かつて、アルスマ界という平和な世界で某大人気ゲームに似た大乱闘と言う競技が行われた。
様々な世界から招待された歴戦の戦士たちが幾度となく大乱闘でドラマを作り、絆や友情を深めていった。
しかし、その大乱闘を潰そうとした存在もいた。
アルスマ界の守護を目的として生み出されたアンドロイド、ブラックガンナーとホワイトブレイドが、アルスマ界にかつて存在したテロ組織『エレメントスタンド』の残党や各世界の敵のデータをコピーした『データユニット』を使い、幾度となくアルスマファイターに勝負を挑んだ。
何度も繰り返された戦いの末、遂にブラックガンナーとホワイトブレイドは倒され、エレメントスタンド残党も壊滅、データユニットも全てが消滅し、データも失われた。
この戦いの後、アルスマの開催者であるマスターファフニールは深い眠りに落ち、ファイター達は元の世界へと帰還した。
それから三年、この空白の期間中、アルスマ界の近くにあるカイスマ界で一時休止されていた大乱闘が再開され、一部アルスマファイターも参加し、再びその勇姿を披露していた。
だが、そのカイスマ界でもやはり敵は存在しており、アルスマ開催の一年前に倒された悪の戦士であるダークシャドウが復活し、彼の率いるダークシャドウ軍と幾度とない激しい戦闘が繰り広げられた。
カイスマファイター達は激闘の末、ダークシャドウを撃破するが、一ヶ月後に復活したダークシャドウは再び攻撃を開始。
更に、カイスマ、アルスマファイターが別次元の地球に召喚され、消息を絶つ事件も発生。
様々な戦いを乗り越え、ダークシャドウの繰り出す刺客を撃破した末、ダークシャドウとの最後の戦いが行われる。
一度は絶体絶命の危機になるが、最後はカイトとダークカイトの合体した姿、ゴッドトゥルースがダークシャドウを撃破、長い長い戦いが終わりを迎えた。
そして、それから三年が経過し、アルスマはかつて開催された名物競技として少しずつ忘れ去られ、カイスマは新生カイスマメンバーへと交代、新たな時代へと進みつつあった……。
そんなある日、アルスマ界で突然、次元の歪みが確認された。
【アルスマストリート】
アルスマストリートに設置された大型スクリーンに、アルスマ草原に発生した次元の歪みが映し出されていた。
群衆が集まり、その様子をじっと見つめてがやがやと騒ぐ。
そこには、かつてアルスマのスタッフとして働いていたナレ男、オペ子、レフェ子の姿もあった。
「あれ、何ですかね……? 何かが現れるのでしょうか……?」
「今の所は何とも言えませんね……」
「あの最終決戦以降、アルスマ界は平和だったのに、また何か事件が起こるの……?」
ナレ男、オペ子、レフェ子は不安気に次元の歪みを見つめる。
アルスマも終わり、ただの一般市民として暮らす三人。
彼らの不安通り、この次元の歪みは大きな戦いのほんの序章であった。
【アルスマ草原】
アルスマ草原に発生した次元の歪みは、時間の経過とともに大きくなってゆき、激しく揺らぎ始めた。
危険だと感じたカメラマンは一度撤収し、遠くに避難する。
刹那、次元の歪みは突然大きな爆発を発生させ、完全に沈黙した。
カメラマン達は冷や汗と共に爆発で発生した土煙を見守る。
すると、そこには一人の少女が立っていた。
透き通るようなさらさらとした銀髪のロングヘアを少しだけハーフアップにして青いリボンで留めた、澄んだアイスブルーの瞳をした神秘的な少女。
白と青の二色で構成されたワンピースを着たその少女は細身の剣を手に持ち、首に淡く光る魔石の付いたネックレスを付けていた。
突然の光景に慌てふためくカメラマン達。
その少女はカメラマン達を見つけると、細身の剣に無属性の魔力を纏い、横薙ぎに振る。
カメラマン達は真横に両断され、直後に血を噴き出し崩れ落ちる。
更に少女は掌に無属性の魔力を収束させ、一直線に放ち、カメラマン達の死体を爆散させる。
アルスマ草原に爆炎が上がり、それを無表情で見つめる謎の少女。
その少女の背後に、次元の裂け目が発生、その中からかつてアルスマファイターとして活躍していた黒乃月(くろの るな)と、かつてカイスマメンバーであったカイト・ブルーレオが姿を現す。
「くそっ! 一足遅かったか!」
カイトは到着が間に合わず、カメラマン達を助けられなかった悔しさのあまり歯を食いしばり、右手に持ったハイパーソードと右手に持ったマスターガンを握り締める。
当時14歳だったカイトも現在は18歳、あの時より成長して背も伸び、大人らしく成長している。
あの時のトレードマークであった青いコートは黒いコートへと変化し、あの時のイメージとはかなり変わっている。
「カイスマ界の襲撃にかなり時間をかけてしまったから……もっと早く駆け付けてれば助けられたのに!」
ルナは右手に持った鮮血の罪人(ブラッド・クライム)と左手に持った魂の狙撃手(ソウル・ティラール)を握り締め、謎の少女を見つめる。
カイトと違って見た目が一切変わっていないルナ。
彼女はあの後、とある禁呪法によって一切年を取らない不老不死の肉体となっている為、一切の変化がないのである。
「来たわね、元アルスマファイター」
謎の少女は冷たい声で静かに呟くと、掌に無属性の魔力を収束させると、一直線に光線として放つ。
二人は先読みして回避し、カイトはマスターガンから破壊ブラスターを放ち、ルナは魂の狙撃手(ソウル・ティラール)から闇の光線(ダークネス・フォトン)を放つ。
二筋の光線は一直線に少女を捉え、直撃して爆炎を上げる。
しかし、一切の油断をしない二人。
二人は爆炎をじっと見つめると、次の瞬間、二人目掛けて二筋の光線が放たれる。
カイトとルナは先読みして回避。
続けて、爆炎の中から円形のバリアを纏った少女が飛び出してくる。
「守りもお手の物ってわけね! なら!」
ルナは闇の魔力を収束させつつ、詠唱を始める。
「我に宿りし混沌の闇よ、黒き炎で全てを焼き尽くし、崩壊させよ、暗黒の波動(ダークネス・エクスプロージョン)!!」
ルナは少女目掛けて魔力弾を放ち、魔力弾は少女に命中すると同時に爆散。
少女のバリアを砕き、体が吹き飛ばされる。
それでも細身の剣を地面に突き立て、何とか勢いを止めるが、そこにカイトが待っていた。
「スパークパンチ!」
雷を纏ったパンチが、少女の腹部に命中すると、少女は気を失い、がくんと崩れ落ちる。
「流石に悪い奴とは言え、女の子は殺せないしな」
「それに、この子からは情報を聞き出さないといけないしね」
二人がそんな話をしていると、二人の背後から足音が聞こえた為、二人は同時に振り向く。
そこには、成長しながらも、とても見慣れた人物が二人、立っていた。
片方は背が少し伸び、髪も長くなって大人っぽい見た目になりながらも、青いジャケットと黒剣ナハトというトレードマークは健在の青年。
もう片方は、成人している為に制服ではないが、制服風のコーデをし、黒髪ボブは少し伸びつつも二刀流は健在の女性。
カイトとルナはその人物を、よく知っていた。
「「翼とヴェローナ!」」
「よっ、久しぶり」
「お二人共、お久しぶりです」
お互い、久々に会う関係ながら、しっかりとあの時の事を覚えており、四人の間に笑顔が生まれる。
「カイト、本当に久々だな、あの時の面影も大分なくなってて、一瞬誰かなって思ったよ」
「翼こそ! 本当に久々だな! 今は何やってんだ?」
「俺は今、ヴェローナと一緒にアルスマシティの防衛隊に入って、アルスマシティを防衛しているんだ、元ナイル盗賊団や元エレメントスタンドの人達も、区域は違うけど、防衛隊に入ってるよ」
「ルナさんは……全然見た目変わっていませんね……」
「あの後色々あってね……ヴェローナちゃんはあの時17歳だったから、今は21歳? 翼くんは18歳だったから22歳か」
「あ、あまり年齢については話さないでください……」
久々に会ってもなお、あの時の様に会話をする四人。
しかし、今は急を要する事態であった。
「カイトとルナが久々にここに来たって事は、他の世界でも何かあったって事だな?」
「ああ、次元の歪みはカイスマ界やペラペランド、別次元の地球など、色々な所に出現していて、それらの世界ではデータユニットが出現しているんだ、カイスマ界は新生カイスマメンバーや元カイスマメンバー、ペラペランドはアゼスマファイター、別次元の地球ではクロストライアルが戦っているけど、よりによって数が多くてな、アルスマ界に来れたのはルナの門(ゲート)の能力のお陰だ」
翼とカイトが会話する横で、ルナはえっへんと胸を張る。
「そう言えば、ルナさんはどうしてカイスマ界に?」
「それがね、私の居た世界は闇の眷属との戦いも終わって平和が続いていたんだけど、私の世界も同じ様に次元の歪みからデータユニットが大量に出現してね、今はミハルお姉ちゃん達が戦ってくれてるんだけど、ミハルお姉ちゃんはこう言ったの、『この敵は陽動、本体は別の場所にいる』って、ミハルお姉ちゃんは察しがいいから気付いたんだと思う、だから私は各地を移動しながら本体を探して、別世界で出会ったレイリアちゃんにも協力してもらって、カイトくんと合流したタイミングでアルスマ界に次元の歪みが発生しているとマスターゴッドが教えてくれたからここに来たの」
ルナの途方もない冒険の物語を聞き、ヴェローナは唖然とする。
「みんなの話を聞く限り、他の世界はデータユニットが出現した、でもこのアルスマ界には……」
翼は気を失ったままの少女を見つめる。
この少女は一体何者なのか分からないが、この事件の鍵はこの少女が握っている事は間違いない。
「とりあえず、話はまた後で、一旦アルスマ本部に移動しないか?」
「え、まだアルスマ本部があるのか!?」
「ああ、今はアルスマシティ防衛隊の拠点になっているけどね、ちなみに、セラフィとラフェールはそこの警備アンドロイドになってるよ」
用途は変わりつつも、アルスマ本部が残っている事に喜ぶカイト。
カイトとルナは翼とヴェローナに連れられ、アルスマ本部へと向かう。
【アルスマシティ防衛隊本部(旧アルスマ本部)】
かつてのアルスマ本部の大きな会場は大幅に改修され、軍施設らしい無機質な外見となっていたが、内部のロッカーや休憩所、トレーニングルーム等の施設は当時のままで、カイトとルナは懐かしさを覚える。
「ここに来るのも久々だね」
「ああ、こうしてまた来れるとは思っていなかったよ」
四人は気を失った少女をトレーニングルームへと連れていき、暴れないように縄で縛る。
「ところでさ、ルナなら分かるか? あの後、アルスマファイターのみんなが何をしているか」
「勿論、あの後会いに行ったんだけど……」
少女が目を覚ますまでの間、ルナは翼の質問であるアルスマファイターのその後について答える……。
瑠依は現在21歳で、あの後人気ブロガーとなり、戦いとは無縁の環境で平和な生活を過ごしている。
サンシロウは現在27歳で、現在は自称、関西最強のたこ焼き屋を営んでおり、この間は仮面ライダー1号のお面を付けた男性と楽しく談話をしていたようだ。
フィオーレは現在22歳、相変わらずレイラとはライバル関係で、関係者によるとまた修行に出ると言って行方をくらましているらしい。
ドラゴニュートは現在25歳、ルナが訪れた際は仲間である優香が魔物に食われて命を落とした為、とても悲しんでいる様子だったが、相変わらず冒険は続けているらしい。
イオナは現在21歳、現在は戦いから身を引き、メイドカフェで仕事を続けているようだ。
リスティリアは現在21歳、しかし、山奥で暮らしている事が災いしたせいで現在何をしているかは分からない、噂によると究極魔法の実験に失敗して命を落としたとされているが、詳細不明である。
千初は現在26歳、相変わらずエイリアン災害は続いており、エージェントとしてエイリアンを退治しているようだ。
「そうか……優香さん死んじゃったのか……」
翼はかつて最終決戦し参加し、とても頼りになった優香の事を思い出す。
「魔族に捕らえられて、最後は魔物に食べられたらしくて……ドラゴニュートさん、とても悲しんでたな……」
関係者の死に場が暗くなりかけた所で、ルナは慌てて残りのメンバーについて話す事にした。
「えっと、他の人のその後についても話すんだけど、これらの時空は時間の流れがバラバラだから、結構年取ってる人もいるけど驚かないでね?」
ウルトラマンティガことマドカ・ダイゴは現在50代、ティガへの変身能力は失い、ヒカリとツバサの二人の子供を授かっている。
ウルトラマンネクサスこと孤門一輝は現在27歳、ネクサスへの変身能力は失い、現在はナイトレイダー副隊長としてスペースビーストと戦い続けている。
ウルトラマンネオスことカグラ・ゲンキは現在25歳、ネオスと分離した事で変身能力を失い、現在もHEARTの隊員として活動しているようだ。
仮面ライダー龍騎こと城戸真司は現在43歳、あの後も仮面ライダー龍騎として活動はしているようで、未だに戦い続けているようである。
仮面ライダーZOこと麻生勝は現在50代、現在も仮面ライダーZOとして世界の悪と戦っているようだ。
仮面ライダーギーツこと浮世英寿は現在22歳なのだが、どうやら神になったらしく、見違えた姿でルナの前に姿を現したらしい。
マジレッドこと小津魁は現在18歳、インフェルシアの残党と戦いながら、人間界とインフェルシアを結ぶインフェルシア親善大使として活動を続けている。
ギャバンtypeGこと十文字撃は現在30代、宇宙刑事として、宇宙全体の治安を守っているほか、最近は赤いギャバンとも出会っているようだ。
キカイダーことジローはアルスマの後、キカイダー01という新たなキカイダーと共に新たな悪と戦っているようだ。
デスティニーガンダムことシン・アスカは現在17歳、愛機をデスティニーガンダムSpecIIに変え、平和の為にコンパスに所属し、戦っている。
ガンダムダブルエックスことガロード・ランは現在16歳、愛機をガンダムX 3号機に変え、成長した姿を見せたらしい。
バーサル騎士ガンダムはアルスマの後、スペリオルドラゴンとなって天界へと行った為に会えなかったようだ。
エイト、クラウド、カムイ、マルス、マリオ、ルイージ、フォックス、キャプテン・ファルコン、ネス、アイスクライマーは現在、別の世界で本家大乱闘に参加しており、サーナイトはモンスターボールのポケモンとして、アブソルとティファはスピリッツとして参加しているようだ。
ダイ、悟空、ピッコロ、遊戯、トレイン、イヴ、ウイングマンは最後に会った時はジャンプチアイランドと言う場所で未知の人物達と一緒に戦っていたようだが、少し前にジャンプチアイランドが消滅した為、現在は何をしているか不明との事。
セリカはアルスマの後、相変わらずアビドス高校の借金を返す為にバイトをしているようだ。
キリトとアスナはアルスマの後、異世界に飛ばされ、そこで未知の人物達と戦っていたらしい。
アリアはアルスマの後、相変わらず武偵として活動しているようで、犯罪者を逮捕し続けているようだ。
クーとレンはアルスマの後、エディルレイドを保護する為に様々な場所を飛んでいる。
かなでに関してはいる世界が特殊である為、会いに行けなかったのだが、とある場所を旅していた際、彼女に似た人物を見かけたとの事、となりにはオレンジ髪の男性が立っていたようだが、詳細不明である。
エミリアはアルスマの後、異世界に戻り、色々と苦労をしているようであり、疲れた様子を見せていた。
メイプルはアルスマの後、相変わらずゲーム生活を謳歌しているようで、ルナに対して楽し気な様子で話していた。
キサラはアルスマの後もI&S事務所を経営しているようで、変わらずD災害の続くベイロンシティで悪魔と戦っているようだ。
R-GUNことイングラム・プリスケンは現在、SRXチームの教官として活動しているようだが、何か怪しい雰囲気を感じたとルナは語っている。
「以上、長くなったけど、アルスマファイター全員のその後だよ!」
「……何か、あんま変わってなかったり、かなり老けてたり、みんな大変だな……」
「本当、驚きです……」
ルナから聞かされた事実に、翼とヴェローナは唖然とする。
もしもう一度彼等と出会ったら誰が誰だか分からなくなっている可能性も高いだろう、時の流れは残酷だと感じた。
「何人か行方不明の人もいたんだけど、基本的にみんな元気そうだったから問題ないと思うよ!」
「ま、ほとんどが元気そうで何よりだ!」
ルナとカイトは唖然とする二人を無理矢理元気づけようと明るく接する。
すると、このタイミングで気を失っていた少女が目を覚ます。
「な、何ですかこれ!?」
「気が付いたみたいだな、悪いが、暴れられては困るから、縛らせてもらったよ」
翼の言葉を聞いた少女は、観念したのか暴れる様子を見せなかった。
その様子を見て翼は安堵し、少女に詳しい話を聞く。
「じゃあ、質問させてもらうぞ、現在、色々な世界で次元の歪みが発生し、データユニットが多数出現して各地に被害を出している、そして君は、その次元の歪みから出現した……君は、各地で発生している次元の歪みと何か関係性があるのか?」
しかし、翼の質問に少女は答えようとしない。
翼はため息をつき、質問を変える。
「じゃあ、質問を変えるよ、君の名前は? そして所属は?」
「……ルミナ・シルヴァリス、所属は答えられない……」
「ルミナって言うのか、所属を答えられない理由は?」
「……トップシークレット、一つだけ答えるなら、私は末端の兵士に過ぎないから」
翼とルミナの会話を聞き、カイトとルナは驚愕する。
ルミナは戦った感じ、そこそこ強かった。
彼女が末端の兵士と言う事は、それを支配する存在は相当な力を持っている可能性があると言う事だ。
「翼くん、どうする? 情報が少なすぎるよ、拷問でもする?」
「いや、流石に拷問は酷すぎるからな……でも、一つ分かった事があるよ、ルミナの所属する組織は、かなり規模の大きな組織って事だ、それも、多次元に侵略の手を伸ばせる組織」
ルナは翼の言葉を聞き、固唾を飲む。
「多次元に侵略の手を伸ばす……まるで別次元の地球で戦ったフィーニスみたいだな」
「組織の規模は分からないけど、一度しっかり対策を取った方がいいだろうな」
カイトと翼は強大な敵の襲来を察知し、戦う事を決意する。
その時、突然トレーニングルームに次元の歪みが生じた。
突然の出来事に戦闘態勢を取る翼たち。
しかし、次元の歪みから現れたのは、彼等のよく知る人物達であった。
次元の歪みから現れたのは、ドラゴニュート、サンシロウ、撃、シン、エイト、遊戯、アリア、セリカ、悟空、イヴ、トレイン、キサラであり、ドラゴニュートの隣には初めて見る少女もいた。
「よっ、みんな久しぶり!」
「ドラゴニュートさん! それにみんな! どうして!?」
「実はカイスマ界のマスターゴッドにアルスマ界の危機を知らされてな……連れてこれそうな奴に招集をかけてこうして集まってもらったってわけだ、まあ、大半が戦いを辞めてたり、忙しかったり、行方不明だったりで、呼べる連中が少なかったが……」
ドラゴニュートは翼の問いに、アルスマ時代の時の様に明るく返答する。
ドラゴニュートはアルスマ時代の時は既に成人であった為、声が少し低くなった事と、髪が腰の辺りまで伸びている事以外、変化はなかったが、一番変化があったのはその服装である。
以前は騎士服みたいな服装であったが、何があったのか全身黒一色で、黒のロングコートを着込んでいた。
もしかしたら優香の死をきっかけに何かあったのかもしれないが、そこは敢えて聞かない事にした。
「まあ、でもわいは何とか来てやったで! ほれ、お土産にわいの作った関西最強のたこ焼きも持ってきたわ!」
サンシロウは髪が少し伸びた以外は全く変化がなく、翼たちは唖然としていた。
翼はサンシロウの作ったたこ焼きを一口食べたが、驚くほど普通であり、これで関西最強かと思った。
「宇宙刑事たるもの、アルスマ界の危機には駆け付ける必要があるからな、こういうの、次元を超えて出張中だ! って言うんだろうな」
「マスターゴッドが急ごしらえとは言え、転送システムを作ってくれたから、何とか俺は来れたけど、不在な人も多いんだな……」
「それにしても、あんたたち結構年取ったわね、時の流れが違うのかしら?」
「賞金が貰えるかは分からないけど、来てあげたんだから、感謝しなさいよね!」
「俺は賞金が貰えなくても問題ないぜ、世話になった借りを返さないといけないしな!」
「で、またスヴェンは置いてけぼり」
「あたしもお世話になったお返しをしないといけないからね、早くシュウくんに会いたいから、邪魔する奴は全員蹴散らしてあげる!」
撃、シン、アリア、セリカ、トレイン、イヴ、キサラが口々に話す。
見知った顔が当時と同じ姿で並ぶ中、一際目を惹くのが、悟空であった。
何と、子供の姿になっており、道着の色も青になっているのだ。
「あの、悟空さんは一体何があったの?」
「ん? まあちょっと色々あってな、子供の姿に戻っちまったんだ、ま、気にするな、ちゃんと戦えっから!」
「私が最後に会った時は大人だったのに……ほんとに何があったの……?」
悟空の見た目の変化に、ルナは戸惑い、頭を抱える。
「やあ、久しぶりだね、翼くん、大きくなったね」
「翼くん、久しぶり! と言っても、もうボク達より年上かな?」
「エイト、遊戯、また会えて嬉しいよ、俺はもう22になったよ、二人は……相変わらずだな」
エイト、遊戯という親友と再会を果たした翼。
翼はまた出会えた親友を前に、涙を流す。
「僕はあの後、本家の大乱闘に参加してたんだけど、色んな世界の強い人と戦えてなかなかいい経験になったよ」
「ボクも、色んな決闘者(デュエリスト)とデュエルをして、メキメキとデュエルの腕前を上げたよ、もう一人のボクはもう、いないけどね……」
エイトと遊戯の言葉を聞いて、二人もそれぞれいろんな経験をしたんだと察する。
会えなかった期間も、自分達はいろんな経験をして強くなったんだと実感した。
「翼くん、僕達もこの戦い、手を貸すよ! 翼くんがピンチな今、大乱闘どころじゃないと思ってね、僕だけは他の勇者に変わってもらう事でここに来れたんだ」
「今のボクがどこまで戦えるか分からないけど、ボクも頑張る! だから一緒に戦おう!」
「ありがとう、二人共!」
翼、エイト、遊戯の三人は拳を合わせ、共に戦うと強く誓った。
「ところでドラゴニュート、そこにいる女の人は誰だ?」
「ん? ああ、この子は俺の仲間のフレア・アストレアだ、元の世界でもドラコとかレクシアとか色んな仲間がいたんだけどな……」
ドラゴニュートは悲し気な表情で俯く。
「優香は魔物に食われて死ぬし、ドラコとダークドラコはクローン故の寿命が解決できずに死んで、ダークドラゴニュートはダークドラコを失った悲しみを俺にぶつけて、最後は俺が戦いに勝った事でダークドラゴニュートも死んだ、レクシアはとある世界で騎士団の教官をやる事になったから、今はフレアと二人旅状態なんだ……」
ドラゴニュートの話を聞き、カイトは俯き、涙を流す。
「ドラゴニュート……いくら何でも悲しすぎるだろ……!」
「ああ、だから俺は失った命の悲しみを背負う形で黒衣を身に纏ってるんだよ、だからこそ、お前達にはこれ以上何も失わせない、だから戦うと決めたんだ」
「ドラゴニュート……お前は強いな……」
涙を流すカイトの前に、キラキラとした長い銀髪と、桃色の瞳をしたフレアが立つ。
頭には銀のティアラが飾られ、青い宝石の埋め込まれた白いドレスを着た少女。
彼女の存在は、まるでドラゴニュートの心の闇を照らす光の様な存在に見えた。
「フレア・アストレアです、ドラゴニュートさんから皆さんのお話は聞かされていただいております、私がどこまで戦えるか分かりませんが、努力はさせていただきます」
フレアはぺこりとお辞儀をし、他の仲間は各自「よろしく」と返す。
ここに今、かつてのアルスマメンバーが揃い、戦う準備は整った。
「さて、問題はその敵さんがどこから来るかって事だな」
「確かに、敵がどこから来るか分からない以上は対応できないもんね」
トレインとイヴの言葉が、戦う準備を整えていた一同の警戒を解く。
「そう言えば、そうだったな、そもそも敵が何かも分からないわけだし」
カイトは頭を掻きながら苦笑いする。
その時、縛られたままのルミナの様子が一変する。
何かに怯えたような様子を見せ、ただ事じゃないと悟った翼が様子を聞く。
「おい、一体どうしたんだ?」
「『あの人』が来る! 任務に失敗した私を殺しに! お願い助けて!」
恐怖のあまり声が上ずったルミナに驚く一同。
翼は演技の可能性を考慮した上で、先程までとのルミナの感情の変化を計算し、ルミナの言っている事は本当だと判断。
「どこから、誰が来るんだ?」
「三大幹部! 私達の上司! ここに来るの!」
ルミナの言葉を聞き、翼たちは敵の接近に警戒する。
翼はルミナを守るように、ルミナの周囲を警戒。
すると、トレーニングルームに次元の歪みが三つ発生し、一同は距離を取る。
直後、次元の歪みが爆発。
その爆発が時間を巻き戻すかの如く消え去ると、その中から三人の女性が姿を現す。
三人は全員が黒いロングコート状の軍服を着ており、かつてアルスマファイター達と戦ったエレメントスタンド四天王を彷彿とさせた。
「あなた達ね? 上司ってのは」
キサラが剣の切っ先を向けながら問う。
すると、三人の内の一人、炎の様な赤髪ロングをなびかせた赤い瞳の女性が前に出る。
「その通り! 正解よ! あたしはディメンジョンブレイカー三大幹部の一人、フレイミール!」
続いて、青髪ロングで青い瞳の女性が前に出る。
「同じく、ディメンジョンブレイカー三大幹部の一人、グラシーヌ」
最後に、金髪ロングで金の瞳の女性が前に出る。
「ディメンジョンブレイカー三大幹部の一人、ボルトーネだよん」
三人は腰に携えた剣を抜刀し、空高く掲げ、切っ先を合わせる。
「「「三人合わせて、我ら、支配者レーティナ様に仕えし、ディメンジョンブレイカー三大幹部!」」」
突然の名乗りに、一同はポカーンとする。
「何あれ、カイテンジャーの真似?」
「どちらかと言うと、1981年放送のスーパー戦隊シリーズ第5作、太陽戦隊サンバルカンに似ていると言うか……ほら、色も人数も一緒だし……いやでも、三人共女だから安心戦隊ALSOKかな……でもあれは色が違うな、元ネタはサンバルカンとどっかで聞いたけど……」
「つーか、俺達が4年前に戦ったエレメントスタンドとほぼ同じじゃねーか!」
セリカ、ドラゴニュート、カイトが立て続けに思った事を口にする為、名乗りポーズのままの三人は顔が赤くなっていた。
「黙らんかアホ共! これは由緒正しきディメンジョンブレイカー三大幹部の名乗りだ! スーパー戦隊やエレメントスタンドは関係ない!」
フレイミールは名乗りポーズを辞め、大声で反論する。
その言葉に違和感を抱いた、ドラゴニュートとカイトは反応する。
「え、お前ら、スーパー戦隊シリーズ知ってんの?」
「今はそっちじゃないだろドラゴニュート、エレメントスタンドを知ってるのか?」
二人の言葉に、三人は不敵な笑い声を上げる。
場の空気が一気に曇り出す、それと同時に、この三人はただ者ではないと一堂に察知させた。
「私達の組織名が何故、『ディメンジョンブレイカー』と言うのか知らないみたいね」
「そりゃ簡単ッスよ! 我々ディメンジョンブレイカーは、様々な時空を旅しては『目的』を果たしてきたからッスね!」
グラシーヌとボルトーネは自慢気に自分達の行動を話す。
ディメンジョンは次元、ブレイカーは破砕者、つまり、彼女らの目的とは……。
翼は震えながら、その答えを口に出す。
「様々な次元を……破壊していると言う事か……!?」
「ピンポーン! 正解ッスよ、そこの好青年クン!」
翼の問いを、ボルトーネは満面の笑みで肯定する。
想像を絶する彼女らの行動に、一同は恐怖する。
「何で……何でそんな事をするんですか!」
ヴェローナは声を荒げ、ディメンジョンブレイカーにその『目的』を問う。
「そんなの決まってる、あなた達は必要以上に次元を歪め過ぎた、正確には、色んな次元を当たり前の様に繋げては行き来している、それはつまり、自然の摂理に反した行為、私達の目的は、そういった世界を『破壊』する事……」
グラシーヌの語る目的はつまり、別次元への往来が活発化している世界を滅ぼすと言うもの。
そんな手前勝手な理由で人々の平穏を壊すディメンジョンブレイカーに、一同は怒りを覚える。
「世界を滅ぼすなんて、そんなのあまりに身勝手だよ! 君達はそれで正義の味方にでもなったつもりなのか!?」
「そうだよ! ボク達が駄目で、君達がいいなんて、そんなのおかしいじゃないか!」
温厚なエイトと遊戯も声を荒げ、ディメンジョンブレイカーへ怒りをぶつける。
だが、三人は表情一つ変えていなかった。
「困るのよ、そんな身勝手な事をされては! 世界とは本来、独立したものでないといけない、独立した世界で、そこに生まれた者はそこで一生を送らねばならない……なのに、あんた達みたいな連中に勝手に行き来されると、そこに住む者達の人生や運命が狂うの! とある地球で好き勝手に次元を荒らしまわったフィーニスを、あんた達が倒した事は十分に理解している、あいつはあたし達では対処できなかったからこその感謝よ、でもね、これ以上あんた達に好き勝手に次元を荒らされると困るの!」
フレイミールは自分達が行動を起こす理由を全て話した。
そこには、かつて別次元の地球で暗躍した存在の名も入っていた。
しかし、それでも翼たちの意思は変わらない。
「だとしても! そこに住む人達全てを滅ぼすなんて間違っています!」
「それに、お前達に勝手に俺達の行動を取りしまわれるのも気に食わねえ!」
「そうだよ! あなた達はそんなに偉い存在なの!?」
「お前達が何故、そんな警察みたいな行動を取ってるか、教えてもらえない限り、俺達は納得しないぜ」
翼、カイト、ルナ、ドラゴニュートはそれぞれの意見を三大幹部にぶつける。
四人の言葉に、三大幹部は言葉を失う。
「その沈黙は、勝手に次元を取り締まっていると言う事でよろしいでしょうか?」
フレアが三大幹部に対し、更に詰め寄る。
しばらくして、フレイミールがゆっくりと重たい口を開く。
「……これから先の未来、更に次元の行き来が活発化する事となるわ、その結果、どうなるか、あんた達には分からないわよね? 答えは簡単よ、歪み過ぎた次元は崩壊し、宇宙全体が次元の渦に呑み込まれて崩壊する……あたし達ディメンジョンブレイカーは、その崩壊から脱出し、この時代に来た生き残りの未来人よ、これで納得するわよね? あんた達も」
フレイミールの口から語られた衝撃の事実に、アルスマファイター達は沈黙する。
好き勝手に次元を行き来した末の未来が、宇宙の崩壊を引き起こす……。
「じゃあ、もし、俺達がこれ以上次元を歪めたら……いずれ崩壊するというのか……」
「その通りよ、ドラゴニュート・ブラウスピカ、例え過去を変えたとしても、あたし達のいた未来は崩壊したまま……でも、あんた達の未来は変えられる……どう? 悪い話ではないでしょう? 孫悟空、あんたなら分かるはずよ」
フレイミールは悟空に話題を振る。
悟空は、かつて出会った人物から似たような話題をされたことがある。
「……確かに、未来のトランクスも言ってたな……過去を変えても、自分達の未来は変わらねえって……つまりおめえらは、オラ達を助ける為に、次元を歪める可能性のある世界を片っ端から潰してるってわけか……」
「そう言う事、だからあたし達は様々な次元を繋げるきっかけを作ったこのアルスマ界は特に危険と判断して、データユニット以上の戦力であるルミナを送り込んだんだけど……次元を超えて最高戦力が助けに来るのは予想外だったわ、ま、あんた達ならやりかねない事だったけどね……」
アルスマファイター達は全員が沈黙する。
自分達がこれ以上次元を歪めてしまったら、確実にこの宇宙が崩壊し、全次元に住む人間が全員死ぬ。
少し前まで戦う気満々だったのにもかかわらず、ほとんどのメンバーが戦意を喪失してしまう。
「どうやら完全に沈黙してしまったみたいね」
「だったら、後は簡単に制圧できそうッスね! 皆殺しッス!」
その時、翼がボルトーネに対して一筋の斬撃を放った。
咄嗟に回避するボルトーネ、翼は彼女らに切っ先を向ける。
「……確かに、お前達のしてる事は正しいかもしれない……全ての次元を救うかもしれない……でも! それでも! 一方的に制圧して滅ぼす事しかできないお前達の行動が正しいとは、俺にはどうしても思えない! もっと話し合いとか対話とか、そう言う手段もあるのに、それを取らないお前達の行動は間違っているようにしか思えないんだよ! いや、確実に間違っている!」
翼の言葉に、アルスマファイター達は奮い立つ。
「よく言った、翼! 俺もどこか引っかかる所はあった、だが、翼が全部言ってくれたよ! ディメンジョンブレイカー! お前達の行動は防衛じゃなく、ただの侵略だ! 悪意のある存在は全て滅ぼしてしまえって言う、侵略行為! 俺はそんなやり方、絶対に認めない!」
「俺も同じだぜ! 俺はかつて、自分の故郷が侵略されたからよく分かる、そこに住む人達を皆殺しにして、何が正義だ! 何が防衛だ! そんな事で宇宙に住むみんなが救われたって、何にも嬉しくなんかねえよ! 俺達の未来を救いたいって言うなら、もっとやり方を考えろよ!」
ドラゴニュート、カイトも翼に続く。
三人の言葉を聞き、ディメンジョンブレイカー三大幹部は歯を食いしばる。
「あんた達……よくも好き勝手言ってくれるじゃない……!」
「私達はあなた達を救ってあげようとしているのに、恩知らずね……」
「あんな奴ら、みーんな殺しちまえばいいッス!」
フレイミール、グラシーヌ、ボルトーネは剣を構え、戦闘態勢を取る。
「来るっ! みんな行くぞっ!」
翼の合図を受け、アルスマファイター達も戦闘態勢を取り、各自ディメンジョンブレイカー三大幹部へと向かっていった。
「コール! デスティニー!」
シンは転送コマンドを叫び、マスターゴッドの作った転送システムから、デスティニー型パワードスーツを装着する。
「蒸着!」
撃が蒸着コードを叫ぶと、アルスマ界の衛星軌道上の亜空間にいる超次元高速機ドルギランから、特殊軽合金グラニウム製のコンバットスーツを粒子の状態に変換して電送。
電送された粒子は撃に吹き付けられるようにして体表面で構成され、僅か0.05秒でコンバットスーツを装着し、宇宙刑事ギャバンtypeGとなる。
「まずはわいから行くで! たこ焼きを焼いて鍛えたサンシロウパンチを食らいや!」
サンシロウは高く跳んでフレイミールにサンシロウパンチを放つ。
「邪魔よ!」
しかし、フレイミールの放った回し蹴りを食らい、サンシロウは壁に衝突し、ダウンしてしまった。
「相変わらず真っ先にやられるんだな、お前は」
「あの人の強さは変わらないね、トレイン」
トレインとイヴは呆れながら、トレインは愛用の拳銃である装飾銃ハーディスの銃弾を、イヴは腕にナノマシンで作った翼を作り、その翼から羽根状の弾丸を放つ羽根の弾丸(フェザーブレッド)という技をグラシーヌに放つ。
しかし、グラシーヌは素早く剣を振い、弾を全て弾く。
「畜生! またアルスマに出場してた頃みたいに電磁銃(レールガン)が使えりゃいいのに、今のハーディスはクリードとの最終決戦で壊れちまった上に、細胞放電現象も発生しなくなったから撃てねえ!」
「急いで来たから、スヴェンの作った特殊弾頭もないしね……」
グラシーヌは剣を握ってない左手を正面に向けると、トレインとイヴのいる位置に冷気が発生する。
「ッ! 避けろ! 姫っち!」
トレインとイヴは咄嗟にその場から離れると、さっきまでいた位置に、巨大な氷柱が発生する。
「危ない……もし避けてなかったら氷漬けだったよ……」
イヴは危機一髪の状況に思わず冷や汗をかく。
「私達はそれぞれの属性に特化した技を使えるんですよ、その威力は、エレメントスタンドなどとは比べ物になりません」
「そゆこと! じゃあ、次は僕の番ッス!」
ボルトーネが左手を上に挙げると、元アルスマファイター達の上空に雷雲が発生する。
そしてボルトーネが手を振り下ろすと、雷雲から広範囲に落雷が発生。
ファイター達はそれぞれ落雷を回避したり防いだりしていたが、この攻撃は危険と判断し、真っ先にボルトーネを倒す事を決意する。
「あの攻撃は危険だ! ドラゴニュート! 俺と一緒にあいつから倒すぞ!」
「OK! カイト!」
ボルトーネに突撃するカイトとドラゴニュートを追って、フレアも「お供します」と言ってドラゴニュートの後を追う。
「おーおー、早速来たッスね、なら、殺しちゃうッスよ!」
ボルトーネはカイト達目掛けて連続雷撃弾を放つ。
だが、カイト達の前にフレアが瞬間移動で姿を現し、聖なるバリア、ルミナス・バリアを展開し、連続雷撃弾を防ぐ。
「ドラゴニュートさんはやらせません!」
「ありがとう、フレア!」
更に、デスティニーが高速飛行で、ギャバンtypeGが光球化移動でドラゴニュート達を先回りする。
デスティニーが大型対艦刀のアロンダイトで、ギャバンtypeGがレーザーブレードオリジンでボルトーネに斬りかかる。
だが、ボルトーネは自身の周囲に電撃を発生させ、二人を弾き飛ばす。
「そう簡単には近寄らせないッスよ!」
「雷撃か……これは避雷針では対処できないな……だったら、ぶち破るまでだ!」
カイトはマスターガンを正面に向け、強力な破壊光線、破壊ブラスターを放つ。
ボルトーネはすぐにこれは防げないと察知し、回避行動を取る。
「危ないッスね! 何する気ッスか!」
ボルトーネは先ほどまでの余裕の表情を崩す。
カイトはその様子を見て、ボルトーネの守りを貫通する事は容易いと察知する。
「やはり、あれは防げないらしいな!」
「ならカイト、同時に決めるぞ!」
「おう!」
カイトは再びマスターガンを向け、破壊ブラスターの発射態勢を、ドラゴニュートは右掌に光の魔力を収束させ、ライトブラストを放つ態勢を取る。
「破壊ブラスター!!」
「ライトブラストォォォッ!!」
同時に放たれた高火力のエネルギー攻撃は、ボルトーネ目掛けて一直線に放たれ、ボルトーネはすぐに回避行動を取るも、二人は射線上の向きを変え、ボルトーネを追尾する。
「まずい……! うあぁぁぁっ!!」
ボルトーネは遂にエネルギーの濁流に呑まれ、全身を焼かれて消滅する。
「ボルトーネがやられた!?」
「クッ! あんたらよくもぉ!!」
仲間を一人やられた事で、フレイミールとグラシーヌの怒りのゲージが上がる。
グラシーヌは目を閉じて両手を広げ、精神を集中させる。
すると、グラシーヌの周囲に激しい冷気が発生し、吹雪が起きる。
あまりの冷気に元アルスマファイター達の動きは止まる。
フレイミールはグラシーヌの後方で体を炎で包んでいるので無事だ。
「私のこの絶対零度の冷気を前には、あなた達は身動きも取れないはずです」
あまりの冷気を前に、元アルスマファイター達の身体はみるみる凍り付いてゆく。
「みんなはやらせないよ! ベホマズン!」
エイトは全体回復魔法のベホマズンを唱え、仲間全員の傷を治療する。
「おっと、そうでした、エイトは厄介な回復魔法が使えるから、真っ先に潰さないといけないのでした……」
グラシーヌは冷気を発生させたまま、エイトに掌を向け、冷凍エネルギーを収束させる。
(まずい! あのままじゃエイトさんが! エイトさんは……みんなはやらせない! ボクが守る!)
遊戯は戦友である仲間達を守る為、一枚のモンスターカードをデュエルディスクにセットし、召喚する。
「破壊竜ガンドラ召喚!」
遊戯がモンスターカードをセットすると、遊戯の前に漆黒の巨大な破壊竜が出現する。
「破壊竜の閃光(デストロイ・ギガ・レイズ)!!」
遊戯が叫ぶと、破壊竜ガンドラは全身から赤い光線を放ち、グラシーヌを攻撃する。
光線はグラシーヌの周囲に着弾し、爆発を発生させる。
「クッ!」
攻撃を受けてグラシーヌが怯むと同時に冷気は収まり、その隙に元アルスマファイターが総攻撃をかける。
アリアが二丁拳銃のコルト・ガバメント・クローンを、セリカがアサルトライフルのシンシアリティを発砲。
グラシーヌはすぐに回避するも、その先回りをしたキサラの振り下ろした剣で左腕に切り傷を作る。
続けてヴェローナが両手に持った剣による連続斬撃を避けきれず、切り傷を増やす。
「トドメは僕の奥義で!」
そう言ってエイトは青白い光の竜に変身する、エイトの最終奥義、ドラゴンソウルだ。
青白い光の竜に変身したエイトはそのままグラシーヌに突撃する。
「そんな……! この私が……!」
グラシーヌは何が起こったか理解する間もなく、光の竜に衝突して消し飛んだ。
残すはフレイミールだけである。
「残すはお前だけだ! フレイミール!」
翼の声がトレーニングルームに木霊する。
しかし、フレイミールは目を閉じ、俯いたままだ。
「……まさか、グラシーヌもボルトーネも倒されるなんてね……でも、あたしはそう簡単にはやられないわよ!」
そう言ってフレイミールは目を見開き、剣を構えたまま前方に突撃する。
元アルスマファイター達はフレイミールを迎え撃つ準備をする。
その時、フレイミールの身体を、高熱の火炎が包む。
完全な火だるま状態となったまま、フレイミールの身体は加速する。
「食らいなさい!」
フレイミールは体を宙に浮かせると、そのまま高速回転しつつ飛行し、前方にいたヴェローナ、ギャバンtypeG、エイト、遊戯を吹き飛ばす。
四人は大きく吹き飛ばされダウン、更に、破壊竜ガンドラも撃破されてしまう。
「一体何だあの火の玉は!」
デスティニーが高速飛行するフレイミールを見て叫ぶ。
フレイミールは再び反転し、再突撃する。
そのフレイミールの動きを止める為、ルナとフレアが前に立ち塞がる。
「守護《パラディウム》!!」
「ルミナス・バリア!!」
ルナとフレアはそれぞれバリアを展開し、防御力を増した状態で、フレイミールの動きを受け止める。
高速回転するフレイミールの動きは完全に止まり、フレイミールは後方に跳んで距離を取る。
そこに、アリア、セリカ、トレインが射撃を放つが、フレイミールは正面に炎の壁を展開して銃弾を防ぐ。
「中々やるじゃない! まさか、あたし達をここまで追い詰めるなんて! なら、これはどう!」
フレイミールは地面に剣を突き立てる。
その瞬間、トレーニングルームの床の広範囲が炎上、ファイター達の身体を焼き、ファイター達は悲鳴を上げる。
飛行能力を持つルナ、フレア、デスティニー、悟空、イヴ、キサラは体を浮き上がらせ、他の仲間を持ち上げる。
「成程、全員まとめて焼き尽くそうって魂胆か、中々考えるじゃねえか」
「単純な殲滅ではこの手段が楽なのよ」
トレインの言葉に、フレイミールは冷たく返す。
「でも、このままじゃ何もできないぞ、みんなも俺達を連れて戦うのは無理だろ?」
ドラゴニュートは冷静に戦局を分析する。
「……俺が行きます、みんなは、仲間を頼みます!」
そう言って翼は意識を集中させ、体に黄金のオーラを纏う。
「そうか、おめえには覚醒能力があったな! なら、オラも!」
悟空は連れていたカイトをデスティニーに託し、自身も超サイヤ人へとパワーアップする。
「か~め~は~め~波---ッ!!!」
悟空はかめはめ波を放つ。
エネルギー波の余波が火災を消し飛ばしながら、フレイミールに向かい、フレイミールは炎の壁では防ぎきれないと察知し、回避する。
だが、その先には翼が先回りしていた。
「なっ……!?」
「これで終わりだ! 極光天界斬り!!」
翼は黒剣ナハトに眩いまでの光を身に纏い、巨大な光の刃を生成してフレイミールを斬りつける。
その一撃は、フレイミールの身体を切り裂く。
「あり得ない……ディメンジョンブレイカー三大幹部が……こんな簡単に……」
フレイミールの身体は炎へと変わっていき、やがて消滅した。
こうして、ディメンジョンブレイカー三大幹部を退けた元アルスマファイター達。
しかし、この戦いでかなりのダメージを負ってしまい、戦えるメンバーは限られていた。
「……皆さん、怪我や火傷が酷いですね……」
フレアが足の火傷をさすりながら、周囲の様子を見て呟く。
「……フレアも、あんま無理はするなよ、相当痛いんだろ?」
「痛いですけど……私は皆さんが傷付く方が辛いですから……」
「……優しいんだな、お前は、あの時もそうだった……」
ドラゴニュートはドラコとダークドラコが寿命で死んだ時の事や、ダークドラゴニュートと決着を付けた事、優香が死んだ時の事を思い出す。
それらの出来事が終わった後、ドラゴニュートはただ泣き続けた。
そんなドラゴニュートをいつも優しく抱きしめていたのが、他の誰でもないフレアだった。
「……私はただ、苦しむドラゴニュートさんの事を放っておけませんでしたから……ここにいる皆さんや、この世界だってそうです、私にとっては、どれもかけがえのない物なんですよ」
二人の間に、一瞬の静寂が訪れる。
一呼吸おいて、フレアが口を開く。
「私がドラゴニュートさんに付いてきたのは、ドラゴニュートさんがどこか、死に場所を探しているように見えたからです、ドラゴニュートさん、あなたはこの戦いで死ぬつもりでしょう?」
フレアの言葉に、カイトや翼、他の元アルスマファイター達が反応する。
「……やっぱ、お前には気付かれてたか……」
ドラゴニュートはフレアから目を逸らす。
その時、カイトはドラゴニュートの胸ぐらを掴んで壁際へと押し付ける。
「ドラゴニュート! お前どう言う事だよ!? 死のうとしてたって!? 昔のお前は、そんな奴じゃなかったはずだ!」
カイトは昔のドラゴニュートを知っていた。
明るくて、正義感があって、悪い事は許せない人物、そして何より、アニメや特撮の話で何度も盛り上がった。
そんな人物が今、死に場所を探してこの戦いに参加していると聞いて、かつてのドラゴニュートを知る仲間達は驚いていた。
「……俺の心はもう、深く傷付いているのさ、あの後、大切な人を沢山失って……もう何も考えたくない……全て終わりにしたいんだよ……」
そう言ってドラゴニュートはカイトの手を振りほどこうとする。
その時、カイトはドラゴニュートを殴り飛ばす。
「馬っ鹿野郎! そんな事で死んだ人達が喜ぶと思うのかよ!? お前を知る人達が悲しむとは思わないのかよ!? 俺は……俺達は、お前の事が大切だ! 大乱闘での出来事、アニメや特撮を観た事、全部覚えてる! お前はそれでいいのかよ!!」
ドラゴニュートは俯いたまま沈黙する。
「ドラゴニュートさん、俺は、ドラゴニュートさんに何があったのかは分かりません、でも俺、ドラゴニュートさんには死んで欲しくないんです、死に場所を探しているんだとしたら、この戦いには参加しないで欲しいです、俺達は、死ぬ為に戦ってるんじゃないですから……」
翼は、ドラゴニュートに死ぬ為ではなく、守る為に戦っていると伝える。
「それに、ドラゴニュートさんの事を一番大事に想っている人は、一番身近にいるじゃん!」
ルナの言葉を聞いたドラゴニュートは、フレアの方を向く。
フレアは涙ぐんだまま、ドラゴニュートに抱き付き、ドラゴニュートの胸の中で嗚咽を漏らす。
ドラゴニュートは静かに目を閉じ、優しくフレアを抱き締める。
「……ごめん、フレア……俺は生きるよ……もう、どこにも行かないから……」
ドラゴニュートはフレアが泣き止むまで、優しくフレアを撫で続けた。
しばらくして、カイトの持っていた通信機にマスターゴッドからの連絡が入る。
「マスターゴッド、どうした?」
『大変だ、遂に各世界に敵の本隊が送り込まれた! カイスマ界、別次元の地球、ペラペランド……他にも多数の世界に、データユニットとは違う兵士達が送り込まれている!』
「何だって!?」
三大幹部を倒した事で、ディメンジョンブレイカーは行動を急いだのだろう。
それだけ、アルスマファイター達の関係者が危険だと認知された、だから全力で潰す。
「みんなは、みんなは大丈夫なのか!? キルシュちゃんは!?」
『私なら大丈夫だよ、安心して』
「良かった……」
通信越しに聞こえてきた恋人キルシュの声を聞いたカイトは安堵する。
しかし、事態は一刻を争う状況であった。
『とりあえず、こちらは元カイスマメンバーも召集して何とか食い止めてる、別世界の地球も、クロストライアルを始めとした組織が相手しているし、ペラペランドの方も多分大丈夫だろう』
「なら、俺達はディメンジョンブレイカーの基地を叩けばいいか……その鍵を握るのは……」
一同はルミナの方を見る。
支配者レーティナとやらを倒し、この戦いを終わらせる為には、ルミナに頼るしか方法はない。
カイトは「また後で」と言ってマスターゴッドとの通信を切り、ルミナに駆け寄る。
「ルミナ、頼む! 俺達はみんなを助けないといけない! 協力してくれ!」
カイトだけでなく、他の元アルスマファイター達も、口々にルミナに頼み込む。
ルミナはしばらく沈黙した後、重たい口をゆっくりと開いた。
「……支配者レーティナ様は、三大幹部よりも遥かに強い……多分、あなた達じゃ勝てない……死にに行くだけ……それでも行く?」
ルミナは問う、死ぬ可能性が高い戦いに、わざわざ赴くかと。
しかし、元アルスマファイター達の答えは決まっていた。
「行くよ! 俺達は、全次元に住む人達を守る為に戦うんだから!」
アルスマファイターを代表して、翼が答える。
「ディメンジョンブレイカーを倒した後、どうやって次元の崩壊を食い止めるかはまだ決まってない……それでも俺達は、そこに住む人々の安全は守らないといけないから!」
今すぐに次元の崩壊を食い止めるのは無理だとしても、今は人々の平和の為に戦う。
既に、戦う理由は決まっていた。
「なら、私は止めない……あなた達がレーティナ様に勝てるとは到底思えない……それでも行くのなら、私が連れていく……これは、あなた達に助けてもらったほんのお礼だから、勘違いはしないで欲しい……」
ルミナが喋り終わった後、カイトはルミナを縛っていた縄をハイパーソードで切る。
身動きが取れるようになったルミナは、目を閉じて両掌を前に出し、意識を集中させて空間を裂き、次元の切れ目を作る。
「レーティナ様は、この先にいる、早く行って!」
ルミナが合図すると、ファイター達は一斉に次元の切れ目に飛び込む。
全員が飛び込んだ事を確認すると、ルミナも飛び込み、次元の切れ目はゆっくりと閉じた。
【ディメンジョンブレイカー本部 司令室】
次元の切れ目に入ると、そこは司令室であった。
数多くのモニターに各世界の侵攻状況が映し出されており、各世界の仲間達が必死に、命懸けで戦っていた。
その司令室の奥、玉座のような場所には、一人の長い銀髪の女性が座っていた。
黒いドレスの様な軍服を着た、白い瞳の女性、その表情には一切の感情がない冷酷な顔。
この女性こそが、レーティナだろう。
「よく来たわね、まさかここまで来る連中がいるとは……」
レーティナは玉座から立ち上がると、手に黒い長剣を出現させた。
「つまり、ここまで来たと言う事は、ディメンジョンブレイカーの作戦に反抗すると言う事ね」
「当たり前だ! 相手を一方的に滅ぼして従わせるなんて、間違っている!」
レーティナの言葉に、翼が力強い声で反論する。
「お前達が侵略している次元にだって、何も知らず頑張って生きている人たちだっているんだ!」
「そんな人達を……お前の身勝手な理由で殺されてたまるか!」
ドラゴニュート、カイトも続く。
しかし、そんな彼らに、レーティナは一切の反応を示さなかった。
「意見を纏めると、お前達はディメンジョンブレイカーの作戦が気に食わないと、そう言う事ね?」
「当然です! あなた達のしている事は、許される事ではありません!」
レーティナの問いに、フレアが返す。
レーティナはため息を一つつくと、左手をアルスマファイターに向け、閃光を放つ。
次の瞬間、想像を絶する光の爆発が起き、アルスマファイターは全員、地面に崩れ落ちる。
「な……何が起きたの……!?」
ルナは今起きた状況が一切理解できず、混乱する、それは他の全員も同じであった。
「だから言ったんだ、レーティナ様には絶対勝てないって! そして、あれだけの力を持つレーティナ様でも、次元の崩壊は食い止められない! だから、滅ぼすしかないの! あなた達も馬鹿じゃないんだから分かるでしょう!?」
ルミナが遂に堪えていた感情を爆発させる。
それはまるで、絶対に諦めないアルスマファイターを、ディメンジョンブレイカーと重ね合わせているようでもあった。
「それは理解しているさ、だけどな!」
「多くを犠牲にして助かろうなんて、そんな最悪の決断だけはしたくないんだ!!」
ドラゴニュートとカイトがルミナに返す。
「だから何でよ! 次元の崩壊を起こしている原因である世界を潰せば、確実に次元の崩壊は止められるのよ!? 分からないの!?」
「分かっている……分かっているさ! でも、人の命は何よりも大切なんだ! 何かを守る為に何かを犠牲にするなんて、間違っているんだよ! だから、俺達は絶対に諦めない! 諦めないぞ!!」
翼はルミナにそう返すと、ゆっくりと立ち上がった。
傷ついた身体で、ナハトを杖代わりにしながらゆっくりと。
「愚かな連中だ……これしか術がないなら、従うのが常識だろう、それとも、他にこの宇宙を救う術でもあるのか?」
「今はないし、お前達が未来の世界から覚悟を決めてこの世界に来た事も、理解している……でも、滅ぼすだけが正義ではありません! 今の俺達にできる事は、次元の行き来をやめる事だけです……でもいつか必ず! 次元の崩壊を起こさずに、各世界を行き来する方法だって見つけてみせる! レーティナ! あなたが教えてくれた未来の話が、この宇宙の未来を変えるかもしれないんだ!!」
翼はナハトを大きく振り上げ、レーティナに振り下ろす。
その一撃を、レーティナは受け止める。
「貴様は……一ノ瀬翼だな、なら、いい事を教えてやる……私のいた宇宙にも、アルスマは存在した、だが、それはこの宇宙のアルスマとは違う物だった……私の居た世界のアルスマは、人形に魂の宿った人形生命体がファイターの半分を構成し、他の大乱闘のある世界の住民との関わりもあった……だが、ある日突然、宇宙全体が次元の崩壊に巻き込まれて消えてしまった……」
レーティナの口から語られた真実に、アルスマファイター達は驚愕する。
その中でただ一人、フレアだけは目を閉じ、俯いたままであった。
「あそこにいる銀髪の白いドレスを着た女、奴が唯一のアルスマファイターの生き残りだ、奴はアルスマ界で起きた動乱の最中一度は死んだが、その魂がどう言う訳か別の世界に行き付き、新たな肉体を手に入れたみたいだな……恐らく、その世界を支配していた者によるものだろう……」
レーティナの言葉を聞き、フレアはゆっくりと口を開ける。
「レーティナさんの言う通りです……私はあの日、確かに死にました……ですが、私の魂はサファイア・ホロウによって拾われ、あの世界に転生させられたのです……この新たな姿を貰って……」
「フレア、そんな話、一度も……」
「話したく……なかったんです……! 私の知るみんながもうこの世にいない事を……ホロウから聞かされたんですからっ……!!」
フレアは堪えきれなくなって嗚咽を漏らす。
ドラゴニュートはフレアの頭に手を伸ばし、優しく髪を撫でる。
「そう言う事だ、お前達も滅びたいなら、勝手にすればいい……本当に次元の崩壊を食い止められるのならな!」
レーティナは翼を力任せに押し返す。
翼の身体は宙を舞い、地面に叩き付けられる。
だが、翼はもう一度立ち上がる。
「ほう、まだ立ち上がる力があったか……」
「お前の言う事が本当なら……そっちの世界の俺は、次元の崩壊に巻き込まれて死んだんだな……俺だけじゃない……ドラゴニュートさんや、カイトもみんな……!!」
「ああ、死んだよ、そして同じ過ちを繰り返そうとしている……実に馬鹿な連中だな……」
レーティナの言葉を聞き、翼は拳を握り締める。
「馬鹿なのはあなただ! あなたは、事を急ぎ過ぎて、侵略でしか次元の崩壊を止められないと思い込んでいる、ただの傲慢な侵略者だ!!」
「何……!?」
翼の言葉に、レーティナは初めて不快感を顔に出した。
「確かに俺達は間違ったかもしれない……それでも相手を滅ぼして宇宙を救おうなんて……決して許される事じゃない! 他人を裁く権利なんて、誰にだってないんだ! あなたは絶対に間違っている!!」
「何も知らない癖に……勝手な事を言うなっ!!」
レーティナは左手から閃光を放ち、光の爆発で翼を吹き飛ばす。
翼は背中を壁にぶつけ、吐血する。
「私達がこの事を伝えなかったら、お前達は何も知らずに死ぬだけだったんだ! それを教えてやったのはどこの誰だ!? 誰でもない私達だろう!!」
「だから……それを最初から各世界に伝えれば、こんな無益な争いは避けられたんですよ……!!」
翼はゆっくりと立ち上がる。
もはや立ち上がる気力もないはずなのに、翼は何とか立ち上がった。
「一つだけ本当のことを言ってやる! レーティナさん! 力だけじゃ何も解決しない!!」
その時である、翼の全身を、眩い光が包み込んだ。
赤と青の、二つの光。
その光の中には、二人の翼がうっすらと見えていた。
一つは、かつてのアルスマファイター時代の翼の姿、そしてもう一つは、青ではなく、赤いジャケットを着た翼の姿。
「これは……別次元の俺なのか……?」
「翼さん……力を貸してくれるんですね? みんなの為に……」
フレアはかつての戦友である翼の姿を見て、涙を流す。
赤と青、二つの翼の光は、今を生きる翼に、新たな力を与えた。
光が収まると、そこには、赤と青のトリコロールカラーのライトアーマーを着た翼の姿があった。
そして、翼の傷も全て癒えており、翼の全身にはこれまで感じた事のない強い力がみなぎっていた。
「感じる……別の世界と、過去の俺の力を……! これなら、お前を止められる!!」
「ふざけるな! 滅んだ者の力など!!」
レーティナは再び閃光を放つが、その光は翼に命中する事なく、全てライトアーマーに吸収される。
予想外の事態に驚愕の表情を見せるレーティナは、何度も閃光を放つが、全てが吸収され、命中しない。
諦めたレーティナは刀身に光のエネルギーを纏い、翼に振り下ろす。
だが、その一撃を、翼はナハトで切り払い、レーティナの剣を折る。
「馬鹿な……! こんな事が!」
「レーティナ! この一撃で、全てを終わらせる!!」
翼は力を込め、全身に眩い光を纏い、剣を縦に構える。
そのまま体を宙に浮かせ、レーティナ目掛けて一直線に突撃する。
「俺達は……未来を掴んでみせる!!」
すれ違いざまに、剣を横薙ぎに振り、レーティナの身体を切り裂く翼。
体を切り裂かれたレーティナの身体は、少しずつ光の粒子へと変わってゆく。
「私のやり方は……間違っていたの……?」
「確かにやり方は間違っていました……でも、あなたのお陰で、この宇宙は救われるかもしれないんです……そこには、感謝をしてもしきれません……レーティナさん、本当にありがとうございました」
「なら……絶対に……救ってね……この宇宙を……約束よ……」
そう呟き、レーティナは微笑み、一筋の涙を流す。
やがて、レーティナの身体は光となって消えた。
それと同時に、翼の身体を纏っていたライトアーマーは消失。
レーティナ亡き今、各次元の戦いを辞めさせる為、ルミナはレーティナの玉座の下へと急ぐ、そこには、通信装置があるからだ。
ルミナは通信装置を起動し、マイクに語り掛ける。
「各次元を侵攻中のディメンジョンブレイカー全兵士に告ぐ、レーティナ様と三大幹部はアルスマファイターとの戦いで戦死しました、その戦いの中で、アルスマファイター達は次元の崩壊を食い止める為に努力すると決意しました、だから、これ以上戦って命を散らす必要はありません、総員、速やかに戦闘行動を停止してください、繰り返します……」
ルミナが各次元に通信を送ると、各次元での戦闘行動はすぐに停止した。
【カイスマ界 カイスマ本部前】
「どうやら、全員戦いを辞めたみたいだな」
「全く、一時はどうなるかと思ったぞ!」
「これ以上の持久戦は流石にキツいからな!」
「カイトくん……勝ったんだね……」
カイスマ界では、カイトの仲間であるダークカイト、サルマン、レオナルド、そしてカイトの恋人であるキルシュが戦いを終え、一息ついていた。
【別世界の地球 エクレールの村】
「何とか戦いを辞めてくれたみたいだな……」
「これで私達クロストライアルの任務も終わりですね」
別世界の地球で戦っていた別世界のドラゴニュートとその恋人アイラが、戦いを辞めて投降の意思を示す兵士達を見て、静かに呟く。
【ルナの居た地球 スティグマの村】
「敵の攻撃が止まったって事は、ルナがやってくれたんだね……帰って来たら沢山褒めてあげないと」
ルナの姉、ミハルは、ルナの事を想いながら、空を見上げる。
【ペラペランド アゼスマタウン】
「戦いは終わったみたいだな」
「他の世界での戦闘も停止したみたいですね、兄さん」
「流石にぼくも疲れたなぁ……これでゆっくり休めるよ……」
ペラペランドにいるアゼストと妹のアゼリア、加勢に来ていたメネズの三人は、戦いを終えてくたくたになっていた。
全ての戦いを終えた後、各世界に侵攻したディメンジョンブレイカーの兵士達と戦死者の遺体は、ディメンジョンブレイカーの本部へと輸送された。
戦死者の遺体は専用の設備で弔われ、主を失った兵士達は行き場を失っていたが、全員がアルスマ界に受け入れられる事となった。
ルミナが殺したカメラマンは、カイスマ界のマスターゴッドが大乱闘の設備を流用して蘇生させて事なきを得た。
ディメンジョンブレイカーの兵士達は皆、アルスマ界の防衛隊に配備される事になり、住居もしっかり提供される為、不自由はないだろう。
戦いを終えたアルスマファイター達は皆、元の世界へと帰還した。
しかしそれは、長い別れ、そして最悪の場合、永遠の別れを意味していた。
【アルスマ界 アルスマストリート】
「じゃあ、みんなとはここでお別れになるって事だな」
「みんなは私が送っていくけど、もしかしたら一生会えないかもしれないんだよね?」
「まあ、次元の崩壊が進んだらいけないからな」
翼、ルナ、ドラゴニュートが話し、全員がしんみりとする。
「まあ、安心しろって、マスターゴッドがきっと、安全性の高い転移装置を作ってくれるはずだからさ!」
「それまでしばらくのお別れですよ、だって、永遠の別れなんて、悲しすぎるじゃないですか」
カイトとフレアが笑顔を見せる。
「大丈夫です! きっとまた会えますよ!」
「そうだよ、これは一時の別れだから、永遠の別れじゃないさ」
遊戯とエイトが皆を安心させる言葉を投げかける。
「みんな、いつかまた会おう!」
翼の言葉と共に、全員が手を重ねる。
その後、ルナの連れてきたアルスマファイターは全員ルナの手によって元の世界へと帰還し、ルナも自身の世界へと帰っていった。
残されたのは、翼とヴェローナ、そしてルミナの三人だけ。
「皆さん、約束は守ってくれますかね?」
「当然ですよ、皆さんはそういう人ですから」
ルミナの問いに、ヴェローナは皆に絶対の信頼を寄せた言葉を返す。
「それより、ルミナはこれからどうするんだ?」
「私は……適当な場所で野宿でもするつもりです」
「なんなら、うちに来ないか? 君なら妹と仲良くなれそうだし」
「え……」
ルミナは驚いた表情で翼を見つめる。
しばらく固まった後、照れくさそうに髪を弄りながらルミナは翼に返事を返す。
「別に、いいですよ……野宿するよりはマシですから……」
「ふふ、決まりだな、じゃあ、これからよろしくな、ルミナ」
翼はルミナに手を伸ばし、ルミナは翼から顔を逸らしながら、頬を赤く染めて翼の手を取る。
その手を、ヴェローナも取っていた。
「今日だけは、私も仲間に入れてもらいますよ、翼さん?」
「え、あ、分かったよ」
驚いた表情でヴェローナを見つめる翼を見て、ヴェローナはにこりと微笑む。
そして、三人は仲良く翼の家の方角へと歩いて行った。
この戦いは様々な次元を震撼させた大事件として、後の世に語られる事となる。
次元の崩壊はその後、ゆっくりと長い時間をかけて修復していくようであり、しばらくは様子見となった。
そして、その事件から半年が経過した頃、マスターゴッドの不眠不休の努力もあり、無事に安全性の高い転移装置の開発に成功、再び次元の行き来が可能となった。
それからこの装置はカイスマ界と親交の深い世界へと配られ、戦友たちは再び再会した。
この戦いを最後に、アルスマ界では大きな争いは起きる事はなく、平和な世が続いたと言う。
これは、アルスマ界で起きた最後の戦いの物語であった。