死んだ時の事や、ダークドラゴニュートと決着を付けた事、優香が死んだ時の事を思い出す。

 それらの出来事が終わった後、ドラゴニュートはただ泣き続けた。

 そんなドラゴニュートをいつも優しく抱きしめていたのが、他の誰でもないフレアだった。

 

「……私はただ、苦しむドラゴニュートさんの事を放っておけませんでしたから……ここにいる皆さんや、この世界だってそうです、私にとっては、どれもかけがえのない物なんですよ」

 

 二人の間に、一瞬の静寂が訪れる。

 一呼吸おいて、フレアが口を開く。

 

「私がドラゴニュートさんに付いてきたのは、ドラゴニュートさんがどこか、死に場所を探しているように見えたからです、ドラゴニュートさん、あなたはこの戦いで死ぬつもりでしょう?」

 

 フレアの言葉に、カイトや翼、他の元アルスマファイター達が反応する。

 

「……やっぱ、お前には気付かれてたか……」

 

 ドラゴニュートはフレアから目を逸らす。

 その時、カイトはドラゴニュートの胸ぐらを掴んで壁際へと押し付ける。

 

「ドラゴニュート! お前どう言う事だよ!? 死のうとしてたって!? 昔のお前は、そんな奴じゃなかったはずだ!」

 

 カイトは昔のドラゴニュートを知っていた。

 明るくて、正義感があって、悪い事は許せない人物、そして何より、アニメや特撮の話で何度も盛り上がった。

 そんな人物が今、死に場所を探してこの戦いに参加していると聞いて、かつてのドラゴニュートを知る仲間達は驚いていた。

 

「……俺の心はもう、深く傷付いているのさ、あの後、大切な人を沢山失って……もう何も考えたくない……全て終わりにしたいんだよ……」

 

 そう言ってドラゴニュートはカイトの手を振りほどこうとする。

 その時、カイトはドラゴニュートを殴り飛ばす。

 

「馬っ鹿野郎! そんな事で死んだ人達が喜ぶと思うのかよ!? お前を知る人達が悲しむとは思わないのかよ!? 俺は……俺達は、お前の事が大切だ! 大乱闘での出来事、アニメや特撮を観た事、全部覚えてる! お前はそれでいいのかよ!!」

 

 ドラゴニュートは俯いたまま沈黙する。

 

「ドラゴニュートさん、俺は、ドラゴニュートさんに何があったのかは分かりません、でも俺、ドラゴニュートさんには死んで欲しくないんです、死に場所を探しているんだとしたら、この戦いには参加しないで欲しいです、俺達は、死ぬ為に戦ってるんじゃないですから……」

 

 翼は、ドラゴニュートに死ぬ為ではなく、守る為に戦っていると伝える。

 

「それに、ドラゴニュートさんの事を一番大事に想っている人は、一番身近にいるじゃん!」

 

 ルナの言葉を聞いたドラゴニュートは、フレアの方を向く。

 フレアは涙ぐんだまま、ドラゴニュートに抱き付き、ドラゴニュートの胸の中で嗚咽を漏らす。

 ドラゴニュートは静かに目を閉じ、優しくフレアを抱き締める。

 

「……ごめん、フレア……俺は生きるよ……もう、どこにも行かないから……」

 

 ドラゴニュートはフレアが泣き止むまで、優しくフレアを撫で続けた。

 

 しばらくして、カイトの持っていた通信機にマスターゴッドからの連絡が入る。

 

「マスターゴッド、どうした?」

『大変だ、遂に各世界に敵の本隊が送り込まれた! カイスマ界、別次元の地球、ペラペランド……他にも多数の世界に、データユニットとは違う兵士達が送り込まれている!』

「何だって!?」

 

 三大幹部を倒した事で、ディメンジョンブレイカーは行動を急いだのだろう。

 それだけ、アルスマファイター達の関係者が危険だと認知された、だから全力で潰す。

 

「みんなは、みんなは大丈夫なのか!? キルシュちゃんは!?」

『私なら大丈夫だよ、安心して』

「良かった……」

 

 通信越しに聞こえてきた恋人キルシュの声を聞いたカイトは安堵する。

 しかし、事態は一刻を争う状況であった。

 

『とりあえず、こちらは元カイスマメンバーも召集して何とか食い止めてる、別世界の地球も、クロストライアルを始めとした組織が相手しているし、ペラペランドの方も多分大丈夫だろう』

「なら、俺達はディメンジョンブレイカーの基地を叩けばいいか……その鍵を握るのは……」

 

 一同はルミナの方を見る。

 支配者レーティナとやらを倒し、この戦いを終わらせる為には、ルミナに頼るしか方法はない。

 カイトは「また後で」と言ってマスターゴッドとの通信を切り、ルミナに駆け寄る。

 

「ルミナ、頼む! 俺達はみんなを助けないといけない! 協力してくれ!」

 

 カイトだけでなく、他の元アルスマファイター達も、口々にルミナに頼み込む。

 ルミナはしばらく沈黙した後、重たい口をゆっくりと開いた。

 

「……支配者レーティナ様は、三大幹部よりも遥かに強い……多分、あなた達じゃ勝てない……死にに行くだけ……それでも行く?」

 

 ルミナは問う、死ぬ可能性が高い戦いに、わざわざ赴くかと。

 しかし、元アルスマファイター達の答えは決まっていた。

 

「行くよ! 俺達は、全次元に住む人達を守る為に戦うんだから!」

 

 アルスマファイターを代表して、翼が答える。

 

「ディメンジョンブレイカーを倒した後、どうやって次元の崩壊を食い止めるかはまだ決まってない……それでも俺達は、そこに住む人々の安全は守らないといけないから!」

 

 今すぐに次元の崩壊を食い止めるのは無理だとしても、今は人々の平和の為に戦う。

 既に、戦う理由は決まっていた。

 

「なら、私は止めない……あなた達がレーティナ様に勝てるとは到底思えない……それでも行くのなら、私が連れていく……これは、あなた達に助けてもらったほんのお礼だから、勘違いはしないで欲しい……」

 

 ルミナが喋り終わった後、カイトはルミナを縛っていた縄をハイパーソードで切る。

 身動きが取れるようになったルミナは、目を閉じて両掌を前に出し、意識を集中させて空間を裂き、次元の切れ目を作る。

 

「レーティナ様は、この先にいる、早く行って!」

 

 ルミナが合図すると、ファイター達は一斉に次元の切れ目に飛び込む。

 全員が飛び込んだ事を確認すると、ルミナも飛び込み、次元の切れ目はゆっくりと閉じた。

 

【ディメンジョンブレイカー本部 司令室】

 

 次元の切れ目に入ると、そこは司令室であった。

 数多くのモニターに各世界の侵攻状況が映し出されており、各世界の仲間達が必死に、命懸けで戦っていた。

 その司令室の奥、玉座のような場所には、一人の長い銀髪の女性が座っていた。

 黒いドレスの様な軍服を着た、白い瞳の女性、その表情には一切の感情がない冷酷な顔。

 この女性こそが、レーティナだろう。

 

「よく来たわね、まさかここまで来る連中がいるとは……」

 

 レーティナは玉座から立ち上がると、手に黒い長剣を出現させた。

 

「つまり、ここまで来たと言う事は、ディメンジョンブレイカーの作戦に反抗すると言う事ね」

「当たり前だ! 相手を一方的に滅ぼして従わせるなんて、間違っている!」

 

 レーティナの言葉に、翼が力強い声で反論する。

 

「お前達が侵略している次元にだって、何も知らず頑張って生きている人たちだっているんだ!」

「そんな人達を……お前の身勝手な理由で殺されてたまるか!」

 

 ドラゴニュート、カイトも続く。

 しかし、そんな彼らに、レーティナは一切の反応を示さなかった。

 

「意見を纏めると、お前達はディメンジョンブレイカーの作戦が気に食わないと、そう言う事ね?」

「当然です! あなた達のしている事は、許される事ではありません!」

 

 レーティナの問いに、フレアが返す。

 レーティナはため息を一つつくと、左手をアルスマファイターに向け、閃光を放つ。

 次の瞬間、想像を絶する光の爆発が起き、アルスマファイターは全員、地面に崩れ落ちる。

 

「な……何が起きたの……!?」

 

 ルナは今起きた状況が一切理解できず、混乱する、それは他の全員も同じであった。

 

「だから言ったんだ、レーティナ様には絶対勝てないって! そして、あれだけの力を持つレーティナ様でも、次元の崩壊は食い止められない! だから、滅ぼすしかないの! あなた達も馬鹿じゃないんだから分かるでしょう!?」

 

 ルミナが遂に堪えていた感情を爆発させる。

 それはまるで、絶対に諦めないアルスマファイターを、ディメンジョンブレイカーと重ね合わせているようでもあった。

 

「それは理解しているさ、だけどな!」

「多くを犠牲にして助かろうなんて、そんな最悪の決断だけはしたくないんだ!!」

 

 ドラゴニュートとカイトがルミナに返す。

 

「だから何でよ! 次元の崩壊を起こしている原因である世界を潰せば、確実に次元の崩壊は止められるのよ!? 分からないの!?」

「分かっている……分かっているさ! でも、人の命は何よりも大切なんだ! 何かを守る為に何かを犠牲にするなんて、間違っているんだよ! だから、俺達は絶対に諦めない! 諦めないぞ!!」

 

 翼はルミナにそう返すと、ゆっくりと立ち上がった。

 傷ついた身体で、ナハトを杖代わりにしながらゆっくりと。

 

「愚かな連中だ……これしか術がないなら、従うのが常識だろう、それとも、他にこの宇宙を救う術でもあるのか?」

「今はないし、お前達が未来の世界から覚悟を決めてこの世界に来た事も、理解している……でも、滅ぼすだけが正義ではありません! 今の俺達にできる事は、次元の行き来をやめる事だけです……でもいつか必ず! 次元の崩壊を起こさずに、各世界を行き来する方法だって見つけてみせる! レーティナ! あなたが教えてくれた未来の話が、この宇宙の未来を変えるかもしれないんだ!!」

 

 翼はナハトを大きく振り上げ、レーティナに振り下ろす。

 その一撃を、レーティナは受け止める。

 

「貴様は……一ノ瀬翼だな、なら、いい事を教えてやる……私のいた宇宙にも、アルスマは存在した、だが、それはこの宇宙のアルスマとは違う物だった……私の居た世界のアルスマは、人形に魂の宿った人形生命体がファイターの半分を構成し、他の大乱闘のある世界の住民との関わりもあった……だが、ある日突然、宇宙全体が次元の崩壊に巻き込まれて消えてしまった……」

 

 レーティナの口から語られた真実に、アルスマファイター達は驚愕する。

 その中でただ一人、フレアだけは目を閉じ、俯いたままであった。

 

「あそこにいる銀髪の白いドレスを着た女、奴が唯一のアルスマファイターの生き残りだ、奴はアルスマ界で起きた動乱の最中一度は死んだが、その魂がどう言う訳か別の世界に行き付き、新たな肉体を手に入れたみたいだな……恐らく、その世界を支配していた者によるものだろう……」

 

 レーティナの言葉を聞き、フレアはゆっくりと口を開ける。

 

「レーティナさんの言う通りです……私はあの日、確かに死にました……ですが、私の魂はサファイア・ホロウによって拾われ、あの世界に転生させられたのです……この新たな姿を貰って……」

「フレア、そんな話、一度も……」

「話したく……なかったんです……! 私の知るみんながもうこの世にいない事を……ホロウから聞かされたんですからっ……!!」

 

 フレアは堪えきれなくなって嗚咽を漏らす。

 ドラゴニュートはフレアの頭に手を伸ばし、優しく髪を撫でる。

 

「そう言う事だ、お前達も滅びたいなら、勝手にすればいい……本当に次元の崩壊を食い止められるのならな!」

 

 レーティナは翼を力任せに押し返す。

 翼の身体は宙を舞い、地面に叩き付けられる。

 だが、翼はもう一度立ち上がる。

 

「ほう、まだ立ち上がる力があったか……」

「お前の言う事が本当なら……そっちの世界の俺は、次元の崩壊に巻き込まれて死んだんだな……俺だけじゃない……ドラゴニュートさんや、カイトもみんな……!!」

「ああ、死んだよ、そして同じ過ちを繰り返そうとしている……実に馬鹿な連中だな……」

 

 レーティナの言葉を聞き、翼は拳を握り締める。

 

「馬鹿なのはあなただ! あなたは、事を急ぎ過ぎて、侵略でしか次元の崩壊を止められないと思い込んでいる、ただの傲慢な侵略者だ!!」

「何……!?」

 

 翼の言葉に、レーティナは初めて不快感を顔に出した。

 

「確かに俺達は間違ったかもしれない……それでも相手を滅ぼして宇宙を救おうなんて……決して許される事じゃない! 他人を裁く権利なんて、誰にだってないんだ! あなたは絶対に間違っている!!」

「何も知らない癖に……勝手な事を言うなっ!!」

 

 レーティナは左手から閃光を放ち、光の爆発で翼を吹き飛ばす。

 翼は背中を壁にぶつけ、吐血する。

 

「私達がこの事を伝えなかったら、お前達は何も知らずに死ぬだけだったんだ! それを教えてやったのはどこの誰だ!? 誰でもない私達だろう!!」

「だから……それを最初から各世界に伝えれば、こんな無益な争いは避けられたんですよ……!!」

 

 翼はゆっくりと立ち上がる。

 もはや立ち上がる気力もないはずなのに、翼は何とか立ち上がった。

 

「一つだけ本当のことを言ってやる! レーティナさん! 力だけじゃ何も解決しない!!」

 

 その時である、翼の全身を、眩い光が包み込んだ。

 赤と青の、二つの光。

 その光の中には、二人の翼がうっすらと見えていた。

 一つは、かつてのアルスマファイター時代の翼の姿、そしてもう一つは、青ではなく、赤いジャケットを着た翼の姿。

 

「これは……別次元の俺なのか……?」

「翼さん……力を貸してくれるんですね? みんなの為に……」

 

 フレアはかつての戦友である翼の姿を見て、涙を流す。

 赤と青、二つの翼の光は、今を生きる翼に、新たな力を与えた。

 光が収まると、そこには、赤と青のトリコロールカラーのライトアーマーを着た翼の姿があった。

 そして、翼の傷も全て癒えており、翼の全身にはこれまで感じた事のない強い力がみなぎっていた。

 

「感じる……別の世界と、過去の俺の力を……! これなら、お前を止められる!!」

「ふざけるな! 滅んだ者の力など!!」

 

 レーティナは再び閃光を放つが、その光は翼に命中する事なく、全てライトアーマーに吸収される。

 予想外の事態に驚愕の表情を見せるレーティナは、何度も閃光を放つが、全てが吸収され、命中しない。

 諦めたレーティナは刀身に光のエネルギーを纏い、翼に振り下ろす。

 だが、その一撃を、翼はナハトで切り払い、レーティナの剣を折る。

 

「馬鹿な……! こんな事が!」

「レーティナ! この一撃で、全てを終わらせる!!」

 

 翼は力を込め、全身に眩い光を纏い、剣を縦に構える。

 そのまま体を宙に浮かせ、レーティナ目掛けて一直線に突撃する。

 

「俺達は……未来を掴んでみせる!!」

 

 すれ違いざまに、剣を横薙ぎに振り、レーティナの身体を切り裂く翼。

 体を切り裂かれたレーティナの身体は、少しずつ光の粒子へと変わってゆく。

 

「私のやり方は……間違っていたの……?」

「確かにやり方は間違っていました……でも、あなたのお陰で、この宇宙は救われるかもしれないんです……そこには、感謝をしてもしきれません……レーティナさん、本当にありがとうございました」

「なら……絶対に……救ってね……この宇宙を……約束よ……」

 

 そう呟き、レーティナは微笑み、一筋の涙を流す。

 やがて、レーティナの身体は光となって消えた。

 それと同時に、翼の身体を纏っていたライトアーマーは消失。

 レーティナ亡き今、各次元の戦いを辞めさせる為、ルミナはレーティナの玉座の下へと急ぐ、そこには、通信装置があるからだ。

 ルミナは通信装置を起動し、マイクに語り掛ける。

 

「各次元を侵攻中のディメンジョンブレイカー全兵士に告ぐ、レーティナ様と三大幹部はアルスマファイターとの戦いで戦死しました、その戦いの中で、アルスマファイター達は次元の崩壊を食い止める為に努力すると決意しました、だから、これ以上戦って命を散らす必要はありません、総員、速やかに戦闘行動を停止してください、繰り返します……」

 

 ルミナが各次元に通信を送ると、各次元での戦闘行動はすぐに停止した。

 

【カイスマ界 カイスマ本部前】

 

「どうやら、全員戦いを辞めたみたいだな」

「全く、一時はどうなるかと思ったぞ!」

「これ以上の持久戦は流石にキツいからな!」

「カイトくん……勝ったんだね……」

 

 カイスマ界では、カイトの仲間であるダークカイト、サルマン、レオナルド、そしてカイトの恋人であるキルシュが戦いを終え、一息ついていた。

 

【別世界の地球 エクレールの村】

 

「何とか戦いを辞めてくれたみたいだな……」

「これで私達クロストライアルの任務も終わりですね」

 

 別世界の地球で戦っていた別世界のドラゴニュートとその恋人アイラが、戦いを辞めて投降の意思を示す兵士達を見て、静かに呟く。

 

【ルナの居た地球 スティグマの村】

 

「敵の攻撃が止まったって事は、ルナがやってくれたんだね……帰って来たら沢山褒めてあげないと」

 

 ルナの姉、ミハルは、ルナの事を想いながら、空を見上げる。

 

【ペラペランド アゼスマタウン】

 

「戦いは終わったみたいだな」

「他の世界での戦闘も停止したみたいですね、兄さん」

「流石にぼくも疲れたなぁ……これでゆっくり休めるよ……」

 

 ペラペランドにいるアゼストと妹のアゼリア、加勢に来ていたメネズの三人は、戦いを終えてくたくたになっていた。

 

 全ての戦いを終えた後、各世界に侵攻したディメンジョンブレイカーの兵士達と戦死者の遺体は、ディメンジョンブレイカーの本部へと輸送された。

 戦死者の遺体は専用の設備で弔われ、主を失った兵士達は行き場を失っていたが、全員がアルスマ界に受け入れられる事となった。

 ルミナが殺したカメラマンは、カイスマ界のマスターゴッドが大乱闘の設備を流用して蘇生させて事なきを得た。

 ディメンジョンブレイカーの兵士達は皆、アルスマ界の防衛隊に配備される事になり、住居もしっかり提供される為、不自由はないだろう。

 戦いを終えたアルスマファイター達は皆、元の世界へと帰還した。

 しかしそれは、長い別れ、そして最悪の場合、永遠の別れを意味していた。

 

【アルスマ界 アルスマストリート】

 

「じゃあ、みんなとはここでお別れになるって事だな」

「みんなは私が送っていくけど、もしかしたら一生会えないかもしれないんだよね?」

「まあ、次元の崩壊が進んだらいけないからな」

 

 翼、ルナ、ドラゴニュートが話し、全員がしんみりとする。

 

「まあ、安心しろって、マスターゴッドがきっと、安全性の高い転移装置を作ってくれるはずだからさ!」

「それまでしばらくのお別れですよ、だって、永遠の別れなんて、悲しすぎるじゃないですか」

 

 カイトとフレアが笑顔を見せる。

 

「大丈夫です! きっとまた会えますよ!」

「そうだよ、これは一時の別れだから、永遠の別れじゃないさ」

 

 遊戯とエイトが皆を安心させる言葉を投げかける。

 

「みんな、いつかまた会おう!」

 

 翼の言葉と共に、全員が手を重ねる。

 

 その後、ルナの連れてきたアルスマファイターは全員ルナの手によって元の世界へと帰還し、ルナも自身の世界へと帰っていった。

 残されたのは、翼とヴェローナ、そしてルミナの三人だけ。

 

「皆さん、約束は守ってくれますかね?」

「当然ですよ、皆さんはそういう人ですから」

 

 ルミナの問いに、ヴェローナは皆に絶対の信頼を寄せた言葉を返す。

 

「それより、ルミナはこれからどうするんだ?」

「私は……適当な場所で野宿でもするつもりです」

「なんなら、うちに来ないか? 君なら妹と仲良くなれそうだし」

「え……」

 

 ルミナは驚いた表情で翼を見つめる。

 しばらく固まった後、照れくさそうに髪を弄りながらルミナは翼に返事を返す。

 

「別に、いいですよ……野宿するよりはマシですから……」

「ふふ、決まりだな、じゃあ、これからよろしくな、ルミナ」

 

 翼はルミナに手を伸ばし、ルミナは翼から顔を逸らしながら、頬を赤く染めて翼の手を取る。

 その手を、ヴェローナも取っていた。

 

「今日だけは、私も仲間に入れてもらいますよ、翼さん?」

「え、あ、分かったよ」

 

 驚いた表情でヴェローナを見つめる翼を見て、ヴェローナはにこりと微笑む。

 そして、三人は仲良く翼の家の方角へと歩いて行った。

 

 この戦いは様々な次元を震撼させた大事件として、後の世に語られる事となる。

 次元の崩壊はその後、ゆっくりと長い時間をかけて修復していくようであり、しばらくは様子見となった。

 そして、その事件から半年が経過した頃、マスターゴッドの不眠不休の努力もあり、無事に安全性の高い転移装置の開発に成功、再び次元の行き来が可能となった。

 それからこの装置はカイスマ界と親交の深い世界へと配られ、戦友たちは再び再会した。

 この戦いを最後に、アルスマ界では大きな争いは起きる事はなく、平和な世が続いたと言う。

 これは、アルスマ界で起きた最後の戦いの物語であった。

大長編 アルティメットオールスター大乱闘スマッシュブラザーズ【冒頭先行公開】

 かつて、アルスマ界という平和な世界で某大人気ゲームに似た大乱闘と言う競技が行われた。
 様々な世界から招待された歴戦の戦士たちが幾度となく大乱闘でドラマを作り、絆や友情を深めていった。
 しかし、その大乱闘を潰そうとした存在もいた。
 アルスマ界の守護を目的として生み出されたアンドロイド、ブラックガンナーとホワイトブレイドが、アルスマ界にかつて存在したテロ組織『エレメントスタンド』の残党や各世界の敵のデータをコピーした『データユニット』を使い、幾度となくアルスマファイターに勝負を挑んだ。
 何度も繰り返された戦いの末、遂にブラックガンナーとホワイトブレイドは倒され、エレメントスタンド残党も壊滅、データユニットも全てが消滅し、データも失われた。
 この戦いの後、アルスマの開催者であるマスターファフニールは深い眠りに落ち、ファイター達は元の世界へと帰還した。
 それから三年、この空白の期間中、アルスマ界の近くにあるカイスマ界で一時休止されていた大乱闘が再開され、一部アルスマファイターも参加し、再びその勇姿を披露していた。
 だが、そのカイスマ界でもやはり敵は存在しており、アルスマ開催の一年前に倒された悪の戦士であるダークシャドウが復活し、彼の率いるダークシャドウ軍と幾度とない激しい戦闘が繰り広げられた。
 カイスマファイター達は激闘の末、ダークシャドウを撃破するが、一か月後に復活したダークシャドウは再び攻撃を開始。
 更に、カイスマ、アルスマファイターが別次元の地球に召喚され、消息を絶つ事件も発生。
 様々な戦いを乗り越え、ダークシャドウの繰り出す刺客を撃破した末、ダークシャドウとの最後の戦いが行われる。
 一度は絶体絶命の危機になるが、最後はカイトとダークカイトの合体した姿、ゴッドトゥルースがダークシャドウを撃破、長い長い戦いが終わりを迎えた。
 そして、それから三年が経過し、アルスマはかつて開催された名物競技として少しずつ忘れ去られ、カイスマは新生カイスマメンバーへと交代、新たな時代へと進みつつあった……。
 そんなある日、アルスマ界で突然、次元の歪みが確認された。

【アルスマストリート】

 アルスマストリートに設置された大型スクリーンに、アルスマ草原に発生した次元の歪みが映し出されていた。
 群衆が集まり、その様子をじっと見つめてがやがやと騒ぐ。
 そこには、かつてアルスマのスタッフとして働いていたナレ男、オペ子、レフェ子の姿もあった。

「あれ、何ですかね……? 何かが現れるのでしょうか……?」
「今の所は何とも言えませんね……」
「あの最終決戦以降、アルスマ界は平和だったのに、また何か事件が起こるの……?」

 ナレ男、オペ子、レフェ子は不安気に次元の歪みを見つめる。
 アルスマも終わり、ただの一般市民として暮らす三人。
 彼らの不安通り、この次元の歪みは大きな戦いのほんの序章であった。

【アルスマ草原】

 アルスマ草原に発生した次元の歪みは、時間の経過とともに大きくなってゆき、激しく揺らぎ始めた。
 危険だと感じたカメラマンは一度撤収し、遠くに避難する。
 刹那、次元の歪みは突然大きな爆発を発生させ、完全に沈黙した。
 カメラマン達は冷や汗と共に爆発で発生した土煙を見守る。
 すると、そこには一人の少女が立っていた。
 透き通るようなさらさらとした銀髪のロングヘアを少しだけハーフアップにして青いリボンで留めた、澄んだアイスブルーの瞳をした神秘的な少女。
 白と青の二色で構成されたワンピースを着たその少女は細身の剣を手に持ち、首に淡く光る魔石の付いたネックレスを付けていた。

 突然の光景に慌てふためくカメラマン達。
 その少女はカメラマン達を見つけると、細身の剣に無属性の魔力を纏い、横薙ぎに振る。
 カメラマン達は真横に両断され、直後に血を噴き出し崩れ落ちる。
 更に少女は掌に無属性の魔力を収束させ、一直線に放ち、カメラマン達の死体を爆散させる。
 アルスマ草原に爆炎が上がり、それを無表情で見つめる謎の少女。
 その少女の背後に、次元の裂け目が発生、その中からかつてアルスマファイターとして活躍していた黒乃月(くろの るな)と、かつてカイスマメンバーであったカイト・ブルーレオが姿を現す。

「くそっ! 一足遅かったか!」

 カイトは到着が間に合わず、カメラマン達を助けられなかった悔しさのあまり歯を食いしばり、右手に持ったハイパーソードと右手に持ったマスターガンを握り締める。
 当時14歳だったカイトも現在は18歳、あの時より成長して背も伸び、大人らしく成長している。
 あの時のトレードマークであった青いコートは黒いコートへと変化し、あの時のイメージとはかなり変わっている。

「カイスマ界の襲撃にかなり時間をかけてしまったから……もっと早く駆け付けてれば助けられたのに!」

 ルナは右手に持った鮮血の罪人(ブラッド・クライム)と左手に持った魂の狙撃手(ソウル・ティラール)を握り締め、謎の少女を見つめる。
 カイトと違って見た目が一切変わっていないルナ。
 彼女はあの後、とある禁呪法によって一切年を取らない不老不死の肉体となっている為、一切の変化がないのである。

「来たわね、元アルスマファイター」

 謎の少女は冷たい声で静かに呟くと、掌に無属性の魔力を収束させると、一直線に光線として放つ。
 二人は先読みして回避し、カイトはマスターガンから破壊ブラスターを放ち、ルナは魂の狙撃手(ソウル・ティラール)から闇の光線(ダークネス・フォトン)を放つ。
 二筋の光線は一直線に少女を捉え、直撃して爆炎を上げる。
 しかし、一切の油断をしない二人。
 二人は爆炎をじっと見つめると、次の瞬間、二人目掛けて二筋の光線が放たれる。
 カイトとルナは先読みして回避。
 続けて、爆炎の中から円形のバリアを纏った少女が飛び出してくる。

「守りもお手の物ってわけね! なら!」

 ルナは闇の魔力を収束させつつ、詠唱を始める。

「我に宿りし混沌の闇よ、黒き炎で全てを焼き尽くし、崩壊させよ、暗黒の波動(ダークネス・エクスプロージョン)!!」

 ルナは少女目掛けて魔力弾を放ち、魔力弾は少女に命中すると同時に爆散。
 少女のバリアを砕き、体が吹き飛ばされる。
 それでも細身の剣を地面に突き立て、何とか勢いを止めるが、そこにカイトが待っていた。

「スパークパンチ!」

 雷を纏ったパンチが、少女の腹部に命中すると、少女は気を失い、がくんと崩れ落ちる。

「流石に悪い奴とは言え、女の子は殺せないしな」
「それに、この子からは情報を聞き出さないといけないしね」

 二人がそんな話をしていると、二人の背後から足音が聞こえた為、二人は同時に振り向く。
 そこには、成長しながらも、とても見慣れた人物が二人、立っていた。
 片方は背が少し伸び、髪も長くなって大人っぽい見た目になりながらも、青いジャケットと黒剣ナハトというトレードマークは健在の青年。
 もう片方は、成人している為に制服ではないが、制服風のコーデをし、黒髪ボブは少し伸びつつも二刀流は健在の女性。
 カイトとルナはその人物を、よく知っていた。

「「翼とヴェローナ!」」
「よっ、久しぶり」
「お二人共、お久しぶりです」

 お互い、久々に会う関係ながら、しっかりとあの時の事を覚えており、四人の間に笑顔が生まれる。

「カイト、本当に久々だな、あの時の面影も大分なくなってて、一瞬誰かなって思ったよ」
「翼こそ! 本当に久々だな! 今は何やってんだ?」
「俺は今、ヴェローナと一緒にアルスマシティの防衛隊に入って、アルスマシティを防衛しているんだ、元ナイル盗賊団や元エレメントスタンドの人達も、区域は違うけど、防衛隊に入ってるよ」

「ルナさんは……全然見た目変わっていませんね……」
「あの後色々あってね……ヴェローナちゃんはあの時17歳だったから、今は21歳? 翼くんは18歳だったから22歳か」
「あ、あまり年齢については話さないでください……」

 久々に会ってもなお、あの時の様に会話をする四人。
 しかし、今は急を要する事態であった。

「カイトとルナが久々にここに来たって事は、他の世界でも何かあったって事だな?」
「ああ、次元の歪みはカイスマ界やペラペランド、別次元の地球など、色々な所に出現していて、それらの世界ではデータユニットが出現しているんだ、カイスマ界は新生カイスマメンバーや元カイスマメンバー、ペラペランドはアゼスマファイター、別次元の地球ではクロストライアルが戦っているけど、よりによって数が多くてな、アルスマ界に来れたのはルナの門(ゲート)の能力のお陰だ」

 翼とカイトが会話する横で、ルナはえっへんと胸を張る。

「そう言えば、ルナさんはどうしてカイスマ界に?」
「それがね、私の居た世界は闇の眷属との戦いも終わって平和が続いていたんだけど、私の世界も同じ様に次元の歪みからデータユニットが大量に出現してね、今はミハルお姉ちゃん達が戦ってくれてるんだけど、ミハルお姉ちゃんはこう言ったの、『この敵は陽動、本体は別の場所にいる』って、ミハルお姉ちゃんは察しがいいから気付いたんだと思う、だから私は各地を移動しながら本体を探して、別世界で出会ったレイリアちゃんにも協力してもらって、カイトくんと合流したタイミングでアルスマ界に次元の歪みが発生しているとマスターゴッドが教えてくれたからここに来たの」

 ルナの途方もない冒険の物語を聞き、ヴェローナは唖然とする。

「みんなの話を聞く限り、他の世界はデータユニットが出現した、でもこのアルスマ界には……」

 翼は気を失ったままの少女を見つめる。
 この少女は一体何者なのか分からないが、この事件の鍵はこの少女が握っている事は間違いない。

「とりあえず、話はまた後で、一旦アルスマ本部に移動しないか?」
「え、まだアルスマ本部があるのか!?」
「ああ、今はアルスマシティ防衛隊の拠点になっているけどね、ちなみに、セラフィとラフェールはそこの警備アンドロイドになってるよ」

 用途は変わりつつも、アルスマ本部が残っている事に喜ぶカイト。
 カイトとルナは翼とヴェローナに連れられ、アルスマ本部へと向かう。

【アルスマシティ防衛隊本部(旧 アルスマ本部)】

 かつてのアルスマ本部の大きな会場は大幅に改修され、軍施設らしい無機質な外見となっていたが、内部のロッカーや休憩所、トレーニングルーム等の施設は当時のままで、カイトとルナは懐かしさを覚える。

「ここに来るのも久々だね」
「ああ、こうしてまた来れるとは思っていなかったよ」

 四人は気を失った少女をトレーニングルームへと連れていき、暴れないように縄で縛る。

「ところでさ、ルナなら分かるか? あの後、アルスマファイターのみんなが何をしているか」
「勿論、あの後会いに行ったんだけど……」

 少女が目を覚ますまでの間、ルナは翼の質問であるアルスマファイターのその後について答える……。
 瑠依は現在21歳で、あの後人気ブロガーとなり、戦いとは無縁の環境で平和な生活を過ごしている。
 サンシロウは現在27歳で、現在は自称、関西最強のたこ焼き屋を営んでおり、この間は仮面ライダー1号のお面を付けた男性と楽しく談話をしていたようだ。
 フィオーレは現在22歳、相変わらずレイラとはライバル関係で、関係者によるとまた修行に出ると言って行方をくらましているらしい。
 ドラゴニュートは現在25歳、ルナが訪れた際は仲間である優香が魔物に食われて命を落とした為、とても悲しんでいる様子だったが、相変わらず冒険は続けているらしい。
 イオナは現在21歳、現在は戦いから身を引き、メイドカフェで仕事を続けているようだ。
 リスティリアは現在21歳、しかし、山奥で暮らしている事が災いしたせいで現在何をしているかは分からないが、噂によると究極魔法の実験に失敗して命を落としたとされているが、詳細不明である。
 千初は現在26歳、相変わらずエイリアン災害は続いており、エージェントとしてエイリアンを退治しているようだ。

「そうか……優香さん死んじゃったのか……」

 翼はかつて最終決戦し参加し、とても頼りになった優香の事を思い出す。

「魔族に捕らえられて、最後は魔物に食べられたらしくて……ドラゴニュートさん、とても悲しんでたな……」

 関係者の死に場が暗くなりかけた所で、ルナは慌てて残りのメンバーについて話す事にした。

「えっと、他の人のその後についても話すんだけど、これらの時空は時間の流れがバラバラだから、結構年取ってる人もいるけど驚かないでね?」
 
 ウルトラマンティガことマドカ・ダイゴは現在50代、ティガへの変身能力は失い、ヒカリとツバサの二人の子供を授かっている。
 ウルトラマンネクサスこと孤門一輝は現在27歳、ネクサスへの変身能力は失い、現在はナイトレイダー副隊長としてスペースビーストと戦い続けている。
 ウルトラマンネオスことカグラ・ゲンキは現在25歳、ネオスと分離した事で変身能力を失い、現在もHEARTの隊員として活動しているようだ。
 仮面ライダー龍騎こと城戸真司は現在43歳、あの後も仮面ライダー龍騎として活動はしているようで、未だに戦い続けているようである。
 仮面ライダーZOこと麻生勝は現在50代、現在も仮面ライダーZOとして世界の悪と戦っているようだ。
 仮面ライダーギーツこと浮世英寿は現在22歳なのだが、どうやら神になったらしく、見違えた姿でルナの前に姿を現したらしい。
 マジレッドこと小津魁は現在18歳、インフェルシアの残党と戦いながら、人間界とインフェルシアを結ぶインフェルシア親善大使として活動を続けている。
 ギャバンtypeGこと十文字撃は現在30代、宇宙刑事として、宇宙全体の治安を守っているほか、最近は赤いギャバンとも出会っているようだ。
 キカイダーことジローはアルスマの後、キカイダー01という新たなキカイダーと共に新たな悪と戦っているようだ。
 デスティニーガンダムことシン・アスカは現在17歳、愛機をデスティニーガンダムSpecIIに変え、平和の為にコンパスに所属し、戦っている。
 ガンダムダブルエックスことガロード・ランは現在16歳、愛機をガンダムX 3号機に変え、成長した姿を見せたらしい。
 バーサル騎士ガンダムはアルスマの後、スペリオルドラゴンとなって天界へと行った為に会えなかったようだ。
 エイト、クラウド、カムイ、マルス、マリオ、ルイージ、フォックス、キャプテン・ファルコン、ネス、アイスクライマーは現在、別の世界で本家大乱闘に参加しており、サーナイトはモンスターボールのポケモンとして、アブソルとティファはスピリッツとして参加しているようだ。
 ダイ、悟空、ピッコロ、遊戯、トレイン、イヴ、ウイングマンは最後に会った時はジャンプチアイランドと言う場所で未知の人物達と一緒に戦っていたようだが、少し前にジャンプチアイランドが消滅した為、現在は何をしているか不明との事。
 セリカはアルスマの後、相変わらずアビドス高校の借金を返す為にバイトをしているようだ。
 キリトとアスナはアルスマの後、異世界に飛ばされ、そこで未知の人物達と戦っていたらしい。
 アリアはアルスマの後、相変わらず武偵として活動しているようで、犯罪者を逮捕し続けているようだ。
 クーとレンはアルスマの後、エディルレイドを保護する為に様々な場所を飛んでいる。
 かなでに関してはいる世界が特殊である為、会いに行けなかったのだが、とある場所を旅していた際、彼女に似た人物を見かけたとの事、となりにはオレンジ髪の男性が立っていたようだが、詳細不明である。
 エミリアはアルスマの後、異世界に戻り、色々と苦労をしているようであり、疲れた様子を見せていた。
 メイプルはアルスマの後、相変わらずゲーム生活を謳歌しているようで、ルナに対して楽し気な様子を見せていた。
 キサラはアルスマの後もI&S事務所を経営しているようで、変わらずD災害の続くベイロンシティで悪魔と戦っているようだ。
 R-GUNことイングラム・プリスケンは現在、SRXチームの教官として活動しているようだが、何か怪しい雰囲気を感じたとルナは語っている。

「以上、長くなったけど、アルスマファイター全員のその後だよ!」
「……何か、あんま変わってなかったり、かなり老けてたり、みんな大変だな……」
「本当、驚きです……」

 ルナから聞かされた事実に、翼とヴェローナは唖然とする。
 もしもう一度彼等と出会ったら誰が誰だか分からなくなっている可能性も高いだろう、時の流れは残酷だと感じた。

「何人か行方不明の人もいたんだけど、基本的にみんな元気そうだったから問題ないと思うよ!」
「ま、ほとんどが元気そうで何よりだ!」

 ルナとカイトは唖然とする二人を無理矢理元気づけようと明るく接する。
 すると、このタイミングで気を失っていた少女が目を覚ます。

「な、何ですかこれ!?」
「気が付いたみたいだな、悪いが、暴れられては困るから、縛らせてもらったよ」

 翼の言葉を聞いた少女は、観念したのか暴れる様子を見せなかった。
 その様子を見て翼は安堵し、少女に詳しい話を聞く。

「じゃあ、質問させてもらうぞ、現在、色々な世界で次元の歪みが発生し、データユニットが多数出現して各地に被害を出している、そして君は、その次元の歪みから出現した……君は、各地で発生している次元の歪みと何か関係性があるのか?」

 しかし、翼の質問に少女は答えようとしない。
 翼はため息をつき、質問を変える。

「じゃあ、質問を変えるよ、君の名前は? そして所属は?」
「……ルミナ・シルヴァリス、所属は答えられない……」
「ルミナって言うのか、所属を答えられない理由は?」
「……トップシークレット、一つだけ答えるなら、私は末端の兵士に過ぎないから」

 翼とルミナの会話を聞き、カイトとルナは驚愕する。
 ルミナは戦った感じ、そこそこ強かった。
 彼女が末端の兵士と言う事は、それを支配する存在は相当な力を持っている可能性があると言う事だ。

「翼くん、どうする? 情報が少なすぎるよ、拷問でもする?」
「いや、流石に拷問は酷すぎるからな……でも、一つ分かった事があるよ、ルミナの所属する組織は、かなり規模の大きな組織って事だ、それも、多次元に侵略の手を伸ばせる組織」

 ルナは翼の言葉を聞き、固唾を飲む。

「多次元に侵略の手を伸ばす……まるで別次元の地球で戦ったフィーニスみたいだな」
「組織の規模は分からないけど、一度しっかり対策を取った方がいいだろうな」

 カイトと翼は強大な敵の襲来を察知し、戦う事を決意する。
 その時、突然トレーニングルームに次元の歪みが生じた。
 突然の出来事に戦闘態勢を取る翼たち。
 しかし、次元の歪みから現れたのは、彼等のよく知る人物達であった。
 次元の歪みから現れたのは、ドラゴニュート、サンシロウ、撃、シン、エイト、遊戯、アリア、セリカ、悟空、イヴ、トレイン、キサラであり、ドラゴニュートの隣には初めて見る少女もいた。

「よっ、みんな久しぶり!」
「ドラゴニュートさん! それにみんな! どうして!?」
「実はカイスマ界のマスターゴッドにアルスマ界の危機を知らされてな……連れてこれそうな奴に招集をかけてこうして集まってもらったってわけだ、まあ、大半が戦いを辞めてたり、忙しかったり、行方不明だったりで、呼べる連中が少なかったが……」

 ドラゴニュートは翼の問いに、アルスマ時代の時の様に明るく返答する。
 ドラゴニュートはアルスマ時代の時は既に成人であった為、声が少し低くなった事と、髪が腰の辺りまで伸びている事以外、変化はなかったが、一番変化があったのはその服装である。
 以前は騎士服みたいな服装であったが、何があったのか全身黒一色で、黒のロングコートを着込んでいた。
 もしかしたら優香の死をきっかけに何かあったのかもしれないが、そこは敢えて聞かない事にした。

「まあ、でもわいは何とか来てやったで! ほれ、お土産にわいの作った関西最強のたこ焼きも持ってきたわ!」

 サンシロウは髪が少し伸びた以外は全く変化がなく、翼たちは唖然としていた。
 翼はサンシロウの作ったたこ焼きを一口食べたが、驚くほど普通であり、これで関西最強かと思った。

「宇宙刑事たるもの、アルスマ界の危機には駆け付ける必要があるからな、こういうの、次元を超えて出張中だ! って言うんだろうな」
「マスターゴッドが急ごしらえとは言え、転送システムを作ってくれたから、何とか俺は来れたけど、不在な人も多いんだな……」
「それにしても、あんたたち結構年取ったわね、時の流れが違うのかしら?」
「賞金が貰えるかは分からないけど、来てあげたんだから、感謝しなさいよね!」
「俺は賞金が貰えなくても問題ないぜ、世話になった借りを返さないといけないしな!」
「で、またスヴェンは置いてけぼり」
「あたしもお世話になったお返しをしないといけないからね、早くシュウくんに会いたいから、邪魔する奴は全員蹴散らしてあげる!」

 撃、シン、アリア、セリカ、トレイン、イヴ、キサラが口々に話す。
 見知った顔が当時と同じ姿で並ぶ中、一際目を惹くのが、悟空であった。
 何と、子供の姿になっており、道着の色も青になっているのだ。

「あの、悟空さんは一体何があったの?」
「ん? まあちょっと色々あってな、子供の姿に戻っちまったんだ、ま、気にするな、ちゃんと戦えっから!」
「私が最後に会った時は大人だったのに……ほんとに何があったの……?」

 悟空の見た目の変化に、ルナは戸惑い、頭を抱える。
 
「やあ、久しぶりだね、翼くん、大きくなったね」
「翼くん、久しぶり! と言っても、もうボク達より年上かな?」
「エイト、遊戯、また会えて嬉しいよ、俺はもう22になったよ、二人は……相変わらずだな」

 エイト、遊戯という親友と再会を果たした翼。
 翼はまた出会えた親友を前に、涙を流す。

「僕はあの後、本家の大乱闘に参加してたんだけど、色んな世界の強い人と戦えてなかなかいい経験になったよ」
「ボクも、色んな決闘者(デュエリスト)とデュエルをして、メキメキとデュエルの腕前を上げたよ、もう一人のボクはもう、いないけどね……」

 エイトと遊戯の言葉を聞いて、二人もそれぞれいろんな経験をしたんだと察する。
 会えなかった期間も、自分達はいろんな経験をして強くなったんだと実感した。

「翼くん、僕達もこの戦い、手を貸すよ! 翼くんがピンチな今、大乱闘どころじゃないと思ってね、僕だけは他の勇者に変わってもらう事でここに来れたんだ」
「今のボクがどこまで戦えるか分からないけど、ボクも頑張る! だから一緒に戦おう!」
「ありがとう、二人共!」

 翼、エイト、遊戯の三人は拳を合わせ、共に戦うと強く誓った。

「ところでドラゴニュート、そこにいる女の人は誰だ?」
「ん? ああ、この子は俺の仲間のフレア・アストレアだ、元の世界でもドラコとかレクシアとか色んな仲間がいたんだけどな……」

 ドラゴニュートは悲し気な表情で俯く。

「優香は魔物に食われて死ぬし、ドラコとダークドラコはクローン故の寿命が解決できずに死んで、ダークドラゴニュートはダークドラコを失った悲しみを俺にぶつけて、最後は俺が戦いに勝った事でダークドラゴニュートも死んだ、レクシアはとある世界で騎士団の教官をやる事になったから、今はフレアと二人旅状態なんだ……」

 ドラゴニュートの話を聞き、カイトは俯き、涙を流す。

「ドラゴニュート……いくら何でも悲しすぎるだろ……!」
「ああ、だから俺は失った命の悲しみを背負う形で黒衣を身に纏ってるんだよ、だからこそ、お前達にはこれ以上何も失わせない、だから戦うと決めたんだ」
「ドラゴニュート……お前は強いな……」

 涙を流すカイトの前に、キラキラとした長い銀髪と、桃色の瞳をしたフレアが立つ。
 頭には銀のティアラが飾られ、青い宝石の埋め込まれた白いドレスを着た少女。
 彼女の存在は、まるでドラゴニュートの心の闇を照らす光の様な存在に見えた。

「フレア・アストレアです、ドラゴニュートさんから皆さんのお話は聞かされていただいております、私がどこまで戦えるか分かりませんが、努力はさせていただきます」

 フレアはぺこりとお辞儀をし、他の仲間は各自「よろしく」と返す。
 ここに今、かつてのアルスマメンバーが揃い、戦う準備は整った。

少女兵士の聖夜の休戦

 私の名前はアリア・クリスティナ、とある国の少女兵士で、年は17。
 その日の私は戦場の最前線となる雪深い山岳地帯を、大型の対機動兵器バズーカを持って駆け抜けていた。
 未来の戦場はAI制御された機動兵器が主流で、私達のような人間の兵士は最前線で戦わされる、実質特攻のような扱いをされている。
 人同士の殺し合いは主流ではなく、機械同士が破壊し合うのが未来の戦場だ。
 これがAI技術が発達した成れの果てである。

 私は敵の追っ手から何とか逃げ切り、小さな洞穴の中へと逃げ込む。
 外は猛吹雪だ、寒さでAIのセンサーも狂って私を見つけられずにいるし、何より肌寒くて凍死しそうだ。
 何とか寒さを凌がないと、戦いどころではない。

「ここでしばらく休むとしましょう」

 私がそう呟いたその時、洞穴の奥からガサッという音がした。
 敵がいるかもしれないと、私は腰のホルスターの拳銃を抜く。

「誰かいるの? 出てきて!」

 私は寒さでかじかむ指を、トリガーに当てる。
 もしこれが敵兵だったら、この瞬間は生きるか死ぬかだ。
 だが、戦いは起こらず、洞穴の奥からは一人の少女が銃を向けたまま姿を現す。
 とても鮮やかなコバルトブルーの髪をした少女。
 瞳は綺麗な銀、兵士とは思えない整った顔立ち、これで私は察した。

「あなた、敵国の遺伝子操作兵士ね」
「……はい、セレスティア・ルナ・エデンと言います、年は16、エデン計画第3世代型人造人間、それが私です」

 私達が今敵対している敵国は、AI技術だけではなく、遺伝子操作技術も発達しており、どの兵士も超人の様な身体能力をしている。
 今、この場で戦闘になったら、勝てない!
 しかし、彼女は銃を降ろした。

「……何のつもり?」
「ここは一時休戦といきませんか? 今日はクリスマスですし、ここで会ったのも何かの縁です、吹雪が止むまででも、休戦しませんか?」

 確かに、この場で彼女と戦っては間違いなく殺される。
 私は少しでも生き延びたい。
 なら、ここは素直に要求を呑むしかないと、私は感じた。

「……分かったわ、一時休戦といきましょう」

 私と彼女は二人寄り添って洞窟の奥で毛布を被り、暖を取った。
 しばらく無言の状態が続いたが、彼女の方から私に話しかけてきた。

「あなた、お名前は何というのですか?」
「……アリア、アリア・クリスティナよ」
「アリアですか、では、私の事はセレと呼んでください」

 そう言ってセレは貝殻を手渡してきた。

「これは……?」
「クリスマスプレゼントです、言ったでしょう? 今日はクリスマスだと、だから、プレゼント交換しましょう」
「プレゼント交換? そうね……これでもいいかしら?」

 私は特に手渡せるものがなかったので、空薬莢を手渡した。

「まあ、何とも物騒なクリスマスプレゼントですね、でも、嬉しいです、私、クリスマスプレゼントを貰うのは初めてですので」

 私達はプレゼントを交換し、私は貝殻を空薬莢の入っていた胸のポーチに入れる。
 一方のセレは空薬莢を笑顔で眺めていた。

「……それ、そんなに嬉しいの?」
「はい、それはもう、私は戦う為に生まれた人造人間、プレゼントなんてものは貰った事がありませんし、クリスマスを祝った事もありません、ですが、ずっと興味があったのです、こうしてプレゼントを貰う事は、とても素晴らしい事なのですね!」

 私はふと過去の事を思い出す。
 孤児院育ちの私は、一応孤児院でクリスマスを祝っていた。
 その後、軍に志願してからはクリスマスを祝う事はなくなったが、セレの姿を見て思い出した、幼い頃の私は確かにクリスマスを楽しんでいたと。

「ねえ、あなたは何でそんなにクリスマスの興味があるの?」
「クリスマスだけではございませんよ、正月にハロウィンなど、色々興味があります、何で興味があるかと聞かれると……何ででしょうね、よく分かりません」

 セレは私に微笑みかけ、私の髪を触る。

「な、何?」
「この金髪と緑の瞳は、天然ですよね?」
「天然だけど……」
「とても綺麗です、遺伝子操作などしなくても、人はこんな美しいものを生み出せるのに、何故遺伝子操作するのでしょうか……」

 セレの言う事ももっともである。
 今の人類は遺伝子操作にAIと、人間の科学で生み出した技術ばかりに頼りすぎている。
 結果、私の様に普通に生まれた人間はゴミの様に使い捨てられる。
 これは自然の摂理に反している、そんな気がする。

「アリアさん、私はこんな戦争、無意味だと思うのです、だって、私とアリアさんは敵同士なのに仲良くなれました、人間は戦争などしなくとも、分かり合える、私はそう思っています」
「セレ……」
「アリアさん、私はあなたと出会えて、とても嬉しいです、私達は敵同士ですし、吹雪が止んだら私達は戦場に戻りますが、私達はずっと、友人同士ですよね?」

 セレの言葉はとても純粋であった。
 だが、戦場ではそんな甘い考えは許されない。
 一歩の油断が命取りになるからだ。

「セレ……残念だけど、私達はこれが終わったら敵同士に戻るよ」
「あら、それは何故です?」
「決まってるでしょ! 私達は敵同士、今は休戦中だけど、私達は始まった理由さえよく分からない国同士の戦争に駆り出されて戦っている! そんな中で油断したら、死ぬようなものだよ!」

 私の声が洞穴の中に響く。
 セレは私の言葉を聞き、しゅんとした仕草を見せる。

「確かにそうですね……ごめんなさい、アリアさん……ですが、アリアさんから貰ったこの空薬莢、ずっと大事にします、だからアリアさんもその貝殻、大切にしてくださいね」
「勿論、ところでこれはお守りか何か?」
「はい、それは私が初めて外出が許された時に海で拾ったものです」
「そんな大切な物、貰っちゃっていいの?」
「ええ、構いません、私はプレゼント交換ができて満足ですので、アリアさんこそ、この空薬莢には何か思い出が?」
「それは私がお守り代わりに磨いて綺麗にした空薬莢よ、大した物じゃないけど……」
「いえいえ、とても嬉しいです! ありがとうございます!」

 私達がそんな話をしていると、丁度吹雪が止み始めていた。
 ひと時の休息は終わりをつげ、これで私達は再び敵同士、また戦場に戻らないといけない。
 セレは毛布をしまい、一足先に洞穴の入口へと向かう。

「アリアさん、色々とありがとうございました、この空薬莢、大事にいたします、またどこかで出会えると、嬉しいですね」
「そうだね、セレも元気でね、いつかまた会おうね」
「はい、では達者で」

 セレは私に一礼し、洞穴の外に出る。
 刹那、セレの居た場所に一発の砲弾が着弾し、爆炎が上がる。
 私が慌てて洞穴の外に出ると、そこには味方の機動兵器が展開されていた。
 無人兵器に、セレは殺された。
 だが、セレとは既に敵同士、なのに、この胸が張り裂けそうな気分は一体何なのか……。
 私は雪の上で膝を付くと、足元に何か光るものが転がっていた。
 それは、私がセレに渡した空薬莢、クリスマスプレゼントとして渡し、セレが心の底から喜んでいた物だ。
 私はその空薬莢を掌に包み込むと、目から涙がこぼれ落ちる。

「だから……私達は敵同士って言ったんだ……戦争は理不尽に人が死ぬから……なのに……敵のはずのセレが死んで……私はどうしてこんなに泣いているんだよ……」

 私はその場で泣き続け、空薬莢を墓標代わりに土の中に埋める。
 それからの事はよく覚えていない。
 気付けば自軍のキャンプに戻って、そしたら停戦協定が結ばれてて、私は軍の個室ベッドで眠りについてて、そして今、この文章を書いている。
 今思い返してみても、あのセレという少女は不思議な少女であった。
 あんな優しい子が目の前で死んだ事はとてもショックだ、だから私は、人が戦争で死ぬなんて事は、理不尽な事だと感じたし、とても耐えられない。
 私は軍人、だけどこれからはもうセレみたいな子が死なないよう、二度と戦争が起きないように、自分にできる事を精一杯したいと思っている。
 それに、セレの話を聞く限り、あちらの国はクリスマス等といった行事を知らないようだ。
 なら、私のする事は決まっている、次に控える行事の正月を、あちらの国で行う、それをきっとセレも望んでいるだろう。
 私はこの年のクリスマスに起きたこの悲しい出来事を、未だに忘れられない。
 だから私はここでセレに誓う、二度と戦争のない優しい世界にすると。

『アリア・クリスティナ』著

「私の見た戦争日記」西暦2235年12月27日より抜粋

Black Agent 第1話(銃×剣のエージェントのパイロット版)

※本作は2022年に執筆した銃×剣のエージェントのパイロット版となる作品です。2020年に1話のみ執筆し、奇跡的に現存していた為、ここに掲載致します。続きを執筆する予定は一切ない為、ご了承ください。オリジナリティを尊重してそのまま掲載します。

 

 

 

月明りの真下に連なる夜の街並み。

日中ほどではないものの、にぎやかだ。

そして、その街の中を歩く人々、私もその一人だ。

私の名前は初瀬千初(はつせちはつ)、22歳の女性だ。

ただし、私の職業は暗殺者、つまり殺し屋だ。

普段は一般人になりすまし、ミッションがあればすぐさま現場に向かい、人を殺す。

そうしてお金をもらっている。

でも、私は悪い人間しか殺さない、いい人間は殺さない暗殺者だ。

時代は22世紀になり、暗殺者は取り締まられるようになった、

けど、暗殺者は職業になって、一種の軍隊のようなものになり、

相手の国の要人を殺したり、スパイのような行動をとって情報を奪ったりなど、

工作員のような扱いになった。

以降、暗殺者は西暦2120年現在もひっそりと活動している。

そこで、私の携帯が鳴った。職場の上司からだ。

携帯電話もこの時代になると、

情報が奪われる可能性が高い、だから暗殺者の使う携帯は特別仕様で、

セキュリティが強化されている。

「はい、千初です、ミッションですか?」

私はいつも通り応答する。

「千初、お前、パートナーが欲しくないか?」

え?パートナー?確かに今までは一人でやってきたけどさ、

う~ん、でも、いた方がいいよなぁ、一人じゃ限界があるし…

「まぁ、欲しいと言われたら欲しいですけど…

と、言うかどうしてそんな話になったんですか?もしかして、私だけじゃ不満ですか?」

私が思った事を口にしたら、上司から思いがけない返事が来た。

「いや、お前の使用武器は銃だろ?しかもお前近接戦闘できねーじゃん、

お前に死なれたらウチの職場は暗殺者がいなくなるからさ、

そこで新しい暗殺者を募集したら、丁度来たわけよ、近接戦闘できる奴が」

「へぇ~、私の後輩で、近接戦闘が得意な人ですか~、

私もとうとう先輩になるんですね…嬉しいです」

確かに、私は格闘などは苦手で、武器はベレッタやグロックなどの拳銃。

いくら自分でカスタマイズした拳銃を扱う私でも、近接戦闘ができなければ、

接近されたときに命がない、そうなったら困る。

ここで近接戦闘ができる人が来てくれたら私は助かる。

「それで、その人は男性ですか?女性ですか?」

「女性だよ、まあ、今すぐ来てよ、その子が待ってるから」

「了解です、すぐ向かいます」

そう答え、携帯を切った。

「女性か~、怖い人じゃないといいなぁ…」

私はそんなこと言いながら、自分の職場であるUNICORN(ユニコーン)へと向かった。

UNICORNは表向きは食品メーカーだが、実際は暗殺者を使ってテロなどの

犯罪行為を未然に防ぐ事を目的としている。

でも、UNICORNは暗殺者を扱う会社の中では毎年最下位であり、

そんな理由から入社しようと思う人は全くいないらしい。

私はここに入ったら作ってる食品を毎日自由に食べていいって言うので、

それにつられて入社した。

その時は私以外に暗殺者がおらず、職場の人たちが泣きながら喜んでいた。

ここに入社して1年が経ってようやく私以外の暗殺者が来てくれた。

嬉しいと同時に、私が先輩として頑張れるか不安もある。

でも、私だって1年間頑張ってきたんだ、やらなくちゃ、頑張れ、千初。

そういってUNICORNの前に付いた。

「う~、緊張するなぁ…」

私はUNICORNの社内をエレベーターで上がり、最上階の社長室の前に付く。

ドアをノックし、自分の名前を言う。

「初瀬です、ただいま到着しました」

入りたまえ、と帰ってきたので、恐る恐る入る。

そこには、社長の長田祥匡(おさだただくに)と、水色の長髪と

綺麗な緑色の目が似合う女性がいた。

「おお、千初くん、紹介するよ、彼女がセオドーラ・クロフォードくん、

君の後輩にあたる人物だよ、仲良くしてやってくれ」

社長がそう言うと、セオドーラと呼ばれた女性が自己紹介をした。

「セオドーラだ、歳は22、武器は高周波ブレードを使っている、

暗殺者は初めて2年ほどだ、今まで38人のターゲットを仕留めた、

これからここで世話になる、よろしく頼む。」

何か、凄くクールな人が来たぁぁっ!

しかも暗殺者を初めて2年って、私より長いし…

しかも38人も仕留めてる!?

高周波ブレードでそんなに仕留めてるって、凄いよぉ!

え~と…こう言う時って、どんな風に返せばいいのかな…

「は…初めまして!私、初瀬千初です、私も22歳だから、

あなたと同じだね、武器はベレッタとか、グロックとか、銃を使ってるよ、

暗殺者は初めて1年、今まで仕留めたターゲットは11人、

まだまだあなたには劣るけど、これからよろしくね!」

私が握手するために手を伸ばした、すると、彼女は

「私は必要以上に仲良くする気はない、ただ、ターゲットを仕留める、

ただそれだけだ、それ以外は私には必要ない。」

えぇ…怖いよ、この人…

でも、何とかして仲良くなりたいなぁ…よし!

「ねぇ、セオドーラ…さん?」

「何だ?」

「あなたの事…セオって、呼んでも…いいかな…?」

うわ~、これ、絶対怒られる奴だ…私、やっちゃったかな…?

「構わない、実際、前の職場でもそう呼ばれていた」

え?怒られ…ない?

よかった、一歩前進だ、セオちゃん、案外優しいのかも…

「それじゃ、セオ、ミッションだったら私は近接戦闘が苦手だから、

近接戦闘はよろしくね、私は銃で援護するから」

「了解だ、千初は絶対に死なせはしない、私が守る」

守ってくれるんだ、よかった、頼りになる後輩ができた…

「よし、それじゃあ、君たち2人のチーム名を考えようじゃないか」

社長はいきなりチーム名を提案してきた

「え?チーム名…ですか…?」

私が戸惑うと社長は

「せっかく2人になったんだから、いいんじゃない?

いつまでも千初とセオじゃややこしいじゃないか」

「だったら、私に名案がある、

千初が銃、私が剣を扱うから、銃×剣(ガンソード)はどうだ?」

がん…そーど…か…かっこいいじゃん!

「セオちゃん、それ名案!!」

「よしよし、じゃあ、銃×剣で決定だね、さっそく次の会議で発表するよ」

なーんだ、セオちゃんも結構遊び心あるじゃん。

「セオ、これから私達はチームだから、お互いの足りないところを補って

絶対にミッションを成功させようね、そして、絶対に生きて帰ろう!」

「了解だ、私も死ぬ気はない、生きる」

こうして、私達チーム剣×銃の物語は始まった。

現在連載中の小説「双眼転生闇黒戦記」

どうも、このブログを更新するのは超久しぶりとなります。

今回は、私がアルファポリスで連載している小説「双眼転生闇黒戦記」の宣伝をしたいと思います。

双眼転生闇黒戦記 | ファンタジー小説 | 小説投稿サイトのアルファポリス

この小説は異世界転生×ファンタジー×ロボットと言う、私の好きな要素を詰め込んだ小説でして、現在はちょっと休止していますが、毎回楽しく書けています。

私が執筆した小説を投稿しているこのブログでは、宣伝と言う形で掲載したいと思います。

それと、今後はこのブログで小説を掲載すると同時に、ブログに掲載している小説をリメイクし、他サイトで投稿する予定もあります。

他にも色々やっていく予定ですので、今後もよろしくお願いします。

鋼の騎士カヴァリエーレ

 Dr.バイオの反乱から100年が経った西暦2353年、突如デスティリアと言う異星人が襲来し、人類の半数が死亡した。
 地球統合軍はオートマシンに次ぐ新たな人型機動兵器、ナイトギアを開発し、デスティリアとの全面戦争に突入した。
 そして、物語は地球統合軍の新造戦艦グレイシアが駐留している日本基地から始まる。

「これが噂の新造戦艦グレイシアか……」
「氷みたいに綺麗な船体で凄いっすね、先輩!!」
「ああ、どうやらこの氷みたいな船体は対ビームコーティングがなされていて、デスティリアヒューマノイドやデスティリアファイターのビーム程度なら、軽く弾くらしいぞ」
「凄いっすね! これが地球統合軍の新技術!!」
「いつまでもオートマシンや戦闘機に頼ってもいられないんだろう、100年前に活躍したエレメティアやエレスティア、エレメティオーラも今じゃナイトギアの性能には敵わないしな」

 そんな話をしながら歩いている男女二人の前に、一人の男性が現れた。
 歳は二人より少し上、その男性は二人を見ると、笑顔で話しかけた。

「君が噂の新型ナイトギアのパイロットさんかい? 俺はステイツ・ロードウェイ、このグレイシア隊に配属されているステイツ隊の隊長だよ、階級は大尉、よろしくな」
「俺は黒鋼透弥(くろがね とおや)少尉です、ステイツ隊長、これからよろしくお願いします!」
「私はレイフィル・ラティーナ少尉っす、ステイツ隊長、よろしくです!」
「ふぅん、見た感じ、普通のパイロットだけどな……何で君達が新型ナイトギアのパイロットに?」
「パイロット適性が一番高かったのが俺達だったんです」
「実際の戦闘ではどうか分からないっすけどね……」

 その時、日本基地に警報が鳴った、デスティリアが接近しているのだ。
 急いでグレイシアのオペレーター、リーリス・レインディーが日本基地にデスティリアが接近している事を伝える。

「日本基地にデスティリアが接近しています! 総員、第一種戦闘配置!!」
「だ、そうだ、透弥少尉、レイフィル少尉、新型ナイトギアはグレイシアの格納庫にある、いけるな?」
「「はい!!」」

 透弥とレイフィルは格納庫に向かい、新型ナイトギア、カヴァリエーレと、新型支援戦闘機、エアレイドと対峙する。

「これが……俺達の機体……」
「先輩、いけますね?」
「勿論だ!!」

 透弥とレイフィルはコックピットに乗り込むと、コンソールを操作し、発進準備を完了した。

「レイフィル、この日本基地にはナイトギアより旧式のオートマシンであるバーテルの改修機、バーテライトしか配備されてない、デスティリアと戦うにはあまりに無謀だ、だから、俺達でできる限りのことはするぞ!!」
「了解っす! 先輩!!」
「黒鋼透弥、カヴァリエーレ、行きます!!」
「レイフィル・ラティーナ、エアレイド、行くっす!!」

 カヴァリエーレとエアレイドはそれぞれ出撃し、戦場の空へと飛び立った。
 ナイトギアはオートマシンと違い、基本的に飛行する事ができる。
 戦場には既にバーテライトが複数待機していた。
 かつてDr.バイオの反乱で活躍したエレメティアやエレスティア、エレメティオーラの戦闘データを使って改修されたこのバーテライトだが、デスティリアの機動兵器やナイトギアに比べると、その性能差は歴然である。
 カヴァリエーレとエアレイドは日本基地を背にしてデスティリアの襲来に待機した。
 すると、デスティリアの部隊が襲撃してきた。
 デスティリアヒューマノイドとデスティリアファイターが複数機、デスティリア艦が三隻、そして、デスティリアコマンドヒューマノイドが一機であった。

「まずいな、指揮官型が一機いる、俺達で相手できるか……」
「大丈夫っすよ先輩! 行くっすよ!!」

 そう言ってレイフィルの操縦するエアレイドはホーミングミサイルを放った。
 ホーミングミサイルはデスティリアの部隊に命中し、数機が撃破された。
 続けてカヴァリエーレもデスティリアの部隊に突撃し、脚部に内蔵されたビームセイバーの鞘を取り、ビームの刃を生成すると、目の前にいるデスティリアヒューマノイドを次から次へと切り裂いて撃破した。
 続けて、腰部に装備されたライフル型の武器、ビームカノンを手に取り、遠距離からデスティリア艦に攻撃を仕掛け、一隻撃沈した。

「よし! 戦えてる!」
「前に出すぎるなよ、透弥少尉!」

 後方からステイツの操縦するカーフカスタムと、ステイツ隊のメンバーであるセレーナ・ウェルネス、グロウ・ドーレス、ネフェレー・フィアーズ、リュイ・ウィークス、アスティ・ニューイーの操縦するカーフが、カヴァリエーレの援護に現れた。
 カーフ部隊は一斉にビームカノンを撃ってデスティリア部隊を撃破。
 数が減った所をステイツの操縦するカーフカスタムの主武装であるビームスナイパーライフルの一撃で、デスティリア艦の動力部を撃ち抜き、撃沈させた。

「凄い……! 統合軍の量産機であるカーフのカスタム機であそこまで……!!」
「ほらほら、ぼさっとするなよ!」
「りょ、了解……!!」

 カヴァリエーレとエアレイドは同時にホーミングミサイルを放ち、再びデスティリア部隊に攻撃をかけた。
 だが、デスティリア艦の中からまだ多くのデスティリア部隊が出撃していた。
 この状況を打破する為、透弥はある策を考えた。

「グレイシア、バスターカノンを射出してください!」
「先輩、もしかして……」
「ああ、デスティリア部隊を一掃する!」

 直後、グレイシアのカタパルトから大型のビーム兵器、バスターカノンが射出され、カヴァリエーレはそれを装備した。
 そして、銃口をデスティリア部隊及びデスティリア艦に向けると、トリガーを引き、強力なビームを放ってデスティリア部隊及びデスティリア艦を消滅させた。

「凄いっすね、先輩!!」
「いや、このバスターカノンのお陰さ」

 すると、残ったデスティリアコマンドヒューマノイドが両腕のロングハンドソードでカヴァリエーレに斬りかかった。
 カヴァリエーレは攻撃を回避し、バスターカノンをアスティの操縦するカーフに手渡し、ビームセイバーでロングハンドソードを受け止めた。
 そして、蹴りを放ってデスティリアコマンドヒューマノイドの体勢を崩させると、ビームセイバーをデスティリアコマンドヒューマノイドの腹部に突き刺し、撃破した。
 こうして、日本基地に現れたデスティリア部隊を撃破した事で、透弥とレイフィルの初任務は無事に終了、日本基地に被害や犠牲者はなかった。

「任務終了だな、各機、グレイシアに帰艦するぞ」

 その後、格納庫に戻った透弥とレイフィルは、ステイツ隊の面々と共に初任務の成功を祝っていた。
 日本基地での戦いを終えたグレイシア隊は、かつてエレメティアやエレスティアが活躍したウィットタウンへ向かおうとしていた。
 現在、ウィットタウンは統合軍基地が置かれ、定期的にデスティリアの襲撃に遭っている。
 グレイシア隊は、その支援に向かうのだ。

「透弥少尉、レイフィル少尉、ちょっといいか?」
「何でしょうか? ステイツ隊長」
「二人は何で統合軍に志願したんだ?」
「俺とレイフィルは、高校時代、同じ高校に通ってたんです、ですが、俺達の住むプラムシティがデスティリアの襲撃に遭った際、家族も、友人もみんな殺されてしまって……」
「だから、私達は同じような境遇の人を作らない為に戦うと決意したんす!」
「そうか……優しいんだな、君達は……今回の君達の戦いで、救われた人はきっといるはずさ」
「そう言ってもらえて嬉しいです」

 その時、透弥とレイフィルに近づく一人の人物がいた。
 服装は統合軍の軍服ではなく、布切れの様な服を着た少女であり、その見た目はレイフィルに酷似していた。
 だが、髪の色はピンクではなく紫で、瞳も青ではなく紫であった為、完全に一緒ではなかった。
 謎の人物を前に、ステイツ隊の面々は銃口を向けた。

「待って、私は戦うつもりはないの」
「この艦に民間人は乗ってないはずだが? お前、何者だ?」
「私はさっき銀色のナイトギアに撃墜された指揮官型のデスティリアだよ」
「見え透いた嘘を付くな」
「嘘じゃないよ、私達はゲル状になることができてね、さっき撃破された際に体の一部をこの艦に付着させたの、で、そこにいる女の子に擬態したんだ」

 急にデスティリアを名乗る少女が現れた事で、格納庫には緊張が走った。
 困惑するステイツ隊の面々をよそに、透弥は彼女に一つ質問をした。

「君がこの艦に来た目的は何なんだ?」
「私は破壊と殺戮しか知らないデスティリアの中でも変わり者でね、人間の心に興味があるの、だからあなた達と接触した、駄目かな?」
「どうします? ステイツ隊長」
「そうだな……悪い奴ではなさそうだし、透弥少尉とレイフィル少尉と言う監視を付ける条件付きでこの艦の移動を許可しよう、だが、動力部だけは進入禁止だ」
「良かったっすね、ティリアちゃん!」
「ティリア……?」
「デスティリアから取ってティリアっす、どうっすか?」
「ティリア……いい名前……嬉しい……」

 グレイシアがウィットタウンへ移動を開始してから数日、デスティリアとの接触は特になく、無事にウィットタウンへ到着した。
 ウィットタウンは戦いに次ぐ戦いで疲弊しており、残存戦力も少なかった。
 そこに、デスティリアの大軍が接近しており、グレイシア隊は、全機出撃した。
 今回はデスティリアコマンドヒューマノイドが三機おり、部隊も三部隊、前回の三倍と大勢力で襲撃してきた。
 ステイツ隊は一斉攻撃を開始し、カヴァリエーレはホーミングミサイルを放ちつつ、バスターカノンで敵戦力を一気に減らし、エアレイドもかく乱しながらホーミングミサイルやビームシューターを放ってデスティリア部隊を攻撃。
 新造戦艦グレイシアも対空機銃、ホーミングミサイル、艦首大型ミサイル、二連ビーム砲などでデスティリア部隊を攻撃する等、努力を見せていたものの、デスティリア部隊は予想以上に多く、苦戦を強いられていた。
 ブリッジにいる艦長のシュナ・フレイニールは、この状況の打破ををする為、副官のレイト・ルーカスと共に作戦を練っていた。

「レイト中尉、この状況、君ならどうするべきだと思う?」
「背後にはウィットタウン、正面にはデスティリアの大部隊……撤退すれば多くの犠牲、戦えば勝利の可能性……自分であれば、このまま戦闘を継続しますかね」
「奇遇だな、私も同じ意見だ、掛けてみるか、あの新型機に……」

 その新型機のカヴァリエーレとエアレイドの二機は、デスティリアの大部隊に苦戦していた。
 カヴァリエーレはバスターカノン等の射撃武器の残弾はゼロでビームセイバーで応戦、エアレイドも弾切れでひたすら飛び回っていた。
 デスティリアの侵攻を許しているこの現状を打破する為、透弥とレイフィルはある決断をする。

「……レイフィル、あれをやる時が来たみたいだな」
「……そうっすね、でも、あれは……!!」
「ああ、パイロットにかかるGが大きいんだよな、でも、四の五の言ってられない!!」
「……分かったっす、やりますよ!!」
「OK!!」
「「ネオ・ナイト・フォーメーション!! 」」

 二人の合図で、カヴァリエーレの背部にエアレイドが合体し、ネオカヴァリエーレへ合体完了した。
 ただ支援戦闘機が背部に合体するだけと言う、エレメティオーラに比べるとシンプルな合体ではあるが、出力、機動力が上がっており、飛行能力も上昇している。
 性能に関しては全ナイトギアを上回っており、その性能は未知数である。

「これなら行ける!!」

 ネオカヴァリエーレは、出力の上がったビームセイバーで巨大なビームの刃を生成し、デスティリアの大部隊を一気に叩き斬った。
 そして、猛スピードで飛行し、デスティリア艦を次から次へと叩き斬り、全艦撃沈させ、増援を遮断。
 残ったデスティリアコマンドヒューマノイド3機の頭部ビームを全て回避したネオカヴァリエーレは、巨大なビームの刃で三機まとめて叩き斬った。
 こうして、ウィットタウンに出現したデスティリアの大部隊は壊滅した。

「やりましたね! 先輩!!」
「ああ……でも、体が痛いぜ……」
「先輩! 身体が痛むんすか? 後で痛い所舐めてあげますからね~」
「やめてくれ……余計傷が痛む……」

 その後、透弥はGで身体が傷ついた為、しばらく医務室行きになる事になり、レイフィルとティリアが付きっきりで看病する事になった。
 透弥の事を溺愛しているレイフィルは、やたらと透弥の食事に自分の唾液を入れようとしていた為、ティリアがその度に止めていた。
 幸い、透弥の身体の治りが早かった為、数日で復帰できた。
 それと同時に、次の目的地であるジブラルタル基地にグレイシア隊は到着していた。
 しかし、ジブラルタル基地は既に壊滅しており、生存者は一人もいなかった。
 ジブラルタル基地を壊滅させたのは、データにない新型のデスティリアであった。
 そのデスティリアの姿を見たティリアは怯えていた。

「ティリアちゃん、どうしたっす?」
「あ……あれば……幹部級のデスティリアだよ……指揮官級の五倍の力を持ってるの……あなた達じゃ勝てないっ!! 逃げてっ!!」
「駄目だ……ここで俺達が逃げたら、あいつにもっと多くの人達が殺されてしまうっ!!」

 透弥とレイフィル、ステイツ隊は全機出撃し、幹部級デスティリアを相手取った。
 まず、リュイとグロウの操縦するカーフが幹部級デスティリアに対し、ビームカノンで攻撃を仕掛けた。
 だが、幹部級デスティリアは一瞬で回避し、ロングハンドソードでリュイとグロウの操縦するカーフを叩き斬り、二人の乗るカーフは爆発四散した。

「リュイ!! グロウ!! 貴様! よくも俺の部下を!!」

 ステイツの乗るカーフカスタムは、ビームスナイパーライフルで幹部級デスティリアを狙い撃とうとしたが、一瞬で接近され、ビームスナイパーライフルをロングハンドソードで破壊。
 そのままトドメを刺されそうになったが、危機を察知して既に合体していたネオカヴァリエーレの蹴りに阻まれた。

「ステイツ隊長! 皆さん! こいつの相手は俺がします!!」
「透弥少尉! 無茶だ!!」
「無茶でも、今こいつに立ち向かえるのは俺とレイフィルだけだと思います!!」
「それに私、これ以上みんなに死んでほしくない! 勿論、ティリアちゃんにも!!」

 そう言って、ネオカヴァリエーレは両腕にビームセイバーを取り、幹部級デスティリアと激しく斬り合った。
 少しでも隙を作る為、頭部機関砲を撃ったり、カヴァリエーレとエアレイド双方のホーミングミサイルを放ったりしたものの、幹部級デスティリアは怯みすらしなかった。
 そして、幹部級デスティリアの放った一撃で、ネオカヴァリエーレの左腕とエアレイドの左翼が破壊された。
 続けてネオカヴァリエーレの右脚も斬り落とされてしまったが、攻撃後の隙を突いて幹部級デスティリアの右腕を切り落とした。
 だが、幹部級デスティリアの次の攻撃で左足も斬り落とされてしまい、後がないネオカヴァリエーレ。
 透弥は相打ち覚悟で幹部級デスティリアに突進すると、右腕のビームセイバーを幹部級デスティリアに突き刺し、出力を最大にした。
 だが、カヴァリエーレの腹部及びエアレイドにも幹部級デスティリアのロングハンドソードが突き刺さっており、ネオカヴァリエーレは爆発寸前であった。

「「脱……出っ!!」」

 透弥はカヴァリエーレの脱出装置も兼ねた小型戦闘機、ナイトファイターでエアレイドを押し出す形で脱出。
 レイフィルもエアレイドのコックピットブロックから脱出し、パラシュートを開いて降下している所をセレーナの操縦するカーフに拾われた。
 直後、カヴァリエーレとエアレイドは幹部級デスティリアと共に爆発四散し、運命を共にした。

「カヴァリエーレ……」
「エアレイド……」
「「ありがとう……」」

 その後、格納庫に帰ってきた透弥達。
 戦友を失って悲しむステイツ隊の面々だったが、ステイツは透弥を殴り飛ばした。

「ステイツ隊長! 先輩に何するんすか!?」
「お前、相打ちになってでも敵の幹部級を倒そうとしただろ?」
「そうでもしないと倒せないと思ったんです……」
「馬鹿野郎っ!! 結果的に倒せたから良かったものの、もし死んでたらどうする気だったんだ!! どれだけ多くの人が悲しむと思ってるんだ!!」
「……すみません、俺、カヴァリエーレやネオカヴァリエーレを手に入れて、デスティリアと互角に戦えるって浮かれてたのかもしれません……俺は今まで機体の性能に助けられてたんです……もし俺がカーフに乗ってたら、とっくに死んでました……それに俺、レイフィルまで相打ちに巻き込もうとして……俺、ナイトギアパイロット失格だ……」
「大丈夫っすよ先輩……泣かないでくださいよ……私、先輩と死ぬなら本望ですから……」
「本望なのかよ……まあいい、透弥少尉、今後は二度と今回みたいな戦いはするなよ、いいな」
「……はい……」

 ジブラルタル基地での戦いから数日後、デスティリアの襲撃は特になく、平和だった。
 そんなある日、グレイシア隊はプラムシティに急行する事になった。
 このプラムシティはかつて宇宙人災害が多発していた地域であり、現在は統合軍基地が置かれ、宇宙人は撤退している。
 そんなプラムシティの統合軍基地に、カヴァリエーレ及びエアレイドの後継機が届いたとの報告があった。
 何でもカヴァリエーレとエアレイドの後継機は、カヴァリエーレとエアレイドがロールアウトした時には既にほぼ完成していたらしい。
 だが、より完璧に完成させる為には、戦闘データが足りず、未完成となっていたのだ。
 それが今回、ナイトファイターの学習コンピューターに蓄積された戦闘データのお陰で完成し、なおかつ後継機に搭載されているブラックボックスも正常に作動しているようだ。
 このブラックボックスはかつてプラムシティに襲来したアプリコット星人の円盤の中から綺麗な状態で発見された装置であり、これが搭載されている後継機は決してエネルギー切れする事が無いのだと言う。
 グレイシア隊の面々は、その後継機を見る為、プラムシティ基地の地下格納庫へ向かった。
 そこには、最終整備の為に出向いていたグレイシア隊のメカニック、フル・マグントがいた。

「おお、シュナ艦長、よく来たな!」
「ご苦労様です、フル整備長、例の品は完成したようですね」
「勿論! それがこれじゃ!」

 そこにあったのは、カヴァリエーレとエアレイドを発展させた見た目の機体、カヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIであった。

「これは……カヴァリエーレとエアレイド!? でも、似ているけど違う!!」
「若造、これはカヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIじゃ、以前のに比べて性能は三倍に跳ね上がっておる、対G加工されておるから負荷もかからんし、更に、合体すればその性能は段違いの性能じゃ! あの幹部級すらも圧倒するじゃろうて」
「あの幹部級すらも……ですか……」
「そう言えば、お主らの名前は黒鋼透弥とレイフィル・ラティーナか……なるほど、あの黒鋼博士とラティーナ博士のご子息か……」
「俺達の父と母を知ってるんですか!?」
「ああ、君らのご両親は研究者だったね、彼等は有名な研究者で、新型ナイトギアの開発に一番貢献した人物だったよ、彼等が生前、開発途中だったのがカヴァリエーレとエアレイドでね、それを彼等と縁のあったわしら一部の人間が何とか完成まで持って来たんじゃ、透弥くんとレイフィルちゃん、君達は、お父さんとお母さんの平和への願いと共に戦っているんだよ」
「「平和への……願い……」」

 その時、このプラムシティに幹部級デスティリアが三機接近している事が判明した。
 透弥とレイフィルはすぐさま出撃準備を整え、カヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIに乗り込んだ。

(父さん……母さん……俺は……平和の為に戦うよ!!)
(お父さん……お母さん……ずっと私を守ってくれてたんだね……ありがとう……私、頑張る!!)
「カヴァリエーレMkII、黒鋼透弥、行きます!!」
「エアレイドMkII、レイフィル・ラティーナ、行くっす!!」

 二人はプラムシティ基地の地下格納庫から地上へ出撃した。
 そこには、以前苦戦した幹部級デスティリアが三機いた。
 カヴァリエーレMkIIはウイングからビームウイングを展開し、高速で飛行した。
 そして、翼部に装備されたウイングカノンと言うビーム兵器を幹部級デスティリアに放ち、ダメージを与えた。
 続けて、エアレイドMkIIがホーミングミサイルを放ち、幹部級デスティリアを怯ませた所で、合体準備に移った。

「レイフィル、行くぞ!!」
「了解っす、先輩!!」
「「ネオ・ナイト・フォーメーション!!」」

 カヴァリエーレMkIIはウイングを収納し、以前と同じ様に背部にエアレイドMkIIが合体した。
 そして、ネオカヴァリエーレMkIIへと合体完了した。
 出力と機動力が圧倒的に向上しており、非常に高い性能を誇るこの形態には、他のナイトギアにはないネオビームセイバーと言う武装がある。
 エアレイドMkIIのウイングに装着されている剣パーツをネオカヴァリエーレMkIIが手に取る事で、ネオカヴァリエーレの巨大ビームセイバー以上の出力を持つビームセイバーとなる。
 そして、そのビームセイバーは超巨大なビームの刃を生成する事が出来、ネオカヴァリエーレMkIIのその一振りで幹部級デスティリア三機は一撃で叩き斬られた。

「凄い……これが新たな機体の力……」
「凄い力っすね、先輩」
「ああ、これが、俺達の父さんと母さんが残した新たなる力……」

 その後、グレイシアに帰還した透弥とレイフィル。
 デスティリアとの戦いもいよいよ終わりが近づいてきていた。
 デスティリアの攻撃が強力になり、地上での対応が困難になった今、統合軍はデスティリアの本拠地と思われる冥王星に攻め込むことになった。
 透弥たちグレイシア隊の面々も、その作戦に参加する事になった。
 作戦名は、デスティリア討伐作戦、地球人の命運をかけた最終作戦である。
 グレイシア隊の面々は、統合軍のマスドライバーで宇宙に上がり、既に宇宙で待機していた統合軍艦隊と合流した。
 宇宙には統合軍の主力艦であるアダマントが見た事も無い程の艦隊を作っており、その本気ぶりが伺えた。
 機動兵器もカーフや、様々なカスタムがなされたカーフカスタム、旧式のオートマシンであるバーテライト等もあり、これから総力戦になる事は明白であった。
 だが、透弥とレイフィルは初めて来た宇宙に興奮していた。
 この状況で興奮するのはおかしいとは言え、やはり宇宙は誰もが憧れる場所であった。

「凄い…!! これが宇宙…!!」
「先輩! 興奮するっすね!!」
「何だ何だ、君ら宇宙は初めてか」
「はい! 俺、子供の頃から宇宙に行くのが夢だったんで!!」
「私もっす!!」
「そうかそうか、なら折角だし、戦いになるまで十分楽しんでおくんだぞ」
「「はい!!」」

 それから数時間後、デスティリアの大部隊と統合軍艦隊は接触した。
 デスティリアの大部隊も今まで以上の大部隊であり、双方が撃ち合う混戦状態になっていた。
 そんな中、グレイシア隊にも出撃が下った。

「透弥少尉とレイフィル少尉は宇宙は初めてだな、無理はするなよ」
「了解です! 一応、シミュレーターで訓練は受けていますので、何とか頑張ります!!」
「私も、頑張るっす!!」
「OK! じゃ、行くぞ!!」

 グレイシア隊の面々も出撃し、各自、敵と交戦していた。
 その頃、グレイシア艦長のシュナ・フレイニールは、グレイシアの主砲で敵を一掃する作戦を取る事にした。

「これよりグレイシアは主砲を撃つ、リーリス少尉、射線上の友軍に退避命令! コウ少尉、艦を180度回頭させろ!」
「了解! じゃ、少し動きますよ!」
「グレイシアはこれより主砲を撃ちます! 射線上の友軍は退避してください!」

 グレイシアの操舵手であるコウ・タカギが艦首を敵に向けた後、グレイシアの艦首が開き、巨大な砲塔が露わになった。
 そしてそのままエネルギーがチャージされ、主砲の発射態勢が整った。

「主砲、撃て!!」

 グレイシアが主砲を発射すると、巨大なビームにデスティリアファイターやデスティリアヒューマノイド、デスティリア艦が飲み込まれ、蒸発した。
 これにより、多くのデスティリア部隊が撃破され、敵の数は大幅に減少した。

「行けるな……ステイツ隊、俺に続け!!」

 ステイツの合図で、ステイツ隊の面々と、カヴァリエーレMkII、エアレイドMkIIが敵部隊に突入。
 それと同時に、統合軍の部隊も敵の部隊を各自撃破し、戦況は統合軍が優勢になった。
 しかし、デスティリアの部隊は更に第二波、第三波と波状攻撃をかけてきた。
 その数に、徐々に押され始める統合軍。
 グレイシアの主砲でいくらか撃破したが、まだ数は多い。
 そこに、デスティリアの最終兵器であるデスティリア超巨大艦が出現した。
 三千メートルはあるであろうその巨大艦から、無数のデスティリアが出現。
 グレイシアが主砲で超巨大艦を攻撃したが、何と傷一つ付いておらず、超巨大艦はレーザーで辺りを攻撃。
 統合軍はこの状況に混乱し、徐々に押され始めていた。

「まずいぞ……このままでは全滅してしまう……」
「ステイツ隊長、俺とレイフィルがネオカヴァリエーレMkIIに合体して戦います、どれだけ数を減らせるか分からないけど……」
「ああ、頼んだぞ、悪いが今回はネオカヴァリエーレMkIIの力に頼るしかないみたいだ……」

 カヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIが合体してネオカヴァリエーレMkIIになり、ネオビームセイバーでデスティリア部隊の数を一気に減らしたものの、デスティリア巨大艦からは次々と新たなデスティリアが出撃していた。
 更に幹部級デスティリアも複数機現れ、戦場は混乱していた。
 この状況をグレイシアの艦内から見ていたティリアは、彼等を助けたいと思った。

「みんな苦しんでる……みんなはデスティリアである私に優しくしてくれた……今度は私がみんなに優しくする番……!!」

 ティリアの身体は天使によく似たデスティリア、デスティリアエンジェルとなり、戦場に降り立った。
 突然現れた新型のデスティリアに戦場は混乱したが、デスティリアエンジェルはレイピアや羽根型の斬撃遠隔武器、フェザービットで仲間であるはずのデスティリアを攻撃しており、すぐに味方であることが判明した。

「みんな、ここは私に任せて!!」
「その声……ティリアちゃん!?」
「うん! みんなが私に優しくしてくれたように、今度は私がみんなを助ける番だよ!!」
「ありがとう……ティリアちゃん!!」

 デスティリアエンジェルとなったティリアは、フェザービットでデスティリア超巨大艦の一ヵ所に集中的に攻撃をかけ、ようやく一筋の傷をつけた。
 そこに、バスターカノンを装備したネオカヴァリエーレMkIIが、最大出力でバスターカノンを放ち、デスティリア超巨大艦を貫いた。
 そして、デスティリア超巨大艦は内部から爆発四散し、遂に撃破された。
 援軍を失ったデスティリアの残存戦力は、ステイツ隊や統合軍の部隊に殲滅され、遂に全滅した。

「何とか全滅まで持ち込んだみたいだな、グレイシア隊の被害も最小で済んだ、ティリア、統合軍の部隊が壊滅しなくて済んだのは君のお陰だ、ありがとう」
「私はデスティリアだけど、みんなの事が好き、だから、みんなを助けたんだよ」
「ありがとうね、ティリアちゃん! ほら、先輩もお礼言うっす」
「ああ、そうだな、ありがとう、ティリア」
「ふふ、どういたしまして!」

 ティリアの存在は統合軍内でも好意的に受け入れられ、統合軍艦隊はそのまま冥王星へと向かった。
 その移動の最中、グレイシア艦内では最終決戦を前に誰もが武者震いしていた。

「とうとう最終決戦っすね……先輩、この戦いに勝ったら……」
「ストップ! それはフラグだからやめておこうな、レイフィル」
「そ、そうっすね……」
「透弥少尉とレイフィル少尉は本当に仲が良いんだな」
「はい、レイフィルとは高校時代、後輩だったんですけど、割と積極的に構ってきて仲が良かったんですよね」
「そうっすね、執拗に構う私に優しく接してくれたんっす、先輩、あの時は楽しかったっしょ?」
「ああ、楽しかったな、だからこそ、みんなの幸せを守る為に、この戦争を終わらせなくてはいけないんだ!」
「その意気だ、少尉! 必ず勝って帰るぞ!!」
「「はい!!」」

 数日後、冥王星に到着した統合軍艦隊は、全部隊が冥王星に降下し、最後の戦いに臨んだ。
 当然、デスティリアの全戦力が冥王星に集結しており、その数は計り知れなかったが、主力部隊の突入の為、グレイシアの主砲や、統合軍艦隊の艦砲射撃で道は開かれた。

「透弥少尉、レイフィル少尉、こいつらは我々が相手をする、君達はデスティリアの本拠地を攻撃しろ!!」
「「了解!!」」
「透弥、レイフィル、私も行くよ!」
「ああ、一緒に行こう、ティリア!」

 透弥とレイフィルの操縦するカヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIはネオカヴァリエーレMkIIに合体し、ティリアの変身したデスティリアエンジェルと共に冥王星に降下した。
 そこには、異形の怪物の様な見た目をした5000メートルはあるであろうデスティリアの支配者、デスティリアマザーの姿があった。
 デスティリアマザーと透弥たちは対峙し、攻撃を仕掛けようとしたその時、デスティリアマザーは静かに口を開いた。

「よくぞここまで来たな……下等生物たちよ……」
(こいつ……人間の言葉が分かるのか!?)

 老婆の様な声のデスティリアマザーは、RPGの魔王の様な喋り方で、透弥たちに語り掛けた。

「デスティリアの出来損ないであるそいつと共に、この私を殺すつもりか……」
「当たり前だ! お前達は俺達人間を殺して……俺やレイフィルの父さんや母さんも……お前達の攻撃で殺されたんだ!!」
「もうこれ以上、誰も悲しませないっす!!」
「お母さん、これ以上人間を殺すのはやめて!!」

 透弥たちの言葉を聞いたデスティリアマザーは、静かに笑い声をあげた。
 その不気味さに、透弥たちは怯みそうになったが、透弥は冷静に対応し、攻撃の準備を整えていた。

「何がおかしい!?」
「おかしいとも、我々デスティリアにとって、貴様ら人間、いや、この宇宙に住む全ての生命体は我々の狩りの対象なのだ……」
「狩り!? お前達の侵略行動は、ただの狩り!?」
「ああ、そうとも、この宇宙には地球人以外にも、アプリコット星人やエレテル星人、メカニク星人など、様々な知的生命体がいる事は貴様らも知っておろう、だがな、それら知的生命体は全て、我々デスティリアと言う宇宙の支配者の狩りの対象なのだ、貴様らは全て、我々に狩られる為に存在しているのだよ……」

 デスティリアマザーのその言葉を聞いた透弥とレイフィル、ティリアの三人は、怒りで感情が爆発していた。
 今まで地球人を傷つけ、多くの人々の命を奪い、悲しませたのは全てデスティリアの狩りと言う身勝手な理由だった。
 その事を知った透弥たちは、怒りの言葉をデスティリアマザーにぶつけた。

「ふ……ざけるなあぁぁぁぁぁっ!! 俺達は……この宇宙に住む命は……お前らに狩られる為に存在してるんじゃないっ!! みんな懸命に生きているんだ!!」
「そうっす!! みんな頑張って生きてるのに、それを自分達の楽しみの為に狩るなんて……!! 絶対に許せないっす!!」
「お母さん、もうあなたの言いなりにはなりません、この宇宙に住むみんなを、私は守る!!」
「愚かな……この私を殺すつもりか!!」

 デスティリアマザーは巨大な手を振り下ろしたが、ネオカヴァリエーレMkIIとデスティリアエンジェルは回避し、それぞれホーミングミサイルとフェザービットでデスティリアマザーを攻撃した。
 怯んだデスティリアマザーに、ネオカヴァリエーレMkIIはバスターカノンを連続で放った。
 残弾をすべて撃ち尽くすまで攻撃をかけたが、デスティリアマザーはなおも健在であり、倒れる気配がなかった。

「愚かな……我々デスティリアはこの宇宙の支配者ぞ!!」

 デスティリアマザーは全身からレーザーを放った。
 ネオカヴァリエーレMkIIとデスティリアエンジェルは攻撃を回避すると同時に、あの巨大なデスティリアマザーをどうやって倒すか考えていた。

(どうする……? バスターカノンの攻撃に耐えるあの巨体、グレイシアの主砲じゃないと決定打にならないぞ……どうする……? ネオカヴァリエーレMkIIにそんな武装が……)

 透弥はふと、エアレイドMkIIに二本搭載されているネオビームセイバーの事を思い出した。
 このネオビームセイバーは、二本を合体させられそうな構造になっている。
 透弥は一か八か、ネオビームセイバーを合体させてみた。
 すると、合体ネオビームセイバーは超巨大な高出力のビームの刃を生成し、その強力さは透弥のいるコックピット越しに伝わってきていた。

「これなら……行ける……!!」
「そんなオモチャでぇぇぇっ!!!」

 デスティリアマザーは口からレーザーを放ったが、ネオカヴァリエーレMkIIは回避し、合体ネオビームセイバーをデスティリアマザーに振り下ろした。
 巨大なビームの刃はデスティリアマザーを一刀両断にし、何が起こったか分からないデスティリアマザーは驚愕していた。

「な……何だ……!? この私が……敗れる……!?」
「デスティリアマザー、これが命を弄んだお前の最期だ」
「馬鹿な……我々デスティリアは……宇宙の支配者であるぞぉぉぉぉぉっ!!!」

 直後、デスティリアマザーは大爆発を起こして砕け散り、宇宙の支配者気取りの怪物の長は倒された。
 それと同時期に、冥王星付近にいたデスティリアの大部隊も統合軍艦隊によって壊滅し、人類とデスティリアの戦争は、人類側の勝利に終わった。

「終わったんっすね、先輩」
「ああ、終わったんだ、ティリアも戦ってくれてありがとう」
「どういたしまして、私もみんなの役に立てて嬉しいよ」

 デスティリアの長を討伐した統合軍艦隊は無事に地球圏に帰還し、デスティリアを壊滅させたことを伝えた。
 この事はすぐ世界中に伝わり、異星人との戦争が終結した事に誰もが安堵した。
 たまにデスティリアの残党が地球圏に襲来する事はあったものの、すぐに討伐され、やがてデスティリアは現れなくなった。
 そして、全ての戦いが終結して半年後、透弥とレイフィルは結婚式を挙げ、新居で暮らす事になった。
 そんなある日、グレイシア隊の面々が透弥の家に遊びに来た。

「ステイツ隊長にシュナ艦長! それに皆さん、お久しぶりです!」
「やあ、透弥少尉、久しぶりだな」
「グレイシア艦長としての任務は忙しいが、たまにはと思ってな」

 ステイツとシュナ曰く、現在グレイシア隊は各地の復興に着手しているらしく、デスティリアの攻撃が激しかった地域に支援の手を差し伸べているらしい。
 また、透弥とレイフィルの愛機であるカヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIは現在、その高い性能から悪用されない為に統合軍本部のある場所に封印されているとの事。
 デスティリアは壊滅したが、またいつ新たな脅威が訪れるか分からない。
 現在は新婚生活を謳歌している透弥とレイフィルではあるが、またいつの日か軍に復帰する日が来るであろう。

「ところで透弥少尉、ティリアは君の家で引き取っているんだよな?」
「はい、一応養子として預かってます、彼女の事を知る人間はグレイシア隊しかいないので、周りには戦災孤児と伝えてますけど」
「今はこの周辺の散歩に出かけてるっすよ」

 すると、ティリアが透弥の家に帰ってきた。
 ついでに買い物をしてきたのか、手にはコンビニの袋が握られていた。
 ティリアはステイツ達を見るや否や、嬉しそうな表情でステイツの名前を呼んだ。

「ステイツさん! それにみんな!!」
「やあ、お邪魔しているよ、ティリア」
「丁度良かった、さっきコンビニでチョコレート買ってきたの、みんなにあげるね!」

 ティリアは全員にチョコレートを配り、グレイシア隊の面々は嬉しそうに受け取った。
 ステイツはティリアの変わらない優しさに安心した。

「透弥少尉もレイフィル少尉も、ティリアも変わらないな、安心したよ」
「それでは、我々はそろそろ任務に戻るとするか……」
「ステイツ隊長、シュナ艦長、それに皆さん、必ずまた会いましょう」

 グレイシア隊の面々は再び任務に戻り、透弥とレイフィル、ティリアは家に戻ってソファーでくつろいだ。

「みんな変わらなかったな」
「そうっすね、久しぶりに会ったから懐かしい感じしたっす」
「久々に会えて嬉しかったな……」
「そうだな……俺達みんなで守ったもの……それがこう言った些細な日常なんだな……」
「こう言う平和な日常が、一番幸せっすもんね」
「これから、平和な日常が続くといいね、透弥」
「ああ、そうだな……」

 統合軍艦隊とデスティリアの戦争、後にデスティリア戦役と呼ばれるこの戦い。
 デスティリア戦役で失われた命は多いが、同時に守られた命も多い。
 命は狩られるものではなく、未来まで繋いでいくものである。
 そして、その命を守る為、どこかで努力を続けている人がいる。
 その努力はいつかきっと、世界に本当の平和を訪れさせるであろう。

【地球統合軍の兵器】

・カヴァリエーレ
地球統合軍の開発した新型ナイトギア。高機動と高火力を両立させた機体で、飛行能力も高く、無重力下でも安定した機動性を見せる。脱出装置用戦闘機として、ナイトファイターと言う小型戦闘機を内蔵している。
型式番号:PNG-001/全高:20m/重量:35.5t/装甲材質:ネオカーボン/武装:ビームカノン、バズーカ、アサルトライフル、ビームセイバー、機関砲、ホーミングミサイル、ビームランチャー、バスターカノン/パイロット:黒鋼透弥

・ネオカヴァリエーレ
カヴァリエーレとエアレイドが合体した姿。出力と機動力が上がっており、飛行能力も上昇している。性能に関しては全ナイトギアを上回っており、デスティリアの指揮官を圧倒する性能を誇っている。
型式番号:PNG-001+PNF-001/全高:20m/重量:58.2t/装甲材質:ネオカーボン/武装:ビームカノン、バズーカ、アサルトライフル、ビームセイバー、機関砲、ダブルホーミングミサイル、ビームランチャー、バスターカノン/パイロット:黒鋼透弥、レイフィル・ラティーナ

・カヴァリエーレMkⅡ
地球統合軍の開発したカヴァリエーレの後継機。カヴァリエーレから約3倍以上性能が向上しており、高い火力を誇っている。また、ブラックボックスにより、エネルギー切れする事がない。コックピット内は対G加工されており、パイロットスーツ無しでも搭乗可能である。更に、単機で大気圏突入離脱する事が可能である。
型式番号:PNG-002/全高:22m/重量:30t/装甲材質:ネオカーボン/動力:ブラックボックス/武装:ビームカノン、ビームセイバー、アサルトライフル、機関砲、ホーミングミサイル、ビームランチャー、バスターカノン、ウイングカノン、ビームウイング/パイロット:黒鋼透弥

・ネオカヴァリエーレMkⅡ
カヴァリエーレMkⅡとエアレイドMkⅡが合体した姿。出力と機動力が圧倒的に向上しており、非常に高い性能を誇る。その力は幹部級デスティリアを圧倒する程。
型式番号:PNG-002+PNF-002/全高:22m/重量:48t/装甲材質:ネオカーボン/動力:ブラックボックス/武装:ビームカノン、ビームセイバー、アサルトライフル、機関砲、ホーミングミサイル、ビームランチャー、バスターカノン、ウイングカノン、ビームウイング、ネオビームセイバー、合体ネオビームセイバー/パイロット:黒鋼透弥、レイフィル・ラティーナ

・エアレイド
地球統合軍の開発したカヴァリエーレの支援戦闘機。機動力が高く、ナイトギアと互角の火力を誇る。凄まじい速度で飛行可能。無重力下でも普通に航行可能であり、様々な武装を装備している。よくカヴァリエーレを上に乗せて飛行している。
型式番号:PNF-001/全長15m/重量:22.7t/装甲材質:ネオカーボン/武装:対空機銃、ビームシューター、ホーミングミサイル/パイロット:レイフィル・ラティーナ

・エアレイドMkⅡ
地球統合軍の開発したエアレイドの後継機。エアレイドから約3倍以上性能が向上しており、高い火力を誇っている。コックピット内は対G加工されており、パイロットスーツ無しでも搭乗可能である。更に、単機で大気圏突入離脱する事が可能である。
全長:15m/重量:18t/武装:ビーム機銃、ビームシューター、ホーミングミサイル/パイロット:レイフィル・ラティーナ

・カーフカスタム
ステイツ専用のカーフ。量産機であるカーフのカスタム機であり、性能はカーフより一回り上。武装は追加武装でビームスナイパーライフルが追加されただけである。
型式番号:NG-005C/全高:18m/重量:30t/装甲材質:新型ネオスチール合金/武装:ビームスナイパーライフル、ビームカノン、アサルトライフル、ビームセイバー、機関砲/パイロット:ステイツ・ロードウェイ

・カーフ
国連軍の量産型ナイトギア。量産機でありながら高い機動性と運動性を誇る。大気圏内を飛行可能であり、高い汎用性を誇っている。
型式番号:NG-005/全高:18m/重量:30t/装甲材質:新型ネオスチール合金/武装:ビームカノン、アサルトライフル、ビームセイバー、機関砲/主なパイロット:セレーナ・ウェルネス、ネフェレー・フィアーズ、アスティ・ニューイー、グロウ・ドーレス、リュイ・ウィークス、統合軍兵士

・グレイシア
国連軍の開発した新造戦艦。氷河の様な美しい船体を持っている事からグレイシアと名付けられた。新型反重力システムを搭載している為、空中を航行可能であり、宇宙でも航行可能。その美しい船体は対ビームコーティングされており、そのコーティングのおかげで美しい船体を保っている。更に、その装甲は非常に頑丈であり、並大抵の攻撃ではびくともしない。最大ナイトギア搭載数はエアレイド含めて8機。
艦級:グレイシア級/全長:270m/装甲材質:対ビームコーティング ネオカーボン/武装:対空機銃、ホーミングミサイル、艦首大型ミサイル、2連ビーム砲、主砲/艦長:シュナ・フレイニール/副長:レイト・ルーカス/オペレーター:リーリス・レインディー/操舵手:コウ・タカギ

・アダマント
国連軍の主力戦艦。単体での戦闘能力より、ナイトギアを搭載して運用する事を前提として開発されている。重力システムを搭載している為、空中を航行可能であり、宇宙でも航行可能。最大ナイトギア搭載数は7機。
艦級:アダマント級主力戦艦/全長230m/装甲材質:新型ネオスチール合金/武装:対空機銃、ホーミングミサイル、艦首大型ミサイル、2連ビーム砲/主な搭乗員:統合軍士官

・バーテライト
地球統合軍の量産型オートマシン。ナイトギアより旧式の兵器であるオートマシンのバーテルを、かつてDr.バイオの反乱で活躍したエレメティアやエレスティア、エレメティオーラの戦闘データを使って改修した機体。バーテルよりは遥かに性能は高いものの、デスティリアの機動兵器やナイトギアに比べると、その性能差は歴然である為、現在はあまり争いの起きない地域に回され、拠点防衛用として配備されている。
型式番号:TOM-013/全高:12.9m/重量:23.2t/装甲材質:ネオスチール合金/武装:レーザーライフル、ビームブレード/主なパイロット:統合軍兵士

・デスティリアエンジェル
ティリアが指揮官化した姿。天使のような姿をしており、軽々と空を飛び、武器のレイピアで突き刺して攻撃する。指揮官デスティリアと同等の戦力を持っている。現時点で1体しか確認されていない貴重なデスティリアである。
身長:20m/体重:17t/武装:レイピア、頭部ビーム、フェザービット/変身者:ティリア

【デスティリア】
様々な惑星に侵略行為を行っている宇宙生物。冥王星を本拠地としている。その侵略目的はただの狩りであり、ただ生物の命を奪う事を快楽としている危険な生物。デスティリアにとって宇宙に住む他の生物はただの狩りの対象である。自身を宇宙の支配者と自称しており、決して他の生物とは分かり合えない。最終的に支配者のデスティリアマザーが倒された事で新たな戦力を生み出せなくなり、残った残党も少しずつ他の生物に倒されたり寿命で死ぬと思われ、近い未来絶滅すると思われる。

・マザーデスティリア
デスティリアの支配者。その姿は巨大な怪物の様な姿をしている。主に戦力を生み出す事が目的であり、戦闘力はあまり高くない。最後はネオカヴァリエーレMkIIによって討伐された。
身長:3000m/体重:50000t/武装:レーザー

・幹部級デスティリア
デスティリアの幹部。指揮官の5倍以上の力を持っており、圧倒的な力を持つ。
身長:22m/体重:37t/武装:ロングツインハンドソード、頭部ビーム

・デスティリアコマンドヒューマノイド
デスティリアの指揮官。デスティリアの生物の中でも特に強く、指揮官的ポジションを担っていると思われる。基本1部隊に1体存在する事があるが、小さい部隊にはいない事が多い。
身長:20m/体重:25t/武装:ロングハンドソード、頭部ビーム

・デスティリアヒューマノイド
デスティリアの主力生物。人型をしたデスティリアであり、多数の部隊で侵攻してくる。
身長:18m/体重:20t/武装:ハンドビーム、ハンドソード

・デスティリアファイター
デスティリアの主力生物。戦闘機型のデスティリアであり、多数の部隊で侵攻してくる。
身長:10m/体重:8t/武装:レーザー

・デスティリア艦
デスティリアの主力生物。戦艦型のデスティリアであり、体内に多数の戦力を保有している。
身長:120m/体重:200t/武装:レーザー

・デスティリア超巨大艦
デスティリアの最終兵器。とても巨大な上、中には無数の戦力を保有している。その外装はとても硬く、グレイシアの主砲でも傷一つつかない。
身長:3000m/体重:8000t/武装:レーザー