クロストライアル小説投稿ブログ

pixiv等で連載していた小説を投稿します、ここだけの新作も読めるかも?

闇夜と白昼の系譜 特別編「サプライズ大作戦!」

ネオシュヴァルツゼーレとの戦いもすっかり過去の話となり、平和を謳歌するニューエデンシティの市民たち。あれから色々あり、リヒトとミハルは付き合う事となった。だが、お互いに照れてしまい、いまいち進展のない二人。そんな二人の関係を進展させる為、ミハルの部下であるシャオ、グレイス、フロスの3人がある作戦を立てた。その作戦はサプライズ大作戦、二人の関係を進展させる為の最終手段であった。

「みんな、作戦内容は分かってるよね?」
「もっちろん! ミハル隊長とリヒトくんの関係を進展させるサプライズ大作戦を行うんだよね?」
「この作戦…必ず成功させる…」

三人は二人の仲を進展させる為に取った最初の行動、それは映画のチケットを渡す事であった。リヒトとミハルの好きそうな映画をシャオが選び、そのチケットを渡したのである。当然、三人も関係の進展を確認する為、チケットを購入し、潜入した。しばらく、シャオの選んだ映画の上映が始まった。シャオが選んだ映画はヒーロー物の映画であり、こういう場合は恋愛映画が定番なのだろうが、シャオはせっかく自分達も観るんだからと、自分が観たくて仕方ないヒーロー映画を選んだのである。

「ねえ、シャオ…これって…」
「うん! ボクが観たかった裂空騎士マッハブレードの劇場版だよ」
「いやいや、そうじゃなくて! 普通ここは恋愛映画とか選ぶでしょ…」
「ゴメン! ボクどうしてもこの映画が観たくって…つい選んじゃったんだ…」
「あなたが観たいもの選んでどうするのよ…」
「ゴ…ゴメン…」
「シャオ…グレイス…見て…」

リヒトとミハルは楽しんで映画を観ており、恋愛どうこうよりも映画そのものを楽しんでいた。二人が楽しんでいる様子を見て、三人は安心した。

「シャオが選んだ映画…結構良さそうじゃない」
「でしょ? マッハブレードはアクションが凝ってるからね~」
「二人はアクション系が好きみたいね…」

映画を観終えたリヒトとミハルは外に出た。二人はシャオの選んだ映画は面白かったと二人で話しながら手をつないで歩いていた。それをこっそり見ていた三人は、とりあえず第一作戦はクリアしたと喜んだ。続いて、三人は第二作戦を開始した。それは、映画のチケットと一緒に渡したグレイスの行きつけである喫茶店のカフェオレ無料チケットである。この喫茶店は若い人に人気で、ニューエデンシティでも特に人気のある喫茶店である。更に、ここのカフェオレは美味しいと評判であり、二人が喜ぶ事は確実だと思えたのである。

「さてさて、私の行きつけである喫茶店で二人はどこまで進展するかな~?」
「私達…ストーカーみたい…」
「大丈夫だよ、ボク達みんな変装してきちんと店の中に入って注文までしてるんだから」

二人はカフェオレを注文すると、運ばれて来たカフェオレを飲みながら近況報告をしていた。リヒトは家にシレーヌ、フェルネ、エフィが遊びに来た事、アインベルグ大陸に旅行へ行ったらエスカとレニーと会った事、家に遊びに来たルージュが遊びに来ただけなのにそのまま3日も泊まった事を話した。一方のミハルはフライハイト号の修理が終わった事、エルフィナとアミアが子猫に引っ掻かれた事、元ネオシュヴァルツゼーレのメンバーが防衛隊の隊員になった事を話した。二人の話は盛り上がり、仲が深まっている事を見ていて感じていた。

「ねえねえ、二人共結構良さそうじゃない?」
「確かに…いいかも…」
「ボク達の作戦、上手く行ってるね!」

その後、カフェオレを飲み終えた二人は店を出た。三人も後を追うように支払いを終え、後を追った。そして、三人は第三作戦を決行した。その作戦は、三人が悪人役を演じ、ミハルを攫い、そこをリヒトに倒させる作戦であった。これはフロスが考えた作戦であり、彼女曰く、一番手っ取り早い作戦との事。

「ねえねえ、この作戦、ほんとにやるの…?」
「ボク、怖いからやりたくないんだけど…」
「やるしか…ない…」

グレイスとシャオは覚悟を決め、作戦を決行することにした。その時、空中から一匹の巨大生物が現れた。その生物はグリフォンであり、かつてこの世界に多くいた強力な魔物である。鷲の上半身とライオンの下半身を併せ持つこの魔物は、とても強力で、一般人程度なら軽く殺してしまい、訓練を積んだ兵士でも立ち向かうのは難しい恐ろしい魔物である。グリフォンは口から火球を吐き、リヒトとミハルを攻撃した。二人はとっさに回避行動を取ったが間に合わず、火球の爆発に吹き飛ばされた。

「きゃあぁぁぁっ!!」
「うわぁぁぁっ!!」

二人は爆発で吹き飛ばされた際、足を負傷してしまった。その為、まともに立ち上がることが出来ず、この状態でグリフォンと戦う事は困難であった。

「ねえねえ、どうしよう? 大変な事になったよ?」
「二人が危険ってのもあるけど、このままじゃ街に被害が出てしまうわ」
「なら、あのグリフォンを倒すしかないわね…」

シャオ、グレイス、フロスの三人はそれぞれ武器を別空間から取り出した。シャオは黒いブーメランのブラックバードを、グレイスはショットガンを、フロスはスナイパーライフルを取り出し、攻撃を開始した。手始めにグレイスがショットガンでグリフォンの翼に風穴を空け、飛行できないようにして動きを封じた。続けてシャオが風の魔力を込めたブラックバードを投げ、グリフォンの体を切り裂いた。グリフォンは傷口から深紅の血を流していたが、なおも活動を続け、火球を何度も吐き、辺りを破壊した。その爆風でシャオとグレイスは吹き飛ばされ、軽傷を負った。

しかし、フロスは辺りが破壊されてもなお、スナイパーライフルをグリフォンに向け続けていた。彼女はグリフォンが隙を見せた瞬間を狙い、頭部を撃ち抜こうとしているのである。フロスの持つ武器はスナイパーライフル、一撃で相手を仕留める為の武器なのだ。今、グリフォンを止めるには頭部を撃ち抜き、即死させるしかない。フロスの目的を知ったシャオとグレイスは、グリフォンの動きを止める為、試行錯誤した。

「ほらっ! これで転んで!!」

シャオはブラックバードグリフォンの足元目掛けて投げた。ブラックバードは上手くグリフォンの前足に命中し、グリフォンはバランスを崩して倒れ込んだ。そこにグレイスが指を鳴らし、自身の家系に伝わる奥義、フリーズ・エンドを発動させた。この奥義はグレイスの家系であるセシル家に伝わる奥義であり、今から100年ほど前にこの技を悪用した者がセシル家から出たと言う。しかし、グレイスはこの技をニューエデンシティの人達を、リヒトとミハルを守る為に使ったのである。グレイスの放ったフリーズ・エンドはグリフォンの前足を一瞬で凍結させ、動きを封じた。

「今よ! フロス!!」
「言われなくても…!!」

フロスはスナイパーライフルの引き金を引き、スナイパーライフルを撃った。放たれた銃弾はグリフォンの頭部を貫通した。グリフォンは頭部を撃ち抜かれ、そのまま地面に崩れ落ちた。ミハルの部下である三人は連携して戦い、無事、ニューエデンシティの人々とリヒト、自身の上司を守り抜いたのである。

「ミハル隊長! リヒトさん! 大丈夫ですか!?」
「シャオ…それに、グレイスにフロス…あなた達…あの魔物を倒してくれたのね」
「はい、たまたま街を歩いてたらあの怪物が現れて…」
「私達がやらないと…多くの人が死ぬと思ったから…」
「ありがとう、頑張ってくれたのね、三人共偉いわ、でも、あなた達が私とリヒトくんのデートを覗き見してた事はバレバレよ?」
「えっ!? バレてたの!? おっかしいなぁ…ボク達の変装は完璧だったのに…」
「いや、視線が凄くてさ、僕とミハルちゃんがデートに出発した時には気付いてたよ」
「気付いてないふりして、最後の最後に実は気付いてましたってドッキリしようと思ったのにね~」
「何それ~」
「二人共…いじわる…」

三人はかなり落ち込んだが、結果的に二人はデートを満喫してくれた事に三人は喜んだ。戦えない二人を守る為、三人が戦ってくれた為、住民に死傷者は一人も出ず、再びニューエデンシティに平和が訪れた。リヒトとミハルはその後トルトゥーガの治癒魔法で完治した為、すぐ歩けるようになった。しかし、肝心の二人の関係はあまり進展しておらず、二人が付き合うのはまだまだ先になりそうである。だが、三人はまた次のサプライズ大作戦の計画を立てていた。

「ねえねえ、第二回サプライズ大作戦は何にしようかな?」
「そうね…水族館とか良さそうじゃないかな?」
「動物園も…いいかも…」

デートをする本人であるリヒトとミハルより楽しそうにしている三人。彼ら彼女らにとって一番楽しみなのはリヒトとミハルが付き合う事より、サプライズを考える事なのかもしれない。三人のサプライズはリヒトとミハルの仲が進展し、結婚することになったとしても、サプライズを続けるだろう。一番の楽しみがサプライズの三人は防衛隊の仕事をしっかりこなす有能な人材である。だが、上司に対しての敬意も忘れない有能な人材なのである。