サレナ・ローザヴィの小説ブログ

定期的に小説を投稿するブログ

大長編 アルティメットオールスター大乱闘スマッシュブラザーズ

 かつて、アルスマ界という平和な世界で某大人気ゲームに似た大乱闘と言う競技が行われた。

 様々な世界から招待された歴戦の戦士たちが幾度となく大乱闘でドラマを作り、絆や友情を深めていった。

 しかし、その大乱闘を潰そうとした存在もいた。

 アルスマ界の守護を目的として生み出されたアンドロイド、ブラックガンナーとホワイトブレイドが、アルスマ界にかつて存在したテロ組織『エレメントスタンド』の残党や各世界の敵のデータをコピーした『データユニット』を使い、幾度となくアルスマファイターに勝負を挑んだ。

 何度も繰り返された戦いの末、遂にブラックガンナーとホワイトブレイドは倒され、エレメントスタンド残党も壊滅、データユニットも全てが消滅し、データも失われた。

 この戦いの後、アルスマの開催者であるマスターファフニールは深い眠りに落ち、ファイター達は元の世界へと帰還した。

 それから三年、この空白の期間中、アルスマ界の近くにあるカイスマ界で一時休止されていた大乱闘が再開され、一部アルスマファイターも参加し、再びその勇姿を披露していた。

 だが、そのカイスマ界でもやはり敵は存在しており、アルスマ開催の一年前に倒された悪の戦士であるダークシャドウが復活し、彼の率いるダークシャドウ軍と幾度とない激しい戦闘が繰り広げられた。

 カイスマファイター達は激闘の末、ダークシャドウを撃破するが、一ヶ月後に復活したダークシャドウは再び攻撃を開始。

 更に、カイスマ、アルスマファイターが別次元の地球に召喚され、消息を絶つ事件も発生。

 様々な戦いを乗り越え、ダークシャドウの繰り出す刺客を撃破した末、ダークシャドウとの最後の戦いが行われる。

 一度は絶体絶命の危機になるが、最後はカイトとダークカイトの合体した姿、ゴッドトゥルースがダークシャドウを撃破、長い長い戦いが終わりを迎えた。

 そして、それから三年が経過し、アルスマはかつて開催された名物競技として少しずつ忘れ去られ、カイスマは新生カイスマメンバーへと交代、新たな時代へと進みつつあった……。

 そんなある日、アルスマ界で突然、次元の歪みが確認された。

 

【アルスマストリート】

 

 アルスマストリートに設置された大型スクリーンに、アルスマ草原に発生した次元の歪みが映し出されていた。

 群衆が集まり、その様子をじっと見つめてがやがやと騒ぐ。

 そこには、かつてアルスマのスタッフとして働いていたナレ男、オペ子、レフェ子の姿もあった。

 

「あれ、何ですかね……? 何かが現れるのでしょうか……?」

「今の所は何とも言えませんね……」

「あの最終決戦以降、アルスマ界は平和だったのに、また何か事件が起こるの……?」

 

 ナレ男、オペ子、レフェ子は不安気に次元の歪みを見つめる。

 アルスマも終わり、ただの一般市民として暮らす三人。

 彼らの不安通り、この次元の歪みは大きな戦いのほんの序章であった。

 

【アルスマ草原】

 

 アルスマ草原に発生した次元の歪みは、時間の経過とともに大きくなってゆき、激しく揺らぎ始めた。

 危険だと感じたカメラマンは一度撤収し、遠くに避難する。

 刹那、次元の歪みは突然大きな爆発を発生させ、完全に沈黙した。

 カメラマン達は冷や汗と共に爆発で発生した土煙を見守る。

 すると、そこには一人の少女が立っていた。

 透き通るようなさらさらとした銀髪のロングヘアを少しだけハーフアップにして青いリボンで留めた、澄んだアイスブルーの瞳をした神秘的な少女。

 白と青の二色で構成されたワンピースを着たその少女は細身の剣を手に持ち、首に淡く光る魔石の付いたネックレスを付けていた。

 

 突然の光景に慌てふためくカメラマン達。

 その少女はカメラマン達を見つけると、細身の剣に無属性の魔力を纏い、横薙ぎに振る。

 カメラマン達は真横に両断され、直後に血を噴き出し崩れ落ちる。

 更に少女は掌に無属性の魔力を収束させ、一直線に放ち、カメラマン達の死体を爆散させる。

 アルスマ草原に爆炎が上がり、それを無表情で見つめる謎の少女。

 その少女の背後に、次元の裂け目が発生、その中からかつてアルスマファイターとして活躍していた黒乃月(くろの るな)と、かつてカイスマメンバーであったカイト・ブルーレオが姿を現す。

 

「くそっ! 一足遅かったか!」

 

 カイトは到着が間に合わず、カメラマン達を助けられなかった悔しさのあまり歯を食いしばり、右手に持ったハイパーソードと右手に持ったマスターガンを握り締める。

 当時14歳だったカイトも現在は18歳、あの時より成長して背も伸び、大人らしく成長している。

 あの時のトレードマークであった青いコートは黒いコートへと変化し、あの時のイメージとはかなり変わっている。

 

「カイスマ界の襲撃にかなり時間をかけてしまったから……もっと早く駆け付けてれば助けられたのに!」

 

 ルナは右手に持った鮮血の罪人(ブラッド・クライム)と左手に持った魂の狙撃手(ソウル・ティラール)を握り締め、謎の少女を見つめる。

 カイトと違って見た目が一切変わっていないルナ。

 彼女はあの後、とある禁呪法によって一切年を取らない不老不死の肉体となっている為、一切の変化がないのである。

 

「来たわね、元アルスマファイター」

 

 謎の少女は冷たい声で静かに呟くと、掌に無属性の魔力を収束させると、一直線に光線として放つ。

 二人は先読みして回避し、カイトはマスターガンから破壊ブラスターを放ち、ルナは魂の狙撃手(ソウル・ティラール)から闇の光線(ダークネス・フォトン)を放つ。

 二筋の光線は一直線に少女を捉え、直撃して爆炎を上げる。

 しかし、一切の油断をしない二人。

 二人は爆炎をじっと見つめると、次の瞬間、二人目掛けて二筋の光線が放たれる。

 カイトとルナは先読みして回避。

 続けて、爆炎の中から円形のバリアを纏った少女が飛び出してくる。

 

「守りもお手の物ってわけね! なら!」

 

 ルナは闇の魔力を収束させつつ、詠唱を始める。

 

「我に宿りし混沌の闇よ、黒き炎で全てを焼き尽くし、崩壊させよ、暗黒の波動(ダークネス・エクスプロージョン)!!」

 

 ルナは少女目掛けて魔力弾を放ち、魔力弾は少女に命中すると同時に爆散。

 少女のバリアを砕き、体が吹き飛ばされる。

 それでも細身の剣を地面に突き立て、何とか勢いを止めるが、そこにカイトが待っていた。

 

「スパークパンチ!」

 

 雷を纏ったパンチが、少女の腹部に命中すると、少女は気を失い、がくんと崩れ落ちる。

 

「流石に悪い奴とは言え、女の子は殺せないしな」

「それに、この子からは情報を聞き出さないといけないしね」

 

 二人がそんな話をしていると、二人の背後から足音が聞こえた為、二人は同時に振り向く。

 そこには、成長しながらも、とても見慣れた人物が二人、立っていた。

 片方は背が少し伸び、髪も長くなって大人っぽい見た目になりながらも、青いジャケットと黒剣ナハトというトレードマークは健在の青年。

 もう片方は、成人している為に制服ではないが、制服風のコーデをし、黒髪ボブは少し伸びつつも二刀流は健在の女性。

 カイトとルナはその人物を、よく知っていた。

 

「「翼とヴェローナ!」」

「よっ、久しぶり」

「お二人共、お久しぶりです」

 

 お互い、久々に会う関係ながら、しっかりとあの時の事を覚えており、四人の間に笑顔が生まれる。

 

「カイト、本当に久々だな、あの時の面影も大分なくなってて、一瞬誰かなって思ったよ」

「翼こそ! 本当に久々だな! 今は何やってんだ?」

「俺は今、ヴェローナと一緒にアルスマシティの防衛隊に入って、アルスマシティを防衛しているんだ、元ナイル盗賊団や元エレメントスタンドの人達も、区域は違うけど、防衛隊に入ってるよ」

 

「ルナさんは……全然見た目変わっていませんね……」

「あの後色々あってね……ヴェローナちゃんはあの時17歳だったから、今は21歳? 翼くんは18歳だったから22歳か」

「あ、あまり年齢については話さないでください……」

 

 久々に会ってもなお、あの時の様に会話をする四人。

 しかし、今は急を要する事態であった。

 

「カイトとルナが久々にここに来たって事は、他の世界でも何かあったって事だな?」

「ああ、次元の歪みはカイスマ界やペラペランド、別次元の地球など、色々な所に出現していて、それらの世界ではデータユニットが出現しているんだ、カイスマ界は新生カイスマメンバーや元カイスマメンバー、ペラペランドはアゼスマファイター、別次元の地球ではクロストライアルが戦っているけど、よりによって数が多くてな、アルスマ界に来れたのはルナの門(ゲート)の能力のお陰だ」

 

 翼とカイトが会話する横で、ルナはえっへんと胸を張る。

 

「そう言えば、ルナさんはどうしてカイスマ界に?」

「それがね、私の居た世界は闇の眷属との戦いも終わって平和が続いていたんだけど、私の世界も同じ様に次元の歪みからデータユニットが大量に出現してね、今はミハルお姉ちゃん達が戦ってくれてるんだけど、ミハルお姉ちゃんはこう言ったの、『この敵は陽動、本体は別の場所にいる』って、ミハルお姉ちゃんは察しがいいから気付いたんだと思う、だから私は各地を移動しながら本体を探して、別世界で出会ったレイリアちゃんにも協力してもらって、カイトくんと合流したタイミングでアルスマ界に次元の歪みが発生しているとマスターゴッドが教えてくれたからここに来たの」

 

 ルナの途方もない冒険の物語を聞き、ヴェローナは唖然とする。

 

「みんなの話を聞く限り、他の世界はデータユニットが出現した、でもこのアルスマ界には……」

 

 翼は気を失ったままの少女を見つめる。

 この少女は一体何者なのか分からないが、この事件の鍵はこの少女が握っている事は間違いない。

 

「とりあえず、話はまた後で、一旦アルスマ本部に移動しないか?」

「え、まだアルスマ本部があるのか!?」

「ああ、今はアルスマシティ防衛隊の拠点になっているけどね、ちなみに、セラフィとラフェールはそこの警備アンドロイドになってるよ」

 

 用途は変わりつつも、アルスマ本部が残っている事に喜ぶカイト。

 カイトとルナは翼とヴェローナに連れられ、アルスマ本部へと向かう。

 

【アルスマシティ防衛隊本部(旧アルスマ本部)】

 

 かつてのアルスマ本部の大きな会場は大幅に改修され、軍施設らしい無機質な外見となっていたが、内部のロッカーや休憩所、トレーニングルーム等の施設は当時のままで、カイトとルナは懐かしさを覚える。

 

「ここに来るのも久々だね」

「ああ、こうしてまた来れるとは思っていなかったよ」

 

 四人は気を失った少女をトレーニングルームへと連れていき、暴れないように縄で縛る。

 

「ところでさ、ルナなら分かるか? あの後、アルスマファイターのみんなが何をしているか」

「勿論、あの後会いに行ったんだけど……」

 

 少女が目を覚ますまでの間、ルナは翼の質問であるアルスマファイターのその後について答える……。

 瑠依は現在21歳で、あの後人気ブロガーとなり、戦いとは無縁の環境で平和な生活を過ごしている。

 サンシロウは現在27歳で、現在は自称、関西最強のたこ焼き屋を営んでおり、この間は仮面ライダー1号のお面を付けた男性と楽しく談話をしていたようだ。

 フィオーレは現在22歳、相変わらずレイラとはライバル関係で、関係者によるとまた修行に出ると言って行方をくらましているらしい。

 ドラゴニュートは現在25歳、ルナが訪れた際は仲間である優香が魔物に食われて命を落とした為、とても悲しんでいる様子だったが、相変わらず冒険は続けているらしい。

 イオナは現在21歳、現在は戦いから身を引き、メイドカフェで仕事を続けているようだ。

 リスティリアは現在21歳、しかし、山奥で暮らしている事が災いしたせいで現在何をしているかは分からない、噂によると究極魔法の実験に失敗して命を落としたとされているが、詳細不明である。

 千初は現在26歳、相変わらずエイリアン災害は続いており、エージェントとしてエイリアンを退治しているようだ。

 

「そうか……優香さん死んじゃったのか……」

 

 翼はかつて最終決戦し参加し、とても頼りになった優香の事を思い出す。

 

「魔族に捕らえられて、最後は魔物に食べられたらしくて……ドラゴニュートさん、とても悲しんでたな……」

 

 関係者の死に場が暗くなりかけた所で、ルナは慌てて残りのメンバーについて話す事にした。

 

「えっと、他の人のその後についても話すんだけど、これらの時空は時間の流れがバラバラだから、結構年取ってる人もいるけど驚かないでね?」

 

 ウルトラマンティガことマドカ・ダイゴは現在50代、ティガへの変身能力は失い、ヒカリとツバサの二人の子供を授かっている。

 ウルトラマンネクサスこと孤門一輝は現在27歳、ネクサスへの変身能力は失い、現在はナイトレイダー副隊長としてスペースビーストと戦い続けている。

 ウルトラマンネオスことカグラ・ゲンキは現在25歳、ネオスと分離した事で変身能力を失い、現在もHEARTの隊員として活動しているようだ。

 仮面ライダー龍騎こと城戸真司は現在43歳、あの後も仮面ライダー龍騎として活動はしているようで、未だに戦い続けているようである。

 仮面ライダーZOこと麻生勝は現在50代、現在も仮面ライダーZOとして世界の悪と戦っているようだ。

 仮面ライダーギーツこと浮世英寿は現在22歳なのだが、どうやら神になったらしく、見違えた姿でルナの前に姿を現したらしい。

 マジレッドこと小津魁は現在18歳、インフェルシアの残党と戦いながら、人間界とインフェルシアを結ぶインフェルシア親善大使として活動を続けている。

 ギャバンtypeGこと十文字撃は現在30代、宇宙刑事として、宇宙全体の治安を守っているほか、最近は赤いギャバンとも出会っているようだ。

 キカイダーことジローはアルスマの後、キカイダー01という新たなキカイダーと共に新たな悪と戦っているようだ。

 デスティニーガンダムことシン・アスカは現在17歳、愛機をデスティニーガンダムSpecIIに変え、平和の為にコンパスに所属し、戦っている。

 ガンダムダブルエックスことガロード・ランは現在16歳、愛機をガンダムX 3号機に変え、成長した姿を見せたらしい。

 バーサル騎士ガンダムはアルスマの後、スペリオルドラゴンとなって天界へと行った為に会えなかったようだ。

 エイト、クラウド、カムイ、マルス、マリオ、ルイージ、フォックス、キャプテン・ファルコン、ネス、アイスクライマーは現在、別の世界で本家大乱闘に参加しており、サーナイトはモンスターボールのポケモンとして、アブソルとティファはスピリッツとして参加しているようだ。

 ダイ、悟空、ピッコロ、遊戯、トレイン、イヴ、ウイングマンは最後に会った時はジャンプチアイランドと言う場所で未知の人物達と一緒に戦っていたようだが、少し前にジャンプチアイランドが消滅した為、現在は何をしているか不明との事。

 セリカはアルスマの後、相変わらずアビドス高校の借金を返す為にバイトをしているようだ。

 キリトとアスナはアルスマの後、異世界に飛ばされ、そこで未知の人物達と戦っていたらしい。

 アリアはアルスマの後、相変わらず武偵として活動しているようで、犯罪者を逮捕し続けているようだ。

 クーとレンはアルスマの後、エディルレイドを保護する為に様々な場所を飛んでいる。

 かなでに関してはいる世界が特殊である為、会いに行けなかったのだが、とある場所を旅していた際、彼女に似た人物を見かけたとの事、となりにはオレンジ髪の男性が立っていたようだが、詳細不明である。

 エミリアはアルスマの後、異世界に戻り、色々と苦労をしているようであり、疲れた様子を見せていた。

 メイプルはアルスマの後、相変わらずゲーム生活を謳歌しているようで、ルナに対して楽し気な様子で話していた。

 キサラはアルスマの後もI&S事務所を経営しているようで、変わらずD災害の続くベイロンシティで悪魔と戦っているようだ。

 R-GUNことイングラム・プリスケンは現在、SRXチームの教官として活動しているようだが、何か怪しい雰囲気を感じたとルナは語っている。

 

「以上、長くなったけど、アルスマファイター全員のその後だよ!」

「……何か、あんま変わってなかったり、かなり老けてたり、みんな大変だな……」

「本当、驚きです……」

 

 ルナから聞かされた事実に、翼とヴェローナは唖然とする。

 もしもう一度彼等と出会ったら誰が誰だか分からなくなっている可能性も高いだろう、時の流れは残酷だと感じた。

 

「何人か行方不明の人もいたんだけど、基本的にみんな元気そうだったから問題ないと思うよ!」

「ま、ほとんどが元気そうで何よりだ!」

 

 ルナとカイトは唖然とする二人を無理矢理元気づけようと明るく接する。

 すると、このタイミングで気を失っていた少女が目を覚ます。

 

「な、何ですかこれ!?」

「気が付いたみたいだな、悪いが、暴れられては困るから、縛らせてもらったよ」

 

 翼の言葉を聞いた少女は、観念したのか暴れる様子を見せなかった。

 その様子を見て翼は安堵し、少女に詳しい話を聞く。

 

「じゃあ、質問させてもらうぞ、現在、色々な世界で次元の歪みが発生し、データユニットが多数出現して各地に被害を出している、そして君は、その次元の歪みから出現した……君は、各地で発生している次元の歪みと何か関係性があるのか?」

 

 しかし、翼の質問に少女は答えようとしない。

 翼はため息をつき、質問を変える。

 

「じゃあ、質問を変えるよ、君の名前は? そして所属は?」

「……ルミナ・シルヴァリス、所属は答えられない……」

「ルミナって言うのか、所属を答えられない理由は?」

「……トップシークレット、一つだけ答えるなら、私は末端の兵士に過ぎないから」

 

 翼とルミナの会話を聞き、カイトとルナは驚愕する。

 ルミナは戦った感じ、そこそこ強かった。

 彼女が末端の兵士と言う事は、それを支配する存在は相当な力を持っている可能性があると言う事だ。

 

「翼くん、どうする? 情報が少なすぎるよ、拷問でもする?」

「いや、流石に拷問は酷すぎるからな……でも、一つ分かった事があるよ、ルミナの所属する組織は、かなり規模の大きな組織って事だ、それも、多次元に侵略の手を伸ばせる組織」

 

 ルナは翼の言葉を聞き、固唾を飲む。

 

「多次元に侵略の手を伸ばす……まるで別次元の地球で戦ったフィーニスみたいだな」

「組織の規模は分からないけど、一度しっかり対策を取った方がいいだろうな」

 

 カイトと翼は強大な敵の襲来を察知し、戦う事を決意する。

 その時、突然トレーニングルームに次元の歪みが生じた。

 突然の出来事に戦闘態勢を取る翼たち。

 しかし、次元の歪みから現れたのは、彼等のよく知る人物達であった。

 次元の歪みから現れたのは、ドラゴニュート、サンシロウ、撃、シン、エイト、遊戯、アリア、セリカ、悟空、イヴ、トレイン、キサラであり、ドラゴニュートの隣には初めて見る少女もいた。

 

「よっ、みんな久しぶり!」

「ドラゴニュートさん! それにみんな! どうして!?」

「実はカイスマ界のマスターゴッドにアルスマ界の危機を知らされてな……連れてこれそうな奴に招集をかけてこうして集まってもらったってわけだ、まあ、大半が戦いを辞めてたり、忙しかったり、行方不明だったりで、呼べる連中が少なかったが……」

 

 ドラゴニュートは翼の問いに、アルスマ時代の時の様に明るく返答する。

 ドラゴニュートはアルスマ時代の時は既に成人であった為、声が少し低くなった事と、髪が腰の辺りまで伸びている事以外、変化はなかったが、一番変化があったのはその服装である。

 以前は騎士服みたいな服装であったが、何があったのか全身黒一色で、黒のロングコートを着込んでいた。

 もしかしたら優香の死をきっかけに何かあったのかもしれないが、そこは敢えて聞かない事にした。

 

「まあ、でもわいは何とか来てやったで! ほれ、お土産にわいの作った関西最強のたこ焼きも持ってきたわ!」

 

 サンシロウは髪が少し伸びた以外は全く変化がなく、翼たちは唖然としていた。

 翼はサンシロウの作ったたこ焼きを一口食べたが、驚くほど普通であり、これで関西最強かと思った。

 

「宇宙刑事たるもの、アルスマ界の危機には駆け付ける必要があるからな、こういうの、次元を超えて出張中だ! って言うんだろうな」

「マスターゴッドが急ごしらえとは言え、転送システムを作ってくれたから、何とか俺は来れたけど、不在な人も多いんだな……」

「それにしても、あんたたち結構年取ったわね、時の流れが違うのかしら?」

「賞金が貰えるかは分からないけど、来てあげたんだから、感謝しなさいよね!」

「俺は賞金が貰えなくても問題ないぜ、世話になった借りを返さないといけないしな!」

「で、またスヴェンは置いてけぼり」

「あたしもお世話になったお返しをしないといけないからね、早くシュウくんに会いたいから、邪魔する奴は全員蹴散らしてあげる!」

 

 撃、シン、アリア、セリカ、トレイン、イヴ、キサラが口々に話す。

 見知った顔が当時と同じ姿で並ぶ中、一際目を惹くのが、悟空であった。

 何と、子供の姿になっており、道着の色も青になっているのだ。

 

「あの、悟空さんは一体何があったの?」

「ん? まあちょっと色々あってな、子供の姿に戻っちまったんだ、ま、気にするな、ちゃんと戦えっから!」

「私が最後に会った時は大人だったのに……ほんとに何があったの……?」

 

 悟空の見た目の変化に、ルナは戸惑い、頭を抱える。

 

「やあ、久しぶりだね、翼くん、大きくなったね」

「翼くん、久しぶり! と言っても、もうボク達より年上かな?」

「エイト、遊戯、また会えて嬉しいよ、俺はもう22になったよ、二人は……相変わらずだな」

 

 エイト、遊戯という親友と再会を果たした翼。

 翼はまた出会えた親友を前に、涙を流す。

 

「僕はあの後、本家の大乱闘に参加してたんだけど、色んな世界の強い人と戦えてなかなかいい経験になったよ」

「ボクも、色んな決闘者(デュエリスト)とデュエルをして、メキメキとデュエルの腕前を上げたよ、もう一人のボクはもう、いないけどね……」

 

 エイトと遊戯の言葉を聞いて、二人もそれぞれいろんな経験をしたんだと察する。

 会えなかった期間も、自分達はいろんな経験をして強くなったんだと実感した。

 

「翼くん、僕達もこの戦い、手を貸すよ! 翼くんがピンチな今、大乱闘どころじゃないと思ってね、僕だけは他の勇者に変わってもらう事でここに来れたんだ」

「今のボクがどこまで戦えるか分からないけど、ボクも頑張る! だから一緒に戦おう!」

「ありがとう、二人共!」

 

 翼、エイト、遊戯の三人は拳を合わせ、共に戦うと強く誓った。

 

「ところでドラゴニュート、そこにいる女の人は誰だ?」

「ん? ああ、この子は俺の仲間のフレア・アストレアだ、元の世界でもドラコとかレクシアとか色んな仲間がいたんだけどな……」

 

 ドラゴニュートは悲し気な表情で俯く。

 

「優香は魔物に食われて死ぬし、ドラコとダークドラコはクローン故の寿命が解決できずに死んで、ダークドラゴニュートはダークドラコを失った悲しみを俺にぶつけて、最後は俺が戦いに勝った事でダークドラゴニュートも死んだ、レクシアはとある世界で騎士団の教官をやる事になったから、今はフレアと二人旅状態なんだ……」

 

 ドラゴニュートの話を聞き、カイトは俯き、涙を流す。

 

「ドラゴニュート……いくら何でも悲しすぎるだろ……!」

「ああ、だから俺は失った命の悲しみを背負う形で黒衣を身に纏ってるんだよ、だからこそ、お前達にはこれ以上何も失わせない、だから戦うと決めたんだ」

「ドラゴニュート……お前は強いな……」

 

 涙を流すカイトの前に、キラキラとした長い銀髪と、桃色の瞳をしたフレアが立つ。

 頭には銀のティアラが飾られ、青い宝石の埋め込まれた白いドレスを着た少女。

 彼女の存在は、まるでドラゴニュートの心の闇を照らす光の様な存在に見えた。

 

「フレア・アストレアです、ドラゴニュートさんから皆さんのお話は聞かされていただいております、私がどこまで戦えるか分かりませんが、努力はさせていただきます」

 

 フレアはぺこりとお辞儀をし、他の仲間は各自「よろしく」と返す。

 ここに今、かつてのアルスマメンバーが揃い、戦う準備は整った。

 

「さて、問題はその敵さんがどこから来るかって事だな」

「確かに、敵がどこから来るか分からない以上は対応できないもんね」

 

 トレインとイヴの言葉が、戦う準備を整えていた一同の警戒を解く。

 

「そう言えば、そうだったな、そもそも敵が何かも分からないわけだし」

 

 カイトは頭を掻きながら苦笑いする。

 その時、縛られたままのルミナの様子が一変する。

 何かに怯えたような様子を見せ、ただ事じゃないと悟った翼が様子を聞く。

 

「おい、一体どうしたんだ?」

「『あの人』が来る! 任務に失敗した私を殺しに! お願い助けて!」

 

 恐怖のあまり声が上ずったルミナに驚く一同。

 翼は演技の可能性を考慮した上で、先程までとのルミナの感情の変化を計算し、ルミナの言っている事は本当だと判断。

 

「どこから、誰が来るんだ?」

「三大幹部! 私達の上司! ここに来るの!」

 

 ルミナの言葉を聞き、翼たちは敵の接近に警戒する。

 翼はルミナを守るように、ルミナの周囲を警戒。

 すると、トレーニングルームに次元の歪みが三つ発生し、一同は距離を取る。

 直後、次元の歪みが爆発。

 その爆発が時間を巻き戻すかの如く消え去ると、その中から三人の女性が姿を現す。

 三人は全員が黒いロングコート状の軍服を着ており、かつてアルスマファイター達と戦ったエレメントスタンド四天王を彷彿とさせた。

 

「あなた達ね? 上司ってのは」

 

 キサラが剣の切っ先を向けながら問う。

 すると、三人の内の一人、炎の様な赤髪ロングをなびかせた赤い瞳の女性が前に出る。

 

「その通り! 正解よ! あたしはディメンジョンブレイカー三大幹部の一人、フレイミール!」

 

 続いて、青髪ロングで青い瞳の女性が前に出る。

 

「同じく、ディメンジョンブレイカー三大幹部の一人、グラシーヌ」

 

 最後に、金髪ロングで金の瞳の女性が前に出る。

 

「ディメンジョンブレイカー三大幹部の一人、ボルトーネだよん」

 

 三人は腰に携えた剣を抜刀し、空高く掲げ、切っ先を合わせる。

 

「「「三人合わせて、我ら、支配者レーティナ様に仕えし、ディメンジョンブレイカー三大幹部!」」」

 

 突然の名乗りに、一同はポカーンとする。

 

「何あれ、カイテンジャーの真似?」

「どちらかと言うと、1981年放送のスーパー戦隊シリーズ第5作、太陽戦隊サンバルカンに似ていると言うか……ほら、色も人数も一緒だし……いやでも、三人共女だから安心戦隊ALSOKかな……でもあれは色が違うな、元ネタはサンバルカンとどっかで聞いたけど……」

「つーか、俺達が4年前に戦ったエレメントスタンドとほぼ同じじゃねーか!」

 

 セリカ、ドラゴニュート、カイトが立て続けに思った事を口にする為、名乗りポーズのままの三人は顔が赤くなっていた。

 

「黙らんかアホ共! これは由緒正しきディメンジョンブレイカー三大幹部の名乗りだ! スーパー戦隊やエレメントスタンドは関係ない!」

 

 フレイミールは名乗りポーズを辞め、大声で反論する。

 その言葉に違和感を抱いた、ドラゴニュートとカイトは反応する。

 

「え、お前ら、スーパー戦隊シリーズ知ってんの?」

「今はそっちじゃないだろドラゴニュート、エレメントスタンドを知ってるのか?」

 

 二人の言葉に、三人は不敵な笑い声を上げる。

 場の空気が一気に曇り出す、それと同時に、この三人はただ者ではないと一堂に察知させた。

 

「私達の組織名が何故、『ディメンジョンブレイカー』と言うのか知らないみたいね」

「そりゃ簡単ッスよ! 我々ディメンジョンブレイカーは、様々な時空を旅しては『目的』を果たしてきたからッスね!」

 

 グラシーヌとボルトーネは自慢気に自分達の行動を話す。

 ディメンジョンは次元、ブレイカーは破砕者、つまり、彼女らの目的とは……。

 翼は震えながら、その答えを口に出す。

 

「様々な次元を……破壊していると言う事か……!?」

「ピンポーン! 正解ッスよ、そこの好青年クン!」

 

 翼の問いを、ボルトーネは満面の笑みで肯定する。

 想像を絶する彼女らの行動に、一同は恐怖する。

 

「何で……何でそんな事をするんですか!」

 

 ヴェローナは声を荒げ、ディメンジョンブレイカーにその『目的』を問う。

 

「そんなの決まってる、あなた達は必要以上に次元を歪め過ぎた、正確には、色んな次元を当たり前の様に繋げては行き来している、それはつまり、自然の摂理に反した行為、私達の目的は、そういった世界を『破壊』する事……」

 

 グラシーヌの語る目的はつまり、別次元への往来が活発化している世界を滅ぼすと言うもの。

 そんな手前勝手な理由で人々の平穏を壊すディメンジョンブレイカーに、一同は怒りを覚える。

 

「世界を滅ぼすなんて、そんなのあまりに身勝手だよ! 君達はそれで正義の味方にでもなったつもりなのか!?」

「そうだよ! ボク達が駄目で、君達がいいなんて、そんなのおかしいじゃないか!」

 

 温厚なエイトと遊戯も声を荒げ、ディメンジョンブレイカーへ怒りをぶつける。

 だが、三人は表情一つ変えていなかった。

 

「困るのよ、そんな身勝手な事をされては! 世界とは本来、独立したものでないといけない、独立した世界で、そこに生まれた者はそこで一生を送らねばならない……なのに、あんた達みたいな連中に勝手に行き来されると、そこに住む者達の人生や運命が狂うの! とある地球で好き勝手に次元を荒らしまわったフィーニスを、あんた達が倒した事は十分に理解している、あいつはあたし達では対処できなかったからこその感謝よ、でもね、これ以上あんた達に好き勝手に次元を荒らされると困るの!」

 

 フレイミールは自分達が行動を起こす理由を全て話した。

 そこには、かつて別次元の地球で暗躍した存在の名も入っていた。

 しかし、それでも翼たちの意思は変わらない。

 

「だとしても! そこに住む人達全てを滅ぼすなんて間違っています!」

「それに、お前達に勝手に俺達の行動を取りしまわれるのも気に食わねえ!」

「そうだよ! あなた達はそんなに偉い存在なの!?」

「お前達が何故、そんな警察みたいな行動を取ってるか、教えてもらえない限り、俺達は納得しないぜ」

 

 翼、カイト、ルナ、ドラゴニュートはそれぞれの意見を三大幹部にぶつける。

 四人の言葉に、三大幹部は言葉を失う。

 

「その沈黙は、勝手に次元を取り締まっていると言う事でよろしいでしょうか?」

 

 フレアが三大幹部に対し、更に詰め寄る。

 しばらくして、フレイミールがゆっくりと重たい口を開く。

 

「……これから先の未来、更に次元の行き来が活発化する事となるわ、その結果、どうなるか、あんた達には分からないわよね? 答えは簡単よ、歪み過ぎた次元は崩壊し、宇宙全体が次元の渦に呑み込まれて崩壊する……あたし達ディメンジョンブレイカーは、その崩壊から脱出し、この時代に来た生き残りの未来人よ、これで納得するわよね? あんた達も」

 

 フレイミールの口から語られた衝撃の事実に、アルスマファイター達は沈黙する。

 好き勝手に次元を行き来した末の未来が、宇宙の崩壊を引き起こす……。

 

「じゃあ、もし、俺達がこれ以上次元を歪めたら……いずれ崩壊するというのか……」

「その通りよ、ドラゴニュート・ブラウスピカ、例え過去を変えたとしても、あたし達のいた未来は崩壊したまま……でも、あんた達の未来は変えられる……どう? 悪い話ではないでしょう? 孫悟空、あんたなら分かるはずよ」

 

 フレイミールは悟空に話題を振る。

 悟空は、かつて出会った人物から似たような話題をされたことがある。

 

「……確かに、未来のトランクスも言ってたな……過去を変えても、自分達の未来は変わらねえって……つまりおめえらは、オラ達を助ける為に、次元を歪める可能性のある世界を片っ端から潰してるってわけか……」

「そう言う事、だからあたし達は様々な次元を繋げるきっかけを作ったこのアルスマ界は特に危険と判断して、データユニット以上の戦力であるルミナを送り込んだんだけど……次元を超えて最高戦力が助けに来るのは予想外だったわ、ま、あんた達ならやりかねない事だったけどね……」

 

 アルスマファイター達は全員が沈黙する。

 自分達がこれ以上次元を歪めてしまったら、確実にこの宇宙が崩壊し、全次元に住む人間が全員死ぬ。

 少し前まで戦う気満々だったのにもかかわらず、ほとんどのメンバーが戦意を喪失してしまう。

 

「どうやら完全に沈黙してしまったみたいね」

「だったら、後は簡単に制圧できそうッスね! 皆殺しッス!」

 

 その時、翼がボルトーネに対して一筋の斬撃を放った。

 咄嗟に回避するボルトーネ、翼は彼女らに切っ先を向ける。

 

「……確かに、お前達のしてる事は正しいかもしれない……全ての次元を救うかもしれない……でも! それでも! 一方的に制圧して滅ぼす事しかできないお前達の行動が正しいとは、俺にはどうしても思えない! もっと話し合いとか対話とか、そう言う手段もあるのに、それを取らないお前達の行動は間違っているようにしか思えないんだよ! いや、確実に間違っている!」

 

 翼の言葉に、アルスマファイター達は奮い立つ。

 

「よく言った、翼! 俺もどこか引っかかる所はあった、だが、翼が全部言ってくれたよ! ディメンジョンブレイカー! お前達の行動は防衛じゃなく、ただの侵略だ! 悪意のある存在は全て滅ぼしてしまえって言う、侵略行為! 俺はそんなやり方、絶対に認めない!」

「俺も同じだぜ! 俺はかつて、自分の故郷が侵略されたからよく分かる、そこに住む人達を皆殺しにして、何が正義だ! 何が防衛だ! そんな事で宇宙に住むみんなが救われたって、何にも嬉しくなんかねえよ! 俺達の未来を救いたいって言うなら、もっとやり方を考えろよ!」

 

 ドラゴニュート、カイトも翼に続く。

 三人の言葉を聞き、ディメンジョンブレイカー三大幹部は歯を食いしばる。

 

「あんた達……よくも好き勝手言ってくれるじゃない……!」

「私達はあなた達を救ってあげようとしているのに、恩知らずね……」

「あんな奴ら、みーんな殺しちまえばいいッス!」

 

 フレイミール、グラシーヌ、ボルトーネは剣を構え、戦闘態勢を取る。

 

「来るっ! みんな行くぞっ!」

 

 翼の合図を受け、アルスマファイター達も戦闘態勢を取り、各自ディメンジョンブレイカー三大幹部へと向かっていった。

 

「コール! デスティニー!」

 

 シンは転送コマンドを叫び、マスターゴッドの作った転送システムから、デスティニー型パワードスーツを装着する。

 

「蒸着!」

 

 撃が蒸着コードを叫ぶと、アルスマ界の衛星軌道上の亜空間にいる超次元高速機ドルギランから、特殊軽合金グラニウム製のコンバットスーツを粒子の状態に変換して電送。

 電送された粒子は撃に吹き付けられるようにして体表面で構成され、僅か0.05秒でコンバットスーツを装着し、宇宙刑事ギャバンtypeGとなる。

 

「まずはわいから行くで! たこ焼きを焼いて鍛えたサンシロウパンチを食らいや!」

 

 サンシロウは高く跳んでフレイミールにサンシロウパンチを放つ。

 

「邪魔よ!」

 

 しかし、フレイミールの放った回し蹴りを食らい、サンシロウは壁に衝突し、ダウンしてしまった。

 

「相変わらず真っ先にやられるんだな、お前は」

「あの人の強さは変わらないね、トレイン」

 

 トレインとイヴは呆れながら、トレインは愛用の拳銃である装飾銃ハーディスの銃弾を、イヴは腕にナノマシンで作った翼を作り、その翼から羽根状の弾丸を放つ羽根の弾丸(フェザーブレッド)という技をグラシーヌに放つ。

 しかし、グラシーヌは素早く剣を振い、弾を全て弾く。

 

「畜生! またアルスマに出場してた頃みたいに電磁銃(レールガン)が使えりゃいいのに、今のハーディスはクリードとの最終決戦で壊れちまった上に、細胞放電現象も発生しなくなったから撃てねえ!」

「急いで来たから、スヴェンの作った特殊弾頭もないしね……」

 

 グラシーヌは剣を握ってない左手を正面に向けると、トレインとイヴのいる位置に冷気が発生する。

 

「ッ! 避けろ! 姫っち!」

 

 トレインとイヴは咄嗟にその場から離れると、さっきまでいた位置に、巨大な氷柱が発生する。

 

「危ない……もし避けてなかったら氷漬けだったよ……」

 

 イヴは危機一髪の状況に思わず冷や汗をかく。

 

「私達はそれぞれの属性に特化した技を使えるんですよ、その威力は、エレメントスタンドなどとは比べ物になりません」

「そゆこと! じゃあ、次は僕の番ッス!」

 

 ボルトーネが左手を上に挙げると、元アルスマファイター達の上空に雷雲が発生する。

 そしてボルトーネが手を振り下ろすと、雷雲から広範囲に落雷が発生。

 ファイター達はそれぞれ落雷を回避したり防いだりしていたが、この攻撃は危険と判断し、真っ先にボルトーネを倒す事を決意する。

 

「あの攻撃は危険だ! ドラゴニュート! 俺と一緒にあいつから倒すぞ!」

「OK! カイト!」

 

 ボルトーネに突撃するカイトとドラゴニュートを追って、フレアも「お供します」と言ってドラゴニュートの後を追う。

 

「おーおー、早速来たッスね、なら、殺しちゃうッスよ!」

 

 ボルトーネはカイト達目掛けて連続雷撃弾を放つ。

 だが、カイト達の前にフレアが瞬間移動で姿を現し、聖なるバリア、ルミナス・バリアを展開し、連続雷撃弾を防ぐ。

 

「ドラゴニュートさんはやらせません!」

「ありがとう、フレア!」

 

 更に、デスティニーが高速飛行で、ギャバンtypeGが光球化移動でドラゴニュート達を先回りする。

 デスティニーが大型対艦刀のアロンダイトで、ギャバンtypeGがレーザーブレードオリジンでボルトーネに斬りかかる。

 だが、ボルトーネは自身の周囲に電撃を発生させ、二人を弾き飛ばす。

 

「そう簡単には近寄らせないッスよ!」

「雷撃か……これは避雷針では対処できないな……だったら、ぶち破るまでだ!」

 

 カイトはマスターガンを正面に向け、強力な破壊光線、破壊ブラスターを放つ。

 ボルトーネはすぐにこれは防げないと察知し、回避行動を取る。

 

「危ないッスね! 何する気ッスか!」

 

 ボルトーネは先ほどまでの余裕の表情を崩す。

 カイトはその様子を見て、ボルトーネの守りを貫通する事は容易いと察知する。

 

「やはり、あれは防げないらしいな!」

「ならカイト、同時に決めるぞ!」

「おう!」

 

 カイトは再びマスターガンを向け、破壊ブラスターの発射態勢を、ドラゴニュートは右掌に光の魔力を収束させ、ライトブラストを放つ態勢を取る。

 

「破壊ブラスター!!」

「ライトブラストォォォッ!!」

 

 同時に放たれた高火力のエネルギー攻撃は、ボルトーネ目掛けて一直線に放たれ、ボルトーネはすぐに回避行動を取るも、二人は射線上の向きを変え、ボルトーネを追尾する。

 

「まずい……! うあぁぁぁっ!!」

 

 ボルトーネは遂にエネルギーの濁流に呑まれ、全身を焼かれて消滅する。

 

「ボルトーネがやられた!?」

「クッ! あんたらよくもぉ!!」

 

 仲間を一人やられた事で、フレイミールとグラシーヌの怒りのゲージが上がる。

 グラシーヌは目を閉じて両手を広げ、精神を集中させる。

 すると、グラシーヌの周囲に激しい冷気が発生し、吹雪が起きる。

 あまりの冷気に元アルスマファイター達の動きは止まる。

 フレイミールはグラシーヌの後方で体を炎で包んでいるので無事だ。

 

「私のこの絶対零度の冷気を前には、あなた達は身動きも取れないはずです」

 

 あまりの冷気を前に、元アルスマファイター達の身体はみるみる凍り付いてゆく。

 

「みんなはやらせないよ! ベホマズン!」

 

 エイトは全体回復魔法のベホマズンを唱え、仲間全員の傷を治療する。

 

「おっと、そうでした、エイトは厄介な回復魔法が使えるから、真っ先に潰さないといけないのでした……」

 

 グラシーヌは冷気を発生させたまま、エイトに掌を向け、冷凍エネルギーを収束させる。

 

(まずい! あのままじゃエイトさんが! エイトさんは……みんなはやらせない! ボクが守る!)

 

 遊戯は戦友である仲間達を守る為、一枚のモンスターカードをデュエルディスクにセットし、召喚する。

 

「破壊竜ガンドラ召喚!」

 

 遊戯がモンスターカードをセットすると、遊戯の前に漆黒の巨大な破壊竜が出現する。

 

「破壊竜の閃光(デストロイ・ギガ・レイズ)!!」

 

 遊戯が叫ぶと、破壊竜ガンドラは全身から赤い光線を放ち、グラシーヌを攻撃する。

 光線はグラシーヌの周囲に着弾し、爆発を発生させる。

 

「クッ!」

 

 攻撃を受けてグラシーヌが怯むと同時に冷気は収まり、その隙に元アルスマファイターが総攻撃をかける。

 アリアが二丁拳銃のコルト・ガバメント・クローンを、セリカがアサルトライフルのシンシアリティを発砲。

 グラシーヌはすぐに回避するも、その先回りをしたキサラの振り下ろした剣で左腕に切り傷を作る。

 続けてヴェローナが両手に持った剣による連続斬撃を避けきれず、切り傷を増やす。

 

「トドメは僕の奥義で!」

 

 そう言ってエイトは青白い光の竜に変身する、エイトの最終奥義、ドラゴンソウルだ。

 青白い光の竜に変身したエイトはそのままグラシーヌに突撃する。

 

「そんな……! この私が……!」

 

 グラシーヌは何が起こったか理解する間もなく、光の竜に衝突して消し飛んだ。

 残すはフレイミールだけである。

 

「残すはお前だけだ! フレイミール!」

 

 翼の声がトレーニングルームに木霊する。

 しかし、フレイミールは目を閉じ、俯いたままだ。

 

「……まさか、グラシーヌもボルトーネも倒されるなんてね……でも、あたしはそう簡単にはやられないわよ!」

 

 そう言ってフレイミールは目を見開き、剣を構えたまま前方に突撃する。

 元アルスマファイター達はフレイミールを迎え撃つ準備をする。

 その時、フレイミールの身体を、高熱の火炎が包む。

 完全な火だるま状態となったまま、フレイミールの身体は加速する。

 

「食らいなさい!」

 

 フレイミールは体を宙に浮かせると、そのまま高速回転しつつ飛行し、前方にいたヴェローナ、ギャバンtypeG、エイト、遊戯を吹き飛ばす。

 四人は大きく吹き飛ばされダウン、更に、破壊竜ガンドラも撃破されてしまう。

 

「一体何だあの火の玉は!」

 

 デスティニーが高速飛行するフレイミールを見て叫ぶ。

 フレイミールは再び反転し、再突撃する。

 そのフレイミールの動きを止める為、ルナとフレアが前に立ち塞がる。

 

「守護《パラディウム》!!」

「ルミナス・バリア!!」

 

 ルナとフレアはそれぞれバリアを展開し、防御力を増した状態で、フレイミールの動きを受け止める。

 高速回転するフレイミールの動きは完全に止まり、フレイミールは後方に跳んで距離を取る。

 そこに、アリア、セリカ、トレインが射撃を放つが、フレイミールは正面に炎の壁を展開して銃弾を防ぐ。

 

「中々やるじゃない! まさか、あたし達をここまで追い詰めるなんて! なら、これはどう!」

 

 フレイミールは地面に剣を突き立てる。

 その瞬間、トレーニングルームの床の広範囲が炎上、ファイター達の身体を焼き、ファイター達は悲鳴を上げる。

 飛行能力を持つルナ、フレア、デスティニー、悟空、イヴ、キサラは体を浮き上がらせ、他の仲間を持ち上げる。

 

「成程、全員まとめて焼き尽くそうって魂胆か、中々考えるじゃねえか」

「単純な殲滅ではこの手段が楽なのよ」

 

 トレインの言葉に、フレイミールは冷たく返す。

 

「でも、このままじゃ何もできないぞ、みんなも俺達を連れて戦うのは無理だろ?」

 

 ドラゴニュートは冷静に戦局を分析する。

 

「……俺が行きます、みんなは、仲間を頼みます!」

 

 そう言って翼は意識を集中させ、体に黄金のオーラを纏う。

 

「そうか、おめえには覚醒能力があったな! なら、オラも!」

 

 悟空は連れていたカイトをデスティニーに託し、自身も超サイヤ人へとパワーアップする。

 

「か~め~は~め~波---ッ!!!」

 

 悟空はかめはめ波を放つ。

 エネルギー波の余波が火災を消し飛ばしながら、フレイミールに向かい、フレイミールは炎の壁では防ぎきれないと察知し、回避する。

 だが、その先には翼が先回りしていた。

 

「なっ……!?」

「これで終わりだ! 極光天界斬り!!」

 

 翼は黒剣ナハトに眩いまでの光を身に纏い、巨大な光の刃を生成してフレイミールを斬りつける。

 その一撃は、フレイミールの身体を切り裂く。

 

「あり得ない……ディメンジョンブレイカー三大幹部が……こんな簡単に……」

 

 フレイミールの身体は炎へと変わっていき、やがて消滅した。

 こうして、ディメンジョンブレイカー三大幹部を退けた元アルスマファイター達。

 しかし、この戦いでかなりのダメージを負ってしまい、戦えるメンバーは限られていた。

 

「……皆さん、怪我や火傷が酷いですね……」

 

 フレアが足の火傷をさすりながら、周囲の様子を見て呟く。

 

「……フレアも、あんま無理はするなよ、相当痛いんだろ?」

「痛いですけど……私は皆さんが傷付く方が辛いですから……」

「……優しいんだな、お前は、あの時もそうだった……」

 

 ドラゴニュートはドラコとダークドラコが寿命で死んだ時の事や、ダークドラゴニュートと決着を付けた事、優香が死んだ時の事を思い出す。

 それらの出来事が終わった後、ドラゴニュートはただ泣き続けた。

 そんなドラゴニュートをいつも優しく抱きしめていたのが、他の誰でもないフレアだった。

 

「……私はただ、苦しむドラゴニュートさんの事を放っておけませんでしたから……ここにいる皆さんや、この世界だってそうです、私にとっては、どれもかけがえのない物なんですよ」

 

 二人の間に、一瞬の静寂が訪れる。

 一呼吸おいて、フレアが口を開く。

 

「私がドラゴニュートさんに付いてきたのは、ドラゴニュートさんがどこか、死に場所を探しているように見えたからです、ドラゴニュートさん、あなたはこの戦いで死ぬつもりでしょう?」

 

 フレアの言葉に、カイトや翼、他の元アルスマファイター達が反応する。

 

「……やっぱ、お前には気付かれてたか……」

 

 ドラゴニュートはフレアから目を逸らす。

 その時、カイトはドラゴニュートの胸ぐらを掴んで壁際へと押し付ける。

 

「ドラゴニュート! お前どう言う事だよ!? 死のうとしてたって!? 昔のお前は、そんな奴じゃなかったはずだ!」

 

 カイトは昔のドラゴニュートを知っていた。

 明るくて、正義感があって、悪い事は許せない人物、そして何より、アニメや特撮の話で何度も盛り上がった。

 そんな人物が今、死に場所を探してこの戦いに参加していると聞いて、かつてのドラゴニュートを知る仲間達は驚いていた。

 

「……俺の心はもう、深く傷付いているのさ、あの後、大切な人を沢山失って……もう何も考えたくない……全て終わりにしたいんだよ……」

 

 そう言ってドラゴニュートはカイトの手を振りほどこうとする。

 その時、カイトはドラゴニュートを殴り飛ばす。

 

「馬っ鹿野郎! そんな事で死んだ人達が喜ぶと思うのかよ!? お前を知る人達が悲しむとは思わないのかよ!? 俺は……俺達は、お前の事が大切だ! 大乱闘での出来事、アニメや特撮を観た事、全部覚えてる! お前はそれでいいのかよ!!」

 

 ドラゴニュートは俯いたまま沈黙する。

 

「ドラゴニュートさん、俺は、ドラゴニュートさんに何があったのかは分かりません、でも俺、ドラゴニュートさんには死んで欲しくないんです、死に場所を探しているんだとしたら、この戦いには参加しないで欲しいです、俺達は、死ぬ為に戦ってるんじゃないですから……」

 

 翼は、ドラゴニュートに死ぬ為ではなく、守る為に戦っていると伝える。

 

「それに、ドラゴニュートさんの事を一番大事に想っている人は、一番身近にいるじゃん!」

 

 ルナの言葉を聞いたドラゴニュートは、フレアの方を向く。

 フレアは涙ぐんだまま、ドラゴニュートに抱き付き、ドラゴニュートの胸の中で嗚咽を漏らす。

 ドラゴニュートは静かに目を閉じ、優しくフレアを抱き締める。

 

「……ごめん、フレア……俺は生きるよ……もう、どこにも行かないから……」

 

 ドラゴニュートはフレアが泣き止むまで、優しくフレアを撫で続けた。

 

 しばらくして、カイトの持っていた通信機にマスターゴッドからの連絡が入る。

 

「マスターゴッド、どうした?」

『大変だ、遂に各世界に敵の本隊が送り込まれた! カイスマ界、別次元の地球、ペラペランド……他にも多数の世界に、データユニットとは違う兵士達が送り込まれている!』

「何だって!?」

 

 三大幹部を倒した事で、ディメンジョンブレイカーは行動を急いだのだろう。

 それだけ、アルスマファイター達の関係者が危険だと認知された、だから全力で潰す。

 

「みんなは、みんなは大丈夫なのか!? キルシュちゃんは!?」

『私なら大丈夫だよ、安心して』

「良かった……」

 

 通信越しに聞こえてきた恋人キルシュの声を聞いたカイトは安堵する。

 しかし、事態は一刻を争う状況であった。

 

『とりあえず、こちらは元カイスマメンバーも召集して何とか食い止めてる、別世界の地球も、クロストライアルを始めとした組織が相手しているし、ペラペランドの方も多分大丈夫だろう』

「なら、俺達はディメンジョンブレイカーの基地を叩けばいいか……その鍵を握るのは……」

 

 一同はルミナの方を見る。

 支配者レーティナとやらを倒し、この戦いを終わらせる為には、ルミナに頼るしか方法はない。

 カイトは「また後で」と言ってマスターゴッドとの通信を切り、ルミナに駆け寄る。

 

「ルミナ、頼む! 俺達はみんなを助けないといけない! 協力してくれ!」

 

 カイトだけでなく、他の元アルスマファイター達も、口々にルミナに頼み込む。

 ルミナはしばらく沈黙した後、重たい口をゆっくりと開いた。

 

「……支配者レーティナ様は、三大幹部よりも遥かに強い……多分、あなた達じゃ勝てない……死にに行くだけ……それでも行く?」

 

 ルミナは問う、死ぬ可能性が高い戦いに、わざわざ赴くかと。

 しかし、元アルスマファイター達の答えは決まっていた。

 

「行くよ! 俺達は、全次元に住む人達を守る為に戦うんだから!」

 

 アルスマファイターを代表して、翼が答える。

 

「ディメンジョンブレイカーを倒した後、どうやって次元の崩壊を食い止めるかはまだ決まってない……それでも俺達は、そこに住む人々の安全は守らないといけないから!」

 

 今すぐに次元の崩壊を食い止めるのは無理だとしても、今は人々の平和の為に戦う。

 既に、戦う理由は決まっていた。

 

「なら、私は止めない……あなた達がレーティナ様に勝てるとは到底思えない……それでも行くのなら、私が連れていく……これは、あなた達に助けてもらったほんのお礼だから、勘違いはしないで欲しい……」

 

 ルミナが喋り終わった後、カイトはルミナを縛っていた縄をハイパーソードで切る。

 身動きが取れるようになったルミナは、目を閉じて両掌を前に出し、意識を集中させて空間を裂き、次元の切れ目を作る。

 

「レーティナ様は、この先にいる、早く行って!」

 

 ルミナが合図すると、ファイター達は一斉に次元の切れ目に飛び込む。

 全員が飛び込んだ事を確認すると、ルミナも飛び込み、次元の切れ目はゆっくりと閉じた。

 

【ディメンジョンブレイカー本部 司令室】

 

 次元の切れ目に入ると、そこは司令室であった。

 数多くのモニターに各世界の侵攻状況が映し出されており、各世界の仲間達が必死に、命懸けで戦っていた。

 その司令室の奥、玉座のような場所には、一人の長い銀髪の女性が座っていた。

 黒いドレスの様な軍服を着た、白い瞳の女性、その表情には一切の感情がない冷酷な顔。

 この女性こそが、レーティナだろう。

 

「よく来たわね、まさかここまで来る連中がいるとは……」

 

 レーティナは玉座から立ち上がると、手に黒い長剣を出現させた。

 

「つまり、ここまで来たと言う事は、ディメンジョンブレイカーの作戦に反抗すると言う事ね」

「当たり前だ! 相手を一方的に滅ぼして従わせるなんて、間違っている!」

 

 レーティナの言葉に、翼が力強い声で反論する。

 

「お前達が侵略している次元にだって、何も知らず頑張って生きている人たちだっているんだ!」

「そんな人達を……お前の身勝手な理由で殺されてたまるか!」

 

 ドラゴニュート、カイトも続く。

 しかし、そんな彼らに、レーティナは一切の反応を示さなかった。

 

「意見を纏めると、お前達はディメンジョンブレイカーの作戦が気に食わないと、そう言う事ね?」

「当然です! あなた達のしている事は、許される事ではありません!」

 

 レーティナの問いに、フレアが返す。

 レーティナはため息を一つつくと、左手をアルスマファイターに向け、閃光を放つ。

 次の瞬間、想像を絶する光の爆発が起き、アルスマファイターは全員、地面に崩れ落ちる。

 

「な……何が起きたの……!?」

 

 ルナは今起きた状況が一切理解できず、混乱する、それは他の全員も同じであった。

 

「だから言ったんだ、レーティナ様には絶対勝てないって! そして、あれだけの力を持つレーティナ様でも、次元の崩壊は食い止められない! だから、滅ぼすしかないの! あなた達も馬鹿じゃないんだから分かるでしょう!?」

 

 ルミナが遂に堪えていた感情を爆発させる。

 それはまるで、絶対に諦めないアルスマファイターを、ディメンジョンブレイカーと重ね合わせているようでもあった。

 

「それは理解しているさ、だけどな!」

「多くを犠牲にして助かろうなんて、そんな最悪の決断だけはしたくないんだ!!」

 

 ドラゴニュートとカイトがルミナに返す。

 

「だから何でよ! 次元の崩壊を起こしている原因である世界を潰せば、確実に次元の崩壊は止められるのよ!? 分からないの!?」

「分かっている……分かっているさ! でも、人の命は何よりも大切なんだ! 何かを守る為に何かを犠牲にするなんて、間違っているんだよ! だから、俺達は絶対に諦めない! 諦めないぞ!!」

 

 翼はルミナにそう返すと、ゆっくりと立ち上がった。

 傷ついた身体で、ナハトを杖代わりにしながらゆっくりと。

 

「愚かな連中だ……これしか術がないなら、従うのが常識だろう、それとも、他にこの宇宙を救う術でもあるのか?」

「今はないし、お前達が未来の世界から覚悟を決めてこの世界に来た事も、理解している……でも、滅ぼすだけが正義ではありません! 今の俺達にできる事は、次元の行き来をやめる事だけです……でもいつか必ず! 次元の崩壊を起こさずに、各世界を行き来する方法だって見つけてみせる! レーティナ! あなたが教えてくれた未来の話が、この宇宙の未来を変えるかもしれないんだ!!」

 

 翼はナハトを大きく振り上げ、レーティナに振り下ろす。

 その一撃を、レーティナは受け止める。

 

「貴様は……一ノ瀬翼だな、なら、いい事を教えてやる……私のいた宇宙にも、アルスマは存在した、だが、それはこの宇宙のアルスマとは違う物だった……私の居た世界のアルスマは、人形に魂の宿った人形生命体がファイターの半分を構成し、他の大乱闘のある世界の住民との関わりもあった……だが、ある日突然、宇宙全体が次元の崩壊に巻き込まれて消えてしまった……」

 

 レーティナの口から語られた真実に、アルスマファイター達は驚愕する。

 その中でただ一人、フレアだけは目を閉じ、俯いたままであった。

 

「あそこにいる銀髪の白いドレスを着た女、奴が唯一のアルスマファイターの生き残りだ、奴はアルスマ界で起きた動乱の最中一度は死んだが、その魂がどう言う訳か別の世界に行き付き、新たな肉体を手に入れたみたいだな……恐らく、その世界を支配していた者によるものだろう……」

 

 レーティナの言葉を聞き、フレアはゆっくりと口を開ける。

 

「レーティナさんの言う通りです……私はあの日、確かに死にました……ですが、私の魂はサファイア・ホロウによって拾われ、あの世界に転生させられたのです……この新たな姿を貰って……」

「フレア、そんな話、一度も……」

「話したく……なかったんです……! 私の知るみんながもうこの世にいない事を……ホロウから聞かされたんですからっ……!!」

 

 フレアは堪えきれなくなって嗚咽を漏らす。

 ドラゴニュートはフレアの頭に手を伸ばし、優しく髪を撫でる。

 

「そう言う事だ、お前達も滅びたいなら、勝手にすればいい……本当に次元の崩壊を食い止められるのならな!」

 

 レーティナは翼を力任せに押し返す。

 翼の身体は宙を舞い、地面に叩き付けられる。

 だが、翼はもう一度立ち上がる。

 

「ほう、まだ立ち上がる力があったか……」

「お前の言う事が本当なら……そっちの世界の俺は、次元の崩壊に巻き込まれて死んだんだな……俺だけじゃない……ドラゴニュートさんや、カイトもみんな……!!」

「ああ、死んだよ、そして同じ過ちを繰り返そうとしている……実に馬鹿な連中だな……」

 

 レーティナの言葉を聞き、翼は拳を握り締める。

 

「馬鹿なのはあなただ! あなたは、事を急ぎ過ぎて、侵略でしか次元の崩壊を止められないと思い込んでいる、ただの傲慢な侵略者だ!!」

「何……!?」

 

 翼の言葉に、レーティナは初めて不快感を顔に出した。

 

「確かに俺達は間違ったかもしれない……それでも相手を滅ぼして宇宙を救おうなんて……決して許される事じゃない! 他人を裁く権利なんて、誰にだってないんだ! あなたは絶対に間違っている!!」

「何も知らない癖に……勝手な事を言うなっ!!」

 

 レーティナは左手から閃光を放ち、光の爆発で翼を吹き飛ばす。

 翼は背中を壁にぶつけ、吐血する。

 

「私達がこの事を伝えなかったら、お前達は何も知らずに死ぬだけだったんだ! それを教えてやったのはどこの誰だ!? 誰でもない私達だろう!!」

「だから……それを最初から各世界に伝えれば、こんな無益な争いは避けられたんですよ……!!」

 

 翼はゆっくりと立ち上がる。

 もはや立ち上がる気力もないはずなのに、翼は何とか立ち上がった。

 

「一つだけ本当のことを言ってやる! レーティナさん! 力だけじゃ何も解決しない!!」

 

 その時である、翼の全身を、眩い光が包み込んだ。

 赤と青の、二つの光。

 その光の中には、二人の翼がうっすらと見えていた。

 一つは、かつてのアルスマファイター時代の翼の姿、そしてもう一つは、青ではなく、赤いジャケットを着た翼の姿。

 

「これは……別次元の俺なのか……?」

「翼さん……力を貸してくれるんですね? みんなの為に……」

 

 フレアはかつての戦友である翼の姿を見て、涙を流す。

 赤と青、二つの翼の光は、今を生きる翼に、新たな力を与えた。

 光が収まると、そこには、赤と青のトリコロールカラーのライトアーマーを着た翼の姿があった。

 そして、翼の傷も全て癒えており、翼の全身にはこれまで感じた事のない強い力がみなぎっていた。

 

「感じる……別の世界と、過去の俺の力を……! これなら、お前を止められる!!」

「ふざけるな! 滅んだ者の力など!!」

 

 レーティナは再び閃光を放つが、その光は翼に命中する事なく、全てライトアーマーに吸収される。

 予想外の事態に驚愕の表情を見せるレーティナは、何度も閃光を放つが、全てが吸収され、命中しない。

 諦めたレーティナは刀身に光のエネルギーを纏い、翼に振り下ろす。

 だが、その一撃を、翼はナハトで切り払い、レーティナの剣を折る。

 

「馬鹿な……! こんな事が!」

「レーティナ! この一撃で、全てを終わらせる!!」

 

 翼は力を込め、全身に眩い光を纏い、剣を縦に構える。

 そのまま体を宙に浮かせ、レーティナ目掛けて一直線に突撃する。

 

「俺達は……未来を掴んでみせる!!」

 

 すれ違いざまに、剣を横薙ぎに振り、レーティナの身体を切り裂く翼。

 体を切り裂かれたレーティナの身体は、少しずつ光の粒子へと変わってゆく。

 

「私のやり方は……間違っていたの……?」

「確かにやり方は間違っていました……でも、あなたのお陰で、この宇宙は救われるかもしれないんです……そこには、感謝をしてもしきれません……レーティナさん、本当にありがとうございました」

「なら……絶対に……救ってね……この宇宙を……約束よ……」

 

 そう呟き、レーティナは微笑み、一筋の涙を流す。

 やがて、レーティナの身体は光となって消えた。

 それと同時に、翼の身体を纏っていたライトアーマーは消失。

 レーティナ亡き今、各次元の戦いを辞めさせる為、ルミナはレーティナの玉座の下へと急ぐ、そこには、通信装置があるからだ。

 ルミナは通信装置を起動し、マイクに語り掛ける。

 

「各次元を侵攻中のディメンジョンブレイカー全兵士に告ぐ、レーティナ様と三大幹部はアルスマファイターとの戦いで戦死しました、その戦いの中で、アルスマファイター達は次元の崩壊を食い止める為に努力すると決意しました、だから、これ以上戦って命を散らす必要はありません、総員、速やかに戦闘行動を停止してください、繰り返します……」

 

 ルミナが各次元に通信を送ると、各次元での戦闘行動はすぐに停止した。

 

【カイスマ界 カイスマ本部前】

 

「どうやら、全員戦いを辞めたみたいだな」

「全く、一時はどうなるかと思ったぞ!」

「これ以上の持久戦は流石にキツいからな!」

「カイトくん……勝ったんだね……」

 

 カイスマ界では、カイトの仲間であるダークカイト、サルマン、レオナルド、そしてカイトの恋人であるキルシュが戦いを終え、一息ついていた。

 

【別世界の地球 エクレールの村】

 

「何とか戦いを辞めてくれたみたいだな……」

「これで私達クロストライアルの任務も終わりですね」

 

 別世界の地球で戦っていた別世界のドラゴニュートとその恋人アイラが、戦いを辞めて投降の意思を示す兵士達を見て、静かに呟く。

 

【ルナの居た地球 スティグマの村】

 

「敵の攻撃が止まったって事は、ルナがやってくれたんだね……帰って来たら沢山褒めてあげないと」

 

 ルナの姉、ミハルは、ルナの事を想いながら、空を見上げる。

 

【ペラペランド アゼスマタウン】

 

「戦いは終わったみたいだな」

「他の世界での戦闘も停止したみたいですね、兄さん」

「流石にぼくも疲れたなぁ……これでゆっくり休めるよ……」

 

 ペラペランドにいるアゼストと妹のアゼリア、加勢に来ていたメネズの三人は、戦いを終えてくたくたになっていた。

 

 全ての戦いを終えた後、各世界に侵攻したディメンジョンブレイカーの兵士達と戦死者の遺体は、ディメンジョンブレイカーの本部へと輸送された。

 戦死者の遺体は専用の設備で弔われ、主を失った兵士達は行き場を失っていたが、全員がアルスマ界に受け入れられる事となった。

 ルミナが殺したカメラマンは、カイスマ界のマスターゴッドが大乱闘の設備を流用して蘇生させて事なきを得た。

 ディメンジョンブレイカーの兵士達は皆、アルスマ界の防衛隊に配備される事になり、住居もしっかり提供される為、不自由はないだろう。

 戦いを終えたアルスマファイター達は皆、元の世界へと帰還した。

 しかしそれは、長い別れ、そして最悪の場合、永遠の別れを意味していた。

 

【アルスマ界 アルスマストリート】

 

「じゃあ、みんなとはここでお別れになるって事だな」

「みんなは私が送っていくけど、もしかしたら一生会えないかもしれないんだよね?」

「まあ、次元の崩壊が進んだらいけないからな」

 

 翼、ルナ、ドラゴニュートが話し、全員がしんみりとする。

 

「まあ、安心しろって、マスターゴッドがきっと、安全性の高い転移装置を作ってくれるはずだからさ!」

「それまでしばらくのお別れですよ、だって、永遠の別れなんて、悲しすぎるじゃないですか」

 

 カイトとフレアが笑顔を見せる。

 

「大丈夫です! きっとまた会えますよ!」

「そうだよ、これは一時の別れだから、永遠の別れじゃないさ」

 

 遊戯とエイトが皆を安心させる言葉を投げかける。

 

「みんな、いつかまた会おう!」

 

 翼の言葉と共に、全員が手を重ねる。

 

 その後、ルナの連れてきたアルスマファイターは全員ルナの手によって元の世界へと帰還し、ルナも自身の世界へと帰っていった。

 残されたのは、翼とヴェローナ、そしてルミナの三人だけ。

 

「皆さん、約束は守ってくれますかね?」

「当然ですよ、皆さんはそういう人ですから」

 

 ルミナの問いに、ヴェローナは皆に絶対の信頼を寄せた言葉を返す。

 

「それより、ルミナはこれからどうするんだ?」

「私は……適当な場所で野宿でもするつもりです」

「なんなら、うちに来ないか? 君なら妹と仲良くなれそうだし」

「え……」

 

 ルミナは驚いた表情で翼を見つめる。

 しばらく固まった後、照れくさそうに髪を弄りながらルミナは翼に返事を返す。

 

「別に、いいですよ……野宿するよりはマシですから……」

「ふふ、決まりだな、じゃあ、これからよろしくな、ルミナ」

 

 翼はルミナに手を伸ばし、ルミナは翼から顔を逸らしながら、頬を赤く染めて翼の手を取る。

 その手を、ヴェローナも取っていた。

 

「今日だけは、私も仲間に入れてもらいますよ、翼さん?」

「え、あ、分かったよ」

 

 驚いた表情でヴェローナを見つめる翼を見て、ヴェローナはにこりと微笑む。

 そして、三人は仲良く翼の家の方角へと歩いて行った。

 

 この戦いは様々な次元を震撼させた大事件として、後の世に語られる事となる。

 次元の崩壊はその後、ゆっくりと長い時間をかけて修復していくようであり、しばらくは様子見となった。

 そして、その事件から半年が経過した頃、マスターゴッドの不眠不休の努力もあり、無事に安全性の高い転移装置の開発に成功、再び次元の行き来が可能となった。

 それからこの装置はカイスマ界と親交の深い世界へと配られ、戦友たちは再び再会した。

 この戦いを最後に、アルスマ界では大きな争いは起きる事はなく、平和な世が続いたと言う。

 これは、アルスマ界で起きた最後の戦いの物語であった。

大長編 アルティメットオールスター大乱闘スマッシュブラザーズ【冒頭先行公開】

 かつて、アルスマ界という平和な世界で某大人気ゲームに似た大乱闘と言う競技が行われた。
 様々な世界から招待された歴戦の戦士たちが幾度となく大乱闘でドラマを作り、絆や友情を深めていった。
 しかし、その大乱闘を潰そうとした存在もいた。
 アルスマ界の守護を目的として生み出されたアンドロイド、ブラックガンナーとホワイトブレイドが、アルスマ界にかつて存在したテロ組織『エレメントスタンド』の残党や各世界の敵のデータをコピーした『データユニット』を使い、幾度となくアルスマファイターに勝負を挑んだ。
 何度も繰り返された戦いの末、遂にブラックガンナーとホワイトブレイドは倒され、エレメントスタンド残党も壊滅、データユニットも全てが消滅し、データも失われた。
 この戦いの後、アルスマの開催者であるマスターファフニールは深い眠りに落ち、ファイター達は元の世界へと帰還した。
 それから三年、この空白の期間中、アルスマ界の近くにあるカイスマ界で一時休止されていた大乱闘が再開され、一部アルスマファイターも参加し、再びその勇姿を披露していた。
 だが、そのカイスマ界でもやはり敵は存在しており、アルスマ開催の一年前に倒された悪の戦士であるダークシャドウが復活し、彼の率いるダークシャドウ軍と幾度とない激しい戦闘が繰り広げられた。
 カイスマファイター達は激闘の末、ダークシャドウを撃破するが、一か月後に復活したダークシャドウは再び攻撃を開始。
 更に、カイスマ、アルスマファイターが別次元の地球に召喚され、消息を絶つ事件も発生。
 様々な戦いを乗り越え、ダークシャドウの繰り出す刺客を撃破した末、ダークシャドウとの最後の戦いが行われる。
 一度は絶体絶命の危機になるが、最後はカイトとダークカイトの合体した姿、ゴッドトゥルースがダークシャドウを撃破、長い長い戦いが終わりを迎えた。
 そして、それから三年が経過し、アルスマはかつて開催された名物競技として少しずつ忘れ去られ、カイスマは新生カイスマメンバーへと交代、新たな時代へと進みつつあった……。
 そんなある日、アルスマ界で突然、次元の歪みが確認された。

【アルスマストリート】

 アルスマストリートに設置された大型スクリーンに、アルスマ草原に発生した次元の歪みが映し出されていた。
 群衆が集まり、その様子をじっと見つめてがやがやと騒ぐ。
 そこには、かつてアルスマのスタッフとして働いていたナレ男、オペ子、レフェ子の姿もあった。

「あれ、何ですかね……? 何かが現れるのでしょうか……?」
「今の所は何とも言えませんね……」
「あの最終決戦以降、アルスマ界は平和だったのに、また何か事件が起こるの……?」

 ナレ男、オペ子、レフェ子は不安気に次元の歪みを見つめる。
 アルスマも終わり、ただの一般市民として暮らす三人。
 彼らの不安通り、この次元の歪みは大きな戦いのほんの序章であった。

【アルスマ草原】

 アルスマ草原に発生した次元の歪みは、時間の経過とともに大きくなってゆき、激しく揺らぎ始めた。
 危険だと感じたカメラマンは一度撤収し、遠くに避難する。
 刹那、次元の歪みは突然大きな爆発を発生させ、完全に沈黙した。
 カメラマン達は冷や汗と共に爆発で発生した土煙を見守る。
 すると、そこには一人の少女が立っていた。
 透き通るようなさらさらとした銀髪のロングヘアを少しだけハーフアップにして青いリボンで留めた、澄んだアイスブルーの瞳をした神秘的な少女。
 白と青の二色で構成されたワンピースを着たその少女は細身の剣を手に持ち、首に淡く光る魔石の付いたネックレスを付けていた。

 突然の光景に慌てふためくカメラマン達。
 その少女はカメラマン達を見つけると、細身の剣に無属性の魔力を纏い、横薙ぎに振る。
 カメラマン達は真横に両断され、直後に血を噴き出し崩れ落ちる。
 更に少女は掌に無属性の魔力を収束させ、一直線に放ち、カメラマン達の死体を爆散させる。
 アルスマ草原に爆炎が上がり、それを無表情で見つめる謎の少女。
 その少女の背後に、次元の裂け目が発生、その中からかつてアルスマファイターとして活躍していた黒乃月(くろの るな)と、かつてカイスマメンバーであったカイト・ブルーレオが姿を現す。

「くそっ! 一足遅かったか!」

 カイトは到着が間に合わず、カメラマン達を助けられなかった悔しさのあまり歯を食いしばり、右手に持ったハイパーソードと右手に持ったマスターガンを握り締める。
 当時14歳だったカイトも現在は18歳、あの時より成長して背も伸び、大人らしく成長している。
 あの時のトレードマークであった青いコートは黒いコートへと変化し、あの時のイメージとはかなり変わっている。

「カイスマ界の襲撃にかなり時間をかけてしまったから……もっと早く駆け付けてれば助けられたのに!」

 ルナは右手に持った鮮血の罪人(ブラッド・クライム)と左手に持った魂の狙撃手(ソウル・ティラール)を握り締め、謎の少女を見つめる。
 カイトと違って見た目が一切変わっていないルナ。
 彼女はあの後、とある禁呪法によって一切年を取らない不老不死の肉体となっている為、一切の変化がないのである。

「来たわね、元アルスマファイター」

 謎の少女は冷たい声で静かに呟くと、掌に無属性の魔力を収束させると、一直線に光線として放つ。
 二人は先読みして回避し、カイトはマスターガンから破壊ブラスターを放ち、ルナは魂の狙撃手(ソウル・ティラール)から闇の光線(ダークネス・フォトン)を放つ。
 二筋の光線は一直線に少女を捉え、直撃して爆炎を上げる。
 しかし、一切の油断をしない二人。
 二人は爆炎をじっと見つめると、次の瞬間、二人目掛けて二筋の光線が放たれる。
 カイトとルナは先読みして回避。
 続けて、爆炎の中から円形のバリアを纏った少女が飛び出してくる。

「守りもお手の物ってわけね! なら!」

 ルナは闇の魔力を収束させつつ、詠唱を始める。

「我に宿りし混沌の闇よ、黒き炎で全てを焼き尽くし、崩壊させよ、暗黒の波動(ダークネス・エクスプロージョン)!!」

 ルナは少女目掛けて魔力弾を放ち、魔力弾は少女に命中すると同時に爆散。
 少女のバリアを砕き、体が吹き飛ばされる。
 それでも細身の剣を地面に突き立て、何とか勢いを止めるが、そこにカイトが待っていた。

「スパークパンチ!」

 雷を纏ったパンチが、少女の腹部に命中すると、少女は気を失い、がくんと崩れ落ちる。

「流石に悪い奴とは言え、女の子は殺せないしな」
「それに、この子からは情報を聞き出さないといけないしね」

 二人がそんな話をしていると、二人の背後から足音が聞こえた為、二人は同時に振り向く。
 そこには、成長しながらも、とても見慣れた人物が二人、立っていた。
 片方は背が少し伸び、髪も長くなって大人っぽい見た目になりながらも、青いジャケットと黒剣ナハトというトレードマークは健在の青年。
 もう片方は、成人している為に制服ではないが、制服風のコーデをし、黒髪ボブは少し伸びつつも二刀流は健在の女性。
 カイトとルナはその人物を、よく知っていた。

「「翼とヴェローナ!」」
「よっ、久しぶり」
「お二人共、お久しぶりです」

 お互い、久々に会う関係ながら、しっかりとあの時の事を覚えており、四人の間に笑顔が生まれる。

「カイト、本当に久々だな、あの時の面影も大分なくなってて、一瞬誰かなって思ったよ」
「翼こそ! 本当に久々だな! 今は何やってんだ?」
「俺は今、ヴェローナと一緒にアルスマシティの防衛隊に入って、アルスマシティを防衛しているんだ、元ナイル盗賊団や元エレメントスタンドの人達も、区域は違うけど、防衛隊に入ってるよ」

「ルナさんは……全然見た目変わっていませんね……」
「あの後色々あってね……ヴェローナちゃんはあの時17歳だったから、今は21歳? 翼くんは18歳だったから22歳か」
「あ、あまり年齢については話さないでください……」

 久々に会ってもなお、あの時の様に会話をする四人。
 しかし、今は急を要する事態であった。

「カイトとルナが久々にここに来たって事は、他の世界でも何かあったって事だな?」
「ああ、次元の歪みはカイスマ界やペラペランド、別次元の地球など、色々な所に出現していて、それらの世界ではデータユニットが出現しているんだ、カイスマ界は新生カイスマメンバーや元カイスマメンバー、ペラペランドはアゼスマファイター、別次元の地球ではクロストライアルが戦っているけど、よりによって数が多くてな、アルスマ界に来れたのはルナの門(ゲート)の能力のお陰だ」

 翼とカイトが会話する横で、ルナはえっへんと胸を張る。

「そう言えば、ルナさんはどうしてカイスマ界に?」
「それがね、私の居た世界は闇の眷属との戦いも終わって平和が続いていたんだけど、私の世界も同じ様に次元の歪みからデータユニットが大量に出現してね、今はミハルお姉ちゃん達が戦ってくれてるんだけど、ミハルお姉ちゃんはこう言ったの、『この敵は陽動、本体は別の場所にいる』って、ミハルお姉ちゃんは察しがいいから気付いたんだと思う、だから私は各地を移動しながら本体を探して、別世界で出会ったレイリアちゃんにも協力してもらって、カイトくんと合流したタイミングでアルスマ界に次元の歪みが発生しているとマスターゴッドが教えてくれたからここに来たの」

 ルナの途方もない冒険の物語を聞き、ヴェローナは唖然とする。

「みんなの話を聞く限り、他の世界はデータユニットが出現した、でもこのアルスマ界には……」

 翼は気を失ったままの少女を見つめる。
 この少女は一体何者なのか分からないが、この事件の鍵はこの少女が握っている事は間違いない。

「とりあえず、話はまた後で、一旦アルスマ本部に移動しないか?」
「え、まだアルスマ本部があるのか!?」
「ああ、今はアルスマシティ防衛隊の拠点になっているけどね、ちなみに、セラフィとラフェールはそこの警備アンドロイドになってるよ」

 用途は変わりつつも、アルスマ本部が残っている事に喜ぶカイト。
 カイトとルナは翼とヴェローナに連れられ、アルスマ本部へと向かう。

【アルスマシティ防衛隊本部(旧 アルスマ本部)】

 かつてのアルスマ本部の大きな会場は大幅に改修され、軍施設らしい無機質な外見となっていたが、内部のロッカーや休憩所、トレーニングルーム等の施設は当時のままで、カイトとルナは懐かしさを覚える。

「ここに来るのも久々だね」
「ああ、こうしてまた来れるとは思っていなかったよ」

 四人は気を失った少女をトレーニングルームへと連れていき、暴れないように縄で縛る。

「ところでさ、ルナなら分かるか? あの後、アルスマファイターのみんなが何をしているか」
「勿論、あの後会いに行ったんだけど……」

 少女が目を覚ますまでの間、ルナは翼の質問であるアルスマファイターのその後について答える……。
 瑠依は現在21歳で、あの後人気ブロガーとなり、戦いとは無縁の環境で平和な生活を過ごしている。
 サンシロウは現在27歳で、現在は自称、関西最強のたこ焼き屋を営んでおり、この間は仮面ライダー1号のお面を付けた男性と楽しく談話をしていたようだ。
 フィオーレは現在22歳、相変わらずレイラとはライバル関係で、関係者によるとまた修行に出ると言って行方をくらましているらしい。
 ドラゴニュートは現在25歳、ルナが訪れた際は仲間である優香が魔物に食われて命を落とした為、とても悲しんでいる様子だったが、相変わらず冒険は続けているらしい。
 イオナは現在21歳、現在は戦いから身を引き、メイドカフェで仕事を続けているようだ。
 リスティリアは現在21歳、しかし、山奥で暮らしている事が災いしたせいで現在何をしているかは分からないが、噂によると究極魔法の実験に失敗して命を落としたとされているが、詳細不明である。
 千初は現在26歳、相変わらずエイリアン災害は続いており、エージェントとしてエイリアンを退治しているようだ。

「そうか……優香さん死んじゃったのか……」

 翼はかつて最終決戦し参加し、とても頼りになった優香の事を思い出す。

「魔族に捕らえられて、最後は魔物に食べられたらしくて……ドラゴニュートさん、とても悲しんでたな……」

 関係者の死に場が暗くなりかけた所で、ルナは慌てて残りのメンバーについて話す事にした。

「えっと、他の人のその後についても話すんだけど、これらの時空は時間の流れがバラバラだから、結構年取ってる人もいるけど驚かないでね?」
 
 ウルトラマンティガことマドカ・ダイゴは現在50代、ティガへの変身能力は失い、ヒカリとツバサの二人の子供を授かっている。
 ウルトラマンネクサスこと孤門一輝は現在27歳、ネクサスへの変身能力は失い、現在はナイトレイダー副隊長としてスペースビーストと戦い続けている。
 ウルトラマンネオスことカグラ・ゲンキは現在25歳、ネオスと分離した事で変身能力を失い、現在もHEARTの隊員として活動しているようだ。
 仮面ライダー龍騎こと城戸真司は現在43歳、あの後も仮面ライダー龍騎として活動はしているようで、未だに戦い続けているようである。
 仮面ライダーZOこと麻生勝は現在50代、現在も仮面ライダーZOとして世界の悪と戦っているようだ。
 仮面ライダーギーツこと浮世英寿は現在22歳なのだが、どうやら神になったらしく、見違えた姿でルナの前に姿を現したらしい。
 マジレッドこと小津魁は現在18歳、インフェルシアの残党と戦いながら、人間界とインフェルシアを結ぶインフェルシア親善大使として活動を続けている。
 ギャバンtypeGこと十文字撃は現在30代、宇宙刑事として、宇宙全体の治安を守っているほか、最近は赤いギャバンとも出会っているようだ。
 キカイダーことジローはアルスマの後、キカイダー01という新たなキカイダーと共に新たな悪と戦っているようだ。
 デスティニーガンダムことシン・アスカは現在17歳、愛機をデスティニーガンダムSpecIIに変え、平和の為にコンパスに所属し、戦っている。
 ガンダムダブルエックスことガロード・ランは現在16歳、愛機をガンダムX 3号機に変え、成長した姿を見せたらしい。
 バーサル騎士ガンダムはアルスマの後、スペリオルドラゴンとなって天界へと行った為に会えなかったようだ。
 エイト、クラウド、カムイ、マルス、マリオ、ルイージ、フォックス、キャプテン・ファルコン、ネス、アイスクライマーは現在、別の世界で本家大乱闘に参加しており、サーナイトはモンスターボールのポケモンとして、アブソルとティファはスピリッツとして参加しているようだ。
 ダイ、悟空、ピッコロ、遊戯、トレイン、イヴ、ウイングマンは最後に会った時はジャンプチアイランドと言う場所で未知の人物達と一緒に戦っていたようだが、少し前にジャンプチアイランドが消滅した為、現在は何をしているか不明との事。
 セリカはアルスマの後、相変わらずアビドス高校の借金を返す為にバイトをしているようだ。
 キリトとアスナはアルスマの後、異世界に飛ばされ、そこで未知の人物達と戦っていたらしい。
 アリアはアルスマの後、相変わらず武偵として活動しているようで、犯罪者を逮捕し続けているようだ。
 クーとレンはアルスマの後、エディルレイドを保護する為に様々な場所を飛んでいる。
 かなでに関してはいる世界が特殊である為、会いに行けなかったのだが、とある場所を旅していた際、彼女に似た人物を見かけたとの事、となりにはオレンジ髪の男性が立っていたようだが、詳細不明である。
 エミリアはアルスマの後、異世界に戻り、色々と苦労をしているようであり、疲れた様子を見せていた。
 メイプルはアルスマの後、相変わらずゲーム生活を謳歌しているようで、ルナに対して楽し気な様子を見せていた。
 キサラはアルスマの後もI&S事務所を経営しているようで、変わらずD災害の続くベイロンシティで悪魔と戦っているようだ。
 R-GUNことイングラム・プリスケンは現在、SRXチームの教官として活動しているようだが、何か怪しい雰囲気を感じたとルナは語っている。

「以上、長くなったけど、アルスマファイター全員のその後だよ!」
「……何か、あんま変わってなかったり、かなり老けてたり、みんな大変だな……」
「本当、驚きです……」

 ルナから聞かされた事実に、翼とヴェローナは唖然とする。
 もしもう一度彼等と出会ったら誰が誰だか分からなくなっている可能性も高いだろう、時の流れは残酷だと感じた。

「何人か行方不明の人もいたんだけど、基本的にみんな元気そうだったから問題ないと思うよ!」
「ま、ほとんどが元気そうで何よりだ!」

 ルナとカイトは唖然とする二人を無理矢理元気づけようと明るく接する。
 すると、このタイミングで気を失っていた少女が目を覚ます。

「な、何ですかこれ!?」
「気が付いたみたいだな、悪いが、暴れられては困るから、縛らせてもらったよ」

 翼の言葉を聞いた少女は、観念したのか暴れる様子を見せなかった。
 その様子を見て翼は安堵し、少女に詳しい話を聞く。

「じゃあ、質問させてもらうぞ、現在、色々な世界で次元の歪みが発生し、データユニットが多数出現して各地に被害を出している、そして君は、その次元の歪みから出現した……君は、各地で発生している次元の歪みと何か関係性があるのか?」

 しかし、翼の質問に少女は答えようとしない。
 翼はため息をつき、質問を変える。

「じゃあ、質問を変えるよ、君の名前は? そして所属は?」
「……ルミナ・シルヴァリス、所属は答えられない……」
「ルミナって言うのか、所属を答えられない理由は?」
「……トップシークレット、一つだけ答えるなら、私は末端の兵士に過ぎないから」

 翼とルミナの会話を聞き、カイトとルナは驚愕する。
 ルミナは戦った感じ、そこそこ強かった。
 彼女が末端の兵士と言う事は、それを支配する存在は相当な力を持っている可能性があると言う事だ。

「翼くん、どうする? 情報が少なすぎるよ、拷問でもする?」
「いや、流石に拷問は酷すぎるからな……でも、一つ分かった事があるよ、ルミナの所属する組織は、かなり規模の大きな組織って事だ、それも、多次元に侵略の手を伸ばせる組織」

 ルナは翼の言葉を聞き、固唾を飲む。

「多次元に侵略の手を伸ばす……まるで別次元の地球で戦ったフィーニスみたいだな」
「組織の規模は分からないけど、一度しっかり対策を取った方がいいだろうな」

 カイトと翼は強大な敵の襲来を察知し、戦う事を決意する。
 その時、突然トレーニングルームに次元の歪みが生じた。
 突然の出来事に戦闘態勢を取る翼たち。
 しかし、次元の歪みから現れたのは、彼等のよく知る人物達であった。
 次元の歪みから現れたのは、ドラゴニュート、サンシロウ、撃、シン、エイト、遊戯、アリア、セリカ、悟空、イヴ、トレイン、キサラであり、ドラゴニュートの隣には初めて見る少女もいた。

「よっ、みんな久しぶり!」
「ドラゴニュートさん! それにみんな! どうして!?」
「実はカイスマ界のマスターゴッドにアルスマ界の危機を知らされてな……連れてこれそうな奴に招集をかけてこうして集まってもらったってわけだ、まあ、大半が戦いを辞めてたり、忙しかったり、行方不明だったりで、呼べる連中が少なかったが……」

 ドラゴニュートは翼の問いに、アルスマ時代の時の様に明るく返答する。
 ドラゴニュートはアルスマ時代の時は既に成人であった為、声が少し低くなった事と、髪が腰の辺りまで伸びている事以外、変化はなかったが、一番変化があったのはその服装である。
 以前は騎士服みたいな服装であったが、何があったのか全身黒一色で、黒のロングコートを着込んでいた。
 もしかしたら優香の死をきっかけに何かあったのかもしれないが、そこは敢えて聞かない事にした。

「まあ、でもわいは何とか来てやったで! ほれ、お土産にわいの作った関西最強のたこ焼きも持ってきたわ!」

 サンシロウは髪が少し伸びた以外は全く変化がなく、翼たちは唖然としていた。
 翼はサンシロウの作ったたこ焼きを一口食べたが、驚くほど普通であり、これで関西最強かと思った。

「宇宙刑事たるもの、アルスマ界の危機には駆け付ける必要があるからな、こういうの、次元を超えて出張中だ! って言うんだろうな」
「マスターゴッドが急ごしらえとは言え、転送システムを作ってくれたから、何とか俺は来れたけど、不在な人も多いんだな……」
「それにしても、あんたたち結構年取ったわね、時の流れが違うのかしら?」
「賞金が貰えるかは分からないけど、来てあげたんだから、感謝しなさいよね!」
「俺は賞金が貰えなくても問題ないぜ、世話になった借りを返さないといけないしな!」
「で、またスヴェンは置いてけぼり」
「あたしもお世話になったお返しをしないといけないからね、早くシュウくんに会いたいから、邪魔する奴は全員蹴散らしてあげる!」

 撃、シン、アリア、セリカ、トレイン、イヴ、キサラが口々に話す。
 見知った顔が当時と同じ姿で並ぶ中、一際目を惹くのが、悟空であった。
 何と、子供の姿になっており、道着の色も青になっているのだ。

「あの、悟空さんは一体何があったの?」
「ん? まあちょっと色々あってな、子供の姿に戻っちまったんだ、ま、気にするな、ちゃんと戦えっから!」
「私が最後に会った時は大人だったのに……ほんとに何があったの……?」

 悟空の見た目の変化に、ルナは戸惑い、頭を抱える。
 
「やあ、久しぶりだね、翼くん、大きくなったね」
「翼くん、久しぶり! と言っても、もうボク達より年上かな?」
「エイト、遊戯、また会えて嬉しいよ、俺はもう22になったよ、二人は……相変わらずだな」

 エイト、遊戯という親友と再会を果たした翼。
 翼はまた出会えた親友を前に、涙を流す。

「僕はあの後、本家の大乱闘に参加してたんだけど、色んな世界の強い人と戦えてなかなかいい経験になったよ」
「ボクも、色んな決闘者(デュエリスト)とデュエルをして、メキメキとデュエルの腕前を上げたよ、もう一人のボクはもう、いないけどね……」

 エイトと遊戯の言葉を聞いて、二人もそれぞれいろんな経験をしたんだと察する。
 会えなかった期間も、自分達はいろんな経験をして強くなったんだと実感した。

「翼くん、僕達もこの戦い、手を貸すよ! 翼くんがピンチな今、大乱闘どころじゃないと思ってね、僕だけは他の勇者に変わってもらう事でここに来れたんだ」
「今のボクがどこまで戦えるか分からないけど、ボクも頑張る! だから一緒に戦おう!」
「ありがとう、二人共!」

 翼、エイト、遊戯の三人は拳を合わせ、共に戦うと強く誓った。

「ところでドラゴニュート、そこにいる女の人は誰だ?」
「ん? ああ、この子は俺の仲間のフレア・アストレアだ、元の世界でもドラコとかレクシアとか色んな仲間がいたんだけどな……」

 ドラゴニュートは悲し気な表情で俯く。

「優香は魔物に食われて死ぬし、ドラコとダークドラコはクローン故の寿命が解決できずに死んで、ダークドラゴニュートはダークドラコを失った悲しみを俺にぶつけて、最後は俺が戦いに勝った事でダークドラゴニュートも死んだ、レクシアはとある世界で騎士団の教官をやる事になったから、今はフレアと二人旅状態なんだ……」

 ドラゴニュートの話を聞き、カイトは俯き、涙を流す。

「ドラゴニュート……いくら何でも悲しすぎるだろ……!」
「ああ、だから俺は失った命の悲しみを背負う形で黒衣を身に纏ってるんだよ、だからこそ、お前達にはこれ以上何も失わせない、だから戦うと決めたんだ」
「ドラゴニュート……お前は強いな……」

 涙を流すカイトの前に、キラキラとした長い銀髪と、桃色の瞳をしたフレアが立つ。
 頭には銀のティアラが飾られ、青い宝石の埋め込まれた白いドレスを着た少女。
 彼女の存在は、まるでドラゴニュートの心の闇を照らす光の様な存在に見えた。

「フレア・アストレアです、ドラゴニュートさんから皆さんのお話は聞かされていただいております、私がどこまで戦えるか分かりませんが、努力はさせていただきます」

 フレアはぺこりとお辞儀をし、他の仲間は各自「よろしく」と返す。
 ここに今、かつてのアルスマメンバーが揃い、戦う準備は整った。

少女兵士の聖夜の休戦

 私の名前はアリア・クリスティナ、とある国の少女兵士で、年は17。
 その日の私は戦場の最前線となる雪深い山岳地帯を、大型の対機動兵器バズーカを持って駆け抜けていた。
 未来の戦場はAI制御された機動兵器が主流で、私達のような人間の兵士は最前線で戦わされる、実質特攻のような扱いをされている。
 人同士の殺し合いは主流ではなく、機械同士が破壊し合うのが未来の戦場だ。
 これがAI技術が発達した成れの果てである。

 私は敵の追っ手から何とか逃げ切り、小さな洞穴の中へと逃げ込む。
 外は猛吹雪だ、寒さでAIのセンサーも狂って私を見つけられずにいるし、何より肌寒くて凍死しそうだ。
 何とか寒さを凌がないと、戦いどころではない。

「ここでしばらく休むとしましょう」

 私がそう呟いたその時、洞穴の奥からガサッという音がした。
 敵がいるかもしれないと、私は腰のホルスターの拳銃を抜く。

「誰かいるの? 出てきて!」

 私は寒さでかじかむ指を、トリガーに当てる。
 もしこれが敵兵だったら、この瞬間は生きるか死ぬかだ。
 だが、戦いは起こらず、洞穴の奥からは一人の少女が銃を向けたまま姿を現す。
 とても鮮やかなコバルトブルーの髪をした少女。
 瞳は綺麗な銀、兵士とは思えない整った顔立ち、これで私は察した。

「あなた、敵国の遺伝子操作兵士ね」
「……はい、セレスティア・ルナ・エデンと言います、年は16、エデン計画第3世代型人造人間、それが私です」

 私達が今敵対している敵国は、AI技術だけではなく、遺伝子操作技術も発達しており、どの兵士も超人の様な身体能力をしている。
 今、この場で戦闘になったら、勝てない!
 しかし、彼女は銃を降ろした。

「……何のつもり?」
「ここは一時休戦といきませんか? 今日はクリスマスですし、ここで会ったのも何かの縁です、吹雪が止むまででも、休戦しませんか?」

 確かに、この場で彼女と戦っては間違いなく殺される。
 私は少しでも生き延びたい。
 なら、ここは素直に要求を呑むしかないと、私は感じた。

「……分かったわ、一時休戦といきましょう」

 私と彼女は二人寄り添って洞窟の奥で毛布を被り、暖を取った。
 しばらく無言の状態が続いたが、彼女の方から私に話しかけてきた。

「あなた、お名前は何というのですか?」
「……アリア、アリア・クリスティナよ」
「アリアですか、では、私の事はセレと呼んでください」

 そう言ってセレは貝殻を手渡してきた。

「これは……?」
「クリスマスプレゼントです、言ったでしょう? 今日はクリスマスだと、だから、プレゼント交換しましょう」
「プレゼント交換? そうね……これでもいいかしら?」

 私は特に手渡せるものがなかったので、空薬莢を手渡した。

「まあ、何とも物騒なクリスマスプレゼントですね、でも、嬉しいです、私、クリスマスプレゼントを貰うのは初めてですので」

 私達はプレゼントを交換し、私は貝殻を空薬莢の入っていた胸のポーチに入れる。
 一方のセレは空薬莢を笑顔で眺めていた。

「……それ、そんなに嬉しいの?」
「はい、それはもう、私は戦う為に生まれた人造人間、プレゼントなんてものは貰った事がありませんし、クリスマスを祝った事もありません、ですが、ずっと興味があったのです、こうしてプレゼントを貰う事は、とても素晴らしい事なのですね!」

 私はふと過去の事を思い出す。
 孤児院育ちの私は、一応孤児院でクリスマスを祝っていた。
 その後、軍に志願してからはクリスマスを祝う事はなくなったが、セレの姿を見て思い出した、幼い頃の私は確かにクリスマスを楽しんでいたと。

「ねえ、あなたは何でそんなにクリスマスの興味があるの?」
「クリスマスだけではございませんよ、正月にハロウィンなど、色々興味があります、何で興味があるかと聞かれると……何ででしょうね、よく分かりません」

 セレは私に微笑みかけ、私の髪を触る。

「な、何?」
「この金髪と緑の瞳は、天然ですよね?」
「天然だけど……」
「とても綺麗です、遺伝子操作などしなくても、人はこんな美しいものを生み出せるのに、何故遺伝子操作するのでしょうか……」

 セレの言う事ももっともである。
 今の人類は遺伝子操作にAIと、人間の科学で生み出した技術ばかりに頼りすぎている。
 結果、私の様に普通に生まれた人間はゴミの様に使い捨てられる。
 これは自然の摂理に反している、そんな気がする。

「アリアさん、私はこんな戦争、無意味だと思うのです、だって、私とアリアさんは敵同士なのに仲良くなれました、人間は戦争などしなくとも、分かり合える、私はそう思っています」
「セレ……」
「アリアさん、私はあなたと出会えて、とても嬉しいです、私達は敵同士ですし、吹雪が止んだら私達は戦場に戻りますが、私達はずっと、友人同士ですよね?」

 セレの言葉はとても純粋であった。
 だが、戦場ではそんな甘い考えは許されない。
 一歩の油断が命取りになるからだ。

「セレ……残念だけど、私達はこれが終わったら敵同士に戻るよ」
「あら、それは何故です?」
「決まってるでしょ! 私達は敵同士、今は休戦中だけど、私達は始まった理由さえよく分からない国同士の戦争に駆り出されて戦っている! そんな中で油断したら、死ぬようなものだよ!」

 私の声が洞穴の中に響く。
 セレは私の言葉を聞き、しゅんとした仕草を見せる。

「確かにそうですね……ごめんなさい、アリアさん……ですが、アリアさんから貰ったこの空薬莢、ずっと大事にします、だからアリアさんもその貝殻、大切にしてくださいね」
「勿論、ところでこれはお守りか何か?」
「はい、それは私が初めて外出が許された時に海で拾ったものです」
「そんな大切な物、貰っちゃっていいの?」
「ええ、構いません、私はプレゼント交換ができて満足ですので、アリアさんこそ、この空薬莢には何か思い出が?」
「それは私がお守り代わりに磨いて綺麗にした空薬莢よ、大した物じゃないけど……」
「いえいえ、とても嬉しいです! ありがとうございます!」

 私達がそんな話をしていると、丁度吹雪が止み始めていた。
 ひと時の休息は終わりをつげ、これで私達は再び敵同士、また戦場に戻らないといけない。
 セレは毛布をしまい、一足先に洞穴の入口へと向かう。

「アリアさん、色々とありがとうございました、この空薬莢、大事にいたします、またどこかで出会えると、嬉しいですね」
「そうだね、セレも元気でね、いつかまた会おうね」
「はい、では達者で」

 セレは私に一礼し、洞穴の外に出る。
 刹那、セレの居た場所に一発の砲弾が着弾し、爆炎が上がる。
 私が慌てて洞穴の外に出ると、そこには味方の機動兵器が展開されていた。
 無人兵器に、セレは殺された。
 だが、セレとは既に敵同士、なのに、この胸が張り裂けそうな気分は一体何なのか……。
 私は雪の上で膝を付くと、足元に何か光るものが転がっていた。
 それは、私がセレに渡した空薬莢、クリスマスプレゼントとして渡し、セレが心の底から喜んでいた物だ。
 私はその空薬莢を掌に包み込むと、目から涙がこぼれ落ちる。

「だから……私達は敵同士って言ったんだ……戦争は理不尽に人が死ぬから……なのに……敵のはずのセレが死んで……私はどうしてこんなに泣いているんだよ……」

 私はその場で泣き続け、空薬莢を墓標代わりに土の中に埋める。
 それからの事はよく覚えていない。
 気付けば自軍のキャンプに戻って、そしたら停戦協定が結ばれてて、私は軍の個室ベッドで眠りについてて、そして今、この文章を書いている。
 今思い返してみても、あのセレという少女は不思議な少女であった。
 あんな優しい子が目の前で死んだ事はとてもショックだ、だから私は、人が戦争で死ぬなんて事は、理不尽な事だと感じたし、とても耐えられない。
 私は軍人、だけどこれからはもうセレみたいな子が死なないよう、二度と戦争が起きないように、自分にできる事を精一杯したいと思っている。
 それに、セレの話を聞く限り、あちらの国はクリスマス等といった行事を知らないようだ。
 なら、私のする事は決まっている、次に控える行事の正月を、あちらの国で行う、それをきっとセレも望んでいるだろう。
 私はこの年のクリスマスに起きたこの悲しい出来事を、未だに忘れられない。
 だから私はここでセレに誓う、二度と戦争のない優しい世界にすると。

『アリア・クリスティナ』著

「私の見た戦争日記」西暦2235年12月27日より抜粋

Black Agent 第1話(銃×剣のエージェントのパイロット版)

※本作は2022年に執筆した銃×剣のエージェントのパイロット版となる作品です。2020年に1話のみ執筆し、奇跡的に現存していた為、ここに掲載致します。続きを執筆する予定は一切ない為、ご了承ください。オリジナリティを尊重してそのまま掲載します。

 

 

 

月明りの真下に連なる夜の街並み。

日中ほどではないものの、にぎやかだ。

そして、その街の中を歩く人々、私もその一人だ。

私の名前は初瀬千初(はつせちはつ)、22歳の女性だ。

ただし、私の職業は暗殺者、つまり殺し屋だ。

普段は一般人になりすまし、ミッションがあればすぐさま現場に向かい、人を殺す。

そうしてお金をもらっている。

でも、私は悪い人間しか殺さない、いい人間は殺さない暗殺者だ。

時代は22世紀になり、暗殺者は取り締まられるようになった、

けど、暗殺者は職業になって、一種の軍隊のようなものになり、

相手の国の要人を殺したり、スパイのような行動をとって情報を奪ったりなど、

工作員のような扱いになった。

以降、暗殺者は西暦2120年現在もひっそりと活動している。

そこで、私の携帯が鳴った。職場の上司からだ。

携帯電話もこの時代になると、

情報が奪われる可能性が高い、だから暗殺者の使う携帯は特別仕様で、

セキュリティが強化されている。

「はい、千初です、ミッションですか?」

私はいつも通り応答する。

「千初、お前、パートナーが欲しくないか?」

え?パートナー?確かに今までは一人でやってきたけどさ、

う~ん、でも、いた方がいいよなぁ、一人じゃ限界があるし…

「まぁ、欲しいと言われたら欲しいですけど…

と、言うかどうしてそんな話になったんですか?もしかして、私だけじゃ不満ですか?」

私が思った事を口にしたら、上司から思いがけない返事が来た。

「いや、お前の使用武器は銃だろ?しかもお前近接戦闘できねーじゃん、

お前に死なれたらウチの職場は暗殺者がいなくなるからさ、

そこで新しい暗殺者を募集したら、丁度来たわけよ、近接戦闘できる奴が」

「へぇ~、私の後輩で、近接戦闘が得意な人ですか~、

私もとうとう先輩になるんですね…嬉しいです」

確かに、私は格闘などは苦手で、武器はベレッタやグロックなどの拳銃。

いくら自分でカスタマイズした拳銃を扱う私でも、近接戦闘ができなければ、

接近されたときに命がない、そうなったら困る。

ここで近接戦闘ができる人が来てくれたら私は助かる。

「それで、その人は男性ですか?女性ですか?」

「女性だよ、まあ、今すぐ来てよ、その子が待ってるから」

「了解です、すぐ向かいます」

そう答え、携帯を切った。

「女性か~、怖い人じゃないといいなぁ…」

私はそんなこと言いながら、自分の職場であるUNICORNユニコーン)へと向かった。

UNICORNは表向きは食品メーカーだが、実際は暗殺者を使ってテロなどの

犯罪行為を未然に防ぐ事を目的としている。

でも、UNICORNは暗殺者を扱う会社の中では毎年最下位であり、

そんな理由から入社しようと思う人は全くいないらしい。

私はここに入ったら作ってる食品を毎日自由に食べていいって言うので、

それにつられて入社した。

その時は私以外に暗殺者がおらず、職場の人たちが泣きながら喜んでいた。

ここに入社して1年が経ってようやく私以外の暗殺者が来てくれた。

嬉しいと同時に、私が先輩として頑張れるか不安もある。

でも、私だって1年間頑張ってきたんだ、やらなくちゃ、頑張れ、千初。

そういってUNICORNの前に付いた。

「う~、緊張するなぁ…」

私はUNICORNの社内をエレベーターで上がり、最上階の社長室の前に付く。

ドアをノックし、自分の名前を言う。

「初瀬です、ただいま到着しました」

入りたまえ、と帰ってきたので、恐る恐る入る。

そこには、社長の長田祥匡(おさだただくに)と、水色の長髪と

綺麗な緑色の目が似合う女性がいた。

「おお、千初くん、紹介するよ、彼女がセオドーラ・クロフォードくん、

君の後輩にあたる人物だよ、仲良くしてやってくれ」

社長がそう言うと、セオドーラと呼ばれた女性が自己紹介をした。

「セオドーラだ、歳は22、武器は高周波ブレードを使っている、

暗殺者は初めて2年ほどだ、今まで38人のターゲットを仕留めた、

これからここで世話になる、よろしく頼む。」

何か、凄くクールな人が来たぁぁっ!

しかも暗殺者を初めて2年って、私より長いし…

しかも38人も仕留めてる!?

高周波ブレードでそんなに仕留めてるって、凄いよぉ!

え~と…こう言う時って、どんな風に返せばいいのかな…

「は…初めまして!私、初瀬千初です、私も22歳だから、

あなたと同じだね、武器はベレッタとか、グロックとか、銃を使ってるよ、

暗殺者は初めて1年、今まで仕留めたターゲットは11人、

まだまだあなたには劣るけど、これからよろしくね!」

私が握手するために手を伸ばした、すると、彼女は

「私は必要以上に仲良くする気はない、ただ、ターゲットを仕留める、

ただそれだけだ、それ以外は私には必要ない。」

えぇ…怖いよ、この人…

でも、何とかして仲良くなりたいなぁ…よし!

「ねぇ、セオドーラ…さん?」

「何だ?」

「あなたの事…セオって、呼んでも…いいかな…?」

うわ~、これ、絶対怒られる奴だ…私、やっちゃったかな…?

「構わない、実際、前の職場でもそう呼ばれていた」

え?怒られ…ない?

よかった、一歩前進だ、セオちゃん、案外優しいのかも…

「それじゃ、セオ、ミッションだったら私は近接戦闘が苦手だから、

近接戦闘はよろしくね、私は銃で援護するから」

「了解だ、千初は絶対に死なせはしない、私が守る」

守ってくれるんだ、よかった、頼りになる後輩ができた…

「よし、それじゃあ、君たち2人のチーム名を考えようじゃないか」

社長はいきなりチーム名を提案してきた

「え?チーム名…ですか…?」

私が戸惑うと社長は

「せっかく2人になったんだから、いいんじゃない?

いつまでも千初とセオじゃややこしいじゃないか」

「だったら、私に名案がある、

千初が銃、私が剣を扱うから、銃×剣(ガンソード)はどうだ?」

がん…そーど…か…かっこいいじゃん!

「セオちゃん、それ名案!!」

「よしよし、じゃあ、銃×剣で決定だね、さっそく次の会議で発表するよ」

なーんだ、セオちゃんも結構遊び心あるじゃん。

「セオ、これから私達はチームだから、お互いの足りないところを補って

絶対にミッションを成功させようね、そして、絶対に生きて帰ろう!」

「了解だ、私も死ぬ気はない、生きる」

こうして、私達チーム剣×銃の物語は始まった。

現在連載中の小説「双眼転生闇黒戦記」

どうも、このブログを更新するのは超久しぶりとなります。

今回は、私がアルファポリスで連載している小説「双眼転生闇黒戦記」の宣伝をしたいと思います。

双眼転生闇黒戦記 | ファンタジー小説 | 小説投稿サイトのアルファポリス

この小説は異世界転生×ファンタジー×ロボットと言う、私の好きな要素を詰め込んだ小説でして、現在はちょっと休止していますが、毎回楽しく書けています。

私が執筆した小説を投稿しているこのブログでは、宣伝と言う形で掲載したいと思います。

それと、今後はこのブログで小説を掲載すると同時に、ブログに掲載している小説をリメイクし、他サイトで投稿する予定もあります。

他にも色々やっていく予定ですので、今後もよろしくお願いします。

鋼の騎士カヴァリエーレ

 Dr.バイオの反乱から100年が経った西暦2353年、突如デスティリアと言う異星人が襲来し、人類の半数が死亡した。
 地球統合軍はオートマシンに次ぐ新たな人型機動兵器、ナイトギアを開発し、デスティリアとの全面戦争に突入した。
 そして、物語は地球統合軍の新造戦艦グレイシアが駐留している日本基地から始まる。

「これが噂の新造戦艦グレイシアか……」
「氷みたいに綺麗な船体で凄いっすね、先輩!!」
「ああ、どうやらこの氷みたいな船体は対ビームコーティングがなされていて、デスティリアヒューマノイドやデスティリアファイターのビーム程度なら、軽く弾くらしいぞ」
「凄いっすね! これが地球統合軍の新技術!!」
「いつまでもオートマシンや戦闘機に頼ってもいられないんだろう、100年前に活躍したエレメティアやエレスティア、エレメティオーラも今じゃナイトギアの性能には敵わないしな」

 そんな話をしながら歩いている男女二人の前に、一人の男性が現れた。
 歳は二人より少し上、その男性は二人を見ると、笑顔で話しかけた。

「君が噂の新型ナイトギアのパイロットさんかい? 俺はステイツ・ロードウェイ、このグレイシア隊に配属されているステイツ隊の隊長だよ、階級は大尉、よろしくな」
「俺は黒鋼透弥(くろがね とおや)少尉です、ステイツ隊長、これからよろしくお願いします!」
「私はレイフィル・ラティーナ少尉っす、ステイツ隊長、よろしくです!」
「ふぅん、見た感じ、普通のパイロットだけどな……何で君達が新型ナイトギアのパイロットに?」
パイロット適性が一番高かったのが俺達だったんです」
「実際の戦闘ではどうか分からないっすけどね……」

 その時、日本基地に警報が鳴った、デスティリアが接近しているのだ。
 急いでグレイシアのオペレーター、リーリス・レインディーが日本基地にデスティリアが接近している事を伝える。

「日本基地にデスティリアが接近しています! 総員、第一種戦闘配置!!」
「だ、そうだ、透弥少尉、レイフィル少尉、新型ナイトギアはグレイシアの格納庫にある、いけるな?」
「「はい!!」」

 透弥とレイフィルは格納庫に向かい、新型ナイトギア、カヴァリエーレと、新型支援戦闘機、エアレイドと対峙する。

「これが……俺達の機体……」
「先輩、いけますね?」
「勿論だ!!」

 透弥とレイフィルはコックピットに乗り込むと、コンソールを操作し、発進準備を完了した。

「レイフィル、この日本基地にはナイトギアより旧式のオートマシンであるバーテルの改修機、バーテライトしか配備されてない、デスティリアと戦うにはあまりに無謀だ、だから、俺達でできる限りのことはするぞ!!」
「了解っす! 先輩!!」
「黒鋼透弥、カヴァリエーレ、行きます!!」
「レイフィル・ラティーナ、エアレイド、行くっす!!」

 カヴァリエーレとエアレイドはそれぞれ出撃し、戦場の空へと飛び立った。
 ナイトギアはオートマシンと違い、基本的に飛行する事ができる。
 戦場には既にバーテライトが複数待機していた。
 かつてDr.バイオの反乱で活躍したエレメティアやエレスティア、エレメティオーラの戦闘データを使って改修されたこのバーテライトだが、デスティリアの機動兵器やナイトギアに比べると、その性能差は歴然である。
 カヴァリエーレとエアレイドは日本基地を背にしてデスティリアの襲来に待機した。
 すると、デスティリアの部隊が襲撃してきた。
 デスティリアヒューマノイドとデスティリアファイターが複数機、デスティリア艦が三隻、そして、デスティリアコマンドヒューマノイドが一機であった。

「まずいな、指揮官型が一機いる、俺達で相手できるか……」
「大丈夫っすよ先輩! 行くっすよ!!」

 そう言ってレイフィルの操縦するエアレイドはホーミングミサイルを放った。
 ホーミングミサイルはデスティリアの部隊に命中し、数機が撃破された。
 続けてカヴァリエーレもデスティリアの部隊に突撃し、脚部に内蔵されたビームセイバーの鞘を取り、ビームの刃を生成すると、目の前にいるデスティリアヒューマノイドを次から次へと切り裂いて撃破した。
 続けて、腰部に装備されたライフル型の武器、ビームカノンを手に取り、遠距離からデスティリア艦に攻撃を仕掛け、一隻撃沈した。

「よし! 戦えてる!」
「前に出すぎるなよ、透弥少尉!」

 後方からステイツの操縦するカーフカスタムと、ステイツ隊のメンバーであるセレーナ・ウェルネス、グロウ・ドーレス、ネフェレー・フィアーズ、リュイ・ウィークス、アスティ・ニューイーの操縦するカーフが、カヴァリエーレの援護に現れた。
 カーフ部隊は一斉にビームカノンを撃ってデスティリア部隊を撃破。
 数が減った所をステイツの操縦するカーフカスタムの主武装であるビームスナイパーライフルの一撃で、デスティリア艦の動力部を撃ち抜き、撃沈させた。

「凄い……! 統合軍の量産機であるカーフのカスタム機であそこまで……!!」
「ほらほら、ぼさっとするなよ!」
「りょ、了解……!!」

 カヴァリエーレとエアレイドは同時にホーミングミサイルを放ち、再びデスティリア部隊に攻撃をかけた。
 だが、デスティリア艦の中からまだ多くのデスティリア部隊が出撃していた。
 この状況を打破する為、透弥はある策を考えた。

「グレイシア、バスターカノンを射出してください!」
「先輩、もしかして……」
「ああ、デスティリア部隊を一掃する!」

 直後、グレイシアのカタパルトから大型のビーム兵器、バスターカノンが射出され、カヴァリエーレはそれを装備した。
 そして、銃口をデスティリア部隊及びデスティリア艦に向けると、トリガーを引き、強力なビームを放ってデスティリア部隊及びデスティリア艦を消滅させた。

「凄いっすね、先輩!!」
「いや、このバスターカノンのお陰さ」

 すると、残ったデスティリアコマンドヒューマノイドが両腕のロングハンドソードでカヴァリエーレに斬りかかった。
 カヴァリエーレは攻撃を回避し、バスターカノンをアスティの操縦するカーフに手渡し、ビームセイバーでロングハンドソードを受け止めた。
 そして、蹴りを放ってデスティリアコマンドヒューマノイドの体勢を崩させると、ビームセイバーをデスティリアコマンドヒューマノイドの腹部に突き刺し、撃破した。
 こうして、日本基地に現れたデスティリア部隊を撃破した事で、透弥とレイフィルの初任務は無事に終了、日本基地に被害や犠牲者はなかった。

「任務終了だな、各機、グレイシアに帰艦するぞ」

 その後、格納庫に戻った透弥とレイフィルは、ステイツ隊の面々と共に初任務の成功を祝っていた。
 日本基地での戦いを終えたグレイシア隊は、かつてエレメティアやエレスティアが活躍したウィットタウンへ向かおうとしていた。
 現在、ウィットタウンは統合軍基地が置かれ、定期的にデスティリアの襲撃に遭っている。
 グレイシア隊は、その支援に向かうのだ。

「透弥少尉、レイフィル少尉、ちょっといいか?」
「何でしょうか? ステイツ隊長」
「二人は何で統合軍に志願したんだ?」
「俺とレイフィルは、高校時代、同じ高校に通ってたんです、ですが、俺達の住むプラムシティがデスティリアの襲撃に遭った際、家族も、友人もみんな殺されてしまって……」
「だから、私達は同じような境遇の人を作らない為に戦うと決意したんす!」
「そうか……優しいんだな、君達は……今回の君達の戦いで、救われた人はきっといるはずさ」
「そう言ってもらえて嬉しいです」

 その時、透弥とレイフィルに近づく一人の人物がいた。
 服装は統合軍の軍服ではなく、布切れの様な服を着た少女であり、その見た目はレイフィルに酷似していた。
 だが、髪の色はピンクではなく紫で、瞳も青ではなく紫であった為、完全に一緒ではなかった。
 謎の人物を前に、ステイツ隊の面々は銃口を向けた。

「待って、私は戦うつもりはないの」
「この艦に民間人は乗ってないはずだが? お前、何者だ?」
「私はさっき銀色のナイトギアに撃墜された指揮官型のデスティリアだよ」
「見え透いた嘘を付くな」
「嘘じゃないよ、私達はゲル状になることができてね、さっき撃破された際に体の一部をこの艦に付着させたの、で、そこにいる女の子に擬態したんだ」

 急にデスティリアを名乗る少女が現れた事で、格納庫には緊張が走った。
 困惑するステイツ隊の面々をよそに、透弥は彼女に一つ質問をした。

「君がこの艦に来た目的は何なんだ?」
「私は破壊と殺戮しか知らないデスティリアの中でも変わり者でね、人間の心に興味があるの、だからあなた達と接触した、駄目かな?」
「どうします? ステイツ隊長」
「そうだな……悪い奴ではなさそうだし、透弥少尉とレイフィル少尉と言う監視を付ける条件付きでこの艦の移動を許可しよう、だが、動力部だけは進入禁止だ」
「良かったっすね、ティリアちゃん!」
「ティリア……?」
「デスティリアから取ってティリアっす、どうっすか?」
「ティリア……いい名前……嬉しい……」

 グレイシアがウィットタウンへ移動を開始してから数日、デスティリアとの接触は特になく、無事にウィットタウンへ到着した。
 ウィットタウンは戦いに次ぐ戦いで疲弊しており、残存戦力も少なかった。
 そこに、デスティリアの大軍が接近しており、グレイシア隊は、全機出撃した。
 今回はデスティリアコマンドヒューマノイドが三機おり、部隊も三部隊、前回の三倍と大勢力で襲撃してきた。
 ステイツ隊は一斉攻撃を開始し、カヴァリエーレはホーミングミサイルを放ちつつ、バスターカノンで敵戦力を一気に減らし、エアレイドもかく乱しながらホーミングミサイルやビームシューターを放ってデスティリア部隊を攻撃。
 新造戦艦グレイシアも対空機銃、ホーミングミサイル、艦首大型ミサイル、二連ビーム砲などでデスティリア部隊を攻撃する等、努力を見せていたものの、デスティリア部隊は予想以上に多く、苦戦を強いられていた。
 ブリッジにいる艦長のシュナ・フレイニールは、この状況の打破ををする為、副官のレイト・ルーカスと共に作戦を練っていた。

「レイト中尉、この状況、君ならどうするべきだと思う?」
「背後にはウィットタウン、正面にはデスティリアの大部隊……撤退すれば多くの犠牲、戦えば勝利の可能性……自分であれば、このまま戦闘を継続しますかね」
「奇遇だな、私も同じ意見だ、掛けてみるか、あの新型機に……」

 その新型機のカヴァリエーレとエアレイドの二機は、デスティリアの大部隊に苦戦していた。
 カヴァリエーレはバスターカノン等の射撃武器の残弾はゼロでビームセイバーで応戦、エアレイドも弾切れでひたすら飛び回っていた。
 デスティリアの侵攻を許しているこの現状を打破する為、透弥とレイフィルはある決断をする。

「……レイフィル、あれをやる時が来たみたいだな」
「……そうっすね、でも、あれは……!!」
「ああ、パイロットにかかるGが大きいんだよな、でも、四の五の言ってられない!!」
「……分かったっす、やりますよ!!」
「OK!!」
「「ネオ・ナイト・フォーメーション!! 」」

 二人の合図で、カヴァリエーレの背部にエアレイドが合体し、ネオカヴァリエーレへ合体完了した。
 ただ支援戦闘機が背部に合体するだけと言う、エレメティオーラに比べるとシンプルな合体ではあるが、出力、機動力が上がっており、飛行能力も上昇している。
 性能に関しては全ナイトギアを上回っており、その性能は未知数である。

「これなら行ける!!」

 ネオカヴァリエーレは、出力の上がったビームセイバーで巨大なビームの刃を生成し、デスティリアの大部隊を一気に叩き斬った。
 そして、猛スピードで飛行し、デスティリア艦を次から次へと叩き斬り、全艦撃沈させ、増援を遮断。
 残ったデスティリアコマンドヒューマノイド3機の頭部ビームを全て回避したネオカヴァリエーレは、巨大なビームの刃で三機まとめて叩き斬った。
 こうして、ウィットタウンに出現したデスティリアの大部隊は壊滅した。

「やりましたね! 先輩!!」
「ああ……でも、体が痛いぜ……」
「先輩! 身体が痛むんすか? 後で痛い所舐めてあげますからね~」
「やめてくれ……余計傷が痛む……」

 その後、透弥はGで身体が傷ついた為、しばらく医務室行きになる事になり、レイフィルとティリアが付きっきりで看病する事になった。
 透弥の事を溺愛しているレイフィルは、やたらと透弥の食事に自分の唾液を入れようとしていた為、ティリアがその度に止めていた。
 幸い、透弥の身体の治りが早かった為、数日で復帰できた。
 それと同時に、次の目的地であるジブラルタル基地にグレイシア隊は到着していた。
 しかし、ジブラルタル基地は既に壊滅しており、生存者は一人もいなかった。
 ジブラルタル基地を壊滅させたのは、データにない新型のデスティリアであった。
 そのデスティリアの姿を見たティリアは怯えていた。

「ティリアちゃん、どうしたっす?」
「あ……あれば……幹部級のデスティリアだよ……指揮官級の五倍の力を持ってるの……あなた達じゃ勝てないっ!! 逃げてっ!!」
「駄目だ……ここで俺達が逃げたら、あいつにもっと多くの人達が殺されてしまうっ!!」

 透弥とレイフィル、ステイツ隊は全機出撃し、幹部級デスティリアを相手取った。
 まず、リュイとグロウの操縦するカーフが幹部級デスティリアに対し、ビームカノンで攻撃を仕掛けた。
 だが、幹部級デスティリアは一瞬で回避し、ロングハンドソードでリュイとグロウの操縦するカーフを叩き斬り、二人の乗るカーフは爆発四散した。

「リュイ!! グロウ!! 貴様! よくも俺の部下を!!」

 ステイツの乗るカーフカスタムは、ビームスナイパーライフルで幹部級デスティリアを狙い撃とうとしたが、一瞬で接近され、ビームスナイパーライフルをロングハンドソードで破壊。
 そのままトドメを刺されそうになったが、危機を察知して既に合体していたネオカヴァリエーレの蹴りに阻まれた。

「ステイツ隊長! 皆さん! こいつの相手は俺がします!!」
「透弥少尉! 無茶だ!!」
「無茶でも、今こいつに立ち向かえるのは俺とレイフィルだけだと思います!!」
「それに私、これ以上みんなに死んでほしくない! 勿論、ティリアちゃんにも!!」

 そう言って、ネオカヴァリエーレは両腕にビームセイバーを取り、幹部級デスティリアと激しく斬り合った。
 少しでも隙を作る為、頭部機関砲を撃ったり、カヴァリエーレとエアレイド双方のホーミングミサイルを放ったりしたものの、幹部級デスティリアは怯みすらしなかった。
 そして、幹部級デスティリアの放った一撃で、ネオカヴァリエーレの左腕とエアレイドの左翼が破壊された。
 続けてネオカヴァリエーレの右脚も斬り落とされてしまったが、攻撃後の隙を突いて幹部級デスティリアの右腕を切り落とした。
 だが、幹部級デスティリアの次の攻撃で左足も斬り落とされてしまい、後がないネオカヴァリエーレ。
 透弥は相打ち覚悟で幹部級デスティリアに突進すると、右腕のビームセイバーを幹部級デスティリアに突き刺し、出力を最大にした。
 だが、カヴァリエーレの腹部及びエアレイドにも幹部級デスティリアのロングハンドソードが突き刺さっており、ネオカヴァリエーレは爆発寸前であった。

「「脱……出っ!!」」

 透弥はカヴァリエーレの脱出装置も兼ねた小型戦闘機、ナイトファイターでエアレイドを押し出す形で脱出。
 レイフィルもエアレイドのコックピットブロックから脱出し、パラシュートを開いて降下している所をセレーナの操縦するカーフに拾われた。
 直後、カヴァリエーレとエアレイドは幹部級デスティリアと共に爆発四散し、運命を共にした。

「カヴァリエーレ……」
「エアレイド……」
「「ありがとう……」」

 その後、格納庫に帰ってきた透弥達。
 戦友を失って悲しむステイツ隊の面々だったが、ステイツは透弥を殴り飛ばした。

「ステイツ隊長! 先輩に何するんすか!?」
「お前、相打ちになってでも敵の幹部級を倒そうとしただろ?」
「そうでもしないと倒せないと思ったんです……」
「馬鹿野郎っ!! 結果的に倒せたから良かったものの、もし死んでたらどうする気だったんだ!! どれだけ多くの人が悲しむと思ってるんだ!!」
「……すみません、俺、カヴァリエーレやネオカヴァリエーレを手に入れて、デスティリアと互角に戦えるって浮かれてたのかもしれません……俺は今まで機体の性能に助けられてたんです……もし俺がカーフに乗ってたら、とっくに死んでました……それに俺、レイフィルまで相打ちに巻き込もうとして……俺、ナイトギアパイロット失格だ……」
「大丈夫っすよ先輩……泣かないでくださいよ……私、先輩と死ぬなら本望ですから……」
「本望なのかよ……まあいい、透弥少尉、今後は二度と今回みたいな戦いはするなよ、いいな」
「……はい……」

 ジブラルタル基地での戦いから数日後、デスティリアの襲撃は特になく、平和だった。
 そんなある日、グレイシア隊はプラムシティに急行する事になった。
 このプラムシティはかつて宇宙人災害が多発していた地域であり、現在は統合軍基地が置かれ、宇宙人は撤退している。
 そんなプラムシティの統合軍基地に、カヴァリエーレ及びエアレイドの後継機が届いたとの報告があった。
 何でもカヴァリエーレとエアレイドの後継機は、カヴァリエーレとエアレイドがロールアウトした時には既にほぼ完成していたらしい。
 だが、より完璧に完成させる為には、戦闘データが足りず、未完成となっていたのだ。
 それが今回、ナイトファイターの学習コンピューターに蓄積された戦闘データのお陰で完成し、なおかつ後継機に搭載されているブラックボックスも正常に作動しているようだ。
 このブラックボックスはかつてプラムシティに襲来したアプリコット星人の円盤の中から綺麗な状態で発見された装置であり、これが搭載されている後継機は決してエネルギー切れする事が無いのだと言う。
 グレイシア隊の面々は、その後継機を見る為、プラムシティ基地の地下格納庫へ向かった。
 そこには、最終整備の為に出向いていたグレイシア隊のメカニック、フル・マグントがいた。

「おお、シュナ艦長、よく来たな!」
「ご苦労様です、フル整備長、例の品は完成したようですね」
「勿論! それがこれじゃ!」

 そこにあったのは、カヴァリエーレとエアレイドを発展させた見た目の機体、カヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIであった。

「これは……カヴァリエーレとエアレイド!? でも、似ているけど違う!!」
「若造、これはカヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIじゃ、以前のに比べて性能は三倍に跳ね上がっておる、対G加工されておるから負荷もかからんし、更に、合体すればその性能は段違いの性能じゃ! あの幹部級すらも圧倒するじゃろうて」
「あの幹部級すらも……ですか……」
「そう言えば、お主らの名前は黒鋼透弥とレイフィル・ラティーナか……なるほど、あの黒鋼博士とラティーナ博士のご子息か……」
「俺達の父と母を知ってるんですか!?」
「ああ、君らのご両親は研究者だったね、彼等は有名な研究者で、新型ナイトギアの開発に一番貢献した人物だったよ、彼等が生前、開発途中だったのがカヴァリエーレとエアレイドでね、それを彼等と縁のあったわしら一部の人間が何とか完成まで持って来たんじゃ、透弥くんとレイフィルちゃん、君達は、お父さんとお母さんの平和への願いと共に戦っているんだよ」
「「平和への……願い……」」

 その時、このプラムシティに幹部級デスティリアが三機接近している事が判明した。
 透弥とレイフィルはすぐさま出撃準備を整え、カヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIに乗り込んだ。

(父さん……母さん……俺は……平和の為に戦うよ!!)
(お父さん……お母さん……ずっと私を守ってくれてたんだね……ありがとう……私、頑張る!!)
「カヴァリエーレMkII、黒鋼透弥、行きます!!」
「エアレイドMkII、レイフィル・ラティーナ、行くっす!!」

 二人はプラムシティ基地の地下格納庫から地上へ出撃した。
 そこには、以前苦戦した幹部級デスティリアが三機いた。
 カヴァリエーレMkIIはウイングからビームウイングを展開し、高速で飛行した。
 そして、翼部に装備されたウイングカノンと言うビーム兵器を幹部級デスティリアに放ち、ダメージを与えた。
 続けて、エアレイドMkIIがホーミングミサイルを放ち、幹部級デスティリアを怯ませた所で、合体準備に移った。

「レイフィル、行くぞ!!」
「了解っす、先輩!!」
「「ネオ・ナイト・フォーメーション!!」」

 カヴァリエーレMkIIはウイングを収納し、以前と同じ様に背部にエアレイドMkIIが合体した。
 そして、ネオカヴァリエーレMkIIへと合体完了した。
 出力と機動力が圧倒的に向上しており、非常に高い性能を誇るこの形態には、他のナイトギアにはないネオビームセイバーと言う武装がある。
 エアレイドMkIIのウイングに装着されている剣パーツをネオカヴァリエーレMkIIが手に取る事で、ネオカヴァリエーレの巨大ビームセイバー以上の出力を持つビームセイバーとなる。
 そして、そのビームセイバーは超巨大なビームの刃を生成する事が出来、ネオカヴァリエーレMkIIのその一振りで幹部級デスティリア三機は一撃で叩き斬られた。

「凄い……これが新たな機体の力……」
「凄い力っすね、先輩」
「ああ、これが、俺達の父さんと母さんが残した新たなる力……」

 その後、グレイシアに帰還した透弥とレイフィル。
 デスティリアとの戦いもいよいよ終わりが近づいてきていた。
 デスティリアの攻撃が強力になり、地上での対応が困難になった今、統合軍はデスティリアの本拠地と思われる冥王星に攻め込むことになった。
 透弥たちグレイシア隊の面々も、その作戦に参加する事になった。
 作戦名は、デスティリア討伐作戦、地球人の命運をかけた最終作戦である。
 グレイシア隊の面々は、統合軍のマスドライバーで宇宙に上がり、既に宇宙で待機していた統合軍艦隊と合流した。
 宇宙には統合軍の主力艦であるアダマントが見た事も無い程の艦隊を作っており、その本気ぶりが伺えた。
 機動兵器もカーフや、様々なカスタムがなされたカーフカスタム、旧式のオートマシンであるバーテライト等もあり、これから総力戦になる事は明白であった。
 だが、透弥とレイフィルは初めて来た宇宙に興奮していた。
 この状況で興奮するのはおかしいとは言え、やはり宇宙は誰もが憧れる場所であった。

「凄い…!! これが宇宙…!!」
「先輩! 興奮するっすね!!」
「何だ何だ、君ら宇宙は初めてか」
「はい! 俺、子供の頃から宇宙に行くのが夢だったんで!!」
「私もっす!!」
「そうかそうか、なら折角だし、戦いになるまで十分楽しんでおくんだぞ」
「「はい!!」」

 それから数時間後、デスティリアの大部隊と統合軍艦隊は接触した。
 デスティリアの大部隊も今まで以上の大部隊であり、双方が撃ち合う混戦状態になっていた。
 そんな中、グレイシア隊にも出撃が下った。

「透弥少尉とレイフィル少尉は宇宙は初めてだな、無理はするなよ」
「了解です! 一応、シミュレーターで訓練は受けていますので、何とか頑張ります!!」
「私も、頑張るっす!!」
「OK! じゃ、行くぞ!!」

 グレイシア隊の面々も出撃し、各自、敵と交戦していた。
 その頃、グレイシア艦長のシュナ・フレイニールは、グレイシアの主砲で敵を一掃する作戦を取る事にした。

「これよりグレイシアは主砲を撃つ、リーリス少尉、射線上の友軍に退避命令! コウ少尉、艦を180度回頭させろ!」
「了解! じゃ、少し動きますよ!」
「グレイシアはこれより主砲を撃ちます! 射線上の友軍は退避してください!」

 グレイシアの操舵手であるコウ・タカギが艦首を敵に向けた後、グレイシアの艦首が開き、巨大な砲塔が露わになった。
 そしてそのままエネルギーがチャージされ、主砲の発射態勢が整った。

「主砲、撃て!!」

 グレイシアが主砲を発射すると、巨大なビームにデスティリアファイターやデスティリアヒューマノイド、デスティリア艦が飲み込まれ、蒸発した。
 これにより、多くのデスティリア部隊が撃破され、敵の数は大幅に減少した。

「行けるな……ステイツ隊、俺に続け!!」

 ステイツの合図で、ステイツ隊の面々と、カヴァリエーレMkII、エアレイドMkIIが敵部隊に突入。
 それと同時に、統合軍の部隊も敵の部隊を各自撃破し、戦況は統合軍が優勢になった。
 しかし、デスティリアの部隊は更に第二波、第三波と波状攻撃をかけてきた。
 その数に、徐々に押され始める統合軍。
 グレイシアの主砲でいくらか撃破したが、まだ数は多い。
 そこに、デスティリアの最終兵器であるデスティリア超巨大艦が出現した。
 三千メートルはあるであろうその巨大艦から、無数のデスティリアが出現。
 グレイシアが主砲で超巨大艦を攻撃したが、何と傷一つ付いておらず、超巨大艦はレーザーで辺りを攻撃。
 統合軍はこの状況に混乱し、徐々に押され始めていた。

「まずいぞ……このままでは全滅してしまう……」
「ステイツ隊長、俺とレイフィルがネオカヴァリエーレMkIIに合体して戦います、どれだけ数を減らせるか分からないけど……」
「ああ、頼んだぞ、悪いが今回はネオカヴァリエーレMkIIの力に頼るしかないみたいだ……」

 カヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIが合体してネオカヴァリエーレMkIIになり、ネオビームセイバーでデスティリア部隊の数を一気に減らしたものの、デスティリア巨大艦からは次々と新たなデスティリアが出撃していた。
 更に幹部級デスティリアも複数機現れ、戦場は混乱していた。
 この状況をグレイシアの艦内から見ていたティリアは、彼等を助けたいと思った。

「みんな苦しんでる……みんなはデスティリアである私に優しくしてくれた……今度は私がみんなに優しくする番……!!」

 ティリアの身体は天使によく似たデスティリア、デスティリアエンジェルとなり、戦場に降り立った。
 突然現れた新型のデスティリアに戦場は混乱したが、デスティリアエンジェルはレイピアや羽根型の斬撃遠隔武器、フェザービットで仲間であるはずのデスティリアを攻撃しており、すぐに味方であることが判明した。

「みんな、ここは私に任せて!!」
「その声……ティリアちゃん!?」
「うん! みんなが私に優しくしてくれたように、今度は私がみんなを助ける番だよ!!」
「ありがとう……ティリアちゃん!!」

 デスティリアエンジェルとなったティリアは、フェザービットでデスティリア超巨大艦の一ヵ所に集中的に攻撃をかけ、ようやく一筋の傷をつけた。
 そこに、バスターカノンを装備したネオカヴァリエーレMkIIが、最大出力でバスターカノンを放ち、デスティリア超巨大艦を貫いた。
 そして、デスティリア超巨大艦は内部から爆発四散し、遂に撃破された。
 援軍を失ったデスティリアの残存戦力は、ステイツ隊や統合軍の部隊に殲滅され、遂に全滅した。

「何とか全滅まで持ち込んだみたいだな、グレイシア隊の被害も最小で済んだ、ティリア、統合軍の部隊が壊滅しなくて済んだのは君のお陰だ、ありがとう」
「私はデスティリアだけど、みんなの事が好き、だから、みんなを助けたんだよ」
「ありがとうね、ティリアちゃん! ほら、先輩もお礼言うっす」
「ああ、そうだな、ありがとう、ティリア」
「ふふ、どういたしまして!」

 ティリアの存在は統合軍内でも好意的に受け入れられ、統合軍艦隊はそのまま冥王星へと向かった。
 その移動の最中、グレイシア艦内では最終決戦を前に誰もが武者震いしていた。

「とうとう最終決戦っすね……先輩、この戦いに勝ったら……」
「ストップ! それはフラグだからやめておこうな、レイフィル」
「そ、そうっすね……」
「透弥少尉とレイフィル少尉は本当に仲が良いんだな」
「はい、レイフィルとは高校時代、後輩だったんですけど、割と積極的に構ってきて仲が良かったんですよね」
「そうっすね、執拗に構う私に優しく接してくれたんっす、先輩、あの時は楽しかったっしょ?」
「ああ、楽しかったな、だからこそ、みんなの幸せを守る為に、この戦争を終わらせなくてはいけないんだ!」
「その意気だ、少尉! 必ず勝って帰るぞ!!」
「「はい!!」」

 数日後、冥王星に到着した統合軍艦隊は、全部隊が冥王星に降下し、最後の戦いに臨んだ。
 当然、デスティリアの全戦力が冥王星に集結しており、その数は計り知れなかったが、主力部隊の突入の為、グレイシアの主砲や、統合軍艦隊の艦砲射撃で道は開かれた。

「透弥少尉、レイフィル少尉、こいつらは我々が相手をする、君達はデスティリアの本拠地を攻撃しろ!!」
「「了解!!」」
「透弥、レイフィル、私も行くよ!」
「ああ、一緒に行こう、ティリア!」

 透弥とレイフィルの操縦するカヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIはネオカヴァリエーレMkIIに合体し、ティリアの変身したデスティリアエンジェルと共に冥王星に降下した。
 そこには、異形の怪物の様な見た目をした5000メートルはあるであろうデスティリアの支配者、デスティリアマザーの姿があった。
 デスティリアマザーと透弥たちは対峙し、攻撃を仕掛けようとしたその時、デスティリアマザーは静かに口を開いた。

「よくぞここまで来たな……下等生物たちよ……」
(こいつ……人間の言葉が分かるのか!?)

 老婆の様な声のデスティリアマザーは、RPGの魔王の様な喋り方で、透弥たちに語り掛けた。

「デスティリアの出来損ないであるそいつと共に、この私を殺すつもりか……」
「当たり前だ! お前達は俺達人間を殺して……俺やレイフィルの父さんや母さんも……お前達の攻撃で殺されたんだ!!」
「もうこれ以上、誰も悲しませないっす!!」
「お母さん、これ以上人間を殺すのはやめて!!」

 透弥たちの言葉を聞いたデスティリアマザーは、静かに笑い声をあげた。
 その不気味さに、透弥たちは怯みそうになったが、透弥は冷静に対応し、攻撃の準備を整えていた。

「何がおかしい!?」
「おかしいとも、我々デスティリアにとって、貴様ら人間、いや、この宇宙に住む全ての生命体は我々の狩りの対象なのだ……」
「狩り!? お前達の侵略行動は、ただの狩り!?」
「ああ、そうとも、この宇宙には地球人以外にも、アプリコット星人やエレテル星人、メカニク星人など、様々な知的生命体がいる事は貴様らも知っておろう、だがな、それら知的生命体は全て、我々デスティリアと言う宇宙の支配者の狩りの対象なのだ、貴様らは全て、我々に狩られる為に存在しているのだよ……」

 デスティリアマザーのその言葉を聞いた透弥とレイフィル、ティリアの三人は、怒りで感情が爆発していた。
 今まで地球人を傷つけ、多くの人々の命を奪い、悲しませたのは全てデスティリアの狩りと言う身勝手な理由だった。
 その事を知った透弥たちは、怒りの言葉をデスティリアマザーにぶつけた。

「ふ……ざけるなあぁぁぁぁぁっ!! 俺達は……この宇宙に住む命は……お前らに狩られる為に存在してるんじゃないっ!! みんな懸命に生きているんだ!!」
「そうっす!! みんな頑張って生きてるのに、それを自分達の楽しみの為に狩るなんて……!! 絶対に許せないっす!!」
「お母さん、もうあなたの言いなりにはなりません、この宇宙に住むみんなを、私は守る!!」
「愚かな……この私を殺すつもりか!!」

 デスティリアマザーは巨大な手を振り下ろしたが、ネオカヴァリエーレMkIIとデスティリアエンジェルは回避し、それぞれホーミングミサイルとフェザービットでデスティリアマザーを攻撃した。
 怯んだデスティリアマザーに、ネオカヴァリエーレMkIIはバスターカノンを連続で放った。
 残弾をすべて撃ち尽くすまで攻撃をかけたが、デスティリアマザーはなおも健在であり、倒れる気配がなかった。

「愚かな……我々デスティリアはこの宇宙の支配者ぞ!!」

 デスティリアマザーは全身からレーザーを放った。
 ネオカヴァリエーレMkIIとデスティリアエンジェルは攻撃を回避すると同時に、あの巨大なデスティリアマザーをどうやって倒すか考えていた。

(どうする……? バスターカノンの攻撃に耐えるあの巨体、グレイシアの主砲じゃないと決定打にならないぞ……どうする……? ネオカヴァリエーレMkIIにそんな武装が……)

 透弥はふと、エアレイドMkIIに二本搭載されているネオビームセイバーの事を思い出した。
 このネオビームセイバーは、二本を合体させられそうな構造になっている。
 透弥は一か八か、ネオビームセイバーを合体させてみた。
 すると、合体ネオビームセイバーは超巨大な高出力のビームの刃を生成し、その強力さは透弥のいるコックピット越しに伝わってきていた。

「これなら……行ける……!!」
「そんなオモチャでぇぇぇっ!!!」

 デスティリアマザーは口からレーザーを放ったが、ネオカヴァリエーレMkIIは回避し、合体ネオビームセイバーをデスティリアマザーに振り下ろした。
 巨大なビームの刃はデスティリアマザーを一刀両断にし、何が起こったか分からないデスティリアマザーは驚愕していた。

「な……何だ……!? この私が……敗れる……!?」
「デスティリアマザー、これが命を弄んだお前の最期だ」
「馬鹿な……我々デスティリアは……宇宙の支配者であるぞぉぉぉぉぉっ!!!」

 直後、デスティリアマザーは大爆発を起こして砕け散り、宇宙の支配者気取りの怪物の長は倒された。
 それと同時期に、冥王星付近にいたデスティリアの大部隊も統合軍艦隊によって壊滅し、人類とデスティリアの戦争は、人類側の勝利に終わった。

「終わったんっすね、先輩」
「ああ、終わったんだ、ティリアも戦ってくれてありがとう」
「どういたしまして、私もみんなの役に立てて嬉しいよ」

 デスティリアの長を討伐した統合軍艦隊は無事に地球圏に帰還し、デスティリアを壊滅させたことを伝えた。
 この事はすぐ世界中に伝わり、異星人との戦争が終結した事に誰もが安堵した。
 たまにデスティリアの残党が地球圏に襲来する事はあったものの、すぐに討伐され、やがてデスティリアは現れなくなった。
 そして、全ての戦いが終結して半年後、透弥とレイフィルは結婚式を挙げ、新居で暮らす事になった。
 そんなある日、グレイシア隊の面々が透弥の家に遊びに来た。

「ステイツ隊長にシュナ艦長! それに皆さん、お久しぶりです!」
「やあ、透弥少尉、久しぶりだな」
「グレイシア艦長としての任務は忙しいが、たまにはと思ってな」

 ステイツとシュナ曰く、現在グレイシア隊は各地の復興に着手しているらしく、デスティリアの攻撃が激しかった地域に支援の手を差し伸べているらしい。
 また、透弥とレイフィルの愛機であるカヴァリエーレMkIIとエアレイドMkIIは現在、その高い性能から悪用されない為に統合軍本部のある場所に封印されているとの事。
 デスティリアは壊滅したが、またいつ新たな脅威が訪れるか分からない。
 現在は新婚生活を謳歌している透弥とレイフィルではあるが、またいつの日か軍に復帰する日が来るであろう。

「ところで透弥少尉、ティリアは君の家で引き取っているんだよな?」
「はい、一応養子として預かってます、彼女の事を知る人間はグレイシア隊しかいないので、周りには戦災孤児と伝えてますけど」
「今はこの周辺の散歩に出かけてるっすよ」

 すると、ティリアが透弥の家に帰ってきた。
 ついでに買い物をしてきたのか、手にはコンビニの袋が握られていた。
 ティリアはステイツ達を見るや否や、嬉しそうな表情でステイツの名前を呼んだ。

「ステイツさん! それにみんな!!」
「やあ、お邪魔しているよ、ティリア」
「丁度良かった、さっきコンビニでチョコレート買ってきたの、みんなにあげるね!」

 ティリアは全員にチョコレートを配り、グレイシア隊の面々は嬉しそうに受け取った。
 ステイツはティリアの変わらない優しさに安心した。

「透弥少尉もレイフィル少尉も、ティリアも変わらないな、安心したよ」
「それでは、我々はそろそろ任務に戻るとするか……」
「ステイツ隊長、シュナ艦長、それに皆さん、必ずまた会いましょう」

 グレイシア隊の面々は再び任務に戻り、透弥とレイフィル、ティリアは家に戻ってソファーでくつろいだ。

「みんな変わらなかったな」
「そうっすね、久しぶりに会ったから懐かしい感じしたっす」
「久々に会えて嬉しかったな……」
「そうだな……俺達みんなで守ったもの……それがこう言った些細な日常なんだな……」
「こう言う平和な日常が、一番幸せっすもんね」
「これから、平和な日常が続くといいね、透弥」
「ああ、そうだな……」

 統合軍艦隊とデスティリアの戦争、後にデスティリア戦役と呼ばれるこの戦い。
 デスティリア戦役で失われた命は多いが、同時に守られた命も多い。
 命は狩られるものではなく、未来まで繋いでいくものである。
 そして、その命を守る為、どこかで努力を続けている人がいる。
 その努力はいつかきっと、世界に本当の平和を訪れさせるであろう。

【地球統合軍の兵器】

・カヴァリエーレ
地球統合軍の開発した新型ナイトギア。高機動と高火力を両立させた機体で、飛行能力も高く、無重力下でも安定した機動性を見せる。脱出装置用戦闘機として、ナイトファイターと言う小型戦闘機を内蔵している。
型式番号:PNG-001/全高:20m/重量:35.5t/装甲材質:ネオカーボン/武装:ビームカノン、バズーカ、アサルトライフル、ビームセイバー、機関砲、ホーミングミサイル、ビームランチャー、バスターカノン/パイロット:黒鋼透弥

・ネオカヴァリエーレ
カヴァリエーレとエアレイドが合体した姿。出力と機動力が上がっており、飛行能力も上昇している。性能に関しては全ナイトギアを上回っており、デスティリアの指揮官を圧倒する性能を誇っている。
型式番号:PNG-001+PNF-001/全高:20m/重量:58.2t/装甲材質:ネオカーボン/武装:ビームカノン、バズーカ、アサルトライフル、ビームセイバー、機関砲、ダブルホーミングミサイル、ビームランチャー、バスターカノン/パイロット:黒鋼透弥、レイフィル・ラティー

・カヴァリエーレMkⅡ
地球統合軍の開発したカヴァリエーレの後継機。カヴァリエーレから約3倍以上性能が向上しており、高い火力を誇っている。また、ブラックボックスにより、エネルギー切れする事がない。コックピット内は対G加工されており、パイロットスーツ無しでも搭乗可能である。更に、単機で大気圏突入離脱する事が可能である。
型式番号:PNG-002/全高:22m/重量:30t/装甲材質:ネオカーボン/動力:ブラックボックス/武装:ビームカノン、ビームセイバー、アサルトライフル、機関砲、ホーミングミサイル、ビームランチャー、バスターカノン、ウイングカノン、ビームウイング/パイロット:黒鋼透弥

・ネオカヴァリエーレMkⅡ
カヴァリエーレMkⅡとエアレイドMkⅡが合体した姿。出力と機動力が圧倒的に向上しており、非常に高い性能を誇る。その力は幹部級デスティリアを圧倒する程。
型式番号:PNG-002+PNF-002/全高:22m/重量:48t/装甲材質:ネオカーボン/動力:ブラックボックス/武装:ビームカノン、ビームセイバー、アサルトライフル、機関砲、ホーミングミサイル、ビームランチャー、バスターカノン、ウイングカノン、ビームウイング、ネオビームセイバー、合体ネオビームセイバー/パイロット:黒鋼透弥、レイフィル・ラティー

・エアレイド
地球統合軍の開発したカヴァリエーレの支援戦闘機。機動力が高く、ナイトギアと互角の火力を誇る。凄まじい速度で飛行可能。無重力下でも普通に航行可能であり、様々な武装を装備している。よくカヴァリエーレを上に乗せて飛行している。
型式番号:PNF-001/全長15m/重量:22.7t/装甲材質:ネオカーボン/武装:対空機銃、ビームシューター、ホーミングミサイル/パイロット:レイフィル・ラティー

・エアレイドMkⅡ
地球統合軍の開発したエアレイドの後継機。エアレイドから約3倍以上性能が向上しており、高い火力を誇っている。コックピット内は対G加工されており、パイロットスーツ無しでも搭乗可能である。更に、単機で大気圏突入離脱する事が可能である。
全長:15m/重量:18t/武装:ビーム機銃、ビームシューター、ホーミングミサイル/パイロット:レイフィル・ラティー

・カーフカスタム
ステイツ専用のカーフ。量産機であるカーフのカスタム機であり、性能はカーフより一回り上。武装は追加武装ビームスナイパーライフルが追加されただけである。
型式番号:NG-005C/全高:18m/重量:30t/装甲材質:新型ネオスチール合金/武装:ビームスナイパーライフル、ビームカノン、アサルトライフル、ビームセイバー、機関砲/パイロット:ステイツ・ロードウェイ

・カーフ
国連軍の量産型ナイトギア。量産機でありながら高い機動性と運動性を誇る。大気圏内を飛行可能であり、高い汎用性を誇っている。
型式番号:NG-005/全高:18m/重量:30t/装甲材質:新型ネオスチール合金/武装:ビームカノン、アサルトライフル、ビームセイバー、機関砲/主なパイロット:セレーナ・ウェルネス、ネフェレー・フィアーズ、アスティ・ニューイー、グロウ・ドーレス、リュイ・ウィークス、統合軍兵士

・グレイシア
国連軍の開発した新造戦艦。氷河の様な美しい船体を持っている事からグレイシアと名付けられた。新型反重力システムを搭載している為、空中を航行可能であり、宇宙でも航行可能。その美しい船体は対ビームコーティングされており、そのコーティングのおかげで美しい船体を保っている。更に、その装甲は非常に頑丈であり、並大抵の攻撃ではびくともしない。最大ナイトギア搭載数はエアレイド含めて8機。
艦級:グレイシア級/全長:270m/装甲材質:対ビームコーティング ネオカーボン/武装:対空機銃、ホーミングミサイル、艦首大型ミサイル、2連ビーム砲、主砲/艦長:シュナ・フレイニール/副長:レイト・ルーカス/オペレーター:リーリス・レインディー/操舵手:コウ・タカギ

・アダマント
国連軍の主力戦艦。単体での戦闘能力より、ナイトギアを搭載して運用する事を前提として開発されている。重力システムを搭載している為、空中を航行可能であり、宇宙でも航行可能。最大ナイトギア搭載数は7機。
艦級:アダマント級主力戦艦/全長230m/装甲材質:新型ネオスチール合金/武装:対空機銃、ホーミングミサイル、艦首大型ミサイル、2連ビーム砲/主な搭乗員:統合軍士官

・バーテライト
地球統合軍の量産型オートマシン。ナイトギアより旧式の兵器であるオートマシンのバーテルを、かつてDr.バイオの反乱で活躍したエレメティアやエレスティア、エレメティオーラの戦闘データを使って改修した機体。バーテルよりは遥かに性能は高いものの、デスティリアの機動兵器やナイトギアに比べると、その性能差は歴然である為、現在はあまり争いの起きない地域に回され、拠点防衛用として配備されている。
型式番号:TOM-013/全高:12.9m/重量:23.2t/装甲材質:ネオスチール合金/武装:レーザーライフル、ビームブレード/主なパイロット:統合軍兵士

・デスティリアエンジェル
ティリアが指揮官化した姿。天使のような姿をしており、軽々と空を飛び、武器のレイピアで突き刺して攻撃する。指揮官デスティリアと同等の戦力を持っている。現時点で1体しか確認されていない貴重なデスティリアである。
身長:20m/体重:17t/武装:レイピア、頭部ビーム、フェザービット/変身者:ティリア

【デスティリア】
様々な惑星に侵略行為を行っている宇宙生物冥王星を本拠地としている。その侵略目的はただの狩りであり、ただ生物の命を奪う事を快楽としている危険な生物。デスティリアにとって宇宙に住む他の生物はただの狩りの対象である。自身を宇宙の支配者と自称しており、決して他の生物とは分かり合えない。最終的に支配者のデスティリアマザーが倒された事で新たな戦力を生み出せなくなり、残った残党も少しずつ他の生物に倒されたり寿命で死ぬと思われ、近い未来絶滅すると思われる。

・マザーデスティリア
デスティリアの支配者。その姿は巨大な怪物の様な姿をしている。主に戦力を生み出す事が目的であり、戦闘力はあまり高くない。最後はネオカヴァリエーレMkIIによって討伐された。
身長:3000m/体重:50000t/武装:レーザー

・幹部級デスティリア
デスティリアの幹部。指揮官の5倍以上の力を持っており、圧倒的な力を持つ。
身長:22m/体重:37t/武装:ロングツインハンドソード、頭部ビーム

・デスティリアコマンドヒューマノイド
デスティリアの指揮官。デスティリアの生物の中でも特に強く、指揮官的ポジションを担っていると思われる。基本1部隊に1体存在する事があるが、小さい部隊にはいない事が多い。
身長:20m/体重:25t/武装:ロングハンドソード、頭部ビーム

・デスティリアヒューマノイド
デスティリアの主力生物。人型をしたデスティリアであり、多数の部隊で侵攻してくる。
身長:18m/体重:20t/武装:ハンドビーム、ハンドソード

・デスティリアファイター
デスティリアの主力生物。戦闘機型のデスティリアであり、多数の部隊で侵攻してくる。
身長:10m/体重:8t/武装:レーザー

・デスティリア艦
デスティリアの主力生物。戦艦型のデスティリアであり、体内に多数の戦力を保有している。
身長:120m/体重:200t/武装:レーザー

・デスティリア超巨大艦
デスティリアの最終兵器。とても巨大な上、中には無数の戦力を保有している。その外装はとても硬く、グレイシアの主砲でも傷一つつかない。
身長:3000m/体重:8000t/武装:レーザー

七つの世界の旅人

 争いに疲れた、歩き疲れた、私はどこに行くのだろう……どこまで行けば私は楽園にたどり着けるのだろう……。
 そう考えながら、物語の主人公である17歳の少女、フィニステール・シグルミリアは荒野をひたすら歩いていた。
 背中まで伸びる長い白髪、非常に整った綺麗な顔、宝石の様にキラキラした緑色の瞳が特徴の剣士であり、服装は白一色、武器は左右に携えたズィルバーとアルジェントと言う名の銀の剣であった。
 フィニスは一年前まで神聖ドラグニア王国ドラグニア騎士団に所属する若きエースであり、そこで多くの戦を経験し、多くの敵の命を奪っていた。
 若きエースともてはやされ、将来の期待されるフィニスであったが、彼女は長く続いた争いで心身共に疲れ果て、ある日の夜、荷物を纏めてドラグニア王国を抜け出し、一人流浪の旅に出た。
 それから一年、フィニスは様々な場所を旅し、この世界の現実を見て来た。
 貧困に苦しむ国、疫病の蔓延した国、そして争いの続く国……。

「この世界に……楽園なんてないのかしら……」

 もしかしたらこの世界に楽園などないのかもしれない。
 それでも、フィニスはこの世界にきっと楽園があるはずだと希望を持って旅を続けていた。
 そんなある日、フィニスは謎の洞窟にたどり着き、中を探索した。
 洞窟の中は思ったよりも広く、その洞窟の中には一つの神殿があった。

「こんな所に神殿……? 一体何の神殿かしら……?」

 いつ頃作られたか分からない神殿、フィニスがその神殿を眺めていると、後ろから若い少女の声がした。

「あなたは……旅人さんですか……?」

 フィニスが後ろを振り向くと、そこには自分より少し年上ぐらいの少女が立っていた。
 長い金髪に、赤い瞳の可愛らしい少女。
 服装は黒のロングスカートに黒の服の上からクリーム色のカーディガンと言う服装であり、とても旅人には思えなかった。
 彼女が何者なのか気になったフィニスは、とりあえず自己紹介をした。

「えっと……私はフィニステール・シグルミリア、フィニスでいいわ、あなたは?」
「私はメモリア・アニバニウム、この七世界神殿の25代目の巫女です、メモリアと呼んでください」

 七世界神殿……メモリアはこの神殿の巫女を代々務めている家系なのだろう。
 それよりも、フィニスは七世界神殿に興味があった。
 この七世界が別の世界を意味するのなら、きっとここに自分にとっての楽園があるはずである。
 そう思ったフィニスは、七世界神殿について聞く事にした。

「ねえ、この神殿って、一体何の神殿なの?」
「ここは他の世界に行く事の出来る石板が七枚収められた神殿です、三百年ほど前にはもっとあったらしいんですけど、地震で何枚か割れてしまったようで、現在残ったこの七枚の石板を収めているんです」
「他の世界って……私も行けるかな?」
「どうでしょう……ここ十年、何人かこの神殿にたどり着いた方がいたのですが、行けた方は一人もいませんでした、多分あなたも無理でしょう」
「でもそれってさ、やってみないと分かんないじゃない?」

 そう言ってフィニスは一枚の石板に触れた。
 すると、石板は眩く輝き、神殿を光で照らした。
 まさかこんな事になるとは思わず、フィニスもメモリアも驚きを隠せずにいた。

「フィニスさん……あなたは旅人としての素質があったのですね……! ありがとうございます! これでやっと巫女としての仕事を……」
「ねえ、これってこの光の中に飛び込めばいいの?」
「ええ、そのまま飛び込んでください」

 フィニスはメモリアに言われた通り、光の中に飛び込み、メモリアも後を追うように光の中に飛び込んだ。
 光の中に飛び込んだ直後、意識はふっと途絶えたが、次に目が覚めた時、フィニスは見た事もない場所にいた。
 そこは街とも村とも違う場所であり、四角く大きな建物が並び、地面は石で覆われ、土のある場所はなく、金属でできた乗り物がその辺を走っていると言う、自分の居た世界ではありえない状況であった。

「何……ここ……?」
「ここは銃と剣の世界ですね」
「銃……? 剣は分かるけど……銃って何……?」
「そんな事、私にも分かりませんよ」
「てか、あなた付いてきたのね……」
「ええ、巫女の仕事は、旅人さんのサポートをする事ですから! 私はもう19歳で、20歳になったら次の代に交代させられるので、フィニスさんが来なかったら仕事をする事なく交代だったのですよ、本当にありがとうございます!」
「お礼なんていいわよ、私、こんな貴重な体験ができるだけで嬉しいもの!」

 しかし、街の人々はフィニスの服装が珍しかったのか、じろじろと見ていた。
 メモリアは一般人の服装ではあるが、フィニスの服装は腰や腕、肩に金属のアーマーを纏っており、額には額当てを装備しているなど、明らかに周りからは浮いている。
 フィニスはあまりにじろじろと見られるので恥ずかしくなったが、市民の一人がフィニスに話しかけてきた。

「ねえねえ、それって何のアニメのコスプレ? 可愛いね」
「えっ? コスプレ……? これはドラグニア騎士団の制服だが……」
「ドラグニア騎士団……? それって何かのアニメ?」
「アニメ……? え、えっと……」

 この市民はフィニスの知らない言葉を次々と言う為、フィニスからすれば外国語に聞こえ、混乱した。
 それと同時に、他の世界には自分の知らない物が沢山ある事に気付いた。
 その時、フィニスと会話していた市民の後ろに怪物が現れた。
 半魚人の様な見た目のその怪物は鋭い爪を振り上げており、危険を察知したフィニスは市民を突き飛ばし、左右に携えたズィルバーとアルジェントを抜き、怪物の攻撃を受け止めた。

「痛いなぁ……いきなり何を……って……エイリアン!? うわぁぁぁっ!!!」

 市民は一斉に逃げ出し、あっという間に街中にはフィニスとメモリア、そしてエイリアンと呼ばれたこの怪物だけになった。
 この半魚人の様なエイリアンは力が強く、何度も死線をくぐり抜けたフィニスを苦戦させていた。

「こいつ……! 何て力だ……!!」
「フィニスさん! 援護します!!」

 フィニスは中級氷魔法、アイシクルアローの魔法を詠唱して氷柱を生成し、その氷柱で半魚人エイリアンを攻撃した。
 氷柱は半魚人エイリアンの左腕を吹き飛ばし、半魚人エイリアンはあまりの痛みに苦しんでいた。

「ありがとう、メモリア! これなら行ける!!」

 フィニスは右手に装備したズィルバーで半魚人エイリアンの右腕を切り落とすと、続けて左手に装備したアルジェントで半魚人エイリアンの首を刎ねた。
 頭を失った半魚人エイリアンは地面に崩れ落ち、そのまま動かなくなった。

「予想外の事態でしたが、何とかなりましたね、フィニスさん」
「ああ、メモリアのおかげだ、ありがとう」

 その直後、一人の女性がフィニスに近づいてきた。
 その女性は長く黒い髪と赤い瞳が特徴で、無表情ではあるが、可愛らしい顔付きをしていた。
 服装は白のブラウスと黒のロングスカートであり、腰には射撃武器と剣が一体になった武器を携えていた。

「そこの白髪、お前はエージェントなのか?」
「え? エージェント……? 何それ?」
「知らないのか……変わった奴だな……エージェントって言うのはエイリアンを倒す役目を背負った人間の事だ、このプラムシティは日夜エイリアンのせいで事件が起きていて、エージェントがエイリアンを倒しているんだ」
「なるほど……そんな危険な世界なんだな、ここは」
「ん? 世界? お前はこの世界の人間ではないのか?」
「ああ、言っても信じてもらえないだろうが、一応私は別の世界の出身だ」
「ふ~ん、変わった人間もいるんだな、で、お前は何故この世界に来たんだ?」
「それは……」

 フィニスは見ず知らずの女性に自身がこの世界に来た理由を伝えた。
 元の世界が争い続きで心身共に疲れ果て、楽園を探して旅をしている事を。
 そして、七つの世界の内のどれかに楽園があるのではないかと思っている事を。
 すると、その女性は静かに語った。

「お前が居た世界がどんな世界か、私には分からない……だが、少なくともこの世界はお前にとって楽園ではないだろう」
「それは何故だ?」
「お前のその服装、相当文明レベルが遅れている世界から来たらしいな、文明レベルが遅れている人間がこの世界に来たら、覚える事が多すぎて苦労する、今の社会は生活するだけで地獄だからな、それに、この世界にはエイリアンがいる」
「エイリアン……さっきの化け物か……」
「ああ、このプラムシティでも数ヶ月前、レディスと言うエイリアンが暗躍して、プラムシティを混乱に陥れた事があってな、それに、今も定期的にエイリアンが出没している、少なくともこの世界はお前の嫌いな争いや人死にで溢れている世界だ、お前の言う楽園とは程遠いだろう」
「そうか……それは残念だ……」

 すると、フィニスとメモリアの体が半透明になっており、少しずつ消えかかっていた。
 どうやら、この世界はフィニスにとって楽園ではなかった為、元の世界に帰りかかっているのだろう。

「フィニスさん、そろそろ元の世界に帰るみたいですね」
「名残惜しいな……そうだ、名前を聞くのを忘れていたな、私はフィニステール・シグルミリア、こっちはメモリア・アニバニウム、君は?」
「私か? 私はツチハ、少しだけしか会えなかったが、お前、面白い奴だな、またいつか会いに来い」
「ああ、必ず、必ず会いに来る」

 そう言ってフィニスとメモリアは元の世界に帰って行った。
 一人残されたツチハは、空を見上げてかつて自分を生み出した人物の事を思い出していた。

「楽園……か……レディス、お前にとっての楽園は、故郷のアプリコット星だったんだろうな……だが、あのフィニスと言う女、故郷が楽園ではないと言った……なら、あいつにとっての楽園とは一体何なんだ……?」

 楽園の定義が分からないツチハは、まだ知らぬ楽園の存在に思いを馳せ、そのままどこかへと歩いて行った。

 フィニスとメモリアは銃と剣の世界から帰還し、再び七世界神殿に戻ってきた。
 不思議な体験をした事で、何とも言えない感覚になっていたが、彼女たちは今、他の世界に興味津々であった。
 残りの六つの世界は一体どんな世界なのか? そう考えるだけで早く次の世界に旅立ちたい、その好奇心が彼女たちを衝き動かした。

「凄い体験だったわね、メモリア」
「ええ、私も19年生きてきてこんな体験をするとは思いもしませんでしたよ」
「私もよ、じゃあ、このまま次の世界に行ってみましょう」
「そうですね、では、次は隣のこの石板にしましょうか」

 そう言ってメモリアとフィニスは隣の石板の前に立ち、フィニスが石板に触れた。
 すると、先ほどと同じ様に石板は眩く輝き、二人はその光の中に飛び込んだ。
 光の中に飛び込むと、やはり意識は途切れたが、再び意識を取り戻した時、二人はまた未知の世界にやって来ていた。

「この世界は……?」
「ここは闇夜と白昼の世界です」
「闇夜と白昼の世界……?」
「ええ、この世界では闇夜の流浪者と白昼の救世主と呼ばれる親子が活躍し、世界を平和に導いたと言う伝説がある……ようです……」
「詳しくは知らないのね」
「はい、代々そう言い伝えられてきただけですので、詳しくは……」

 二人は辺りを見回した。
 銃と剣の世界に比べ、文明は発達していなかったが、それでも二人の居た世界に比べると遥かに発達しており、見た事のない乗り物や施設が沢山あった。

「ここも私達の知らない物が多いわね……」
「ええ、そう考えると、私達の世界の文明レベルって低いんですね……」

 すると、フィニス達の下に一人の少女が近寄ってきた。
 その少女は赤髪ツインテールの可愛らしい少女だったが、気の強そうな少女であった。

「そこのあんた、その服装って……アインベルグ大陸のエスプランドル騎士団のコスプレでもしてるの?」
「アインベルグ大陸……? エスプランドル騎士団……? これはドラグニア騎士団の制服だが……」
「ドラグニア騎士団……? 聞いた事がないわね……って、あんた! そんな設定を自己紹介でするなんて、相当な中二病なのね!」
中二病……? 私は健康だが……」
「あの~、フィニスさんとそこの女の子、ちょっといいですか?」
「私はルージュ、ルージュ・ラフレーズよ」
「ではルージュさん、話が長くなりそうなので私から説明させていただきますね」

 メモリアは自身が別の世界から来た事をルージュに説明した。
 当然、ルージュからは信じられず、中二病を拗らせすぎた二人組扱いされ、困り果てていたが、その時、近くを通りかかった薄紫ツーサイドアップの女性がフィニス達の下に近寄ってきた。

「ルージュちゃん、この二人は知ってる人?」
「あ、トルトゥーガさん! ねえ、聞いて、この二人ったら変なの! 何でも他の世界から来たって……」
「他の世界……? お二人さん、それって本当ですか?」
「ああ、本当だって、さっきから何度も言ってるんだけど……中々信じてもらえないんだ……」
「トルトゥーガさん……でしたっけ? 信じてくださいよぉぉぉ!」

 フィニスとメモリアはトルトゥーガに対し、泣きつくように頼み込んだ、結果、何とか信じてもらう事に成功し、二人はまず自己紹介をした。

「私はフィニステール・シグルミリア、元の世界ではドラグニア騎士団の所属だ」
「私はメモリア・アニバニウムです、七世界神殿の巫女でして、この世界には神殿の石板を通じてやってきました」
「そんな石板があるなんて不思議ですね……天上界の人達はそれの存在を知ってたんでしょうか……おっと、申し遅れました、私はトルトゥーガ・ネリン、こう見えて、光精霊です」
「光精霊……他の世界には変わった生物もいるんだな……」

 すると、フィニス達のいる位置に突然バズーカの弾頭が撃ち込まれた為、それを察知したトルトゥーガが魔導障壁と言う魔力のバリアを張り、防いだ。
 その爆音を聞いた一般人は慌てて逃走し、ふと弾頭が撃ち込まれた場所を見ると、そこには黒いスーツを着た女性が一人、バズーカを持って立っていた。
 その女性は赤い瞳が特徴の無表情な女性であり、どこか幼い顔付きの可愛らしい女性であった。
 髪型は腰の辺りまで伸びたツインテールであり、左目は髪の毛で隠れていた。
 その女性はバズーカを構えると、トルトゥーガに対し、ある事を伝えた。

「私はエフォート・カントール! 旧シュヴァルツゼーレのリーダー、デロリア・ルーゼンナイトの側近、ノレッジ・カントールの娘だ! ナハト一派に殺された母の仇を討つ為、私はここに来た!」
「その見た目……ああ、あの時ナハトが討った……世界が平和になっても、未だに戦いを望む人がいるなんて……」
「黙れ! 私はこの時の為に生きてきた! 私の母を殺した相手に復讐をする為にな! もはやシュヴァルツゼーレもネオシュヴァルツゼーレも存在しない……だが、貴様らに復讐できるなら、この命、惜しくはない!」

 そう言ってエフォートはバズーカを一発、二発と撃った。
 だが、ルージュは剣に風の魔力を纏って振り、発生させた竜巻に弾頭を巻き込んで二発をぶつけ、爆破させた。
 再びエフォートはバズーカを撃とうとしたが、トルトゥーガは背中に翼を生やして急接近し、バズーカを槍で弾いてエフォートを無力化させた。

「これであなたは戦えないわね!」
「くっ……ここまでか……殺せ……」
「いや、殺しはしないけど……私、殺生事は嫌いだし……」
「殺してくれ……今まで復讐の為に生きてきた私に、今更他の生き方など……復讐も果たせなかった以上、死んだ方がマシだ……」

 すると、フィニスはエフォートに近づき、頭に軽くチョップをした。
 いきなりチョップされた事で、エフォートはきょとんとした顔をしていた。

「お前……いきなり何を……!?」
「あなた、一体何があったか知らないけどさ……そう簡単に死ぬとか言わないでよ……」
「今まで復讐しか考えてこなくて、復讐もできなかった以上、私に生きる意味などない!」
「だからって……そう簡単に命を捨てるなんてやめてよ! 私はあなたに何があったか知らない……けどね、私の居た場所はもっと簡単に、理不尽に人が死んで行く世の中だったの……今日生きれるだけで幸せそのものだったんだよ……なのに……簡単に死にたいって言うなんて……! もっと命を大事にしてよ!!」
「………」

 フィニスのその言葉に、エフォートは黙り込んだ。
 今まで復讐の事しか考えてこなかった自分にここまで生きて欲しいと言ってくれる人間はいなかったからである。
 心の底から生きて欲しいと願うフィニスの言葉に、エフォートは心を動かされていたのである。
 すると、ずっと黙っていたルージュはメモリアにある提案をした。

「ねえ、あんた達、他の世界から来たのよね?」
「ええ、そうですけど……それが何か……? ……まさか……」
「そう、そのまさかよ! あのエフォートって子に他の世界を見せてあげてくれない? そうすれば、少しは考え方を変えてくれるかも!」

 その言葉に、エフォートは驚いていた。
 メモリアやフィニスが他の世界の人間だと言う事にも当然驚いたが、何より自分を他の世界に連れて行くと言う滅茶苦茶な発想に、エフォートは驚くしかなかった。

「お前……何を考えている……!? あ、分かったぞ! 厄介な復讐鬼である私を他の世界に永久追放するって言う魂胆だろ!?」
「そんなんじゃないわよ、他の世界を巡って考え方を変えなければ、いつでもこの世界に戻って来なさい、あたし達が決着を付けてあげる!」
「私は決して考え方を変えない! 必ず貴様らに復讐を……!」
「はいはい、分かったから、フィニス! こいつ連れて行って!」
「え? でもまだこの世界の観光途中……」
「いーいーかーらー! 連れて行けったら連れて行けーっ!!」

 そう言ってルージュはエフォートの首根っこを掴んでフィニスの方に投げ飛ばした。
 フィニスは慌ててエフォートを受け止めたが、そのまま後ろに倒れ込み、エフォートはフィニスの胸に顔を埋めていた。

「あんたら何やってんのよ、じゃ、フィニス、メモリア、後は頼んだわね」
「滅茶苦茶よ……! って、いつまで顔を埋めているの!」
「す、すまない……トルトゥーガ! 必ずナハトの首は貰いに来るからな!」
「いつ来てもいいけど、まずは他の世界を巡ってからね~」
「で、では……エフォートさんは私とフィニスさんが預からせていただきますね~では!」

 そう言ってメモリアは強制的に巫女の帰還能力を使い、元の世界へ帰還した。
 その後、フィニス達を見送ったトルトゥーガとルージュは話をしていた。

「ねえ、ルージュちゃん、あのエフォートって子、変われると思う?」
「さあ? 無理じゃないかな? あの様子だと、相当ナハトさんの事恨んでるっぽいし……」
「そうね……でも、私はエフォートちゃんが変わってくれると信じてるわ……」
「まあ、変われたらいいわよね……ところで、最近リヒトとナハトさんの姿が見えないけど、どこ行ったか分かります?」
「あぁ……あの二人なら急に姿が消えたのよね……どっかに召喚されたんじゃないかしら?」
「そんないい加減な……」

 トルトゥーガとルージュはそんな他愛のない話をしながら、エフォートが人として変われる事を願った。

 七世界神殿へと再び帰還したフィニスとメモリア、そして旅に同行する事になったエフォートは、次の世界に行く事を決めた。

「とりあえず、復讐の前に他の世界へ行くしかないのか、後石板は何枚あるんだ?」
「残り五枚だ、メモリア、次はどれにする?」
「そうですね、これとかどうでしょう? 自由の世界の石板」
「自由の世界? これはどんな世界なんだ?」
「何度も戦火に包まれながらも、自由の為に多くの戦士達が戦い抜いた世界……らしいです」
「御託はいい、私は復讐をしなくてはならないんだ、さっさと行け、フィニス」
「分かったから、そんなに急かさないで……」

 そう言ってフィニスは石板に触れた。
 すると、いつも通り辺りは光に包まれ、フィニス達を別の世界へと誘った。

「着きましたよ、エフォートさん、ここが自由の世界です」
「成程、確かに私の居た世界とは雰囲気が違うな……何と言うか……危険そうな……」

 すると、フィニス達は複数の兵士に囲まれた。

「動くな! 我々は宇宙帝国イフィニアドの残党、貴様ら、クロストライアルだな?」
「いえ、違います……私は別の世界から来た……」
「別の世界だと……!? まさか、異世界からの来訪者!! だが、異世界からの来訪者は全員元の世界へ帰ったはず……」
「えっ? 私達以外にも別の世界から来た旅人がいたの!?」
「ああ、だが、そいつらは強大な力を持っている、お前達もそいつらと同じなら、ここで殺してやる!!」

 そう言ってイフィニアド兵は一斉に剣で攻撃を仕掛けた。

「戦うしかないようね!!」

 フィニスはズィルバーとアルジェントを構え、イフィニアド兵と交戦、一人、また一人と斬り捨てて行った。
 一方、メモリアはバリアを張って自身を守り、エフォートは懐に携えていたナイフでイフィニアド兵と交戦し、倒していた。
 だが、イフィニアド兵の数は多く、フィニス達は防戦一方であった。

「敵の数が多すぎるわ……!!」
「メモリア! お前も何とかしろ!!」
「そうは言ったって、私、戦闘は苦手なんですよぉぉぉ!!」

 その時、目にも止まらぬ一瞬の攻撃でイフィニアド兵が次々と倒されて行った。
 攻撃は素早く、イフィニアド兵は混乱しながら倒されて行き、遂に全滅した。
 その攻撃を行ったのは、まだ未成年の金髪ツインテールの少女であった。
 少女はフィニス達に近づき、話しかけてきた。

「えっと……大丈夫ですか?」
「え、ええ、助かったわ、ありがとう」
「ちょっと散歩に出かけてたらあなた達を発見したのですが、まさかイフィニアドの残党がまだ活動してたなんて……あ、私の名前はアイラと言います、よろしくお願いいたしますね」
フィニステール・シグルミリアよ、よろしく」
「メモリア・アニバリウムです、よろしくお願いします」
「エフォート・カントールだ、よろしく」

 すると、エフォートがアイラにちょっとした質問をした。

「なあ、イフィニアドとは何だ? 異世界からの来訪者と言うものも」
「あ、イフィニアドはかつて宇宙帝国イフィニアドとしてこの地球に侵略戦争を仕掛けた組織でして、我々国際平和維持組織クロストライアルの活躍によって戦争は終結し、何とか和平まで持ち越せたのですが……それを良く思ってない一部の兵士がこうしてたまにテロを起こしているんです、後、異世界からの来訪者とは文字通り異世界から来た者達の事でして、かつてはイフィニアドやフィーニス率いる混成軍との戦争等でクロストライアルの協力者として共に戦いましたが、全ての戦いが終わった後、全員元の世界に帰還しました」

 アイラの話を聞いた後、何か面倒な事になりそうだが、一応フィニスは自分達も別の世界から来たと言う事を説明した。

「えっと、私達、実は異世界から来たんですけど……」
「え? じゃあ、久々の異世界からの来訪者なんですね! 後でドラゴニュートさんに教えてあげようかな」

 案の定面倒な事になったなと思いつつ、フィニスはある質問をした。

「ねえ、アイラ、この世界は幾度も争いが続いていると聞いたわ、それって本当なの?」
「はい、それも百五十年以上前から絶えず続いています、ようやく大きな戦争を終えたと思っても、再び戦争が……それでも、私達は真の平和を掴み取る為に戦っているんですよ!」
「大変……なのね……」

 フィニスは思った、ただでさえ争いを避けたいと思っている自分にとって、この世界は楽園ではないと。
 そう思ったフィニス達は、体が半透明になって消えかかっていた。

「えぇぇ!? フィニスさん達!? どうしたんですか!?」
「アイラ、私達ね、楽園を探しているの、誰もが平和に暮らせる楽園を」
「誰もが平和に暮らせる楽園……ですか……分かりました! 私達、頑張ってその楽園を作ります!! 誰も悲しまない平和な楽園を! それが実現した時、またこの世界に来てくださいね!」
「約束……するわ、アイラ」

 その後、フィニス達は元の世界へと帰還した。
 一人残されたアイラは、この世界に真の平和が訪れるその時まで戦い抜くと決めた。

「真の平和……それが訪れるのはいつになるか分からない……百年後……三百年後……例え千年後になるとしても、私達は必ず本当の平和を手に入れてみせます!!」

 そして、フィニス達は再び七世界神殿に帰還した。

「とんだ目に遭ったわね……」
「トルトゥーガめ……やはり私を完全に抹殺する為に……」
「それはないと思いますよ……多分……」
「さて、気分転換に次の世界行きましょ」

 そう言って、フィニスは次の石板に触れた。
 その瞬間、辺りは光に包まれ、フィニス達を次の世界へと誘った。

「メモリア、この世界は?」
「はい、この世界は二大国の世界ですね、エスプランドル聖王国軍とオスクリタ大帝国軍の戦争や、邪神との戦いがあった世界だと、先々代から聞かされました」
エスプランドル聖王国軍にオスクリタ大帝国軍!? それって、二大国戦記や邪神討伐戦記の出来事じゃないか!」
「知ってるの? エフォート」
「知ってるも何も、私が居た世界の遥か過去の物語だ、私が居たのが聖暦2067年で、二大国戦記は聖暦777年、邪神討伐戦記は聖暦778年の出来事だな」
「つまり、それだけこの世界では争いが……」
「もう平和になったわよ」

 そう言って、フィニスに一人の女性が近づいてきた。
 その女性は弓使いらしく、矢筒や弓を装備していた。
 長く美しい金髪と、サファイアの様に輝く瞳が特徴的な美人であった。

「おっと、自己紹介が遅れたわね、私はソフィア・アーネル、ソフィアでいいわよ」

 ソフィアと名乗ったその女性に対し、フィニス達も自己紹介を返した。
 すると、ソフィアは別世界から来たフィニス達に興味津々であった。

「ふ~ん、楽園を探してる……ねぇ……」
「そうなの、だから、この世界について色々と教えてくれないかしら?」
「悪いけど、この世界ではずっと争いが続くと思うわ、邪神ネクロスが言ってたらしいの、百年後に再び脅威が訪れるって」
「百年後って……そんな未来の事……エフォートは何か知ってる?」
「悪いが、聖暦は争いの歴史だ、過去も、恐らく未来も争いが続くだろう……」
「このエスプランドル聖王国も、オスクリタ大帝国との戦後処理は上手く行ったけど、まだ小さな所で憎み合いは続いているからね……」
「そう……なのか……楽園って中々見つからないんだな……」

 すると、ソフィアは悩むフィニスに対し、ある事を伝えた。

「ねえ、あなたの言う楽園って、争いのない平和な場所って所?」
「そうね、私は争いに疲れたの、だから……」
「それって、相当難しいかもしれないわよ? 人間社会に争いはあって当たり前だし、それがない世界があったら、誰しも行きたいでしょうね……」
「そう……よね……でも、私は必ず見つけてみせるわ!」
「頑張ってね、あ、後、そこのあなた」
「わ、私か……?」
「あなた、これから起こる出来事を知っているのね、良かったら、色々と教えてくれないかしら?」
「え、えっと……」

 エフォートはメモリアに教えていいかどうかを聞いた。その結果、ざっくりとなら教えてもいいと言う事になり、エフォートはソフィアに教えてあげた。

「あまり詳しくは教えられないが、一言で言うなら、争いの歴史が続く」
「あら……私達が必死に戦っても、争いは続くのね……なら、私達は真の平和を目指して戦うわ!」
「まあ、頑張れ」

 その後、エフォートはフィニスの元に戻り、ソフィアに別れを告げてこの世界から去って行った。
 そして、一人残されたソフィアは、ある事を考えていた。

「やっぱり、邪神ネクロスの言った事は本当みたいね……争いは続く……それも数えきれないほど……大変ね……」

 その後、元の世界に帰還したフィニス達は、次の世界はどれにするか悩んでいた。

「後三枚……どんな世界なのかしら……?」
「何でもいい、さっさと行くぞ、フィニス、メモリア」
「じゃあ、この世界はどうでしょう? 大乱闘の世界です」
「大乱闘? 明らかに名前からして物騒じゃない!」
「あくまで大乱闘と言う競技であり、戦争とかじゃないですから安心してください」
「じゃあ……分かったわ……」

 そう言ってフィニスは大乱闘の世界へと向かった。
 すると、フィニス達は花畑へとやって来た。
 そこには、オッドアイの一人の少女がいた。

「何!? いきなり現れるなんて、まさか、闇の眷属!? だったら、漆黒なる永劫の翼(ダークネス・エターナル・フリューゲル)の称号を持つこの私が、殲滅しちゃうんだから!!」
「ま……待って! 私達はその闇の眷属とかじゃないから!!」
「問答無用! 闇の銃弾(ダークネス・ショット)!!」

 そう言ってその少女は黒い拳銃から闇の弾丸を放った。
 フィニスは攻撃を回避し、そのまま説得を続けた。

「落ち着いて! 私はただの人間だから!!」
「……本当に? 実はオオカミさんみたいな闇の眷属が変身してて、油断した隙に私に薄い本みたいな事しようと企んでるんじゃ……」
「しないしない! てか、薄い本って何?」
「……分かった、信用するよ、私は黒乃月(くろの るな)、あなた達は?」

 フィニス達は、ルナと名乗ったその少女に自己紹介をした、すると、急にテンションが高くなった。

「え!? じゃあ、あなた達、色んな世界を旅してるの!? まるで私みたい! で、あなた達は通りすがりで私に出会ったんだね! これも何かの運命! 一緒に付いて行ってあげるね!」

 あまりのテンションの高さに、フィニス達は困惑した。

(ねえ、この娘、大丈夫なの?)
(少なくとも、大丈夫ではないだろう)
(でも、悪い人じゃなさそうですよ……)

「ねえねえっ! 三人は今までどんな世界に行ったの? 教えてくれないっ?」

 フィニスはルナに今まで行った世界の話をした。
 すると、ルナはフィニスが今まで行った世界の事を知っているではないか。
 ルナはその事について色々と教えてくれた。

「みんな私が知ってる世界だね」
「えっ? 知ってるの?」
「うん、私が別の世界に呼ばれて戦った時なんだけど、そこでその世界の人と知り合って、後で門(ゲート)の能力でその世界に行った事があるよ、いい経験だったな~、後、アイラちゃんとは昔から面識があってね、私が自由の世界? そこに召喚された時、クロストライアルの一員として、悪い奴らと戦ったんだ」
「まさか、私達より旅をしている娘がいるなんて……」

 ルナは照れながら、次の話を始めた。

「で、私は久々にこの世界に遊びに来たんだけど、この世界は平和そのものだよ~昔はアルスマって大乱闘が行われてたんだけど、色々あって終わっちゃってね、今はこのアルスマ界、平和な世界だよ、昔はこのアルスマ界も悪者に狙われてたんだけどね」
「今は、平和なの?」
「うん、平和だよ、たまに他の世界の事件に巻き込まれる程度だね」
「それって、平和なのかしら? エフォートとメモリアはどう思う?」
「私に聞くな、まあ、少なくとも今まで行った世界よりはダントツで平和じゃないか?」
「大して争いが起きてないなら、平和なんでしょうね、でも、残り二つの世界も行ってみませんか?」
「それもそうね」
「じゃあ、私も付いて行くね!」

 フィニス達は、ルナが付いてくる事に対し、ちょっとだけ引いたが、悪い人じゃなさそうだからとそのまま共に七世界神殿へ帰還した。
 ルナは初めて見る七世界神殿に興味津々だったが、フィニスは慣れた手つきで次の石板に触れた。
 そして、フィニス達は次の世界へとやって来た。

「うわ~凄いね~石板で別の世界に移動するなんて、私、初めて見たよ……」
「凄いでしょう? ねえ、メモリア、この世界は?」
「はい、この世界は太陽と月と希望の世界です」
「ああ、私が居た世界から百年程前の世界か」
「いつ頃の出来事なの?」
「聖暦1967年だ、この頃はクライム・ゼノロスト率いるヴェンジェンスが堕落に満ちた世界を変える為に各地を襲撃する等していた時期だ」
「明らかにロクでもない時代ね……」

 その時、一人の男性と一人の女性がフィニス達に近づいてきた。

「お前ら、変わった奴らだな」
「ねえ、タクト、ちょっと変わった人達ね」
「タクト……タクト・レイノス! そして、そちらが、リリシェ・ルーン!」
「何だ、俺達の事を知ってるのか?」
「何? まさか私達のファン!?」
「ねえ、エフォート、この人達って……」
「ああ、僅か八人でヴェンジェンスに立ち向かい、滅ぼしたと言う伝説が残されている伝説の旅人だ」

 すると、ルナが興味津々にタクトに近寄った。

「へ~、この人達凄い人なんだ!」

 タクトとリリシェはルナが辺りをキョロキョロする為、若干対応に困っていたが、とりあえず放置して話を進めた。

「で、お前達は俺とリリシェに何の用だ?」

 フィニス達はタクトとリリシェに自己紹介を済ませた。
 すると、タクトは返事に困っていた。

「いきなり別の世界から来て楽園を探していると言われてもな……俺も旅人、お前達も旅人なら、答えは簡単だ、旅をして探すしかない、それが旅人の醍醐味だろ?」
「そうね……じゃあ、私達、もっと旅をして探してみるわ」

 すると、今度はリリシェが会話に参加した。

「私とタクトは今、タクトの故郷であるカプリス村を復興させているの、それが終わったら、また旅に出るの、そして、色んな世界を見て回るんだけど、今まで見てなかった世界にきっと、楽園はあるはずだよ、フィニスさん達も、色んな世界を見て回って、探してみて、楽園は必ず、どこかにあるはずだから!」
「リリシェさん……ありがとう、その言葉、覚えておくわね」

 すると、今度はタクトが会話に参加した。

「一人の旅人として言わせてもらうが、旅はただ巡るだけでは面白くない、ちゃんとそこに住む人達とも触れ合わないとな、俺も、ヴェンジェンス討伐の旅ではあまり人々と触れ合えなかったから、いつか旅を再開させる際はちゃんと触れ合うつもりだ」
「一人の旅人としてのアドバイス、きちんと受け取りました」

 その後、フィニス達はまだ遊び足りない様子のルナを連れてこの世界を去った。
 残されたタクトとリリシェは、二人で会話をしていた。

「ねえ、タクト、フィニスさん達は楽園、見つけられるかな?」
「どうだろうな、まあ、俺から言える事は、誰にも必ず楽園と呼べる場所があると言う事だけだ」

 その後、フィニス達は元の世界に帰還した。
 残す石板は後一枚、フィニスは最期の石板に手を差し伸べた。

「これが最後の石板ね……」
「最後の石板は、神聖の世界の石板です」
「何だか知らないけど、これで私は復讐ができるのね」
「もう終わっちゃうのか……まあ、いいや、楽しかったし」

 フィニスが石板に触れると、辺りは眩い光に包まれ、フィニス達を神聖の世界へと誘った。
 神聖の世界は最初に旅した銃と剣の世界の様に文明の発達した世界だったが、銃と剣の世界ほど文明は発達していなかった。
 フィニス達が辺りを探索していると、住民たちはフィニス達をじろじろと見ていた。

「あの……フィニスさん……? 私達、凄くじろじろ見られてますよね……?」
「銃と剣の世界みたいにコスプレだと思われているのでしょうね」

 フィニス達が歩いて街中を探索していると、前から男女二人組が興味深そうにフィニス達に近寄ってきた。
 そして、女性の方がフィニスに質問した

「あの……もしかして、コスプレイヤーの方々ですか?」
「ほらね」
「やっぱり私達……コスプレイヤーだと思われてるんですね……」

 すると、今度は男性の方がフィニス達に話しかけた。

「突然理乃がすみません、俺、日野鋼(ひの はがね)って言います、で、こっちが友達の……」
「月村理乃(つきむら りの)です、よろしくお願いします」
「私はフィニステール・シグルミリアよ、よろしくね」
「私はメモリア・アニバリウムです、よろしくお願いいたします」
「私はエフォート・カントール、よろしく頼む」
「そして私は黒乃月、漆黒なる永劫の翼の称号を持つ闇よりの使者だよ!」
「はは……何か、変わった人達ですね……」

 フィニスはハガネ達に自分達の事を話した。
 自分達が異世界からの旅人である事、そして、楽園を探していると言う事を。
 すると、当然と言うべきかハガネ達は驚いた。

異世界からの旅人……まさかそんな事が実際に起きるなんて……」
「でもさ、ハガネくん、怪人の存在だって……」
「ああ、怪人の存在もかつては非現実だと思われていた……でも、それは実在した……だったら、異世界からの旅人が存在したっておかしくはないよな……」
「ねえねえ、その怪人って何? もしかして、闇の眷属の一種だったりする? だったら、この私がやっつけちゃうよ!」
「ああ、怪人って言うのは、かつてこの世界に現れた人間が変化する怪物だよ、でも、ノヴァティスって言うヒーローと人々の心の正義の光によって滅んだんだ」
「へ~、人間が変化する怪物か~、強かったんだろうな~」

 すると、ハガネは話題を変え、今度はフィニス達の探している楽園について聞いた。

「フィニスさん達は楽園を探しているって言いましたよね? それって、どんな場所なんですか?」
「争いのない、平和な世界よ、私達の居た世界は争いが続いてて、私達はそれに疲れて平和な世界……楽園を探して様々な世界を旅をしているの」
「で、私達の住むこの世界に来たんですね」
「そうよ、でも、今までのどの世界でも争いは起きていた……平和そうな世界を見つけたけど……結局争いは続くみたいだし……」
「う~ん、俺達みたいな学生にはよく分かりませんけど、俺から言える事は、きっとこれからも争いは起きると言う事だけです」

 ハガネのその言葉に一同は動揺したが、ハガネは自身の住む世界の現状を伝えた。

「この世界では過去に怪人との戦いや、様々な戦争が起きてました、現在はどれも落ち着いたのですが、未だに戦争や紛争は絶えません、それに、様々な事件や災害も起きています、つまり、どうあがいても、争いはこれからも続くんです」
「じゃあ一体……私達はこれからどうすればいいのよ……」
「それは俺達には分かりません、でも、少しでも争いを減らす為に行動を起こす、または争いから逃げて生活する事はできると思います」

 どうするか悩むフィニスに対し、今度はメモリアが口を開いた。

「フィニスさん、この旅が終わったら、今度は私と一緒に世界を巡りませんか? 私達の居る世界を!」
「それも……いいわね……考えとくわ」

 そして、フィニス達は元の世界へと帰還し、それを見送ったハガネと理乃は、過去の事について話していた。

「楽園……かぁ……ねえハガネくん、ハガネくんは楽園ってどんなところだと思う?」
「そうだな……誰もが安心して平和に暮らせるところ、なんだろうけど、俺にとっては、みんなと仲良くしていられるこの環境、それが楽園だと思ってるよ、だって、例え平和だったとしても、親しい人間がいないと辛いだろ?」
「ふふ、ハガネくんらしい考えだね、やっぱり、元ヒーローだからかな?」
「ノヴァティスとして戦った日々、辛かったけど、改めてこう言う事に気付かされたのかもしれないな……」

 元の世界へ帰還したフィニス達、全ての世界を旅したフィニス達だったが、旅先で出会った人達との会話を聞いた事で、楽園と言うものが分からなくなっていた。

「ねえ、メモリア、エフォート、ルナ、楽園って、何なのかしらね……?」
「私も……分からないです……」
「そうだな……私も分からなくなってきたよ……楽園って……何なんだろう……」
「楽園ね……みんなが平和に暮らせる環境かな?」

 その時、七世界神殿の石板が突然崩れ去った。

「あっ! 石板が……!!」
「おい! これじゃ元の世界に帰れないじゃないか!!」
「安心して、帰りたかったら私が送り返してあげるから」
「………」
「フィニスさん……?」

 フィニスは楽園を探す為に旅を続けていた、だが、旅先で出会った人達の話を聞き、自分の居場所は別の世界に無いのだと、薄々は気づいていた。
 そして、石板が崩れ去ったと言う事、これは、七世界神殿が別の世界に楽園はないのだと言っているように捉えられた。

「……分かったわ、私の言う楽園はきっと、他の世界じゃない、私にとっての楽園は、生まれ育ったこの世界なんだ、どんなに辛くても、どんなに苦しくても、私の言う楽園は、この世界で見つけないといけないんだ、他の世界で見つけるなんて、そんなのただの甘えなんだ! だから! 私はまた旅に出るわ」
「フィニスさん……!」
「フィニス、あんたのその考え、嫌いじゃないわ、それに、あんたのそのキラキラ輝く目を見ていたら、ずっと復讐に捕らわれていた私が馬鹿みたいじゃない……どうしてくれるのよ……」
「エフォート、あなたもこれから別の生き方を探してみたら、いいんじゃないかしら、その為の道先案内人は、ルナ、頼めるかしら?」
「はいはーい、まっかせてー!」
「フィニス、私も色んな世界を回ってみるわ、だから、あんたも頑張るのよ」
「じゃ、短い間だったけど、楽しかったよ、またね!」

 エフォートとルナはフィニスとメモリアに別れの挨拶を言い残し、ルナの能力でエフォートは別の世界へと旅立っていった。
 エフォートがこれからどんな道を歩むのかは分からない、だが、きっとエフォートは復讐とは違う別の生き方を見つけるはずだと、二人は信じていた。

「で、メモリアはこれからどうするの? 石板は全部崩れちゃったけど…」
「石板が無くなった以上、七世界神殿の巫女は必要なくなるはずです、正規の手続きが済み次第ですが……フィニスさん、あなたと一緒に旅がしたいです、一緒に、色んな世界を見て回りましょう、ねっ?」
「ええ、そうね、必ず見つけましょう、本当の楽園を」

 七世界神殿の七枚の石板に導かれた不思議な短い旅は終わった。
 だが、この不思議な旅は、悩める人間の心を救ったのである。
 彼女たちがこれからどのような道を歩んでいくのかは分からない。
 だが、きっと彼女たちは自分の思う本当の楽園を見つけるはずである。
 それが何年、何十年かかろうともきっと、見つけるはずである。