クロストライアル小説投稿ブログ

pixiv等で連載していた小説を投稿します、ここだけの新作も読めるかも?

月白のエレメティア

「あなた、この機体に乗って」

オレンジ色の長い髪と透き通ったオレンジの瞳の美少女は、学校帰りの僕の前に一機の見た事のない白いオートマシンに乗って現れ、胸部のコックピットの中からそう語り掛けた。

「ぼ…僕…が…?」
「ええ、そうよ、あなたならきっと、このオートマシンを動かせるわ、私じゃ上手く動かせないのよ」

そう言って、少女は謎のオートマシンの持っていた白い戦闘機を地上に置いた。

「さあ、早く!!」
「もう! どうなっても知らないからね!!」

そもそも、何でこんな事になったのだろうか…。西暦2253年、幾度とない争いや宇宙人災害を解決し、争いが無くなった世界で、人々は平和を謳歌していた。しかし、その平和も長くは続かず、本日、僕の住むこのウィットタウンに2機のオートマシンが落下した、しかも、僕が学校から帰る帰り道で。1機はこの白いオートマシン、もう1機は黒い紫色のオートマシン。ちなみに、オートマシンって言うのは、人型の兵器、所謂ロボットだね。僕が乗った白いオートマシンはとても綺麗な姫騎士みたいな見た目、もう一機のオートマシンは悪魔みたいな見た目で、ウイングが装着されてる敵メカみたいな見た目。そして、僕はロボットアニメの主人公みたいにいきなりロボットに乗り込む事になったんだ。

「ところで、君、名前は?」
「私ですか? 私の名前は戦闘人間No.271です」
「何その名前…呼びづらいからさ、最初の2から取ってツヴァイでいい?」
「ええ、構いませんが、あなたの名前も聞かせてくれませんか?」
「僕は天川奏斗(あまかわ かなと)、私立ウィット学園の2年A組所属だよ」
「では、奏斗、このエレメティアの操縦はお願いします、私は下にある支援戦闘機のエレスティアに乗り込みますので」

そう言ってツヴァイはエレメティアと呼ばれたオートマシンのコックピットから飛び降り、エレスティアと呼ばれた支援戦闘機のコックピットに乗り込み、浮上した。

「何をしているんです、奏斗、早く戦いますよ」
「無理だよ! 僕、オートマシンの操縦なんてしたこと…」

その時、僕の脳裏にオートマシンの操縦方法が浮かんできた。とても不思議な感覚だ、機械音痴でオートマシンの操縦なんてできっこない僕が、オートマシンの操縦方法を知っているのだから。

「な…何で…? 僕…このオートマシンを動かせる…!!」
「そのオートマシンは普通に生まれた人間にしか動かせないものです、私みたいに培養されて誕生した戦闘人間には動かせません、そして、普通に生まれた人間のみ、エレメティアに乗った瞬間に操縦方法が脳裏にインプットされます」
「何だか知らないけど、僕はこのオートマシンであいつを倒せばいいんだよね?」
「はい、あの機体はマッドサイエンティストのDr.バイオの世界征服の尖兵、ヴァルガーです」
「ヴァルガー…いかにも悪役っぽい名前…でも、Dr.バイオって?」
「それは後です! 来ますよ!!」

ヴァルガーはウイングを展開し、飛行した。僕はすぐさま胸部のコックピットを閉じ、肩部に内蔵された牽制武器のプラズマバルカンを放って攻撃した。だが、ヴァルガーは素早い動きで回避し、所謂ビームライフルのエネルギーシューターを構え、僕を狙って撃った。

「危ないっ!」

僕はそう言いながら後方へ跳んで攻撃を回避、しかし、ヴァルガーは攻撃を続けてくる為、僕はとっさに防御する事にした。

「防御兵装は…レーザーシールド…これかっ!!」

エレメティアの両腕にはレーザーシールド発生装置がある、僕はエレメティアの両腕にレーザーシールドを展開させ、ヴァルガーのエネルギーシューターを防いだ。

「やった!」
「奏斗、レーザーシールドは様々な攻撃を防御できますが、エネルギー消費が激しいのでできるだけ回避してください」
「分かった!」

エレスティアに乗っていたツヴァイは両翼に装備されたレーザーシューター、シューティングゲームにおける所謂ノーマルショットでヴァルガーを攻撃、ヴァルガーのエネルギーシューターを破壊した。

「今だ!」

僕はエレメティアの太腿部のアーマーを展開し、その中に入っていたレーザーセイバー、所謂ビームサーベルを装備し、レーザーの刃を展開、そのまま大空へ飛翔した。

「はあぁぁぁっ!!」

エレメティアは大きく振りかぶり、ヴァルガーの胴体をビーム刃で溶断した。ヴァルガーを切り裂いたエレメティアは地上に着地し、ビーム刃をしまった。直後、ヴァルガーは爆発四散した。初めての戦いを終えた僕は、戦いに疲れて息切れしていたが、不思議と恐怖心はしなかった。どうやら、エレメティアには恐怖を和らげるシステムがあるようだ。

「奏斗、お怪我はありませんか?」
「大丈夫、ピンピンしてるよ」
「それは良かったです、ですが…」

僕の周りには、いつの間にか到着していた統合軍の量産型オートマシン、バーテルが僕達を取り囲んでいた。バーテルは所謂味方側の量産型雑魚メカみたいな見た目をした弱そうな機体で、ここ数年は大きな争いも無かった事から、特に新型機の開発もされておらず、既に旧式化している。そんな機体がこのエレメティアに勝てる訳は当然ないのだが、流石に民間人の僕と素性の分からないツヴァイが正規軍の人達に手を出すわけにはいかなかった。もし下手に手を出せば重罪、つまり大変な事になってしまうのだ。

「奏斗、どうします?」
「どうって…流石に正規軍には手を出せないよ…」

その時、2機のカスタムされたバーテルが僕達に近づいてきた。片方はブースターを装着した高機動型、もう片方は大きなスナイパーライフルを持ったスナイパー型であった。すると、高機動型のバーテルがエレメティアの肩に手を当て、接触回線で通信を送ってきた。

「うちは地球統合軍ウィット防衛軍所属、皇栞奈(すめらぎ かんな)少尉、あんた達の所属は? そのオートマシンはどこの所属?」
「え…えっと…僕達は…」

すると、エレメティアの上空に待機していたエレスティアがエレメティアにアンカーを放って接触した。

「私達はあなた達の敵ではありません、あなた達の味方です」
「はぁ? 何なのあんた? もしかして、宇宙から来た正義の味方? まさか、地球は狙われている! とでも言う気?」
「詳しい話は基地の方でします、一旦基地に戻りませんか?」

ツヴァイのその言葉を受け入れた栞奈少尉は、僕達と共にウィット基地に帰投した。ウィット基地はウィットタウン唯一の軍事基地であり、ウィットタウン自体が非常に平和な地域である為、兵士の練度も低く、合同演習ではいつも下の方にいる。そのウィット基地に来た僕とツヴァイだが、僕がコクピットから降りると、兵士達は驚いていた。そりゃそうだ、僕は善良な一般市民、ただの学生である。

「驚いた、まさかただの学生がこんなオートマシンを乗りこなしているなんてね…」

栞奈少尉の声がしたので、振り向くと、赤い髪をボブカットにした女性であった。左目は髪で隠れているが、その瞳は紫色で、キリッとした目をしている。すると、今度はもう一人の女性兵士やってきた。

「あなたがやった事はオートマシンの無断所持…市街地での勝手な戦闘…更に一個人が兵器を所持…普通ならありえないくらいの罪状だらけね…」
「やめとけって愛梨、あ、こいつは猫崎愛梨(ねこざき あいり)少尉、あまりやる気はなさそうだが、オートマシン操縦の腕前は確かだ」
「よろしくピース…」

天音愛梨少尉は青く綺麗なロングヘアが目を引く女性で、目は綺麗な黄色であった。正直、人形にしか見えないぐらい整った顔であるが、これでも軍人なのだから驚きである。

「あ、ちなみにうちら偉そうな事言ってるけど、これでもまだ17なんだよね」
「そ…そうなんですか!?」
「そだよー…ちなみに私達は親友なんだよ…」

すると、エレスティアを着陸させたツヴァイがエレスティアのコックピットから降り、僕達の近くにやって来た。

「お待たせしました、これからあなた達に重要な話をします、よく聞いててくださいね」

ツヴァイの話した事は以下の通りである。大気圏外にあるかつての争いで廃棄された宇宙ステーションがDr.バイオと言うマッドサイエンティストの研究施設にされており、そこで地球統合軍のオートマシンの実に15倍もの性能を誇るオートマシンを独自に開発、更に、そのパイロットとなる戦闘人間を培養技術で次々と誕生させていると言う事である。Dr.バイオはかつては軍の科学者だったが、あまりに非人道的な実験をする為、軍を首にされた経緯があり、バイオはその復讐の為、この世界を自身の作ったオートマシンで滅茶苦茶にしようとしているのである。戦闘人間はDr.バイオの手駒として働くただの消耗品なのだが、そのバイオのやり方に従えないと感じたたった一人の戦闘人間No.271ことツヴァイはその宇宙ステーションを脱走し、それと同時に最新鋭機体のエレメティアと支援戦闘機のエレスティアを奪取し、その設計図を破棄して地球へと降下した。そして、ツヴァイの追手としてDr.バイオの差し向けたヴァルガーとウィットタウンに着陸し、そこで奏斗と出会ったのである。この事実を聞いた奏斗たちは、どうするべきか悩んでいた。

「ツヴァイの言ってる事って、相当大変な事だよね? 統合軍のオートマシンの15倍の性能って…」
「そんなの、うちらのカスタムバーテルでも対応できねーじゃん!」
「15倍の性能…そんなのと戦ってたら命捨てるだけ…私は負ける戦いはしない主義…」
「だから、今Dr.バイオと戦えるのは私達だけなんです!」
「ツヴァイ、そのバイオ一派の戦力ってどれぐらいなの? まさか、1万とか言わないよね?」
「そうですね、宇宙ステーションは狭く、生産性も優れてないですし、戦闘人間も生み出すのに時間がかかる割には役立たずとして処分された子もいましたから…ざっと数十機程度でしょうか?」
「数十機程度なら、僕らだけでも対応できるんじゃないですか?」
「そうだな、どうせ今の堕落しきった統合軍じゃ役に立たねーし、他の基地からの応援も期待できねーし、うちらだけでやるっきゃないか!」
「ほんとにやるの…? 私は嫌…普通に嫌…死にたくないし…」
「いいからあんたもやるの! ささ、そうと決まれば飯だ飯」
「栞奈って…普通に鬼…親友なら優しくして…」

その後、僕達は戦いの前の腹ごしらえとしてウィット基地で食事をした。軍の料理を食べるのは初めてだが、普通に美味しいと感じた。と言うか、こんな経験、普通の学生なら絶対にしないであろう、そう考えると、この経験は貴重であると感じた。その時だ、僕達が食事をしていると、大きな音がした。音からして、何か重たいものが墜落した音であろう。

「何だよ、うちらが飯食ってんのに! 愛梨、モニター!」
「今やってる…急かさないで…」

愛梨少尉が着陸地点の映像をモニターに映し出すと、そこにはウイングを取り外し、重装甲、重武装になって下半身がキャタピラになったヴァルガーがいた。この場合、ロボットアニメだとヴァルタンクになるんだよな…。

「あれは…! 地上用機体のヴァルタンク!!」
「いや、ほんとにヴァルタンクって名前だったの!?」

すると、他にも6機が地上に着陸してきた。内4機はヴァルガーだったが、後の2機はヴァルガーのウイングを取り外し、肩にキャノン砲を取り付けた機体であった。これもロボットアニメだとヴァルキャノンなのだが…。

「地上用機体のヴァルキャノン…! あれも完成していたなんて…!!」
「あれもヴァルキャノンって名前なの!? Dr.バイオ、結構ネーミングセンス普通!?」
「こうしちゃいられねえ! 愛梨! 行くぞ!!」
「嫌だ…私はベッドで寝たい…ふかふかのベッドプリーズ…」

栞奈少尉が愛梨少尉の首根っこを掴んで無理やり連れて行ったのを確認すると、僕とツヴァイもそれぞれの機体の所へ向かった。そして、コックピットに乗り込むと、出撃の準備を整えた。

「皇栞奈、バーテルアサルト、行くぜ!!」
「猫崎愛梨…バーテルバスター…行くよ…」
「天川奏斗、エレメティア、行きます!」
「ツヴァイ、エレスティア、発進します!」

僕達4人はそれぞれの乗機に乗って発進した。ちなみに、他の隊員たちは練度も低く、戦っても死ぬ可能性が高い為、街の防衛に当たらせている。その移動の途中、ツヴァイは栞奈と愛梨にある事を聞いた。

「栞奈さん、愛梨さん、あなた達のカスタムバーテルは通常の機体と比べてどれぐらいの性能ですか?」
「ああ、うちらのカスタムバーテル? これは一般のバーテルの3倍程度だよ」
「つまり、ほぼ戦力外…私は死にに行くだけ…ほんと最悪…隙を見て逃げようかな…それとも命乞いしようかな…」
「あんたは戦う気ないんかい!!」
「大丈夫です、二人共後方で武器を撃ってくれればいいので」
「つまり、砲台役ね…それなら任せて…学習発表会で木の役ならやり慣れてるから…」
「それはあんたがやる気を見せなかったからでしょ!」
「目立つのは嫌…私は空気程度の扱いでいい…」
「栞奈さん、愛梨さん、もうすぐ目的地です、作戦通りお願いしますね」

その後、僕達は目的地に到着した。既に市街地は破壊されており、破壊された建物や人の死体であふれかえっていた。

「そんな…こんなのただの虐殺だよ!」
「Dr.バイオは戦闘人間たちに虐殺を命じているんです、地球でぬくぬく暮らしている愚かな人間を皆殺しにしろって」
「なんだよそりゃ、みんな頑張って生きてるのに!」
「久々にカチンときた…私、本気出す…!」

愛梨少尉の乗るバーテルバスターはレーザースナイパーシューターと言うビームスナイパーライフルを構え、ヴァルガーのコックピットを狙い、撃った。そのレーザーはヴァルガーのコックピットを貫通し、一機撃墜、続いてもう一機狙い撃って撃破した。

「うわぁ…愛梨少尉、凄いですね…」
「えへん…この程度、朝飯前…私はやればできる子…いぇい…」
「こりゃ、うちも負けちゃいられねえな!」

栞奈少尉の乗るバーテルアサルトは両腕のミサイルポッドからミサイルを1発ずつ発射した。その攻撃はヴァルガーに迎撃されたが、その爆風の中からバーテルアサルトが現れ、エネルギーブレードと言うビームの刃でヴァルガーを切り裂き、立て続けに2機撃破した。

「どうよ! うちらの旧式だって、頑張ればこれぐらいできるんだぜ!」
「凄いです! 栞奈少尉! 愛梨少尉!」
「これは私達も負けてられませんよ、奏斗!」
「分かってるよ、ツヴァイ! 僕達も続こう!!」

ツヴァイののるエレスティアは機体上面からミサイルランチャーを発射し、ヴァルキャノンを攻撃したが、ヴァルキャノンは両肩のハイパーキャノンを発射。ハイパーキャノンは実弾兵器だが、その火力は凄まじく、大爆発が発生した。恐らく、この辺り一帯を滅茶苦茶にしたのもこれの仕業だろう。

「うはー、すげー火力だな…」
「あんなのに当たったら…私達はバラバラになる…そんなの嫌…棺桶には綺麗な姿で入りたい…」
「大丈夫です! ここは僕達に任せてください!!」

僕はエレメティアの腰に装備されたレーザーシューター、所謂ビームライフルを装備し、ヴァルキャノンを攻撃した。しかし、ヴァルキャノンはその攻撃を回避し、同じくビームライフルのエネルギーカノンで攻撃を仕掛けた。僕はその攻撃を回避し続けたが、流石に技量の面で僕は負けていた。


「くっ! 攻撃が厄介すぎる!」

そんな話をしていると、上空からヴァルガーが追加で2機降下してきており、上空のエレスティアを狙っていた。

「ツヴァイ!」
「大丈夫です! ここは私に任せて奏斗たちはヴァルキャノンとヴァルタンクを!!」
「うちらが援護に行く!」
「ここは任せて…」

しかし、栞奈少尉と愛梨少尉を近づけさせまいと、ヴァルタンクは両肩のツインキャノン、両腕のダブルアームキャノンで辺りを砲撃した。

「くっ! これじゃ近づけねえ!」
「三十六計逃げるが勝ち…そろそろ逃げるか命乞いするしかないわね…」
「馬鹿! 諦めんな!!」

僕は一刻も早くこの敵を片付けてみんなを、この街の人達を助けたいと思った。

「ツヴァイ! 何か強力な武装は!?」
「背面に装備された二門のレーザーブラスターがあります!」
「分かった! これだな!!」

僕はエレメティアの背面のレーザーブラスターを前面に展開した。レーザーブラスターは強力なビーム砲であるらしく、その威力は確かであろう。僕はレーザーブラスターのトリガーを引いた。

「食らえっ! レーザーブラスター!!」

レーザーブラスターの砲門から放たれた強力なビームは素早く放たれ、ヴァルキャノンの胴体を上下分離させた。上下分離したヴァルキャノンは爆散し、続けてもう一機のヴァルキャノンにも砲門を向けた。

「もういっぱーつ!!」

再び放たれたレーザーブラスターは、ヴァルキャノンの胴体を貫き、ヴァルキャノンは爆発四散した。

「よし!」

一方で、上空にいるツヴァイも、ヴァルガーとの決着を付けようとしていた。

「エレスティアをただの支援機と思わない事です! エレスティアには、エレメティアのレーザーブラスターにも負けない威力の兵器が積まれているんですよ!」

ツヴァイの言う強力な兵器とは、機首の下部に装備された強力なビーム砲、レーザーバスターである。ツヴァイはヴァルガーが一列に並んだ瞬間、レーザーバスターのトリガーを押した。

「今です! レーザーバスター!!」

エレスティアから放たれたレーザーバスターは、一列に並んだヴァルガーのコックピットを同時に一瞬で貫通し、直後、2機のヴァルガーは爆発四散した。

「どうです? これがエレスティアの性能ですよ」

そして、残すはヴァルタンク1機のみとなった。下半身がキャタピラの相手は弱いと言うのはロボットアニメではよくある事だが、こいつはどうもそうは見えなかった。明らかに弾薬を大漁に積まれている、下手すればこちらがやられるかもしれない。

「奏斗、一気に決めますよ!」
「OK! ツヴァイ!」

エレメティアとエレスティアは同時にレーザーブラスターとレーザーバスターを撃った。しかし、その攻撃はヴァルタンクの周囲を覆う電磁バリアで防がれた。

「そんな…! レーザーバスターが…!」
「レーザーブラスターも防がれちゃったよ…どうしよう…!」
「ねえ、ツヴァイ、これより強い武装はないの?」
「…ありません」
「そんな…もうこの世界はおしまい…私は結婚する事なくこの世を去る…来世はいい人生を送りたい…」
「馬鹿! 諦めんなって!!」

最強武器が効かず、誰もが諦めたその時、ツヴァイが一つの可能性を挙げた。

「…一つ可能性があるとすれば、それは、エレメティアとエレスティアが合体する…ですかね…」
「合体!? そんな事が出来るの?」
「合体自体はできますが…合体プログラムが未完成で、上手く合体できない可能性があるんです…」

上手く合体できない、恐らくそれは合体の際に機体を一度分解した際、パーツがバラバラになってしまうと言う事だろう、その場合、墜落してパーツが壊れてしまうかもしれない、でも…。

「今はそれしかあいつを倒す方法がないんだよね? じゃ、やってみようよ!」
「何で…何でそんなに前向きになれるんですか…?」
「人間ってさ、前向きに生きてた方が何かしら特なんだよ、それは戦闘人間である君も同じさ、ツヴァイ」

僕のその言葉に、ツヴァイは少し黙り込んだ、僕のこの言葉が嬉しかったのか、可笑しかったのかは分からない、でも、次にツヴァイが口を開いた時、ツヴァイは元気のある声で返事を返した。

「分かりました! ダメもとで合体をやってみましょう!」
「ダメもとじゃないさ! 必ず成功させよう!!」
「無理だったら、うちらがパーツをパズルみたいにくっつけてやっから安心しな!」
「凄く面倒そうだけど…協力ぐらいはしてあげる…その代わり、後でスイーツ食べ放題よろしく…」
「合体コードはフォーメーション・エレメティオーラです!」
「OK! フォーメーション・エレメティオーラ!!」

僕がそう叫ぶと、エレスティアの本体とウイング、レーザーシューターが分離した。その後、レーザーシューターがエレメティアの肩に合体、続けて、エレメティアのレーザーブラスターが分離し、そこにウイングが合体、その後、ウイングにレーザーブラスターが合体した。最後に残ったエレスティアの本体だったが、ここで合体プログラムがおかしくなって本体が真下に落下した。

「危ないっ!!」

僕はとっさにエレスティアの本体を手に取った。

「奏斗、本体をエレメティアの左腕に合体させて!」
「分かった!」

僕は言われた通り、エレスティアを左腕に合体させた。こうして、合体オートマシン、エレメティオーラが完成した!

「ほえ~、エレスティアがブロックみたいに分離してエレメティアに合体しやがった…」
「結構…カッコいい…かも…私は…好き…」
「奏斗、エレメティオーラの火力なら、ヴァルタンクの電磁バリアを貫通できるはずよ!」
「分かった! 一番強い武装は!?」
「レーザーブラスターとレーザーバスターの同時攻撃! 分離時より出力が上がっているから、必ず貫通できるわ!」
「OK!」

そう言ってレーザーブラスターを前面に展開、レーザーバスターの砲門をヴァルタンクに向けた。ヴァルタンクは迎撃の為、車体に装備された巨大ミサイル、ハイパーミサイルと肩部に内蔵されたミサイルランチャー、両肩のツインキャノン、両腕のダブルアームキャノンを一斉射したが、こちらもレーザーブラスターとレーザーバスターの同時攻撃で返した。

「レーザーブラスター、レーザーバスター、最大出力! 行っけぇぇぇっ!!」

同時に放たれた3つのビームは、ヴァルタンクの撃った弾丸を迎撃し、ヴァルタンクの張った電磁バリアを貫通、更に重装甲のヴァルタンクの胴体を貫いた。そして、ヴァルタンクは大爆発を発生させて消滅した。

「やりましたね、奏斗!」
「ああ!」
「さて、これで残すは宇宙にいるDr.バイオだな!」
「今の私達に宇宙に行く手段はない…つまり私はお役御免…さよなら…」
「おめーはまだ街の防衛って仕事があるだろーが!」
「エレメティオーラの出力と性能なら、このまま宇宙まで行けます!」
「じゃあ、僕とツヴァイは宇宙に行ってきますので、栞奈少尉と愛梨少尉はここで待っててください」
「オーケー! 必ず倒して来いよ!」
「私…応援してる…ふれーふれー…」

その後、僕とツヴァイはエレメティオーラに乗って宇宙へと向かった。どんどん地上から離れていき、僕は生きて帰れるのかと少し心配になったが、今の僕達ならどんな相手が来ても勝てる気がした。そして、僕達が大気圏外に出ると、Dr.バイオの宇宙ステーションがあった。

「あれがDr.バイオの宇宙ステーションだな!」
「その通りだ、裏切り者No.271と小僧!」

Dr.バイオはエレメティオーラのモニターにその姿を映した。Dr.バイオは普通の白髪の老人で、髭を生やし、白衣を着たいかにも科学者と言う見た目をした人物であった。表情は常に狂気の顔で、まさにマッドサイエンティストと言う言葉が正しかった。

「Dr.バイオ…! あなたの野望はもう終わりです!」
「ほざけ! まだわしには最終兵器がおるわ!」

そう言って宇宙ステーションから出撃したのは、ヴァルガーとエレメティアのデザインを合わせたようなオートマシンだった。

「何だこのオートマシンは!? エレメティアに似ている…!?」
「こいつは設計図が失われたエレメティアを再現する為、ヴァルガーをベースにカスタムしたオートマシン、ヴァルスティアだ! その性能はエレメティアに匹敵するぞ!」
「エレメティアに匹敵? でも今の僕達のエレメティオーラはエレメティアより強いんだ!」
「舐めるなよ、小僧、ヴァルスティアのパイロットはわしの生み出した戦闘人間の中でも最高傑作である戦闘人間No.31だ!」
「戦闘人間No.31ですって!?」
「そんなに強いの? ツヴァイ」
「ええ、彼女は根はとてもいい子で争い事が苦手なんだけど、その潜在能力は非常に高く、Dr.バイオによって非人道的な洗脳をされてしまったの、だから今の彼女はただの人殺しの道具なのよ」
「戦いを望んでない子を無理やり…Dr.バイオ! 僕はお前を許さない!!」
「ふん、そんな事、知った事か!」

すると、Dr.バイオは宇宙ステーションから何か発進させた。それは巨大ミサイルであり、その進路は地球に向かっていた。

「今度はミサイル!?」
「あれは…核ミサイルよ!」
「核ミサイル!? それって今は保有が禁止されているんじゃ…」
「フフフ…最終手段として、裏ルートで手に入れたのだよ」
「Dr.バイオ! お前はどこまで…!!」
「奏斗、早くあのミサイルを止めないと…!!」
「でも、どうすれば…!!」
「エレメティオーラの掌には反重力フィールド発生装置が備わっています、それで跳ね返すんです!」
「分かった! でも…」

核ミサイルを止めようにも、ヴァルスティアが僕達を妨害していた。ヴァルスティアはエネルギーブレードとエネルギーバスターで攻撃を仕掛け、僕はその攻撃をレーザーセイバーで切り払っていた。だが、根は優しい彼女を殺す事はできない、かと言って、核ミサイルも止めないといけない、何とか説得できないものか、エレメティオーラとヴァルスティアは元々Dr.バイオが開発した機体、なので通信回線も同規格のはずだ。僕は通信回線を開いた。

「No.31! もうやめてくれ! あのミサイルが地球に落下したらおしまいなんだ! 多くの人が死ぬんだよ!?」
「ひと…しぬ…ばいお…それをのぞんでる…」
「バイオは望んでるよ、けど、君はどうなの!?」
「わたし…ひとしぬ…きらい…でも…ばいおが…それをのぞんでる…」
「君がそれを嫌いなら、無理してやらなくていいんだ!」
「No.31! 優しい心を思い出して!!」
「なんばーにひゃくななじゅういち…うらぎりもの…まっさつする…」

何を言っても通じない、ミサイルが落下危険地域に達するまではまだ時間がある、でも、このまま彼女を放っておいたら妨害される、そろそろ覚悟を決める時が来たと感じた。

「…ツヴァイ…僕…彼女を殺したくない…」
「大丈夫よ、奏斗、今まで私達が殺してきた戦闘人間と同じだと思えばいいから…」
「ツヴァイ…」

その時、No.31の方から僕に通信が送られてきた。

「つう゛ぁい…? つう゛ぁいって…何…?」

僕とツヴァイはその言葉に驚いた。彼女は恐らく、僕とツヴァイの通信回線で僕が付けたツヴァイと言う名前に興味を持ったのだろう。

「ツヴァイって言うのはね、No.271の名前、僕が付けたの」
「な…まえ…?」
「うん、もし良かったら、君にも付けてあげようか?」
「おね…がい…」

僕は考えた、彼女に良さそうな、似合いそうな素敵な名前を。31…3と1の頭文字を取って、その後に響きの綺麗な文字を入れて…。

「サイリー…はどうかな…?」
「さい…りー…? いいなまえ…わたし…さいりー…」

すると、ヴァルスティアは攻撃を止め、Dr.バイオの宇宙ステーションの方へと向かって行った。

「No.31! 何をしている! 奴らを殺せ!!」
「わたしは…私の名前は…No.31じゃない! サイリーって言う素敵な名前がある!」
(サイリー、まさか、自我を取り戻したの…?)
(これって奇跡じゃ…)
「馬鹿な…! お前達戦闘人間はわしの世界征服の道具だ! 道具が主に逆らうのか!!」
「違う! 私達は、道具なんかじゃない! 一人一人が命を持った、立派な命よ!!」

そう言ってヴァルスティアはエネルギーバスターを放ち、宇宙ステーションを攻撃した。

「うおおおっ!!」
「エレメティオーラのパイロットさん! 早くミサイルを!」
「分かった!!」

僕は核ミサイルの正面に立つと、両掌から反重力フィールドを発生させ、核ミサイルを宇宙ステーションの方に押し返した。

「馬鹿な…わしの…わしの野望が…」

直後、宇宙ステーションに核ミサイルが衝突し、宇宙ステーションは大爆発。Dr.バイオは宇宙の塵となって消え、こうしてDr.バイオの反乱は終わった。

「終わったんだね、ツヴァイ」
「ええ、サイリーも、ありがとう」
「はい、ご迷惑をおかけしました、でも、エレメティオーラのパイロットの方に付けて頂いた素敵な名前のお陰で何とか正気を取り戻せました」
「気に入ってくれたなら嬉しいよ、ありがとう、でも、何でサイリーは正気を取り戻せたのかな?」
「多分だけど、戦闘人間はみんな名前に飢えていたのよ、No.なんとかって感じの無機質な名前が嫌で、みんなどこかで名前を欲しがってたんだわ、だから、サイリーは素敵な名前を貰えて嬉しくて、そのショックで我に返った、とかじゃない?」
「なるほど…それって、とっても素敵だね」

その後、僕達はサイリーと共に地球に帰還した。地球に帰ると、栞奈少尉と愛梨少尉が僕達を歓迎してくれて、サイリーも仲間として受け入れてくれた。その後、僕達5人は世界を救った英雄として、何か凄い勲章を貰って、エレメティオーラとヴァルスティアは軍に引き取られたんだ。オートマシンは今の僕達には必要のない物だけど、またどこかで争いが起きたら、僕達は再び乗り込むかもしれない。そして、あっという間に一週間が過ぎた。

「ツヴァイ、学校遅れるよ、サイリーも早く起きて」
「ごめんなさい、奏斗、私まだこの制服って言う服の着方が分からなくて…ボタンの留め方とか…」
「分かった、手伝うから…サイリー起きて!」
「う~ん…むにゃむにゃ…あと5分…」
「ありがとう、奏斗、先ご飯食べてますね」
「分かった、僕はサイリーを起こしてくるね」

その時、インターホンが鳴った。

「あーもう、こんな時に何…?」

ドアを開けると、栞奈少尉と愛梨少尉がいたが、何故か僕と同じ学校の制服を着ていた。

「よっ、奏斗~」
「おはようございます…私の制服姿、可愛いでしょ…? 惚れちゃっても、写真撮ってもいいですよ…? 但し、お金はきっちり貰う主義…」
「馬鹿! 変な事言うな!」
「…二人共、何で制服なんですか…?」
「いや、実はあの後エレメティオーラとヴァルスティアに興味本位で乗ってみたらあまりのスペックの高さに上手く操縦できなくってさ、施設ぶっ壊しちゃって、しばらく仕事に来るなって言われてさ…で、奏斗のいる学校にでも通うかってなって今に至る訳」
「私と栞奈なら動かせると思ったんだけど…やっぱり私達には動かせなかったみたい…これって何だろう…主人公補正…? 普通にムカつく…」
「色々大変だったんですね…」

その後、サイリーが起きてきて、栞奈少尉と愛梨少尉が来てせっかくだからと5人で朝食を取って学校に通った。

「学校って、どんなところなんでしょう…」
「一日中勉強させられる恐ろしい施設…引きこもりには辛い施設…つまり牢獄と同じ…」
「馬鹿! サイリーに変な事吹き込むな!」
「奏斗、平和になったこの世界で、これからもよろしくね」
「勿論! こちらこそよろしく!」

僕達はこれからも大変な出来事に遭うとは思う、それでも、みんなが居ればどんな困難だって乗り越えられる気がする、だって僕は、この戦いを乗り越えられたのだから、どんな困難が立ち塞がっても、絶対に乗り越えてみせる。