クロストライアル小説投稿ブログ

pixiv等で連載していた小説を投稿します、ここだけの新作も読めるかも?

トワイライトバトルロイヤル

どうして…私は戦っているんだろう…何の為に…こんな危険な事をしているんだろう…鉄で作られた武器を握り、それを振って人間同士で殺し合いをしている…私はただの一般人で、大好きな人と一緒に平穏な日々を過ごしていた…そんな私の平穏な日常は、ある日突然奪われた…そう…あれは、大好きなあの人と一緒にデートをしていた日の事だ…。

「ねえ、匠海くん、今日はどこに連れていってくれるの?」
「特に決めてないかな、葵の行きたいところに連れてってあげるよ」
「本当? ありがとう、匠海くん! それじゃあ、いつも行っているあのカフェに行こうよ」
「ああ、分かった」

私の名前は羽海野葵(うみの あおい)、何の特徴もないただの一般人女性で、これと言った取柄もない普通の女性だ。会社に勤めてはいるが、いつも失敗ばかりで上司から怒られてばかりの駄目な女だったりする。でも、そんな私の事を好きでいてくれる人がいる。それは、成瀬匠海(なるせ たくみ)くん、ちょっと頼りない所もあるけど、とても優しい私の恋人。今日は匠海くんと一緒にデートに行く事になっている。デート先は私達がよく行くカフェではあるのだが、このカフェは私達にとって大切な場所なのだ。

「…ねえ、匠海くん…」
「何? 葵」
「匠海くんと初めて会ったのもこのカフェだったよね」
「そうだね、でも、あの時の葵はどこか悲しそうだった…」
「あの時は務めている会社で失敗ばっかりしてて落ち込んでいたんだ、その時慰めてくれたのが匠海くんだったね」

その日は私が勤めていた会社で大失敗をした日の事だ。大事な書類をコーヒーで汚してしまったり、シュレッダーにかけて上司や同僚に迷惑をかけてしまった。最終的に上司に怒鳴られてしまい、ショックで一人、カフェで落ち込んでいたのである。その時、声をかけてくれたのがほかでもない匠海くんだったのだ。

「あの…」
「…何ですか?」
「えらく落ち込んでいるようですが、大丈夫ですか? よかったら相談に乗りますよ?」

その後、匠海くんは時間を気にする様子もなく、ただ私の話を聞いてくれた。私が悩んでいる事を優しく聞いてくれて、私は泣き出してしまったのである。そんな私の頭を匠海くんは優しく撫でて慰めてくれたのだ。見ず知らずの人に優しくしてくれる匠海くんの懐の深さに、私は惹かれてしまったのかもしれない。

「あれ以来、僕と葵はよく会うようになったね」
「そうだね」
「でも何で葵は僕の事を好きになったの?」
「それはね、あの時私を助けてくれたからだよ」

あの時と言うのは、私が公園で匠海くんを待っていたら、不良3人に絡まれてしまい、困っていた時の事である。不良は私の腕を掴み、私を無理やり連れて行こうとした。私は何とか振り解こうとしたものの、不良の力は強く、逃げることが出来なかった。その時、私を助けてくれたのは他でもない、匠海くんだった。

「離して!!」
「お姉さん、ちょっと俺らとお茶しようよ」
「ちょっとだけ、ちょっとだけだからさ」
「悪いようにはしないから、ねっ?」
「やめろーっ!!」

匠海くんは私の腕を掴んでいた不良に体当たりをして突き飛ばした。男性の中では非力な部類に入る匠海くんは、昔から喧嘩をするような人間ではなく、当然、喧嘩をしても弱かった。でも、匠海くんは私を助ける為、不良たちに立ち向かってくれたのだ。

「痛ってぇな! 何しやがんだ、この野郎!!」
「葵は僕の彼女だ! 手を出すようなら、容赦はしないぞ!!」
「てめえ…調子乗ってんじゃねーぞ!!」
「俺らに逆らうとどうなるか…」
「きっちりと教えてやらあ!!」
「喧嘩は嫌だけど…葵を守る為なら! うおぉぉぉぉぉ!!」

匠海くんは不良に殴られながらもめげずに殴り返していた。不良のパンチを食らって顔が痣だらけになってもダウンする事なく不良を殴り返す匠海くん。最終的に匠海くんのタフさに耐えかねた不良たちはその場を去って行った。

「てめえ…中々やるじゃねえかよ…」
「きょ…今日はこのくらいで勘弁してやる!!」
「覚えてやがれー!!」

不良たちが去った後、私は顔を痣だらけにして地面に倒れ込んだ匠海くんを介抱した。とりあえず、持っていたウェットティッシュで匠海くんの顔を拭いた。

「匠海くん、大丈夫?」
「何、このくらい平気さ、葵を守る為なら…」
「匠海くん…ありがとう、でも、もうあんな無茶はしないでね…」
「分かったよ、葵」

私はカフェで微糖のコーヒーを飲みながら昔の出来事を思い返していた。色々あったが、今となってはどれも懐かしい記憶であった。それらの記憶は皆、匠海くんとの大切な記憶なのである。

「あの時は僕の好きな人が襲われてて、さすがに腹が立ったんだよ」
「でも、あの一件で、私は匠海くんの事をもっと好きになっちゃた」
「それは僕も同じさ、あの一件で、僕は葵の事を好きだって事に初めて気づかされた」
「匠海くん…」

その時、匠海くんの表情が真剣な表情になった。普段は優しい顔の匠海くんが真剣な表情になるのは珍しい。匠海くんは多分、私に大切な事を伝えたいのだと思う。長い付き合いで私はそれを確信した。

「葵、今日は君に、大事な事を伝えたいんだ」
「何?」
「僕は葵の事を、心の底から愛してる、だから、僕と…」

その時、私の目の前が真っ暗になった。一番大事な瞬間で目の前が真っ暗になり、私は何が起こったのか一切分からずにいた。

「えっ!? 何? 何々? 何が起こったの!? ねえ、匠海くん、匠海くん…」

その後、私の意識は途絶えた。あれから何時間経ったのか、または全く時が経ったのかは分からない。その時、意識が途絶えていた私は一人の人物の声によって目覚めさせられた。

「起きろ…羽海野葵…」
「はっ! ここはどこ? それに、あなたは誰!?」
「我が名はトワイライト、トワイライトバトルロイヤルの主催者だ」

トワイライトと名乗った人物は声しか聞こえず、どのような姿かは不明であった。声から察するに30代後半の男性だと思われるが、その詳細は一切不明であった。

「トワイライト…バトルロイヤル…?」
「そう、トワイライトバトルロイヤル、私が考案したゲームだ」
「そんな事はどうでもいいのよ! 早く私を元の場所に帰して!」
「それはできない、貴様が元の場所に帰るには、このバトルロイヤルで戦い、生き残らなければならない」
「嫌よ、戦うなんて、私は絶対に嫌!」
「貴様に拒否権はない! さあ、戦場に転送させてやろう!」
「きゃあっ!!」

私はトワイライトによって転送され、コロッセオのような場所へと送られた。そこには、私以外にも3人の人間がいた。男性が2人、女性が1人と、男女が半々と言うメンバーであった。

「うぅ…」
「やっと全員揃ったか…」
「あなた達は?」
「俺は九重律紀(ここのえ りつき)、大手会社九重コーポレーションの社長だ」
「僕は涼風在真(すずかぜ あるま)、善良な一般市民さ」
「わ…私は…雨野宮陽菜乃(あめのみや ひなの)です…ただの…女子高生です…」

律紀は眼鏡をかけた堅苦しそうな雰囲気の人物であり、武器はレイピアであった。社長ではあるものの、非常に若く、20代前半と言った所であろうか。在真は優しそうな見た目の少年であり、武器はナイフであった。体は細く、あまり喧嘩が得意と言う感じはしない為、普通の一般人なのだろう。最期に、陽菜乃だが、彼女は制服を着た正真正銘の女子高生であり、武器は槍であった。彼女に関しては非常に臆病な事が見て取れる為、どう見ても戦闘には不向きである。こうして見ると、トワイライトバトルロイヤルに選ばれた人達は特に共通点がない事が分かった。

「私は、あなた達と殺し合いをしなくちゃいけないの?」
「そうらしいね、けど、僕と陽菜乃ちゃんは戦うつもりはないよ」
「私、争いごとは苦手なので…」
「良かった、律紀さんはどうなの?」
「俺は戦うよ」
「えっ?」
「何なの? もしかして俺が戦わないとでも思ってた?」
「そうよ! だって私達が戦う理由なんてないでしょ?」
「確かに、俺達が戦う理由なんてない、けどさ、俺は日常に退屈してたんだ、だから暇つぶしにはちょうどいいじゃん」
「そんな理由で、殺し合いをしなくちゃいけないの?」

日常に退屈していたから、暇つぶしに殺し合いをしないといけない? そんな馬鹿な理由で見ず知らずの私達が殺し合うなんて、私は絶対に嫌だ。私は絶対に生きて帰り、匠海くんとの平穏な日常を取り戻したいのだから。すると、コロッセオ内にトワイライトの声が響いた。

「お前達、そんなに戦いたくないか?」
「なんの恨みもない人と戦うなんて、私は絶対に嫌です!!」
「このトワバトに勝ち残った者には、どんな願いも叶えてやる、だから早く戦うのだ!」
「ほら、トワイライトもこう言ってんじゃん、だから早く戦おうよ」
「………嫌よ」
「来ないなら、こっちから行かせてもらう!!」

律紀は突然レイピアで斬りかかって来た。その攻撃を、私は鉄で作られた剣で受け止め、鍔迫り合いとなった。律紀は社長と言う役柄でありながらも、体は鍛えているようであり、私は少しずつ押されていた。

「あなたは…どうしてそんなに戦いたいの!?」
「俺は小さい頃から天才肌だったんだ、だから何でも完璧にこなしていた、最初は俺って凄いなと思っていた、けどさ、俺は完璧すぎたんだ、だから次第に退屈になってきた、で、何かおもしろい事がないかな~なんて思ってたら、このトワイライトバトルロイヤルに参加することになったんだ」
「つまり、あなたはゲーム感覚でこんな殺し合いに参加しているの!?」
「そうさ、だってスリルがあって面白そうじゃん」
「えっ!?」
「僕はね、人生にスリルが欲しかった、ヒヤヒヤするようなスリルがね、けど、訪れるのは生ぬるいスリルばかり、けど、このトワイライトバトルロイヤルだと、最高のスリルが味わえる! こんなに嬉しい事はないよ」

この律紀と言う人は馬鹿げている。人生にスリルが欲しいから、日常が退屈だから、こんな命懸けの戦いをする、そんな命を捨てるような事をする人間がいるとは思わなかった。私は命懸けの戦いをするより、平和な日常を送る方がいいと思っている。でも、そんな言葉が通じない人もこの世にはいるのだと、私はそう実感した。

「あなた、死ぬかもしれないのよ? それでもいいの!?」
「それはそれで、スリルがあって面白いね!」
「だったら私は、迷わずあなたと戦うわ!」

私は鋼の剣で律紀を攻撃した。律紀はとっさに後方に跳び、その攻撃を回避した。しかし、律紀の表情は嬉しそうな表情であり、戦いを楽しんでいる様子であった。

「いいねぇいいねぇ! やる気になった?」
「勘違いしないで! 私はあなたと違って、殺し合いをするつもりはない、あなたを止めるだけよ!」
「なら、やってみなよ!」

余裕ぶっていた律紀ではあったが、彼の戦闘センスはとても高く、ただの一般市民である私の攻撃を軽くレイピアで受け止めた。その直後、律紀は私の腹部に蹴りを入れた。私は仰向けに倒れ、その私に対し、律樹はレイピアを向けた。

「そろそろトドメを刺してあげるよ、さよなら」

律紀はレイピアで私を攻撃してきた。その時、もうダメだと思った私は剣を振った。私の振った剣はレイピアの刀身に当たり、律紀の手元から弾き飛ばされた。

「何っ!?」

レイピアが当たらなかった事に気付いた私は、彼を倒すなら今しかないと思った。私は立ち上がり、律紀を剣で斬りつけた。斬りつけられた律紀は深紅の血を噴き出し、地面に倒れ込んだ。

「くっ…俺の負けだ、さあ、トドメを刺せ」
「トドメは刺さないわ」
「なぜ、トドメを刺さない?」
「だって、私達が戦う理由なんてないじゃない」
「ふっ…お前は…頭の中がお花畑だな…」

戦いが終わった事で、陽菜乃は安心した様子であった。誰しも、命を懸けて殺し合う事はしたくない、それは、私も陽菜乃も同じであった。しかし、先ほどまで大人しかった在真の様子がおかしい事に、私は気づいてしまった。

「在真さん、これで戦いは終わったみたいですね」
「そうだね、これでゆっくりと君を殺すことができるよ」
「…えっ?」
「さよなら、陽菜乃ちゃん」

在真は突然陽菜乃の胸にナイフを突き刺した。ナイフは陽菜乃の心臓にまで達し、胸から深紅の血が流れ出た。陽菜乃は口から血を吐き出し、悲し気な表情で在真の方を見ていた。

「在真…さん…なん…で…?」

陽菜乃は地面に倒れ込み、そのまま二度と動く事はなかった。ずっと信頼していた在真に裏切られ、陽菜乃は殺されてしまった。陽菜乃の亡骸から流れ出る深紅の血、それはまるで陽菜乃の体から抜け出た魂のようにも見えた。生まれて初めて人が殺される様を目撃した私は、背筋が凍り、恐怖を感じた。

「在真くん!?」
「はっはっはっはっは! 死ねぇっ!!」

在真は陽菜乃の持っていた槍を握ると、律紀目掛けて投げつけた。投げた槍は律紀目掛けて一直線に飛んで行き、律紀の背中に突き刺さった。律紀は口から血を吐き出し、彼もまた、全く動かない亡骸になってしまった。一度に二人も人が死んだ、こんな事は普通の一般市民ならまず経験しないであろう。私は頭の中が混乱し、どうしていいか分からなくなった。それでも私は、元の世界に帰る事だけを考え、精神を正気に保っていた。

「在真くん…何で…何でこんな事をするの!!」
「葵さん、あなたはまだ僕が善良な一般市民だと思い込んでるの? 残念! あれは嘘だよ! 僕はか弱い女性や弱った人を殺すのが大好きな殺人鬼なんだ、知らなかったかい?」
「そんな事、知るわけないじゃない!」
「まあ、知らないのも無理ないか、僕は警察にバレないように殺してるからね、バカな警察はまだ僕が犯人と気付いてないんだ」

まさか、彼がこんな危険人物だとは思わなかった。最初はただの善良な一般市民のフリをして、このタイミングで一度に二人も殺した。彼は、人を殺す事に慣れている、私は今、危険人物と対峙している、そう考えた瞬間、私は恐怖を感じた。

「在真くん、何であんな嘘ついたの!?」
「そんなの簡単さ、あの律紀って人が強そうだったから、葵さんと戦わせて弱るのを待ってたんだ、それに、陽菜乃ちゃんや葵さんを絶望させるには、この演技をするのがいいと思ったんだ、いい人だと思っていた人に裏切られる、ここまで絶望を味わう事なんてないよね?」

狂ってる、彼は人間じゃない、人間じゃないからこんなことが出来るんだ。彼は人間の姿をした怪物、恐怖に押し殺されそうになった私は、そう考え、それと同時に彼を許せないと感じた。恐らく彼は何の罪もない人を数多く殺している、殺された人達は苦痛や恐怖を感じたに違いない。もし彼が私を殺し、彼が元の世界に帰ったら、きっと同じ事を繰り返し、もっと多くの犠牲が出るに違いない。彼は、彼だけはここで殺さないと駄目だ。

「在真くん、私が今どんな感情なのか分かる?」
「もちろん! 絶望を味わって恐怖に怯えてるんでしょ?」
「違うわ、最高に腹が立ってるのよ、それも今までにないくらいにね!」
「な…何で…!?」
「私は…全力であなたを倒す!!」

私は剣を振り、在真の持っていたナイフを弾き飛ばした。武器を失った在真は突然弱気になり、後ろに後ずさりを始めた。彼は武器を持っていないと強がることのできない小心者だったのだろう。こんな奴に多くの人が殺されたと思うと、許すことが出来なかった。

「な…何でだよ? 何で絶望を味わわないんだよ!?」
「あなたは、罪のない人をたくさん殺した、そして、あなたが勝ち残ったら、もっと多くの人が死ぬことになる、私は、それを全力で阻止する!!」
「や…やめろ! 僕を殺すつもりか!? 僕を殺したら、今度はお前が人殺しになるぞ!!」
「確かにそうね、でも、私が人を殺すのは今回だけ、それも、あなただけよ!!」
「ふざけるな人殺しぃぃぃッ!!」
「それが罪のない人々を大勢殺した人間の言う事か!!」

私は全力で在真を斬りつけた。在真は体から血を噴き出し、口から血を吐いた。

「この…人…殺し…」

そう言い残し、在真は地面に倒れ込み、動かなくなった。初めて人を殺した私は、腕が震え、持っていた剣を地面に落とした。私は地面に膝を付き、震える右手を左手で抑えた。しかし、震えが収まる事はなく、今度は体まで震え始めた。彼は人間じゃない、彼は人間じゃない、彼は人間じゃない。自分にそう言い聞かせ続けたが、震えが収まる事はなかった。その時、コロシアムにトワイライトの声が鳴り響いた。

「おめでとう、羽海野葵、さあ、この先の部屋に進むが良い」

トワイライトがそう言うと、コロッセオにあった扉が開いた。色々あったけど、これで私は元の世界に帰ることが出来る。そう思い、私はトワイライトの部屋へと向かった。

「トワイライトさん、この部屋は?」
「ここは私の部屋だ、そして、これが私の姿だ」

トワイライトは緑色の液体に満たされたカプセルに入っていた。緑色の液体越しに確認できる姿は、ローブを着込んでおり、よく確認できなかった。ローブの奥からは目のような物が見えたが、その目は怪しく光っており、この人物は人間ではないと、私はそう確信した。

「さて、すぐにでもお前の願いを叶えてやりたいが、一つ頼みがある」
「何でしょうか?」
「お前の命を私によこせ」

トワイライトがそう言うと、地面から複数の触手が生え、私の体を絡め取った。私は身動きが取れなくなり、その触手から何かが吸われていた。触手に何かが吸われる度、私の体から力が抜けていくのを感じた。

「なっ、何をするの!?」
「私は見ての通り、カプセルに入らないと肉体を保てない弱々しい生物だ、だが、私は他の生物の生命エネルギーを吸収し、さらに強力になる能力を持っている、そこで私はトワイライトバトルロイヤルを開催し、勝ち残った強い人間の生命エネルギーを吸収する事にした、羽海野葵、君は選ばれたんだよ、この私にね!」
「そんな事に選ばれても、何にも嬉しくないわ! 私は、匠海くんと結婚するの! だから、絶対に生きて帰らないといけないの!!」
「くだらぬ…そんな事、何の価値もないと言うのに…」
「私と匠海くんの愛を…くだらないなんて言うなーーーっ!!!」

私は感情を爆発させた。すると、私の体から光のような物が発生し、触手は枯れて行った。この力が何なのかは分からなかったが、これはチャンスだと感じた。

「何だ、この力は!? 人間にはまだ、私の知らない力が秘められているとでも言うのか!?」
「トワイライト! あなたのくだらない計画も、これで終わりよ!!」

私は持っていた剣を投げた。剣はトワイライトのカプセルを破壊し、中にいたトワイライトに突き刺さった。

「ぐおぉぉぉぉぉぉ!! 私は…人間の力を侮っていた…」

次の瞬間、トワイライトのカプセルは大爆発を起こし、トワイライトは砕け散った。これで、トワイライトバトルロイヤルは終わり、私は元の世界に帰れる、そう考えると、私は安堵した。私の周りが真っ暗になり、これで本当にトワイライトバトルロイヤルが終わったのだと感じた。

「これで…帰れるのかな…? 匠海くん…」

しかし、私が辿り着いた先は元の世界ではなかった。周りの町並みは私の居た世界のものとは違っており、何と言うか、未来都市と言う感じであった。突然の出来事に私は混乱し、何が起きたのか理解できずにいた。

「ここ…どこ…? この町の感じは…もしかして、未来?」

すると、近くを男性が通りがかったので、私はその人に話しかけた。

「あの…すみません、今は何年ですか?」
「今は2121年だよ、君、そんな事も知らないの?」
「はい…実は少し寝ぼけていて…」
「ふ~ん、それより君、その服装、100年ほど前に流行ったファッションだよね? もしかして君、アンティーク好き?」
「あっ、この服装は私の彼氏が選んでくれたものなんです」
「へ~その彼氏の人、センスがいいね、今のファッションって、正直派手すぎるからな~」
「はい…そうですね…」

そんな…私のいた時代から100年も経ってる…私がトワイライトバトルロイヤルに参加させられている間に100年も…。私は絶望した、100年の時が経っていたら、匠海くんは生きていない、そんな事、考えたくない…。その時、私の周りが真っ暗になった、また別の場所へ移動するのだろう。嫌…、お願いだから、これ以上私に現実を突きつけないで…。私が辿り着いた先は、墓地だった、そこにあった一つの墓地を、私はよく眺めた。そこには、成瀬匠海の名が刻まれた墓があった、やはり、匠海くんは死んでしまったのだ。

「………嘘…これって…匠海くん…私…匠海くんと…結婚する予定だったのに…幸せに…なりたかったのに…どうして…」

その時、私は墓に何かが刻まれている事に気付いた、そこには、こう刻まれていた。君が突然いなくなったあの日から、僕は君の事を忘れた日は一日もなかった、むしろ君に会いたくて仕方がなかった。あの日以来、君に会う事は一度もなかったけど、僕は君と過ごした日々を決して忘れない。君が今、どこで何をしているかは分からないけど、君が幸せであれるように、僕は願っているよ。最後に、君に会えて本当に良かった、ありがとう、僕の愛する羽海野葵。

「私だって…匠海くんにもう一度会いたかったよ、一緒に人生を歩みたかったよ…その為に、私は望んでもない戦いをしたのに…こんなの…こんなのないよ…匠海くん…匠海くんに…匠海くんに会いたい…会いたいよ…」

その時、私の頭の中にトワイライトの声が鳴り響いた。トワイライトは私にこう告げた、「その願い、叶えてやろう…」と。すると、私の意識は糸が切れたように途切れた。次に目が覚めた瞬間、私はいつものカフェにいた。

「匠海くん!? 匠海くん!!」
「葵、どうしたの? 僕ならここにいるよ」
「匠海くん、会いたかったよ…」
「どうしたんだよ、葵、僕はずっとここにいたよ」
「えっ、でも私、トワイライトバトルロイヤルに参加して、知らない人と戦ってて…それで匠海くんがいなくなっちゃって…」
「葵、落ち着いて、葵が見てたのはきっと夢だよ、僕も葵もずっとここにいたよ」
「そ…そうなの?」
「そうだよ、ところで、さっきの話の返事、聞きたいんだけど?」
「…その時、意識が途切れちゃって、もう一回言ってほしいな」
「分かった、僕は葵の事が大好きだ、葵の事を忘れた日なんて一日もない、葵の事を心の底から愛してる、だから、僕と結婚してください」
「はい…よろこんで…」

私は匠海くんにそう言われて嬉しかった。私の事を好きと言ってもらえて、結婚して欲しいと言ってもらえて、本当に嬉しかった。周りからは私達の結婚を祝福してか、カフェの客たちから拍手を貰った。

「これからよろしくね、葵」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

結局、トワイライトバトルロイヤルが何だったのかは分からないし、参加していた人の生存もあの後私のいる街で確認した。律紀はあの後も社長としての業務を続け、陽菜乃は平和に女子高生としての生活を謳歌しているようである。ただ、在真だけは警察に捕まったと言うニュースが流れ、自業自得だと感じた。そんな私はトワイライトバトルロイヤルに参加したことで、匠海くんに対する愛が深まった気がする。私はこれから匠海くんと一緒に人生を過ごしていくんだ。もし、これからどんなに辛い事があっても、今度は二人で乗り越えていく。だって、私と匠海くんの愛は本物だから。