クロストライアル小説投稿ブログ

pixiv等で連載していた小説を投稿します、ここだけの新作も読めるかも?

創造する二人の女子高生

今起きている出来事は現実なのか、それとも夢なのだろうか、二人の少女はそう考え、現実逃避をしていた。

事の発端はある日の学校の帰り、名門校に通う高校2年の二人は幼い頃から仲の良い二人である。

「今日も学校疲れたね」

水色の長い髪に青い瞳の彼女の名は、右山水愛(みぎやま あくあ)、真面目な性格ではあるが、たまに羽目を外しすぎるのが玉にキズである。

「そうだね~、将来はお金持ちになりたいな~」

緑色の瞳に黄緑色のショートカットが似合う彼女の名は、左口瑠璃(さぐち るり)、明るい性格ではあるが、たまにシリアスモードに入る事がある。

「お金持ちか~、なれるといいね」
「うん!」

次の瞬間、二人の目の前で眩い閃光が発生し、その光を浴びた二人はその場からいなくなっていた。

どれほどの時間が流れたであろうか、それとも、全く時間が流れてないであろうか、水愛が目を覚ました時にはさっきまで隣にいた瑠璃の姿はなく、何故か狭い操縦席の中に座っていた。

その操縦席は、ロボットアニメなどでよくあるコックピットの様な造りで、目の前には周囲を確認するためのモニターがあり、両脇には様々なレバーやスイッチがあった。

「何…ここ…」

ここはどう考えても日本ではない、ロボットを保有している国と言ったら国連に加入している国と、帝国軍ぐらいであるが、日本は戦闘機と戦車だけで済ませているため、ロボットは保有していない。

それに、水愛はさっきまで学校の帰り道だった、恐らく、夢を見ているのだろう。すると、通信機からノイズ交じりで男性の声が聞こえてきた。

「お前、何やってる! そんな所で突っ立って、死にたいのか!?」
「死にたいって…ここはどこなんです!?」
「どこって…ここは戦場だ! 俺達は国連軍、クソ帝国軍と戦っている最中だろ? そんな事も忘れたのか?」
「帝国…軍…?」

丁寧に説明をしてくれた男性の乗っている機体は銀色の機体であり、モニターの識別コードを見ると、名前はシルヴァと言う機体らしい。水愛はロボットについて詳しくはないが、恐らく、国連軍の量産機であると思われる。その時、目の前から銃弾が飛んできた。敵の機体がライフルで攻撃を仕掛けてきたのだ。

「うわぁっ!?」

水愛はとっさにレバーを引き、自機の持っていたシールドで防御をした。本来なら操縦方法など分からないはずだが、何故か操縦方法が分かった。何故かは分からないが、恐らく勘であろう。水愛は生き残る為、自機の持っていたライフルで攻撃を仕掛けた。

「こんな所で死にたくない!」

ライフルから放った銃弾は敵の機体に命中し、大爆発を起こした。ちなみに、敵の機体名前はフロンドと言う機体で、砂漠の砂の様なカラーリングの機体であった。

「やるじゃねえか、この調子で…」

次の瞬間、さっきまで丁寧に説明をしてくれた男性の機体が銃撃を受けた。銃弾はコックピットに命中し、大爆発を起こして撃墜された。

「あ…あぁ…死んだ…の…?」

水愛の目の前に現れたのは、金色のフロンドであった。ロボットアニメだとこういうのは大体指揮官機、今の水愛はまさに絶体絶命であった。

「とりあえず、今は逃げるしかないよね!」

仲間は誰もおらず、自分1人しかいない水愛は、特に戦う理由のないこの世界で死ぬわけにもいかず、敵に背を向けて逃げる事にした。だが、金色のフロンドは凄まじいスピードで追いかけてきた。

「赤い機体でもないのに早いの!?」

水愛はあっという間に追いつかれ、地面に押し倒された。相手の機体が接近戦用のナイフを構えた瞬間、水愛は恐怖のあまり悲鳴を上げた。すると、相手の機体は攻撃を止め、接触回線で通信を送って来た。

「その声、水愛ちゃんだよね?」
「え? その声って、瑠璃?」
「そうだよ、瑠璃だよ、無事だったんだね」
「もうちょっとで死ぬところだったけどね」

二人は戦場から離れ、誰も来ないところで会話を始めた。瑠璃の話によると、やはり元の世界で閃光を浴びた後、目が覚めた時にはコックピットの中にいたのだと言う。恐らく、あの光によってこの世界に来たのなら、もう一度あの光を浴びるしか帰る方法はないのだろう。

「こんな危険な世界もう嫌、早く帰りたいよ」
「そうだね、また水愛ちゃんと一緒に学校生活送りたいな」
「でも、その為には元の世界に帰らないといけない」
「そもそも何で私達がこんな危険な世界に来なくちゃいけなかったんだろう」

その時、モニターに複数の熱源が確認された。識別コードはシルヴァの物ともフロンドの物とも異なり、その数は100機以上にも上った。

「何…? この数…」
「分からない、でも、凄いスピードで私達の方に向かっているよ!」

100機近くの機体はすぐさま水愛たちの前に現れた。約5mほどのその機体は昆虫の様な見た目をしており、1機1機は約10メートル代のシルヴァはフロンドよりも小さかったが、圧倒的な物量で水愛と瑠璃の搭乗機に取り付き、自爆攻撃を放ってきた。

「キャアアアッ!!」
「水愛ちゃんッ!!」

直後、二人の乗機は爆散し、二人の意識は途絶えた。それからどれほどの時間が経過したであろう。水愛が目を覚ますと、そこは自宅のベッドであった。

「んん…あれは…夢…?」

どうやら、制服を着たまま眠りについてしまったようである。時計を見ると学校に行かなくてはいけない時間だった為、荷物を持って家を出ようとした。だが、家にいるはずの父親と母親はおらず、違和感を持ったまま水愛は外に出た。

「な…何…? これ…?」

水愛が外に出ると、そこは辺り一面が真っ黒の世界であった。街も木も何もない、全てが真っ黒の空間、まさに闇世界と言う言葉が似合った。

「あっ! 水愛ちゃん!」

しばらくすると、遠くから瑠璃がやって来た。目には涙がたまっており、自分達の想像がつかない状況に頭の中がパニックになったのであろう。

「瑠璃、無事でよかった」
「ねえ、これどういう事なの? 私達はあの時死んだはずじゃ…」
「分からない、でも、ここも私達の居た世界じゃない」

「いや、ここが本来お前達の居た世界だ」

その低い男性の声は水愛と瑠璃の頭の中に直接響いてきた。ここが自分達が居た本来の世界、その言葉に二人は困惑した。

「誰かは知らないけど、どういうことなの?」
「そうだよ! 私達は普通の女子高生だよ!」
「お前達が女子高生だったのは、あの閃光を浴びた時までだ」
「だからどういう事? 説明してよ!」
「分かった、ならば説明してやろう」

その声の主は水愛と瑠璃がこの世界の真実を語り始めた。ある日、国連軍と帝国軍が戦争を始めた。その戦争は激化し、互いに多くの犠牲を出したが、水愛と瑠璃の居た中立国である日本には関係がなかった。

だが、ある日帝国軍は虫型の無人兵器を開発。しかし、その無人兵器は暴走し、自爆攻撃を始めた。その後、無人兵器は近くの帝国軍基地に向かい、攻撃を仕掛けた。

そして、その日は訪れた。帝国軍基地にあった核ミサイルに無人兵器が自爆攻撃を仕掛け、その核ミサイルが世界各国の核ミサイルに誘爆、そして、世界は滅亡した。

当然、その時に水愛と瑠璃は死んだはずであったが、どう言う訳かこの世界にいるのである。

「じゃあ、既に私達は死んでるって事?」
「いや、君達は生きてる、この世界で」
「この世界? この世界って何なの?」
「世界の終末、君達の居た世界から数億年が経過し、宇宙が滅びた終わりの世界だよ」

「そんな…じゃあ私達はもう元の世界に戻れないの?」
「元の世界に戻っても、結末は一緒さ、世界は核の炎に包まれて滅ぶ、それだけだ」
「それって、どっちにしてもバッドエンドじゃない!」

「そうだね、だったら、また新しく世界を創ってみないか?」
「世界を?」
「ああ、私はこの世界の神だ、だが、もう私には世界を創る力がない、君達がこの力を受け継いでくれれば、また世界は生まれる」
「でも…できるかな…」

「安心しろ、君達ならできるはずだ、私は君達二人に国連軍と帝国軍の争いを見せた、あんな争いのない世界を作ればいいだけだ」
「あの戦争の風景は神様が見せてくれたんだ」
「そうだ、そして今、君達二人の力で争いのない世界を創る、できるか?」
「分かった、やってみるよ」

その時、二人の目の前で閃光が発生した。この光はあの時と同じ光であったが、あの光とは違い、暖かい光であった。

「さあ、創造するんだ、君達の創りたい世界を…」
「私達の創りたい世界…」
「それは…」

水愛と瑠璃は二人で過ごした学校生活を思い浮かべた。平和で楽しい学校生活、争いからはかけ離れた世界。その瞬間、目の前が明るく輝いた。それは、世界の創造の光、新たな世界が生まれる。

長い時が流れ、水愛が目を覚ました時、彼女は自宅のベッドの上にいた。今まで何があったのか、思い出そうとしても思い出せない。だが、思い出せなくてもいい、水愛はそう感じた。

「水愛ー、ご飯できたわよー」
「はーい」

水愛はパジャマから制服に着替え、朝食を終えた後、荷物をまとめて外へ出た。

「行ってきまーす」

そう言って家を出ると、家の入口には瑠璃が待っていた。

「おはよう、水愛ちゃん」
「瑠璃…おはよう…」

二人は一度世界の滅亡を経験し、新たな世界を創造した。その世界は、争いのない平和な世界、この世界で二人は幸せな人生を歩むであろう。二人の物語はまだ、始まったばかりなのである。